No.155637

對姫†無双「前編」恋姫総選挙応援作

こひさん

なかつきほづみさんの恋姫総選挙の応援作品です。
季衣を応援しています。

無印恋姫の真エンド(全員エンド)アフターで
拙作「対姫†無双」の前の話となっています。

続きを表示

2010-07-06 02:54:41 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:2613   閲覧ユーザー数:2391

 チャイムの音がフランチェスカ学園に昼休みを告げる。

 教師が教室から退出すると同時にそれは現れた。

「行くぞ北郷!」

「春蘭? って、ちょっとおい!?」

 

 そして一刀の手を引きずるとそのまま教室を出て行く。

「待てっ!」

 弁当を手に追う愛紗。手に持つ数は二つ。

 一つはもちろん自分の。そしてもう一つは一刀のために作ったもの。

「……不覚! 弁当を渡すことに気をとられすぎたか……」

 廊下に出ると、既に二人の姿は無かった。

 

「どうしたのだ愛紗?」

 巨大な弁当箱を手にやってきたのは鈴々。一刀たちといっしょに食べるつもりだったのだろう。

 

「ご主人様が春蘭に浚われた。皆に知らせてくれ」

「その必要はないのだ!」

「なにっ!? ……みんな、ご主人様を取り戻すぞ!」

 振り向いた愛紗は、仲間が集っていることを知る。

 やはり一刀と昼食を取りたかったのだろう。弁当やパン。……丼もいたが……を手にもっている。愛紗のように弁当を二つ持っている者もいた。

 

「春蘭? ということは華琳のところね?」

 大事そうに二つの弁当箱を抱えている蓮華。

 思春が自分が持つと主張するも「自分で渡したいの」と言われ引き下がった。

 

 コンビニの袋を手にしている霞が少し考えてから。

「つうと……最近お気に入りの花壇のあたりやろな」

 

「それでは行くぞ! ……さすがに紫苑は来ていないか」

 メンバーを再確認して教師である紫苑がいないのを納得しながら愛紗は廊下を駆け出す。

 

 

 

 

「遅かったわね。先に食べていようかと思ったわ」

 華琳たちは、どうやって持って来たのだろうと疑問に思うほどの数の重箱を広げていた。

「な、何を言う! ご主人様を浚っておいて」

 その重箱の中身の出来栄えの見事さに動揺したのか、愛紗は立ちすくんだ。

 

「うわ、美味そうなのだ! もしかしてこれ華琳がつくったのか?」

「ええ。鈴々もそんな弁当だけじゃ足りないでしょう。食べていいわよ」

「応なのだ!」

 目を輝かせた鈴々をしかし愛紗が止める。

 

「鈴々! ……と、ともかくご主人様は返してもらうぞ!」

「落ち着け愛紗。なんか華琳話があるらしいんだ」

 当の一刀からそう言われて、仕方なく愛紗は一刀の隣に座る。

 それを見て、蓮華も反対側の隣を確保した。

 

「か、一刀っ! 急に連れて来られて、お昼の用意してないでしょう? よかったらこれを……」

 赤面しつつ弁当箱を渡す蓮華。

「なっ! ご主人様の分はちゃんとここにある!」

 慌てて愛紗も弁当を取り出し、フタを開ける。その中身は炒飯。修行の末に愛紗が身に付けた数少ない得意料理である。

 

 

「……春蘭、ちゃんと説明はしたのでしょうね?」

 一刀の両隣に愛紗と蓮華が座り弁当を薦めるのを、不機嫌そうに眺めながら華琳は問う。

「説明?」

「お仕置きが必要なようね」

 

 

 

「季衣の様子が変?」

 食事が一段落したところで華琳は本題に入った。

「そういえばいつもなら鈴々や恋といっしょに真っ先に弁当空にしてそうなのに……」

 言われて一刀が季衣の不在に気づく。

 

「最近、元気がないのだ」

 華琳にお茶を渡しながらの秋蘭。

「風邪でもひいたのか?」

「あれが風邪をひくなどはないと思うが……なんだ、その目は?」

 その場にいたほとんどが「お前が言うな」との目で春蘭を見ている。

 

「食欲も無いようよ。最近、五人前しか食べていないし」

「そ、そうか……しか、なのか……」

 桂花の言葉に素直に納得できない一刀。鈴々と恋を見て溜息をついた。

 

「あ、これおいしい♪ そうね、授業中も眠そうにしていることが多いわね」

 デザートをつまみながらの小蓮の証言に一刀は疑問を持つ。

「……それって最近のことなの?」

 

「一刀、季衣はあれで真面目な娘よ。むこうでの桂花の授業も居眠りなどしなかったわ」

「へえ。そういえば学年違うから合同授業なんかもないし、授業態度なんてわからないもんな。……あれ?」

「どうしたの一刀?」

 首を傾げた一刀に蓮華が聞く。

「そういや俺、最近季衣に会ってない気がする」

 

 

「ふむ。それではみなさんの話をまとめてみましょう」

 朱里が小さな弁当箱のフタを閉じてそう言った。

 

 

 

<証言1> 鈴々

「きっとこないだの英語の抜き打ちテストで鈴々に負けたのが悔しかったのだ!」

 いまだに恋とともに華琳の用意した重箱をつついている鈴々。

 いったい華琳はどれだけの量を用意したのだろう。秋蘭や桂花が空になった重箱をかたし、新たな重箱のフタを開く。議題になっている季衣で慣れているのだろうか?

 

「ほう。それは聞いていなかったな。後で結果を見せるように」

 愛紗、蓮華以外からも弁当を受け取り、いまだ食事中の一刀に自分の炒飯を勧めるのを一旦停止して聞く。

「うっ、やぶ蛇なのだ……」

 

 

 

<証言2> 猪々子

「そういやこないだ、「あたいが斗詩のことがいないのが当たり前になってることなんてあるって思う?」って聞いてきたな」

「なんですのそれは?」

 斗詩が用意したのかティーカップで紅茶を楽しんでいる麗羽。

 

 

 

<証言3> 星

「エロイベントがないのを気にしてるのではないか?」

 メンマが七、米が三の弁当を食べ終え、デザートの瓶を開けながらの星。瓶の中身は言うまでもない。

「!」

 星の言葉に一刀は喉を詰めらせ、慌てて愛紗が自分の飲んでいた茶を差し出す。

「……ふ~っ、ありがと。……いきなりなに言うんだよ、星!」

「おや? 別に主とのエロイベントとは申しておりませぬに。身に憶えがおありか?」

「ご主人様!?」

 一刀からコップを兼ねた水筒のフタを返してもらい、赤くなっていた愛紗が今度は睨む。

 

「季衣は花開くどころか、まだ蕾にもなる前よ。そんなことを考えるどころか知りもしないでしょうね」

「えっ? だって華琳の……」

「ええ。私のものよ。でも今の季衣にそんな無粋なことはしないわ。季衣から求めてきたならともかく」

 華琳の台詞に、春蘭、秋蘭が頷き、桂花はうっとりとしていた。

 

 

 

<証言4> 華雄

「そうか? 昨日のことなんだが、北郷を見かけたら真っ赤になって逃げるように去っていったぞ」

「なんと! ……なんでここにいる?」

 華雄がいることにも驚く愛紗。

「いや、公孫賛が許緒を黄忠のところに連れて行くからと伝言を頼まれてな」

「あ、そういえば伯珪もいない」

 一刀の言葉に愛紗たちが辺りを見回す。

「おりません」

「気づかなかったのだ~」

「伯珪殿は影が薄いとはいえ……私も忘れておりました」

 

 はあ、と溜息の後に華琳が説明する。

「季衣の相談に乗ってほしいと頼んだのよ。私たちだと心配させまいとするかもしれないし、北郷軍や呉では弱みは見せないとするかもしれないもの」

「その点、伯珪なら影が薄い……い、いや、意地をはる必要はないか」

「麗羽よりはマシでしょう? しかし結局黄忠を頼るとは」

「伯珪なりに考えたんだと思うよ。紫苑は子供がいて頼りになるし、なんか季衣のことも気に入ってるみたいだし。っと、ありがと」

 今度は蓮華から茶を受け取る一刀。

「だって季衣ちゃんいい子なんですもの」

「紫苑? もう話は終わったの?」

 

 

 

<証言5> 紫苑

「最近、変な夢を見るそうですわ」

「夢?」

「はい。それが気になっていると」

 

「なんだ、そんな理由だったのか」

 ほっとする春蘭。

「待って下さい春蘭さん。夢は悩みや願望といった深層意識が出てくることもあります」

 朱里の言葉に華琳は考える。

「季衣に悩みが? どんな夢だか聞いたの?」

 

「それが……ご主人様に大人の女にしてもらう夢だそうです」

 

 

 

 

scene-相談中の季衣

 

「ご主人様に?」

「ねえ、オトナのオンナになるってどういうこと?」

「そ、それは……」

 同席していた公孫賛がその質問に慌てる。

「任せる、黄忠。……はぁ、俺一人で相談に乗らなくてよかった」

 

「季衣ちゃんはどういうのが大人の女性だと思っているの?」

「あのね、夢だと交尾のことだったよ! ……やっぱり違うの?」

「こ、交尾ぃ!?」

 季衣の言葉に真っ赤になって驚く公孫賛。

 

「あらあら。そんな獣のような……獣のよう……どんな風にご主人様に大人にしてもらったのかしら? 詳しく教えてもらえる?」

「お、おい、黄忠? ……なんか恐いぞ……」

 季衣にずいっと迫って聞く紫苑にびびる公孫賛。同席したことを絶賛後悔中である。

 

「ボクとね、……もう一人の子がね、いっしょに兄ちゃんと」

「まあ、二人同時に!?」

「はいはい、落ち着いてね……」

 

「夢なのにとっても痛くてボク泣いちゃった」

「そ、そんなに!?」

 今度は公孫賛が破瓜の痛みを聞いてくいつく。

「やっぱりまだだったのね」

 紫苑の目が光ったことを無視しながら公孫賛は深呼吸。

 

「で、その夢以来、北郷の顔をまともに見れないと」

「……うん。顔が熱くなって思わず逃げちゃうんだ。なんでなんだろ?」

「可愛いわ、季衣ちゃん!」

「むぎゅっ」

 季衣の告白に思わず抱締める紫苑。

 その胸に頭を沈められもがく季衣。

 

「お~い、黄忠?」

「あらあらごめんなさいね。あんまり季衣ちゃんが可愛いものだからつい」

 ようやく解放された季衣。

「やっぱり紫苑ちゃんのおっぱい大きい……」

「小さい胸もご主人様はお好きですわ」

「にゃっ!?」

 紫苑の台詞に即座に季衣の頬が染まる。

 

「ふふ。やっぱり季衣ちゃんもご主人様のことが好きなのね」

「うん、大好き! ……でもボク、華琳さまや春蘭さまたちのことも大好きなのにこんなに恥ずかしくなんてなったことないよぅ……」

「可愛いわ♪」

「はいはい、黄忠、話進めてくれな」

 再び抱締めようとした紫苑を公孫賛が牽制する。

 

「そうね、季衣ちゃんの恋の成就のためにもがんばりましょう♪」

 ぽんと手を叩いた紫苑に公孫賛は不安になるのだった。

 

 

「なんと、季衣が……」

「姉者、季衣とて年頃の娘だ。不思議はあるまい」

 紫苑の報告を聞き驚く春蘭に秋蘭がそう言った。

 

「けれど……交尾ねえ」

 じろりと一刀を見る華琳。

 

「あんたまさか寝ている季衣にイタズラしたんじゃないでしょうね!」

 ギロリと一刀を睨む桂花。

 その言葉に一気に周囲の気温が下がったと焦る一刀。

「そ、そんなわけないだろ! だいたい俺がそんなことしたら季衣に投げ飛ばされる」

 

「いくら季衣が寝ぼすけでもそこまでされりゃさすがに起きるだろうしな」

 飲み終えた牛乳の紙パックを握りつぶしながら翠がフォローする。

 

「というわけでご主人様、放課後開けておいてください」

 紫苑がそう一刀の耳に顔を寄せて言う。

「どういうつもりだ紫苑?」

 聞きとめた愛紗。

「ご主人様が季衣ちゃんにずっと避けられるわけにはいかないでしょう?」

「……そうだな、俺もそれは嫌だ」

「しかし……」

「だいじょうぶなのだ姉者。お兄ちゃんがいくら変態でも、あんなちびっこ相手にどうこうなんてないのだ」

 いまだ納得しかねる愛紗を鈴々が説得する。

 

「鈴々、あなたが言っても説得力がまるでないわ。シャオぐらいの大人の女じゃないと。まあ、一刀が変態ってのは納得するし、季衣なら一刀も平気だと思うけど。シャオだったら一刀我慢できないもんね♪」

「季衣は可愛いわよ。手を出すのをよく耐えてると我ながら感心するほどに。花咲かせるのを楽しみにしていたのにまさか一刀に先を越されるとは、この曹孟徳が不覚をとったわね」

 小蓮の言葉を否定する華琳。

「一刀」

「な、なにかな?」

 それまで変態を納得されてやや落ち込んでいた一刀。華琳に名を呼ばれて焦る。

「季衣のこと、お願いできる?」

「え、えっと?」

「なにもすぐに夢の通りにしろと言っているわけではないわ。季衣と話をしてほしいだけ。それから先は二人で判断しなさい」

「はは、そりゃそうだよな」

 

「いやいや、主のことだ。告白などされようものならすぐにでもものにする可能性が高いと思うが?」

「星っ!」

「ん? ならば賭けるか愛紗?」

「わ、私はご主人様を信じている! ……だが、ご主人様を賭けの対象などに……」

 どんどん小声になっていく愛紗。

「んじゃ、あたいはすぐに手を出す方に賭けるぜ!」

 賭け事と聞いて猪々子が割り込んでくる。

 

「あたしも賭けるならそっちかな」

「ウチもそっちやな」

「同じく。これじゃ賭けになりませんね~」

 翠、霞、穏までもが参加してきた。

 

「え? あっち大穴なの? でもこりゃ結果見えすぎてるもんなあ……」

 賭けなおすか悩み始める猪々子。

 

 

「……ただ」

 その騒ぎを気にもせず華琳は表情を曇らせる。

「ん? まだなにかあるのか?」

「季衣の落ち込みはそれだけではない気がするの……」

 

 

 

 

 

scene-生徒指導室

 

「ほら、ご主人様がいらしたわ」

「う、うん……」

「がんばってね、季衣ちゃん」

 季衣を励まし、そして入り口の一刀へと近づく紫苑。

 

「あとは若いお二人で……」

「見合いじゃないっての」

「ふふふ。ごゆっくりどうぞ♪」

 一刀の肩や首をやさしく撫でた後に紫苑は退室した。

 

「まったく紫苑ってば……」

「…………」

 真っ赤になって下を向いたまま座りつづける季衣に一刀はどうしたものかと困りはてる。

 

 

 

 

scene-隣の教室

 

「どう? 聞こえる?」

「はい。紫苑さんがうまく取り付けたようです」

「しかしご主人様の会話を盗み聞きなど……」

 机の上で開かれたノートパソコンから目を離さずに言う愛紗。

「季衣が嫌がるのに無理矢理されたら可哀想でしょう?」

 ノートパソコンを操作する朱里をなでる華琳。

 

「ご主人様が無理矢理など!」

「ならば問題はないでしょう」

「し、しかし万が一同意の場合は……」

「その時は盗聴なんて無粋な真似は中止すればよいだけのこと」

 華琳の言葉に反応する者がいた。

「え~っ、止めちゃうのぉ?」

「小蓮!」

「だって一刀がどんな風にするかお姉さまだって気になるでしょ?」

 悪戯っぽく微笑う小蓮。

 

 

 

 

scene-生徒指導室

 

「あの……」

「うん」

 黙って立ったままの二人、やっと口を開き始めた。

 季衣はいまだに赤面したままだったが。

 

「ボクね……華琳さまが大好き。春蘭さまも秋蘭さまも……」

「うん」

「……も……」

 どんどん小声になっていく季衣。声とは逆に顔はさらに赤さを増す。

 

 

 

 

scene-隣の教室

 

「ちょっと、聞こえないじゃない!」

「落ち着きなさい桂花。季衣の声が小さくなっただけよ」

 華琳の台詞で朱里はノートパソコンの音量を操作する。

 

「なんだ? 自分の名がなかったことを気にしてるのか?」

「安心しろ、季衣がお前のことを嫌うわけがあるまい」

 春蘭と秋蘭の姉妹が桂花を慰める。

「そ、そんなこ……」

 抗議しようとした桂花の口を星が塞いだ。

「今いいところなのだ。黙っていてくれ」

 そう星が囁くと、皆がノートパソコンから流れる声に注目する。

 

 

 

 

scene-生徒指導室

 

「……」

「落ち着け季衣」

 一刀がやさしく季衣の頭をなでる。

「深呼吸、できるな」

 こくりと頷いたのを確認して。

「はい吸って~~。はいて~~。吸って~~。はいて~~」

 一刀に合わせるように深呼吸する季衣。

「落ち着いた?」

「う、うん」

 再び季衣の頭をなでる一刀。

 

 ずっと俯いたままだった季衣が顔を上げる。まだ赤いながらもその表情には決意が感じられた。

「ボクは、兄ちゃんも好きです!」

 その声はいつもよりも大きく、力強かった。

 

 

 

 

scene-隣の教室

 

「ボクは、兄ちゃんも好きです!」

 ノートパソコンから大きな声が流れた。

 小さくなった季衣の声を拾うべくスピーカーの音量を最大にしていたら、盗聴先の季衣の方が大きな声で告白したため、大音量で教室中に響き渡った。

 

「は、はわわわ」

 慌てて音量を調節する朱里。

 

「ふふふ。季衣らしいわね」

 優しく微笑む華琳。

 

「やはり季衣も北郷のことを……」

「も?」

「い、いやわたしは違うぞ秋蘭!」

 慌てる姉を堪能する秋蘭。

 

「ふ~んだ。一刀に好きなんてシャオがいつも言ってるも~んだ」

 対抗意識が発生したのかそんなことを言う小蓮。

 

 

 

 

scene-生徒指導室

 

「うん。よくできました」

 季衣の頭をまたなでる一刀。

「兄ちゃん?」

「え?」

「ボク、告白したんだよ……」

「あ、微笑ましくて、つい……」

 

 

 

 

scene-隣の教室

 

「お兄ちゃん、ひどいのだ……」

「それはないわ……」

「季衣ちゃん可哀想……」

 一刀の評価は下降中だった。

 いつもなら嫉妬に狂ってもおかしくない愛紗ですら季衣に同情する。

「ご主人様……それはあんまりです」

 

「……」

「春蘭、もう少し待ちなさい。まだ終わったわけではないわ」

 無言で教室を出ようとした春蘭を華琳が止めた。

 

 

 

 

scene-生徒指導室

 

「ごめんな。季衣があんまり可愛いんでつい」

「それってボクを子供扱いしてるよね。……ヒドイよ兄ちゃん、逃げ出したいくらい恥ずかしいの我慢したのに! ボク本気だったのに!」

 目に涙を溜めて抗議する季衣。

 

「ホントにごめん。……駄目だな、俺。本気の相手ちゃんとできなくて好きな子泣かしちゃうなんて」

「な、泣いてなんてないもんっ! ……にゃ? 今なんて?」

 一瞬呆けた後に季衣が聞いた。

「好きな子って言ったんだ。俺も季衣のこと好きだよ」

「兄ちゃんが、ボクのことを……」

「好きだよ」

 

 

 

 

scene-隣の教室

 

 皆が大きく息をはいた。

 ほっとした一息か、それとも溜息かは別れたが。

「……さすがご主人様です」

「うまく誤魔化したのだ」

 愛紗、鈴々の義姉妹がついたのは溜息だった。

 

「よかった」

 徳用サイズのポテトチップスの袋を開ける恋。

 

「へぅ。いいなぁ季衣ちゃん」

「月ぇ~」

「だって詠ちゃん」

 ノートパソコンを見る月。

 

 

「も、もう一回!」

「好きだよ」

「もう一回!!」

 

 ずっと季衣と一刀のやりとりが続いていた。

 

 

「あらあら、季衣ちゃんったら」

「でも気持ちはわからないでもない」

「うん。シャオだって一刀に好きって言ってほしいもん」

「それでしたら……録音中のこのファイルを……」

 朱里がノートパソコンを操作する。

「こうですか?」

 

「好きだよ」

 

「!」

 編集され切り出された一刀の声が流れ、皆驚く。

「こんなこともできますよ」

 

「好きだよ好きだよ好きだよ好きだよ好きだよ好きだよ……」

 ループ再生されたその声にうっとりとする者多発。

 

「シャオこれ着信音にしたい!」

 

 

 

 

 

<あとがき>

 

 なかつきほづみさんの恋姫総選挙を知り、オフィシャルの着せ替え人気投票の予想通りの季衣の苦戦に季衣を応援すべく書いてみました。

 

 季衣の魅力が発揮されていませんが、こひは季衣を応援しています!

 

 一応前編ですが、後編は季衣の夢の正体が判明するだけで盛り上がらないと思う上に、いつになるかわかりません。ごめんなさい。

 

 あと告白された時の一刀がへたれで済みません。

 


 
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