No.170515

真・恋姫†無双〜虚像の外史☆三国志演義〜

アインさん

ストーリー
聖フランチェスカ学園に通う主人公は、ある夜、同学年の北郷一刀が泥棒と戦っている所に遭遇してしまう。その時、光りが輝きだし北郷と主人公を見知らぬ世界へと飛ばしてしまうのだった。
そして………彼は。

2010-09-05 03:44:12 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:3101   閲覧ユーザー数:2699

 道場内に響く竹刀特有の軽やかな音を聞きながら、俺は被っていた防具を脱いだ。時期は冬だといっても防具を着けたまま動けばやはり暑い。

「のわっ!?」

 その時、少し離れた場所から奇声が聞こえた。

「やほ、かずピー、おひさ~♪」

 一人はこのフランテェスカ学園の学生服を着た眼鏡を掛けた青年、確か及川という名前だった。その及川が声をかけたのは同じ剣道部の北郷だ。

「お、おひさじゃね―よ。いきなり湧いて出んなってば!」

 どうやら練習中にいきなり声をかけられたために北郷が奇声をあげたらしい。ちなみに及川は北郷の練習が終わるまでずっと俺の隣で座って見ていた。

「……んで? おまえ一体何しに来たんだよ?」

 彼の存在を否定するような目つきで北郷は尋ねると及川は、顔を真っ青にした。

「かぁ~! すっかり忘れとるやん自分!」

「忘れる? おまえと何か約束したっけ?」

「してたもクソも! 冬休みに入る前に理事長から全校生徒に向けて宿題が出たやろうが!」

「宿題……………あ―」

 北郷はぼやける目を細めつつ宿題という課題を思い出したようだ。ちなみにその宿題というのは、フランテェスカ学園の理事長が趣味で建築した歴史資料館を見学して感想文を書けというものだ。もちろん俺も書かなければいけない。

「はぁ……わぁ―たよ!」

 気付けば二人の会話は終わっており北郷は、及川に吐き捨てるような返事をして背を向けた。俺の近くまで来ると”おつかれ”と言ってその場を後にする。

 やがては及川もいなくなり、俺一人になった。

「…………」

 しんっと静かになる道場。心が落ち着く………が、いつまでもここにいるのも馬鹿馬鹿しい。そうだ、俺も歴史資料館に行こう。

プロローグ

 

『新たなる者』

 歴史資料館に向かう並木道には、俺と同じ目的を持った学生達がのんびりと歩いている。

 ふと、気付けば及川と北郷も歩いていた。

「だけど、俺はあきらめないぞ! 青春時代はたった三年しかないねん! 一に恋あり! 二に友情あり! 三四と五には女ありや!」

「猿だねぇ」

「おうさ! 猿さ! 猿だともっ!」

「良いなぁ……俺も猿になりてぇ!」

「おう、なれなれ! やっぱ若い頃は猿やないと男やないからなっ!」

「いや、それはどうかと思うが……」

 何気ない会話で時間を潰しつつ歴史資料館へ向かっている二人に、俺はそんな会話を暇つぶし程度で聞きながら歩くことにした。

 ………その時だった。

「…………っ」

 殺気。しかもかなり強い殺気だ。こんな感覚は今まで感じたことがない。とても危険な殺気だと感じ取れた。

 俺は足を止めて辺りを見回す。すると一人の男子生徒が素通りした。

「………っ!」

 その素通りで、すぐにわかった。彼が『犯人』だと。彼はそのまま走って行くが、前を歩いていた北郷にぶつかった。

「あ、わりぃ!」

 すぐさま北郷は謝罪すると彼は立ち止まって前を向く。

「……チッ」

 男は”邪魔をしやがって”と言いたそうな顔つきで、舌打ちをすると再び走り去ってしまった。

「………」

 俺は、彼を感じが悪い奴などで済まされるレベルではないと思えた。

 まず、彼の身体は俺や北郷などと比べものにならないほど鍛えていた。さらに一瞬だけ立ち止まり振り向いた時など、身のこなしが全くもって隙もない。

 そして最後に極めつけは殺気。あれほど殺気を持つ生徒が『ここ』に存在するはずない。

 だいたいこの聖フランテェスカ学園は元女子校で、つい最近になって共学になったばかりだ。そのためか、男子生徒の数は少なく、一クラスに一人という割合。

 そして何よりも俺はこの学園を通っている男子生徒の顔を『すべて』知っている。

「なんや? かずピ―、どないかしたん?」

「えっ?」

「さっき奴の背中ジ―ッと見つめて。……ぬっ!? もしやかず――」

 どうやら及川の方は気にしていないようだが、北郷は彼の存在を気にしている。やはり武芸をしている人間なら彼の存在を気にするレベルみたいだ。

 それにしても彼は一体何者だ?

 疑問はさらに深めていく。

 ――その日の未明の夜。

 北郷が竹刀を持って男子寮を抜け出す所を見かけた。やはり昼に出会った彼の事が気になったんだろう。

 そこで俺も遅れること数分、竹刀を持ち寮を出た。もちろん真実を確かめるために。

 ……だが、時は早かった。

「待てよっ!」

 北郷の叫ぶ声が並木道から響く。

「………っ!」

 何かあったらしい。俺はすぐさま走った。

 その間にも北郷と知らぬ声……おそらく昼の彼だろうとの会話が並木道から響き聞こえた。

「ちょ……てめぇ! 何しやがるっ!」

「……邪魔だよ、おまえ」

「うわ……っ! ひ、人の話を……っ!」

「聞く気は無い、死ね」

 どうやら昼間の彼は北郷を排除しようと攻撃を仕掛けているようだ。しかも声の震えから察するに想像以上の攻撃みたいだ。

「――じゃね―! てめぇ―一体何だ? どうして盗みなんてしやがるっ?」

 盗み……昼間の彼は何かを盗んで来たのだろうか。しかし、相手の声は小さく話しているためにここまで聞こえない。それとは対象に北郷の声は怒りまかせに大声を上げていた。

「泥棒如きが偉そうに言うんじゃねぇよ! 盗人たけだけしいっ!」

 その後、北郷も覚悟を決めたのか会話は一切聞き取れなってしまったが………その一、二分後。途方も無いほどの殺気が襲いかかってきた。

「………っ!」

 俺はその殺気に絶切れず片足を地面に付けてしまう。この殺気は昼間と同じ……いや、それ以上だ。

 おそらく昼間の彼が本気を出したのだ。

「………っ」

 身体が拒絶する。逃げろ、見捨てろっと叫んでくる。

 ……だけど、俺は逃げようとは思わなかった。確かに恐怖はある。しかしその恐怖を北郷はさらに近くで味わっているはずなのに………それにも関わらず立ち向かっているのだ。

 ましてやなんのために、俺はこの竹刀を持ってきたのだ。

 答えは決まっている。戦うためだ。

「うぉぉぉぉ―っ!」

 叫んだ。俺は叫んだ。恐怖を消すために。戦うために―――。

 ……と、その時激しい光が俺を包み込んだ。

「………っ!?」

 白くなっていく視界。身体を動かそうとするも、手足はまるで石像になったようにピクリとも動かない。そこへ追い討ちをかけるように彼の声が何処からか聞こえてきた。

「……くそっ。奴以外にも鍵を開かせてしまったらしい」

 明らかに迷惑だと言わんばかりの声だが、俺にはもう、意識を保つ力はない。

「まぁ……いい。貴様もこの世界の真実をその目で見て見るが良い―」

 彼は意味ありげな言葉を残した。その言葉の意味が気になるが………俺は終わった。

 

 

続く……。


 
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