No.163874

真・恋姫†無双~真・漢ルート~ 第十六話:一刀、三国の御遣いになる

大鷲さん

名前がややこしいですが、隠しルートである『漢(かん)ルート』の再構成した『漢(おとこ)ルート』です。

ガチムチな展開は精々ネタ程度にしか出て来ないのでご安心ください。
ただし、漢女成分が多分に含まれるかもしれませんので心臓が弱い方はご注意ください。

2010-08-07 01:12:49 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:4651   閲覧ユーザー数:3715

先の赤壁で大勝した同盟軍は撤退する魏軍に対して追撃を行う。

だが、貂蝉たちの起こした竜巻によって天候は崩れ、追撃戦はそれほどの打撃を与える事ができなかった。

 

しかし、赤壁のことしか頭に無かった一刀とは違い、その後の事を見越して伏兵を潜ませていた朱里、冥琳のおかげで魏軍の数は徐々に減っていく

 

数もほぼ同等と言う所まで減り、同盟軍は兵を集結させてついに全軍を賭した最後の戦いが始まろうとしていた。

 

 

 

第十六話:一刀、三国の御遣いになる

 

 

 

 

陣内にある御遣い用の天幕。

その中には新たに南華老仙を含めた8名の人間が入っていた。

 

左慈たちとはすぐに合流したが、何故か一週間もの間音沙汰の無かった華佗たちが漸く合流できたのだ。

だが、合流した仲間達を見て一刀たちは驚愕する。

 

 

一刀「み、妙ぞ!こはいかなる事!?」

 

左慈「お前もどうした?」

 

 

一刀の様子がおかしいのは眼前に広がる光景に違和感があるためだ。

華雄も己の目がおかしくなったのかと何度もこする。

 

 

干吉「華佗殿……一体何が?」

 

華佗「俺にもわからない

   ただ、倒れていた三人に外傷はなく、疲労によるものだと思ったんだが……」

 

 

干吉も華佗も神妙な顔で『貂蝉たち』を見る。

 

貂蝉たちが服を着ている。

旅をしている間何度言っても聞かなかったあの二人が至ってシンプルな服を身に着けているのだ。

さらに、化粧も落とされ、結んであった髪も解かれている。

 

 

貂蝉「主よ、何か問題でもあるのですかな?」

 

卑弥呼「我らに落ち度があるというのならば言ってくだされ」

 

 

変わったのは外見だけではない。

口調はおろか性格までもが真人間になっていた。

 

南華老仙も普段はブーメランのみで生活し、無意味にポージングをしていたのに今ではどこにでもいそうなおっさんのような雰囲気を漂わせている。

 

 

一刀「いや、逆に問題なくなったというか……」

 

左慈「異常に見えるけどこれが普通なんだよな」

 

干吉「暑苦しかった師匠が……一生このままで居てくれませんかね……」

 

華佗「多分だが、氣を大量に消費した影響だろう

   二人からは三刻ほど異常があるかもしれないといわれていたが……」

 

華雄「すでに一週間経っているのだぞ?」

 

 

 

 

華佗たちの合流が遅れたのは、常人になった三人が服を手に入れるために途中の街に寄ったりした為である。

超人的な力は失われ、唯の一般人と化していたため時間が掛かったのだ。

 

 

華佗「あれほどの凰羅の放出、やはり無理をしての行動だったんだろう」

 

一刀「これから最終決戦なのにこの三人が戦えないとなると厳しいな」

 

左慈「天下三分の計の条件は整っているんだろ?

   後はお前が説得でも篭絡でもして何とかしろ」

 

一刀「無茶言うなよ!

   俺が華琳相手に口で勝てるわけ無いだろ!!」

 

 

ボロクソに言われて泣きを見るのが目に見えている。

そんな一刀の反応にため息をこぼしながら干吉がぼやく。

 

 

干吉「三国が協力せざるを得ない状況になってくれれば良いのですが……」

 

一刀「五胡が攻めてくるとか?」

 

干吉「そんな都合よく来てくれませんよ……いっそ私たちで焚きつけてきましょうか

   ……冗談ですよ、もう時間もありませんし」

 

 

天幕の入り口に視線をやる干吉。

少し遅れて伝令兵によって出陣の報告が入る。

 

 

一刀「こうなったら流れに乗るしかないかな」

 

左慈「最後まで流されるのが落ちだろ」

 

干吉「行き着くとこまで行ってしまえば楽ですから……」

 

華雄「こいつらはどうするんだ?」

 

 

そう言ってただのおっさんになった漢女と益荒男を指差す華雄。

少し悩んだ一刀であるが、今の貂蝉たちは普段のような常識はずれな力が無いので陣地に残ってもらう事にする。

 

 

 

 

前方より砂塵が起こる。

蜀と呉の連携はまだ甘い所があるので左右に別れ、一刀たちはその後方にいる。

何時の間に用意したのか十文字の牙門旗が掲げられている。

一刀たちの部隊は蜀、呉の混成部隊である。

蜀からは改心した悪漢、呉からは蓮華達を助けに行った際の部隊の生き残りが集まってくれていた。

 

皆一様に一刀のことを慕ってくれている。

 

緊迫雰囲気の中、敵軍より一人の将が前に歩み出る。

覇道を突き進む者、曹孟徳であった。

 

 

華琳「天の御遣い、北郷一刀よ!我が舌鋒を受け止める勇気はありや!」

 

 

遠くより響く華琳の声。

その対象となった一刀に視線が集まる。

 

 

左慈「ご指名だな」

 

一刀「逃げていいかな?」

 

干吉「ダメに決まってるでしょう……」

 

 

そんな勇気ありませんと声高らかに叫びたいが、一刀を信じて戦ってくれている者たちの前で無様な真似は許されない。

緊張で心臓が爆発しそうな中、一刀は前へと歩み出る。

一刀の後方に桃香、雪蓮も追従する。

二人は見守るだけで何も言うつもりは無いらしい。

 

 

華琳「ふっ、よくぞ出て来た、天の御遣いよ

   我が舌鋒、その身に刻むがいい」

 

一刀「お手柔らかに……」

 

 

わざとおどけてみせる一刀。

内心では余裕が無く、今にも背を向けて逃げ出したい。

それでも勇気を奮い立たせて華琳を正面に見据える。

 

 

華琳「天の御遣いよ!私はこの国を一つにする為にこれまで全力で戦って来た!

   それは国が一つになれば恒久の平和が訪れるからだ

   それもすべては庶人の夢、この国の明日に光を照らす為に他ならない!

   乱世を鎮静すると言われたお前が何故世を乱し、我が大儀の邪魔をする?」

 

一刀「確かに華琳の言う通りかもしれない

   俺は君によって統一されるはずだったこの国を3つに分けようとしているのかもしれない」

 

 

一刀の肯定に同盟軍に動揺が走る。

同盟のお飾りとは言っても同盟軍のトップであり、先の戦いでは天候を操り、同盟軍に勝利を齎した存在である。

 

そんな彼が魏、華琳の考えに賛同している。

同盟軍の兵士の動揺も仕方がないといえる。

 

 

 

 

一刀「だけど、この国の明日を憂えているのは華琳、いや曹操だけじゃない!

   劉備も!孫策も!この国に生きるすべての人が戦いをなくしたいと思っているはずだ!

   君の目指す国家の統一は戦火を呼び、力ない者達が虐げられるだけだ!」

 

華琳「ならば貴方達が私の元に降れば良いだけの事!」

 

一刀「それじゃ、今までと変わらない国家になるだけだ!

   この国が乱れたのは皇帝の威光が堕ちたからこそ……

   誰か一人を頂点とした国家では頂点に問題が起こればそれだけで平和は決壊してしまう!

   それは頂点が有能であればあるほどだ!」

 

華琳「それで私に劉備たちと対等で在れと?

   この曹孟徳に天下を見る者が居るからこそ私は覇道を征くのだ!

   ここまで来て、今更……」

 

 

一刀が自分を信頼してくれている人に答える為に立っているように、華琳もまた『曹孟徳』に太平の世を見る者たちの為に折れるわけにはいかない

 

二人の舌戦は続き、両者共に互いの主張を頑なに曲げない。

どれほどの時間互いの言葉をぶつけ合ったのだろうか。

 

二人の舌戦は伝令兵の報告によって止められる。

 

 

魏兵&蜀兵&呉兵「「「申し上げます!!」」」

 

魏兵「西方の国境が五胡の大軍により突破されました!!」

 

蜀兵「南西の国境より同じく五胡の軍勢が進軍しております!」

 

呉兵「南方も同様!五胡の軍勢は留まる気配は無く、北上を続けております!!」

 

 

伝令兵から五胡襲来の報告が入る。

三国の王は一様に驚く。

報告によると五胡の軍勢は凡そ三百万、これまでとは規模が違いすぎる。

まさに三国すべての領土を狙っての侵攻である。

 

この狙いすましたかのようなタイミングに華琳は一刀による行動ではないかと疑いの視線を向ける。

 

 

一刀「……言っておくけど、俺たちは何もしてないぞ」

 

華琳「何かやましい事でもあるのかしら?」

 

 

時間があったら干吉がやろうと考えてましたとは言えない。

 

 

桃香「曹操さん!もうこんな戦いをしてる場合じゃないですよ!

   今が皆で力を合わせてこの国を守らなくちゃいけないときだと思うんです……」

 

華琳「……」

 

 

桃香の言葉に沈黙を貫く華琳。

桃香は諦めたように悲しそうな顔をする。

 

 

 

 

しかし、すぐさま気を引き締める。

 

 

桃香「私は行きます!この国を守る為に!!」

 

一刀「俺達も行こう

   貂蝉たちが居ないのは厳しいかもしれないけど何もしないよりマシなはずだ」

 

華琳「……待ちなさい」

 

 

華琳たちの返事を待たずに背を向ける一刀と桃香。

桃香は自分の陣営に所属する将たちを3つに分けて各方面に行くように指示を出す。

将たちも返事をして各部隊に分かれる準備に向かう。

 

 

華琳「貴方たちの陣営だけで三百万もの敵を防げると思ってるの?」

 

桃香「それは……」

 

 

そんな蜀陣営を見て華琳は一刀と桃香に問いかける。

華琳の問いに言いよどむ桃香、圧倒的ともいえる人数差を考えれば無謀としか思えない。

それでも一刀は背を向けたまま華琳に向けて言葉を放つ。

 

 

一刀「行く先に強大な敵が待ち受けていようとも!

   その心に守るべきものあるならば、三百万の敵がいようとも戦おう!!

   その勝利のために我身を捨てる勇気を持つ者……」

 

 

華琳にとっては直接聞くのは初めてとも言える口上。

自信に満ち溢れた背中に一刀の覚悟を感じる。

 

 

一刀「…人それを『英雄』という

   勝てるかどうかは問題じゃない、今この時にも助けを待ってる人がいる

   『天の御遣い』らしく行くなら見捨てられるわけ無いだろ?」

 

華琳「そうね……春蘭!秋蘭!劉備軍と共に南西に向かいなさい!」

 

春蘭「我らは西方ではないのですか!?」

 

華琳「我が軍の主力を送る……私なりの誠意よ

   先の戦で我が軍は多大な被害を受けたが劉備軍よりも多いわ」

 

一刀「……力を合わせてくれると取っていいのかな?」

 

華琳「貴方の思い通りというのは癪だけどこれ以上の戦は不要

   だが、私と対等であるつもりならばもっと力を付けることね」

 

 

そう言って不適に笑う華琳。

雪蓮もやれやれという風に両手を上げる。

 

 

雪蓮「これで一刀発案の天下三分の計は成るとして……」

 

一刀「朱…諸葛亮の案なんだけど……」

 

雪蓮「細かい事はいいのよ!それより私たちだって戦うわよ?」

 

華琳「当然ね、では五胡に三国の力を思い知らせてあげようじゃない」

 

一刀「ああ、行こう!この国の明日の為に!!」

 

 

一刀の言葉に三国の兵は雄叫びを上げる。

 

 

 

 

結局の所、一刀は軍の運営等などできるはずも無いので号令だけを出して後は桃香たち三人に采配を委ねる。

指揮ができないので一兵卒として前線に出ようとするが、三国の王たちにより後方に配置される。

何か特別な力があるわけではないが、今の一刀は三国が力を合わせるきっかけを作った者であり、迂闊に負傷又は死亡してしまえば士気が下がって

 

しまうからである。

 

 

一刀「……左慈、干吉、華雄……無事かなぁ……」

 

 

後方に配置された一刀とは違い、武人として上位に位置する左慈と華雄は前線に行き、干吉もその智謀を買われて朱里たちと本陣で策をめぐらせて

 

いる。

一刀の周囲には護衛として先の蜀兵、呉兵に加えて魏兵、更には袁兵に元董卓兵が増えている。

魏兵は懐かしい事に警備隊の仕事を手伝っていた時の同僚であった。

再開した時に気軽に話しかけて恐縮されたのは心にクるものがあると知った一刀。

 

部隊員には気軽に話しかけてもらうように頼んでいる。

流石に言葉遣いは敬語のままだが少しは話安くはなったはずである。

 

 

魏兵「御遣い様、後方に配置されていますが何時敵が現れるか分かりませんので……」

 

一刀「分かってるつもりなんだけどね……まあ、心配するだけ無駄な気がするけどね」

 

蜀兵「確かに華雄様は御強いですから……」

 

呉兵「そう言えば貂蝉様方は?」

 

一刀「この間の竜巻起こした時に力を放出しすぎてただのおっさんになってる」

 

董兵「突然竜巻が起こったかと思ったら、あの方々ですか……」

 

袁兵弟「ただのおっさんって……兄者」

 

袁兵兄「皆まで言うな弟者」

 

 

特に仲の良くなった兵士達と談笑する一刀。

前線の方では挿入歌付きで自動演出が入っているのに完璧に空気化している。

気付けば好みの女性のタイプの話になるのも男ばかりでは仕方が無いことと言える。

 

 

 

 

無論、談笑を続ける一刀たち以外にも兵はいる。

そのうちの一人が敵の部隊の一部がこちらに向かってきているのに気付く。

兵は急いで一刀に報告する。

 

 

兵「大変です!我が部隊に向けて突撃してくる部隊があります!!」

 

一刀「な、なんだって!!本隊から援護は!?」

 

兵「残念ながら……」

 

 

こちらに向けて真っ直ぐに向かってくる敵部隊は騎兵ばかりでその進軍速度は霞の部隊にも匹敵するだろう。

一刀は覚悟を決めて応戦しようと思い立つ。

 

しかし、その考えは実行されることはなかった。

 

本陣のある方角から一刀たちの部隊と五胡の部隊の間に何かが飛来する。

着弾と同時に上がる轟音と土煙。

 

 

一刀「このパターンは……」

 

 

投石器も吃驚の飛距離を生身で遣って退ける存在。

 

 

??「華の香りに誘われて」

 

???「華蝶の定めに導かれ!」

 

???「響く叫びも高らかに!」

 

??&???「「艶美な蝶が…」」

???「精悍な蝶が…」

 

??&???&???「「「今、舞い降りる!!」」」

 

 

見慣れたくも無い二人に加えて、これ見よがしの逆三角形の巨漢。

 

 

二号「華蝶仮面、二号!」

武威三「同じく武威三ァ!」

華蝶漢「華蝶漢!」

 

三人「「「参上!!!」

 

 

新たに現れた華蝶漢(かちょうおとこ)は先日から常人化した姿しか見ていなかった左慈たちの師匠であった。

普段から穿いているらしい紺色のブーメランに黄色のマフラー、華蝶仮面の証である蝶の形をした仮面はハーフヘルメットと一体化している。

舞い降りたというには地形に優しくない登場であったが、彼らの放つ威圧感に五胡の足が完全に止まる。

 

そこから先は惨劇と言ってもよかった。

3体の怪物の前に五胡の兵は成す術も無く蹂躙される。

一刀たちはそっと黙祷をあげた。

 

 

 

 

脅威の戦闘能力を持つ三人に守られて無事に食料の補給を行う事のできた一刀たち。

誰か一人でも前線に行って槍一本投げ込むだけで戦局が変わりそうであったが、三国が協力していると言う状況に水を差すわけにもいかないため三

 

人にはあまり暴れないようにしてもらった。

 

無事に三国の力により追い払われた五胡。

切っ掛けは掴め、一番の難関である華琳が天下三分の計を受け入れてくれるようなので一刀は安心していた。

これで天の御遣いとしての仕事は終わったと……

 

 

左慈「やり遂げた……とでも言いたげだな」

 

一刀「左慈、干吉……」

 

干吉「まだ、貴方にはやるべきことがあるのですよ」

 

一刀「華琳、桃香、雪蓮……」

 

 

不適に笑う干吉の後ろには三国の王が待機していた。

 

 

桃香「一刀さん、大切なお話があります」

 

雪蓮「貴方の今後についての……ね」

 

華琳「もっとも、拒否権は無いけどね」

 

 

三人とも笑顔であるが、一刀はその笑顔に何か裏があるように感じた。

左慈たちの方に目をやるがアイコンタクトで諦めろと言っている。

 

一刀はため息をついてこれから我が身に起こる事を考えながら三人について行く。

 

左慈、干吉もその後を追う。

六人は本陣の会議に使用されていた天幕に入っていく。

 

数分後、その天幕からは一刀の驚きの声が響いた……

 

 

 

あとがき

 

皆様、こんばんは。

爽の粒つぶ苺&バニラが好きな大鷲です。

 

蜀ルートの最後の部分そのまんまな展開ですが、それだけでは寂しいので落ちをつけておきました。

ついにラ○ダーマン……ではなく華蝶漢現る。

流石にここで打ち止めのはず、萌将伝より一般兵の皆さん方を参戦させて見ました。

何故焔耶をプッシュする兵はいないんだ……

 

それは置いておいてついに次回で最終回。

こんな作品ですが最後まで書いていこうと思います。

 

 

 

次回予告

 

三国の王達からの依頼(強制)に驚く一刀

           依頼の内容は三国の中心に都を作り治める事

                        一刀の作る都は果たしてどうなるのか……

 

次回、『漢達よ永遠に』にご期待ください。


 
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