No.165199

真・恋姫†無双 麦酒庭三国

こひさん

夏祭り参加作品第二段。
こひらしくネタ古いのでご容赦ください。

2010-08-12 09:14:04 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:4147   閲覧ユーザー数:3697

「ちぇっ、俺もビール飲みたかったなあ」

 行きつけの酒屋で愚痴るのは一刀。一応、この都のシンボルであり、主でもある。

 

「どうしたんですかい、大将?」

 下級の兵士たちとも分け隔てなくつきあうその人柄ゆえ、一刀は今日も馴染みのこの店で兄弟とも呼び合う仲の兵士たちと飲んでいた。

 

「いやさ、今ごろみんながビアガーデンやってると思うとさ」

「びあがーでん?」

「ビールって麦の酒を外で飲むんだ。俺の故郷じゃ夏の定番だったけど俺、まだ行ったことなかったんだ」

 未成年だったし、とか、ビアガーデン自体最近減ってるしな。とは言わない一刀。

 

「麦の酒?」

「うん。大麦とか麦芽とかおぼえていること話したら、華琳が上手いこと作ってくれたんだ。きっとこの枝豆にも合うと思う」

 ぷちっと枝豆を鞘から出して口に入れる。この枝豆はビアガーデンで出す分から少しこっそり一刀が持ってきた物を店の親父に頼んで塩茹でしたもの。

 

「でも、この枝豆ですか? このお酒にだって合いますよ」

 蜀軍所属の兵士が一刀を慰める。

 

「それで大将、なんでそのびあがーでんに参加してないんだ?」

「それがさ、今回は萌将伝の反省会だからあんた邪魔だとか、男子禁制とかでしめ出された」

「それは残念だな、兄者」

「そうだな、弟者」

 袁家の装備である金色の鎧を着けたまま飲む兄弟が相槌を打つ。

 

「だから、今日は飲む! みんな以上に立派な二日酔いになってやる!」

「その決意はどうかと思いますが付き合いますよ、北郷さま」

「そうッス。飲み明かすッス」

「ありがとう兄弟。それじゃ、乾杯!」

 一刀たちは大きく杯をかかげた。

 

 

 

 

 

「乾杯!」

 大きな杯をかかげるのは三国の将たち。

 一刀が愚痴ったビアガーデンである。

 

「これがびーる……」

「味は悪くないんだけど、麦の粒が邪魔じゃない?」

「ふむ。濾した方がいいかしらね?」

 三国の王たちがその出来栄えに話を咲かせる。

 

「かなり栄養もあるって兄様も言ってましたよ」

「ほう。夏場の食欲が落ちた時にはいいかもしれんな」

 料理を終えた流琉も給仕を侍女たちにまかせ、ゆっくりとビールを楽しんでいた。

 

「ボクはびーるよりも、こっちの枝豆とそーせーじがいいな」

「うん。プチプチしておいし~♪」

 そのすぐ側の卓で、季衣と璃々が枝豆をつまむ。

「大豆の青いのがこんなに美味しいなんて知らなかったのだ!」

 鈴々も枝豆を気に入ったようだ。

 

「ふむ。メンマほどではないが、少女と同じく未熟な豆もまた味わい深い、か」

「いやそもそもメンマも竹の子、未熟な竹だろ~。……私だってもっと小さければ、影薄くなかったのかな~」

 星と乾杯したばかりの白蓮が愚痴る。

 

「何を言っておられる! 白蓮殿は萌将伝で出番が多かったではないか!!」

 そう言ってジョッキのような杯をぐいっと空けたのは愛紗だった。

「残念な一日? はて? 今回残念だったのはあなたではないでしょう!」

 ダンッとジョッキを置き、皿に盛られた枝豆をむんずと掴む。その塊をぎゅっと握る愛紗。鞘からはじけ飛ぶ豆、豆。もう片方の手でそれを残さず空中でキャッチすると口へ放りこんだ。

 

「すご……」

「あたしもやってみる! ……あれ?」

 同じように枝豆を掴む翠。だが、握った時に豆は飛ばず、手を開くと中の豆までもが握りつぶされていた。

「……お姉様……」

 はあ、と溜息をつく蒲公英。

 

「おおっ、宴会芸か? ならばわたしにまかせるがよい!」

 突然春蘭が名乗りを上げる。

「なんや春蘭にそんなことができんのか?」

「ふっ。一度は道化を目指したのだ。舐めてもらってはこまる」

「姉者……まさか夜中に練習していた腹踊りではあるまいな?」

 なぜか弓の手入れをしながら聞く秋蘭。

「ん? いやあれはお腹を冷やすからダメだ」

「そうか。……姉妹の縁を切らずに済んでなによりだ」

 秋蘭はほっとしたように弓をしまった。

 

 

 楽団が演奏している舞台に上る春蘭。乾杯の合図や、こんなことのために中央のスペースは開けられていた。

 そのスペースに卓を乗せる。その上には皿とそして切り分けられた西瓜。

「ちょ~っと待った~っ!」

 その準備を見て立ち上げる者がいた。

 

「文ちゃん?」

「それ、アニキがやったことのある西瓜の早食いだろ? それならあたいだってできるぜ!」

「ほう」

「なら、あたしも」

 潰れた豆をなんとかより分けていた翠も立ち上がる。

 

「ふむ。魏と蜀から出るのであれば、私もいくしか」

 腕をまくる雪蓮。

「……頼むから止めて下さい、姉様」

 大きな溜息の後、姉を止める蓮華。

「ちぇ~。じゃ、誰か参加しなさい」

「では、私が~♪」

「穏?」

 

 

「それじゃ、ちぃの合図で早食い開始。先に食べ終わったのが勝者よ。……あと、そこのおっぱい軍師!」

 司会役として地和が壇上の一番目立つ所に立ち、穏を指差した。

「はい。なんでしょう~?」

「おっぱいが邪魔で上手く食べられません~、とかのボケやったら地和語絶対に教えないからね!」

「ええ~、そんな~」

 

「やるつもりだったんかい!」

 横から西瓜の切り方を確認してた真桜が突っ込む。

「ううっ、棄権しますぅ」

 泣く泣く棄権する穏。

「そないに地和語知りたかったんか!?」

 

 

「あれ? 鈴々も季衣も参加しないの?」

 小蓮に聞かれて顔を見合わせる二人。

「だって」

「お兄ちゃんのやったの見たけど、あれは行儀が悪いのだ」

「ゆっくり味わって食べるのがいいよ~」

「えっと、それ本気で言ってるの?」

「にゃ?」

 季衣と鈴々は声を揃えて首を捻った。

 

 

「各自用意はいい? それでは……開始っ!」

 地和の掛声とともに西瓜にむしゃぶりつく春蘭、翠、猪々子。西瓜を両手で持ち、素早く頭が動いていく。瞬く間に西瓜を食べ尽くす三人。

「どうだっ! 北郷の時間は破れたかっ?」

「いや、その前に誰が勝ったんだ!」

「あたいだよな!」

 つめよる三人に地和は首を振る。

「う~ん。三人とも同じくらいだったから、もう一回」

 

 

 

「ちょっと、もう四回目よ」

 呆れる小蓮。

「あれぐらい余裕なのだ」

「あんたたちといっしょにしないでよ」

「にゃ? でも兄ちゃんも何度もあの芸やってたよ」

「あれは仕掛けがあるの。たぶん穏もその仕掛け使おうとしてたはずよ」

 朱里たちとともに飲んでいる穏をちらりと見る。

 

「そうなの? でも春蘭さまはきっとそんなこと知らないよ~」

「そうでしょうね……まったく、あんたんとこの武将はムチャクチャよね」

「翠や猪々子だって負けはしないのだ!」

 

 

「がんばれ姉様~。水分の取り過ぎでお漏らしなんて気にするな~!」

「!!」

 

 しばらくお待ち下さい。

 

 蒲公英の応援によって勝負中の翠が思わず西瓜吹雪を吹き出し、勝負はお開きとなった。

 

「春蘭、西瓜の早食い禁止」

「そんなっ! 華琳さま」

 華琳に誉めてもらえるはずの芸を禁止され、春蘭は涙する。

「こんなに口元を汚して……お仕置きが必要かしら」

「は、はいっ!」

 華琳に口元を拭いてもらい、一転して喜ぶ春蘭。

「……そうね。西瓜を使ってみるというのも……」

「す、西瓜は無理です華琳さまっ! せめて胡瓜ぐらいでないと入りませんっ!」

「あら? 入らないとはどんな意味かしら? ふふふ……」

 

「西瓜を使うか~。こう愛紗に西瓜持ってもらって、おや? どれが西瓜かわからへんな~とか言って胸触るとかええな~」

 側で飲んでいた霞がふと漏らしたのを華琳が聞きとめた。

「あら、愛紗に西瓜を食べてもらって、その胸の谷間に溜まった西瓜の汁を味わうのも悪くはなくてよ」

「おお、さすが華琳や。それええな~。愛紗頼むわ~!」

 

 酔っぱらい親父のような二人の会話も愛紗は動じない。

「ふん。胸芸なら紫苑たちに頼めばいいではないか。いべんと(使いどころ)のない私の胸など……」

 イベントと書いて使いどころと読みながら杯を重ねる愛紗。

 

「も~駄目だよ愛紗ちゃん。せっかくみんなで飲んでいるんだから。楽しく楽しく~♪」

「今宵は反省会も兼ねているはずです」

 慰める義姉にすら、恨みがましい視線を向ける愛紗。

「反省……。桃香様たちまで料理をなされたら私の出番がなくなるのも当然……」

「だいじょうぶ。愛紗の料理、悪くない」

 さらに落ち込みそうだった愛紗も恋によってやっと表情が和らいだ。

 

「うん。そうだな。恋と雛里だけだ。私の気持ちをわかってくれるのは。ささ、これも食べるがよい」

 自分の皿の料理を渡して目をうっとりとさせる愛紗に桃香は頬を膨らませる。

「も~、これじゃお姉ちゃんの立場ない~」

「そうだよね~」

「えっ?」

 視線を戻した先にいた二人の桃香に愛紗は驚いた。

 

 

「なんだ、天和か」

「えへへへ。どっちがどっちだ~♪」

「えへへへ。そっくりさんで言ったら大陸一だよね~」

 動きを合わせる桃香二人。

 

「蜀の劉備に数え役萬☆姉妹の天和、たしかによく似てるわ。キャラもかぶってるし」

 壇上から声がする。

「でも、三国じゃ二番目ね」

 テーブルやこぼれた西瓜を片付けられた壇上に立つのは小蓮。二番目と言いながら、人差し指と中指を立てる。

 

「え? 大陸一なのに三国で二番目っておかしくない?」

「じゃあ、三国一って誰なの?」

 二人の桃香が聞く。

 

 Vの字だった指を立てたまま閉じて、左右に振る小蓮。そして、ゆっくりと親指で自分を指した。

「シャオよ。……ふふん。それぐらい、シャオにもできるんだから♪ ぶんし~ん♪」

 その影から現れるもう一人の少女。

 

「はぅあっ! 小蓮さまが二人!?」

「ど、どういう事でしょうか?」

 給仕に紛れてメイド服だった明命と亞莎が驚く。

「落ち着け。よく見ろ、顔や色が違う」

 同じくメイド服の思春が指摘する。

「で、でも、おっぱいも同じくらいの大きさなのです」

 動揺したままの明命に溜息をつく思春。

 

「秋蘭、小蓮も双子だったのか?」

「姉者……もう一人の方に見覚えはないか?」

「むう……」

 目を細める春蘭。

「む! 見切った!」

 そう言うなり、辛いからと華琳が敬遠した『ちょりそー』を掴み、次々と壇上に投げつけた。

 

「!」

 一人の小蓮はそれをかわし、もう一人の小蓮が投げられたチョリソーを全て手で受け取る。

「ちょっと、なにするのよっ! ……って、シャオそんなに意地汚くないっ!」

 掴んだチョリソーをぱくぱくと食べるもう一人に文句を言う小蓮。

「にゃ?」

 

「やはり季衣だったか」

「沙和の自信作なの~。髪とかも上手く出来たの~♪」

 Vサインをする沙和。

 

「よく見ておくんですよ、亞莎ちゃん。勉強の時の身代わりにするかもしれませんからね~」

「は、はいっ!」

 穏の言葉に偽小蓮である季衣を注視する亞莎。

「その手があったわね♪」

 んふふふ~と思案顔の小蓮。

 

 

「……私も偽者でもいればいべんとがあったかもな」

「あら、偽者でなくても今までにない組み合わせの二人や三人で一刀を襲うというのはアリだと思うのだけれど」

「襲うというのはともかく、それならばご主人様とも……。ふむ、ならば!」

 華琳の言葉にバッと桃香の方を見る愛紗。

 

「わかった! 私が天和ちゃんといっしょにご主人様とするんだね♪」

「……」

「……お姉ちゃんひどいのだ。鈴々たちまだ三人でお兄ちゃんとしたことないのに……」

 義長姉の言葉に愛紗だけでなく鈴々まで落ち込む。

 

「かわいそうな愛紗……私が慰めてあげてもいいのだけれど……そうね。それこそ私と愛紗の組み合わせで一刀を襲いましょう。これなら皆が喜ぶでしょう♪」

「なっ!?」

「愛紗まで……なら鈴々は!」

 焦りながら辺りを見回す鈴々。今の話を聞いていたのか既に他の者たちも組み合わせを始めていた。

 一刀がいたならきっとこう言ったであろう。遠足の班分けみたいだ、と。

 

 

 

「ふむ。だいたい決まったようじゃの」

「ええ。明命が美以を袁術たちにとられて泣いております」

 ミケトラシャムとともに泣いている明命を見やる冥琳。

「で、策殿とか。ふむ……男にいいようにされる姿を策殿に見られたくないわけではなかったのかの」

「……そのように思っておられたのですか?」

 驚いたように祭を見る。

 

「どうした?」

「いえ、私も弾きたくなりました」

 壇上に向かう冥琳。

 

「……」

 爪弾く琴の音色に皆が聞き入る。

「たしかに上手いわね」

 目を閉じて音に集中する地和。

「宴会芸とは比べ物にならないわ」

 華琳までもがその音色に魅了された時、冥琳が動いた。

 

 ~♪ ~♪♪

 

「あれ? この曲?」

「知ってるの季衣?」

「ほら、前に兄ちゃんが西瓜の後に……」

 流れてきた曲に季衣たちが顔を見合わせる。

 

「姉さん」

「わかってるわ。準備しとく。……でも誰が動くかな?」

「天和姉さんは止めておくわ」

 地和と人和も舞台へと動いた。

 

「むむ。……ええい、乗ってやろうではないか!」

 壇上へと上がる祭。その祭に桃色の光が灯影される。地和の妖術である。

「ふっ、つまらんことにこりおって」

 苦笑しながらも祭は壇上に寝そべった。

 

 

 ~♪ ~♪♪

 

「ちょっとだけじゃぞ~」

 はらり、と肩を肌蹴る。

 

「お前らも好きじゃのう」

 身をくねらせながらさらに服を肌蹴ていく祭。

 

「止めなさいっ!」

 蓮華の乱入によって祭のストリップは中断された。まあ、中断されるまでが芸のうちなのだが、そのことを知らない蓮華は本気で怒っている。

「酔ってるの冥琳!? なにをやっているの!!」

 

 

「これを一刀が?」

「はい。止めるのが前提の芸のようです」

 ツツーっと鼻血を垂らしながら稟が答えた。

 

「そう。……ならば一刀にやらせて止めないってのもいいかもしれないわね」

 華琳の言葉に稟の鼻血が小川から間欠泉へと変化した。

「ぶ~~~~っ!」

 

 

「国を越えた仲間ってのはいいもんだな」

 翌々日以降、新たな連携に一刀は喜んだ。

 

 台詞だけ聞くと感動的ではあるが、それを言う時はほとんどがだらしない顔をしていたのは言うまでもない。

 

 ……あと翌日は二日酔いで苦しんでいた。

 

 

 

 

<あとがき>

 

 夏といえばビアガーデンです。……ノリ的には忘年会っぽくなってしまいました。

 ビールはかなり昔からあったお酒ですのであってもいいかな~と。

 

 そしてこひらしく古ネタ多めでした。

 

 


 
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