No.166127

それがあなたの望むことならば~雛から凰まで~十歩

TAPEtさん

常山の昇り竜さんキタ――

こっちくんな。いじめないデー

2010-08-16 20:26:32 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:2067   閲覧ユーザー数:1873

前書き―旅の前に

 

雛里「水鏡先生、今までありがとうございました」

 

水鏡「…私のせいで、あなたまでこんなことになっちゃって」

 

雛里「そんな風に言わないでください。…また会いに来ます」

 

水鏡「ええ……朱里たちには」

 

雛里「手紙残して来ました。何か、朱里ちゃんの顔見たら、決心が揺れそうだったから…」

 

一成「水鏡先生…」

 

水鏡「一成君…雛里のこと、よろしくお願いしますわ」

 

一成「は、…はいっ!」

 

雛里「…へへ♪」

 

・・・

 

・・

 

 

朱里「……」

 

奏「行かないの?」

 

朱里「行けないよ…私行ったら、きっとギクシャクするから」

 

奏「でも、親友だったんでしょ?お別れの時ぐらい」

 

朱里「お別れじゃないよ。きっとまた会えるよ。二人で一緒に、天の御使いに仕えるって、そう約束したから」

 

奏「ふぅーん…じゃあ、私もそうしちゃおうかな」

 

朱里「奏も?」

 

奏「ねぇ、孔明ちゃん、それより、明日から奏のところに来て一緒に寝ない?奏一人じゃ淋しいよー」

 

朱里「え?あぁ…うん…」

 

奏「やったー!」

 

朱里「はわわっ、静かに、ばれちゃうよぉ」

 

奏「キャハー」

 

 

 

 

「ふっふふーん」

 

「ごめんなさい、無理矢理行くと行って?」

 

荊州から河北に行くという商人たちの車に乗せてもらって進みながら、私は百合お姉さんにそういいました。

 

「今更そんなこと言うの?ふふっ、大丈夫よ。私も一成ちゃんが酷い顔しているのをずっと見ながら行くのもつらいだろうと思ったんだから…でも、朱里のことが心配ね」

 

「私が何ー?」

 

後ろで荒野を見ながら楽しむ鼻歌を歌っていた一成ちゃんが、自分の名前に反応してこっちを振り向きました。

 

「何でもないよ」

 

「一成ちゃん、そんなところに居て車が急に止まったりしたら落ちちゃうよ」

 

「うん」

 

私は注意させたら、一成ちゃんは直ぐ私の側に来て大人しく座りました。

 

「蘆植先生がいるところって、ここからどれぐらいなんですか?」

 

「この商団はこうして一ヶ月ぐらいにはにあそこまで届くそうよ」

 

「早いんですね」

 

もっと遠いだろうと思ったのに、河北って。

 

「そんなに大きい商人団でもないからね。居るのも、約二百人ぐらいだし」

 

「あ」

 

「軍が動くわけじゃないからね。速さで勝負する商人たちは動きが早いのよ。何よりうろうろしていたら賊たちの餌になりかねないからね」

 

大陸のあっちこっちを動かなければならない商人たちは、常に安全な道を選んで動こうとする。

 

でも、それだけだと商売にならない時もある。

 

だから、無理だと知っていても遠くまでちゃんとした武装もなく行くことも多い。

 

そしてそんな商人たちは、盗賊たちのいい餌になる。

 

どうか、盗賊たちがここに来ませんようにと祈るしかない。

 

「うん?」

 

「……ん…」

 

ふと何か横から寄せてきた気を感じたと思えば、一成ちゃんが私の肩に頭を寄せて眠っていた。

 

車の揺れ方がちょうど寝心地良かったから、仕方ないかな。

 

 

旅に出て一週間、私たちがいた商人団はある城で一度休憩兼ねて商売に出た。

 

「ここで二日ぐらい止まるそうよ。時間が惜しいけど、私たちだけでは危ないし、商売が終わるまで待つしかないわ」

 

ぐぅー

 

「あわ?」

 

「!わ、私じゃないよー!」

 

「あらあら、誰も聞いてないよ、一成ちゃん…」

 

「あわわ…」

 

ばればれだね。

 

「うぅぅ、でも、仕方ないもん。ここって、おいしい匂いたくさんするから」

 

「そういえばそうね…」

 

私たちが歩いていた場所は、ちょうど食堂街でした。

 

次から次へと美味しい匂いがする料理店が並べてありました。

 

「百合お姉さん、ちょっと早いですけど、お昼にしません?」

 

「そうね…でも、あまり高いところは行けないわよ。路銀にあまり余裕ないから」

 

「一成ちゃん、何食べたい?」

 

「えっとね…あそこ」

 

 

 

一成ちゃんが刺したお店に入ったら(何故そこなのかって聞いたら、一番安いお店に見えたようです)、席が満席で座るところがありませんでした。

 

「他のところに行こうかしら」

 

「そうですね……」

 

その時、

 

「…うん?おい、そこの人、もしや子瑜殿ではないのか?」

 

「「??」」

 

誰か百合お姉さんの字を呼ぶ声が聞こえました。

 

百合お姉さんを呼んだ人は四人用の席で一人で食べていました。

 

白い服を着ている、綺麗な女性でした。

 

「あらあら、趙雲さん」

 

「!」

 

百合お姉さんもその人が誰かわかったらしく、嬉しそうにその人の席まで行きました。

 

「お久しぶりです。趙雲さん」

 

「うむ。あの時には世話になった」

 

「いいえ、こちらこそ…」

 

「席がなくて困ってるようだな」

 

「ええ、ちょうど他のところに行こうと思っていたところです」なーに、ここはこの辺りでは有名なお店でな。予約をするか、店主と知り合いじゃなければ入れないところなんだ」

 

「あらあら、そうだったのですか…」

 

「こう会ったのも、何かの縁。よかったら合席しよう」

 

「あ、いいえ、そこまで気を遣ってくださらなくても……」

 

「なーに、遠慮することはない。私も一人で食べていて淋しいところだったからな」

 

「……でしたら…。ほら、二人とも、こっちに来て」

 

話をしていた百合お姉さんが私たち二人を呼んで、私たちはその席に行きました。

 

 

 

 

「そちらの二人は?」

 

「は、はいっ!鳳統でしゅ!」

 

「……北郷、一成です」

 

私は噛んじゃったし、一成ちゃんは何か固まってますし、色々とダメダメです。

 

「二人とも少し人見知りなので…」

 

「そうですか…しかし、その制服は確かに、水鏡『女』学院のものだな。私は知ってる限りは…」

 

趙雲さんという人が一成ちゃんを見ながらそういいました。

 

「少し事情がありまして、水鏡先生が預かっていた子です。今から蘆植先生のところに送ろうと行っているのです」

 

「随分と遠くまで行くな……最近は盗賊たちも多いというのに、文官になる子瑜殿だけが保護していても大丈夫なのか?」

 

「仕方ありませんよ。できるだけ、安全な地を踏んでいくしか」

 

・・・

 

・・

 

 

 

料理が出されて、一成ちゃんは料理にだけ集中して、私も口では料理を食べながらも、耳では趙雲さんと百合お姉さんの話をじっと聞いていました。

 

「道だけ同じだったら、私が包囲してくれても良いのだけどな。生憎、私は今南に行っている。究極のメンマがあると聞いてな」

 

「またメンマですか?変わらないんですね。趙雲さんは」

 

「無論だ。私にメンマを語らせれば、昼夜三日は話せるからな」

 

「遠慮しておきますわ。それより、今度はどこに行ってきたのですか?」

 

「最近までは洛陽にいたな。最近は都もひどい有様だ。税金が重くて、街にも人を見ることは難しい。このままではこの国は……」

 

どうやら趙雲さんという人は、あっちこっちを回りながら旅をしている武人のようです。

 

百合お姉さんとは、偶然どこかで見た間のようですし、百合お姉さんを見ても、顔ではちゃんと聞いているように見えても、実はそこまで親しい間ではないようです。

 

「あ、そういえば、荊州で奇妙な噂を聞いたのだがな」

 

「「!!」」

 

その話に、私と百合お姉さんは反応しました。

 

趙雲さんがどれだけ信用できるかはわかりませんが、一成ちゃんのことを今以上危険に晒すわけにはいけません。

 

「荊州に、天の御使いが現れたとか……そういう噂を聞いたのだが、子瑜殿は知らないか?」

 

「そうですね。私とってあまり私塾から出かけないので、そういう噂話には鈍いものでして…よく解りませんね」

 

「左様か…」

 

「(…ふぅ…)」

 

「…はむ…鳳統お姉ちゃん、食べないの?」

 

「うん?うん、た、食べるよ」

 

一成ちゃんは側で無邪気に料理を食べ続けていました。

 

 

 

 

一成side

 

常山の趙子竜。

 

こんなところで会えるとは思わなかった。

 

でも、本当ここにいる有名な三国志の英雄たちって、皆女の人だね。

 

強いのかな。この人。

 

何か、劉備とか女の人だったらすごくへにゃへにゃな人になりそうだし、

 

張飛は女の人ならどうなるか想像も付かないんだけど。

 

あ、でもあまり知らない人じりじり見ていると失礼だし、私天の御使いだということばれちゃったら鳳統お姉ちゃんと子瑜お姉さん色々と困りそうだから黙っておこう…

 

「…はむ…鳳統お姉ちゃん、食べないの?」

 

「うん?うん、た、食べるよ」

 

鳳統お姉ちゃん、緊張しているみたい。

 

 

 

 

夜になって、宿屋で三人で一緒に寝ていた。

 

二人室で、鳳統お姉ちゃんと私が一緒のベットで寝てたけど、

 

「……ん」

 

途中でトイレに行きたくなって、一人で部屋を出てきた。

 

暗いし、トイレがどこに居るのは良くわからなくて、あっちこっち歩き回っていたら、宿屋の外に出てきてしまった。

 

あ、でもこんなところって、以外と建物の外にあるんだよね、トイレって。

 

「おや?子瑜殿と一緒にいた子ではないか」

 

「うん?」

 

この声は、

 

でも、振り向いても誰もいません。

 

一体どこから…

 

「上だ。上」

 

「って、そんなところで何してるんです…!?」

 

ふと自分の声があまり大きかったことに気づいて自分の口を塞ぎました。

 

趙雲お姉さんは、二階の建物の屋根の上に居ました。

 

「そんなところで何をしているのですか?危ないですよ?」

 

「ふっ、大丈夫だ。こんな高さ。地面と一緒だ」

 

……

 

……

 

いや、いや、失礼なこと考えてないよ。

 

「何してるんですか?」

 

「…今夜は月が綺麗でな。子瑜殿を誘うと思ったが、お主らもいるし、慎むことにしたのだ」

 

「……」

 

「で、子供がこんな夜に何ししているのだ?」

 

あ、そうだった。

 

…え?

 

でも、良く考えて見たら、女の人にトイレどこって聞くのって、ちょっと恥ずかしい。

 

どうしようかな。

 

「わ、私も、ちょっとお月見に」

 

「ほほぅ、そうか。それはいい趣味だな…お主、酒は呑めるか?」

 

お酒?

 

それは呑んだことないっしょ、子供だし。

 

私が頭を横に振ったら趙雲さんは、

 

「そうか。まあ、よい」

 

そう言って趙雲さんは

 

「!!」

 

屋根から落ちた!?

 

タッ

 

 

落ちた!?かと思ったら、私のすぐ目の前に着地。

 

……おもらしするかと思ったよ…

 

「厠ならあそこだ。子供があまり大人ふりをしようとするのではないぞ」

 

「あ、ばれてた」

 

「ふっ、当たり前だ。そんなに厠に行きたいような仕草をしていたらな」

 

「あ」

 

良く見たら私、ずっと足踏んでいた。

 

「早く行け。我慢は体に良くないぞ」

 

「あ、うん」

 

私は趙雲さんが教えてくれた方向に走っていった。

 

 

・・・

 

・・

 

 

 

用事済ませて帰ってきてみたら、趙雲さんは最初にいた場所でまた酒を呑んでいた。

 

もしかして、ここでまたあそこまでジャンプして上るとk…まさかね…

 

でも、一人酒って、あまり体によくないって、前テレビで見た気がする。

 

といっても随分なったけどね。テレビとか見たのって。

 

 

 

とにかく、何かあの人のこと色々と聞きたい。

 

 

 

・・・

 

・・

 

 

 

二階まで上がってきたのはいいけど、どうやって屋根に上に行こうかな。

 

椅子とか重ねてもダメっぽいし。

 

もうちょっと大きかったら手が届くだろうけど。

 

「…うん?」

 

あんなところに使いなさいって言っているような梯子が……

 

 

・・・

 

・・

 

 

「よいっしょっと…」

 

梯子を使ってやっと上がって来れた。

 

趙雲お姉さんは、まだお酒を呑んでいた。

 

「趙雲お姉さん…だったよね」

 

「うん?…ああ、お主か」

 

月の光を浴びながら酒を呑んでいる趙雲お姉さんは、鳳統お姉ちゃんとは違う意味で綺麗だった。

 

なんというか、

 

大人の美しさだった。

 

「一献どうだ?」

 

「子供にお酒勧めてもいいんですか?」

 

「お酒に年は何の関係があるか。酒は百薬の長だとも言うだろ?」

 

何かおかしいけど、ここで呑まないと話進めそうにない。

 

くれるの、黙って呑んだほうがよさそう。

 

杯は小さかったし、量もあまりなさそうだから多分大丈夫。

 

 

 

ごくっ

 

「………(ポン)」

 

お腹の中が熱い…!

 

「どうだ、美味いか?」

 

「……苦い」

 

「そうか…まぁ、子供に酒の味を問う意味はないがな…」

 

「こんなの美味しいの?大人って」

 

「そうだな…良い肴があって、良い友があれば、いくらでも美味しく呑める」

 

「………一人で呑んだら、美味しくない?」

 

「うん?…ふふっ」

 

私の質問に趙雲さんは一度笑って、杯を月に向けて突いた。

 

「一人ではない。月とともに酒を呑んでいた」

 

「月と?」

 

「ああ、月ほど良い酒の友は、まだ会ったことがない」

 

「あ……」

 

この人、

 

何かかっこいい。

 

「かっこいい」

 

「うん?ふふっ、そうか?」

 

「うん、何か……こう…狼って感じ」

 

「狼?」

 

「うん、あるでしょ?ほら、月に向かって咆えるの」

 

「ふふっ、そうか…狼か……それも良いな」

 

 

あ、

 

ああ、何か全身あつくなってきた。

 

「…あうぅ…」

 

「うん?…大丈夫か?」

 

「らいじょヴ…じゃらいかも…」

 

「やれやれ、明日子瑜殿が怒りそうだな…」

 

あ、そうだ、言い忘れてた。

 

「ねぇ、子竜お姉さん」

 

「何だ?……??待て、お主、何故私の字を…」

 

「子竜お姉しゃんって、私たちと一緒にいかない?」

 

「お主らとか?…いや、残念だが私は今用事があって、南に行っているのでな」

 

「うぅぅ……でも、子瑜お姉しゃんと、鳳統お姉ちゃんと私だけじゃあ、危ないって言ったし……」

 

「それはそうだが…うぅぅ、いかんぞ、趙子竜。こんなところでくじけたら、またいつこんな好機が来るか知らん」

 

うぅぅ……メンマがなんだー!

 

「メンマなんかより、もっろ興味深いものあるけどなー」

 

「うん?」

 

「ねぇ、子竜お姉さん、荊州にいた天の御使いってね、実はね……

 

 

 


 
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