No.167363

真・恋姫無双 蒼穹の果てに 第一章 第二話

ぽややんさん

真・恋姫無双の二次創作小説です。

まだ月は出てきません。それどころか……。

2010-08-22 02:18:19 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:67956   閲覧ユーザー数:45854

<視点:一刀>

 

 

「やれやれ……。そろそろ限界だな」

 

本日の釣果を表す腰の重い魚籠に浮かれていた気持ちが、夕焼けに紅く染まる街へ近づくほどに沈んでゆく。

前方の視界一杯に広がるのは、この国で最も栄える街を丸ごと囲む巨大な城壁。

気分が萎えてゆく理由は、その内と外を繋ぐ城門の周辺にあった。

各地で相次ぐ乱に発生した流民達が、この国の首都『洛陽』へ安寧を求めて集い、今や膨大な数へと達していた。

その急激な人口増加は治安の悪化を呼び、街の何処かで諍いや犯罪が常に発生していた。

これ以上の悪化を防ぐ為、現在では行政が発行する身分証がなければ、洛陽へ入場する事が不可能となっている。

その為、流民達は元の土地へ帰る事も出来ず、せめてもと城門の周辺に住み着きだしたのである。

辛うじて雨露を防ぐ程度の粗末なあばら屋ばかりだが、その規模は既に一つの街と言って良いほどに達していた。

事実、こうして歩いていると宿や酒家などの呼び込みがかかり、流民達を目的とした商売がなりたっているほど。

 

「・・・っと、感傷に浸ってる場合じゃないか。

 おぉ~~い! 待ってくれぇ~~! もう1人いるってぇ~~!」

 

沈む気持ちに歩みも自然と重くなっていたが、閉じ始めた城門に慌てて駈け出した。

 

 

<視点:王允>

 

 

「話には聞いてましたが、素晴らしい釣りの腕前ですな。

 これほど立派な物を頂いておきながら大したおもてなしも出来ず、申し訳ない限りです」

「いえいえ……。突然、訪ねた私の方が悪いのですから、お気になさらず」

 

改めて、料理を挟んで対面に座る男を見る。一見して、器量は悪くないが、お世辞にも絶世というほどでもない。

しかし、相手との関係上で話す機会はそう多くないが、記憶に残る印象は常に温和な笑顔で好感が持てる。

今も笑みを絶やさず、世間話を交わす程度の決して親しい間柄でもないのに家へ突然訪ねられても憎めない。

過去の経歴が色々と噂されて一切の謎ながら、突然10年前に陛下が連れて帰って後宮入りした人物。

それ以来、陛下の寵愛を一身に受け、既に絶えた官では丞相、爵では王と列ぶ寵の称号『昭儀』を賜った人物。

政務は任せて関わっていないらしいが、古都『長安』と『漢中』をも賜り、事実上の漢中王とも言える人物。

この他にも後宮に新たな昭儀宮が造られたりと、陛下が寵愛の証として目の前の人物へ与えた物は数知れない。

これほどの寵愛を受ければ、どんな人物も性格が多少なりとも歪むものなのだが、彼は全く変わる事がなかった。

それどころか、陛下から何かを受け取る度に恐縮したり、困ったりする姿がよく見られた。

例えば、こんな話がある。御二人の仲を表す一対の宝剣が贅を尽くして作られたが、これが原因で喧嘩となった。

昭儀様曰く、こんな無駄な物を作るくらいなら国の為に使え。宮中に轟き響く雷鳴の様な大声だったそうだ。

実際、金品などはあまり喜んで受け取らず、その至高の身分の割に華美を嫌って質素な装飾しか身に着けない。

きっと陛下は栄達を求めて媚びへつらう者達ばかりの宮中でそれが何よりも嬉しいのだろう。

だからこそ、昭儀様を喜ばそうとあの手、この手を考える。例え、それが何皇后と北昭儀の確執を深めようとも。

次期皇帝たる皇位継承権一位の弁皇女殿下を持ち、宦官共の強い後ろ盾と軍部に大将軍の姉を持つ何皇后。

陛下の寵愛を最も受けながらも御子に恵まれず、その人柄故に慕う者はあれども強い後ろ盾を持たない北昭儀。

元々嫉妬心が非常に強い何皇后であり、残念ながら昭儀様との対立は決定的である。

今はまだ水面下で姿こそは現さないが、お体が最近優れず寝込む事が多くなった陛下の身に何かがあったら。

この手の争いは過去の例を見れば幾らでもある。故事にある呂太后と戚夫人の悲劇を繰り返してはならない。

そう考えれば、今晩の訪問には何か意味がきっとあるはず。

事実、単身で訪ねてくるなど危険極まりない。服装とて、平民と変わらないもので変装と言えるだろう。

 

「ささ、飲んでくだされ。この酒、少し癖はありますが、なかなかいけますぞ」

「おっとっと……。っと、ありがとうございます」

「……して、陛下のお加減はいかがですか?」

「ええ、まあ……。そうですね」

 

酒を注ぎながら訪問理由を探り入れてみるが、昭儀様は言葉を濁して押し黙り、杯を下ろして視線も伏した。

この様子、ただ事ではない。我々が思っている以上に陛下の容体は悪いのかも知れない。

つい先ほどまでは笑っていたが、きっと無理をなさっていたに違いない。かける言葉を探すが見つからない。

悔やまれる。何故、運命は昭儀様の前に何皇后と陛下の出会いがあったのかを。

悔やまれる。何故、陛下との仲を打算抜きで育んでいる昭儀様との間に御子が恵まれなかったのかを。

何とも悔やまれる。その2つがもしも逆であるならば、この国は今よりも栄えていたに違いない。

以前は政務に興味を全く持たず無気力だった陛下が、昭儀様との出会いで覇気を取り戻されただけに。

だからこそ、昭儀様を我々心ある者達で盛り立てていかねばならぬ。例え、この先に何があろうともだ。

 

「そう言えば、今夜は良く晴れてますね。さぞ、星が良く見える事でしょう」

 

無言のまま沈黙が気まづく漂っていたが、ふと昭儀様が視線を部屋の出入口へ向けて脈絡もない事を言い出した。

その際、昭儀様の視線が自分へと戻る前、部屋の隅に控えている使用人達へ向けられた事に気づく。

 

「ならば、いかがです?我が家の庭へ出てみますか?

 さすがに昭儀様の宮の庭にはかないませんが、うちのもなかなかのものですぞ?」

 

この言葉、この視線の意図。即ち、2人だけの密談を希望していると悟って席を立ち上がった。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

「せっかくの料理を済みません。冷ましてしまって」

 

月影が水面に映ってユラユラと揺らめく庭園にあつらえた池。

先を行く昭儀様の後を追い、その歩が池にかかる石橋の中央辺りまで進んで止まる。

お互いの間に一歩ほどの距離を空け、かけられた言葉にやはり昭儀様は密談を望んでいた事を悟る。

使用人達は目の付かぬ所に控えさせており、ここなら大声を出さない限りは他者へ聞こえる事もない。

 

「おおう、なんと勿体ない事を……。

 この王允、昭儀様の為ならどんな無理も厭いませんぞ」

「ありがとう。でも、酔ってしまう前に話がしたかった」

「……と言いますと?」

「まずはこれを見て下さい」

 

昭儀様は背を向けたまま語り、懐から取り出した封書を背後に立つ儂へ肩越しに差し出した。

その封書に書かれた『勅』の文字。陛下からの書と知って驚くが、驚くのはまだ早かった。

一礼して開いた封書の中にあった物は、鮮血によって綴られた文。つまり、陛下からの血命状である。

 

「こ、これは……。な、なんとっ!?」

 

驚愕に目が見開かれ、密談中なのも忘れて思わず叫んでしまいそうになる口を慌てて手で塞いだ。

 

 

<視点:王允>

 

 

「そ、そんな……。し、しかし、そんなっ!?」

 

昭儀様から明かされた天下100年の計画。

陛下の血命状にも驚いたが、その計画を聞けば聞くほど驚きに開いた口が塞がらなくなってゆく。

 

「最早、それしか方法はないのです」

「……ば、馬鹿な。ま、まだ手はあるはずです。

 そ、そうです。わ、我らの様な心ある同志を募って、宦官共を一掃すれば……。」

 

つい激情に声を荒げてしまい、昭儀様が振り返って口元に人差し指を立てる。

慌てて声を潜めるが動揺はまるで収まらず、昭儀様の計画を思い止まらせようと必死に考え募る。

 

「今までも、そうして失敗してきたのではないのですか? 党錮の禍をお忘れか?

 実際、此度の乱の功労者、皇甫嵩、盧植、朱儁の3人が既に牢へ繋がれたのを知らないとは言わせません」

「そ、それは……。」

 

しかし、一蹴されてしまい、今までの己達の不甲斐なさを自覚させられ、奥歯を悔しさに噛みしめて顔を伏した。

本来は皇帝の単なる雑役でしかない宦官。それが強大な権力を持ち始めたのは今に始まった事ではない。

過去の実例をあげるなら、最初の皇帝である秦の始皇帝に仕えた趙高がまず思い浮かぶ。

元々は罪人や奴隷がなる身分で地位も人ならざる身であったはずが、いつしかそれが出世の道となっていた。

宦官の中でも序列は存在するが、至尊の地位に近づいて信用を得られれば、力は自然と大きなものとなってゆく。

昭儀様が陛下を諫めて宦官達の力は一時的に弱まったが、今では残念ながら元に戻ってしまっている。

その理由は陛下が体調を崩して寝込む日々が多くなったからである。

次代の皇帝たる弁皇女殿下。その父である何皇后の元へ心ない利に聡い者達が集まり始めていた。

何皇后が力をつければ、後ろ盾の宦官達もまた力をつけて増長する。

正に最悪の悪循環。考えれば考えるほどに絶望的であり、昭儀様が見る未来の計画に頷くしかない状況。

 

「覆水盆は返らないんですよ」

 

昭儀様のきつい畳みかける一言に何も言い返せない。下げた視線を上げられない。

 

「ふっ……。」

「っ!?」

 

すると昭儀様が鼻で息を抜いて笑い、その場にそぐわない笑みに何事かと思わず顔を上げて驚く。

そこにあったのは、今まで見た事のない昭儀様の堂々とした姿。

月を見上げながらも遙か遠くの未来を見据える視線。

その見据える未来が愉快でたまらないと言った様にニヤリと歪む口元。

己の計画に絶対の自信を持ち、いかなる艱難辛苦にも立ち向かうであろう腕を組んで立つ姿。

昭儀様から吹き荒れる風を感じる。その風を受け、驚きと衝撃に震える足が自然と後ろへ下がる。

 

「だが、こぼれた水はまた汲めば良い」

 

その風が儂の迷いを払って決断させる。覇王だけが持つと言われる王者の風が。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

「まずは目障りな障害を潰します。二虎競食の計というのをご存じですか?」

「いえ……。ですが、何とも穏やかでない名前ですな」

「二頭の虎の飢えを煽り、飢えきったところを争わせるのです。

 当然、虎達は飢えを満たそうと傷つけ合います。

 上手くいけば、相打ち。一頭が残ったとしても、それは死に体。そうなれば、虎と言えども容易く葬れます」

「なるほど。

 しかし、一頭の虎は解ります。当然、宦官共の事でしょうが……。もう一頭は?」

 

昭儀様は月を見上げたまま語り、その言葉から意図を悟ろうとするがまるで見当が付かない。

自分自身で解っていたが、この手の謀略はどうにも苦手である。

だからこそ、今まで生きてこれたとも言える。国を憂う頭が回る者達は牢に繋がれるか、殺されている。

しかし、そんな事は最早言ってはいられない。

陛下の血命状と昭儀様の決意、この2つを用意されて立たずは何が漢の忠臣か。

今こそ、決断の時。いや、もう決断はした。決断した故に昭儀様の答えが気になる。

 

「……何大将軍です」

 

昭儀様が視線を此方に向けて一拍の間を取り、強い眼差しと共に溜めていた言葉を解き放つ。

 

「な、なんと! そ、それは難しいのではありませんか?

 言うまでもありませんが、何大将軍の弟は何皇后。……となれば、陣営も同じ。

 上手くいくとは思いません。それどころか、下手につついて、藪から蛇が出て来るとも限りませんぞ」

「皆がそう思う。それこそが盲点なのです。

 あの女は虚栄心が強い典型例です。小物で実力もないのに更なる権力を欲してるのも明らか。

 以前は感謝していた宦官達も、地位が高まるにつれて疎ましさを感じ、今ではそれを隠そうともしない」

「確かに言われてみれば……。声を大にしてこそは言わないが、悪態をついてるのを良く見かけますな」

 

その予想を遙かに超える答えに驚き、言葉に詰まりながら動揺を何とか抑えて反論するがあっさりと論破される。

だが、昭儀様の人徳だろうか、悔しさを感じない。

それどころか、悪戯が成功したかの様に笑う昭儀様が重ねる言葉に驚きが広がり、それと共に期待が浮かぶ。

昭儀様の趣味と言えば、釣りと読書の2つが有名である。

釣りに関しては、領民にも有名であり、洛陽近くの川で民達と共に釣りを楽しんでいる姿が良く見られると言う。

一方、読書に関しては、雨降りで釣りに出かけられなければ、読書をしているに違いないと言われるほど。

金品は好まないが、書物は喜んで受け取る為、陛下が昭儀様の為に大陸中の書物を集めたという逸話もある。

一時期、周囲が諫めるのも聞かず、寝食を忘れて古今東西の書を貪る様に読んでいた頃があったと言う。

特に戦記や兵法書を好み、真偽は定かではないが孫子、呉子、六韜の三大兵法書を暗唱できるほどとの噂も聞く。

その才に今まで触れる機会はなかったが、これほどの思いもよらぬ奇策を立てられるなら真の事なのだろう。

 

「そこで貴方の出番です」

「……私の、ですか?」

「代々、朝廷の重職を歴任する古くからの漢の忠臣。その家柄は正に国父とも言えます」

「漢の忠臣、そう呼んで下さるか。しかし、その忠臣が何も出来ずにいたのです。笑って下され」

 

耳が痛いとは正にこの事だ。昭儀様から評価を受ければ受けるほど恥じ入り、やるせなく首を左右に振った。

 

「いいえ、良く耐えたと言いましょう。軽挙な行動を取らなかったとも……。

 今までこういった謀略が何度もあったはず。あなたほどの方が誘われなかったはずありませんから」

「そうまで言って下さいますか。不忠者よ、臆病者よと幾度も罵らせたのが報われる思いです」

 

自分を知る者がいる。その事実に涙がこぼれ落ちた。無礼と知りながらも昭儀様から背けた顔を袖で隠す。

すると気をきかせてくれたのか、昭儀様が背を向けて語り出す。

 

「漢の忠臣と言えば、袁家も挙げられます。

 この袁家の端も端、過去の名声だけで没落して絶えた家があるのですが……。

 何大将軍がその家督を継ごうとした事が過去にあったんですよ。まあ、あっさりと却下されましたがね。

 その時、宦官達は笑って、こう囃し立てたものです。袁家の肉屋、獣を扱う商売だけに猿の肉でも売るのか」

 

聞いた事がある。儂自身、上手い事を言うものだと笑って呆れた憶えがある。

 

「つまり、血筋、家柄、名声といったもの。これこそ、成り上がりの何大将軍が欲してやまないものなのです」

「それで私の出番という事ですね。……して、その方法は?」

 

順序を列べて言われてみれば解るが、言われるまで解らなかった関連性。正に昭儀様がいう盲点。

それが解った途端、期待は確信へと変わって涙は止まり、儂のせがむ問いに振り向き、昭儀様は微笑んで答えた。

 

「もう間もなく、各地で起こっている乱も終わりを告げる事でしょう。

 その後、貴方は何大将軍とその部下達をこの都へ集めるのです。

 今や形骸化したとは言え、司徒である貴方ならそれくらいの力はあるはず。

 そして、貴方の名前で乱鎮圧の功労と称す宴を大々的に開き、何大将軍へ近づくのです。

 貴方と宦官の対立は公然の秘密で誰もが知る事ですが、きっと喜んで参加するに違いありません。

 何大将軍は貴方に認められた事と後援を喜び、宦官達はそれを良く思わない。

 当然、両者は自然と対立してゆく事でしょう。これぞ、正に刀を借りて人を殺す。二虎競食の計となります」

「おお、感服いたしました。この王允子師、昭儀様へ絶対の忠誠を……。」

 

その煌めく才に感嘆の溜息が漏れて膝は自然と折れ、敬意に両手を組んで頭を垂れるしか術をもたなかった。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

「そう言えば……。」

「はい?」

「噂に聞いたのですが、とても踊りの上手い美姫を囲っているとか?」

「……はっ?」

 

屋敷へ戻る道中、ふと昭儀様が歩を止め、そんな事を言い出した。

囲っていると言うからには愛妾の事だろう。しかし、残念ながら男として現役を退いて久しい儂に愛妾はいない。

踊りが上手いと言うのも解らない。誰か、その様な者がいただろうか。

家中の者達、使用人達、果ては遠方の親類縁者達の顔まで思い浮かべるが心当たりは見つからない。

だが、昭儀様が何かを欲するなど、とても珍しい事だ。なんとか叶えてあげたくなる。

陛下が病に伏せっている今、お若い昭儀様も何かと辛いのであろう。今は枯れたが、同じ男として解る。

時間は多少かかるやも知れないが、使用人を繁華街へ走らせて、洛陽一の踊り子を呼ぼうかと考え込む。

 

「またまた、とぼけて……。是非、紹介して下さいよ。その踊り子を」

 

その様子を勿体ぶっていると見たのか、昭儀様は好色そうにニヤニヤと笑いながら儂の横腹を肘で突いた。

 

 

<視点:一刀>

 

 

部屋の明かりが消され、月明かりだけが差し込む薄暗い室内。

焚かれた香の甘い香りが漂い、香から立ち上る煙がゆらゆらと揺れ、月明かりを遮って光のカーテンを作る。

耳には緩やかで優しい旋律が響き、何処か幻想的で淫靡とした雰囲気を広げてゆく。

外と内を繋ぐ敷居は薄布で遮られ、月明かりを浴びた踊り子の影が淡く舞い踊っていた。

 

「ほぅ……。」

 

その宮中でも見た事のない素晴らしい舞いに思わず感嘆の溜息を漏らす。

いつしか曲の前奏が終わり、いよいよ踊り子の登場かと惚けて持ったままだった杯を傾け、期待に乾く喉を潤す。

旋律が途切れると共に薄布が落とされ、顕わとなる舞い踊る踊り子の姿。

 

「っ!?」

 

ちょびな顎髭、お下げを結ったもみ上げ、月明かりにピカリと光る禿頭。

油が塗られているのか、テラテラと鈍く光る鍛え抜かれた筋肉美。時折、大胸筋が躍動してピクピクと跳ねる。

踊り子とは言え、蠱惑的すぎるその衣装。身に纏うものはピンク色のビキニパンツのみ。股間はもっこり。

 

「ぶーーーーーっ!!

 げほっ! げほっ! ……な、なんじゃ、こりゃゃーーーっ!」

 

下手に期待が大きかっただけに現れた謎の怪人に驚き、口に含んでいた酒を盛大に吹き出して激しく咳き込む。

 

「うっふ~ん♪ ご主人様ぁ~~♪」

「シ、シナを作るなっ! シ、シナをっ!

 お、おい、何なんだっ! こ、こいつは何なんだっ!」

「何だと申されましても……。ご所望の貂蝉ですが?」

「いやいや、違うから! 絶対に違うから!」

「ですが、昭儀様が告げられた名前、『貂蝉』と名乗る者は我が家にこの者しかおりませんが?」

 

挙げ句の果て、セクシーポーズでウインクを飛ばされ、謎の怪人から少しでも距離を取ろうと椅子ごと後ずさる。

やり場のない怒りを王允へ向けるが、王允は戸惑って心底不思議そうに首を傾げるだけ。

 

「全然、違う! これじゃあ、別の意味で挑戦だよ!

 良いですか! よく聞いて下さい! 貂蝉と言ったら、かの紂王を狂わした妲己とも列ぶ絶世の美貌を……。」

「まあ、嬉しいわん♪ 今夜は大サービスしちゃうわよん♪」

 

その様子が堪らなく苛つき、唾を飛ばして怒鳴るが、高評価と勘違いした貂蝉が喜びに飛び抱きついてくる。

十数メートルの距離があったにも関わらず、一蹴りで間合いを詰め、飛来するブチューッと突き出されたタコ唇。

 

「や、やめれぇぇ~~~っ!!」

 

あまりの恐怖に必死の後ずさりが勢い余って椅子ごと倒れ、後頭部を打った激痛に意識を手放した。

 

 

 

 

 

一刀と王允の会合、貂蝉との出会いから約一ヶ月後。

一つの悲報が大陸全土を駈け巡る。

後漢王朝第12代皇帝『劉宏』の崩御である。

それに伴い、『劉弁』が後漢王朝第13代皇帝の座に就き、いよいよ波乱の新時代が幕を開けた。

 

 

あとがきなよもやま~

 

 

作中の説明はありませんが、霊帝が女性だけに何皇后も男性です。

霊帝、何皇后の2人ともが30代前半で霊帝の方が年上設定。

霊帝は美人系の艶っぽいお姉さんな感じ。

また、王允が作中で無欲な一刀をやたら褒め称えていますが、これはただ単に一刀が小市民なだけです。

やたらと豪華な物を貰っても落ち着かないという理由なのです。

さて、第1話に続き、第2話も出てきた恋姫キャラは一刀と貂蝉の男だけ。

次こそは女性キャラも出るのでよろしくお願いします。

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

王允 子師 (真名:不明) 男

 

統率:2 武力:1 知力:6 政治:8 魅力:7

槍兵:C 弓兵:C 騎兵:C 兵器:C 水軍:C

野望:B 漢室忠誠:S 義理:A

特技:詭計(自分より知力の低い部隊に対して同士討ちが必ず成功)

装備:なし

 

たれ目な好々爺としたお爺ちゃん。

多分、もう出番はないと思う。

 

 

貂蝉 (真名:不明) 漢女

 

統率:1 武力:9 知力:8 政治:6 魅力:2

槍兵:C 弓兵:B 騎兵:B 兵器:C 水軍:B

野望:C 漢室忠誠:C 義理:A

特技:傾国・偽(女性のいない部隊に対して計略成功率2倍、計略成功時に対象へ-20の気力減少)

装備:ピンクのビキニパンツ(魅力---修正)呪いの品

 

元データーの貂蝉との修正があり、武力と魅力の数値が入れ替わっています。

特技も修正されてかなり強くなっていますが、女性だらけの恋姫においてはかなり無価値だったりします。

 

 

数値基準

 

S:歴史上レベル 9:時代上レベル 8:国家のレベル 7:地方のレベル 6:一都市レベル

5:村や町レベル 4:得意なレベル 3:普通なレベル 2:苦手なレベル 1:困ったレベル

 

兵科適正はSの最優秀、Aの優秀、Bの普通、Cの苦手の4段階。

野望などの性格はSの非常に高い、Aの高い、Bの普通、Cの低いの4段階。

装備の修正は数値が上がると言う意味ではなく、同値と比較して有利になると言う意味です。

 

尚、これらの数値はとあるSLGの数値を基本として修正を加えた私の独断と偏見です。

皆さんの希望にそわない場合があるかも知れないのを予めご了承下さい。

 

 


 
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