「ううう、うええ~~ん」
「いい加減に泣きやまんかい!男だろうが」
エヴァとの戦いで腰を抜かしたネギは横島におぶってもらい女子寮の近くまで来ていた。
「だ、だって、怖かったんだもん…もう少しで…こ、殺され…」
そんな風にネギがぐずっていると。
「こら~~~~!!」
ツインテールの女の子が怒鳴りながら走って来た。
「あ、あの声はアスナさん」
「知り合いか?」
「はい。僕のクラスの生徒です」
「…僕のクラスの?」
そう聞き返そうとすると。
「何、ネギを苛めてんのよーー!!」
横島の顔面にアスナのドロップキックが炸裂した。
「ぐぼはあっ!!」
「うわあっ!よ、横島さん!!」
ネギはその場に倒れたが横島は二メートルほど吹き飛んだという。
(予断ではあるがその後、明日菜が中学生だと聞いた後脳内HDに焼きついた縞々を削除しようとして四苦八苦する横島が居たという。結局削除は出来なかったようだが…)
第四話「受け入れて歩くべきだと思うよ、自分らしくさby横島」
「本当にゴメンなさい!!」
「いや、分かってくれたならもういいよ」
ネギから詳細を聞いた明日菜は横島にひたすら謝っていた。
「とにかく坊主、迎えが来たんならもう此処でいいな。俺はもう行くぞ」
「は、はい。有り難うございます。それと僕の事はネギと呼んで下さい」
「そうか、なら俺の事も忠夫でいいぞネギ」
「うん、分かったよ横島さ…じゃなかったタダオ」
「私は神楽坂明日菜です。よろしく、横島さん…横島?……あ~~~~!!」
明日菜は横島を指さして大声を上げる。
「わっ!ど、どうしたの明日菜ちゃん?」
「よ、横島さんってもしかして木乃香のお見合いの相手の?」
「明日菜ちゃんは木乃香ちゃんを知ってるの?」
「は、はい。木乃香とは同じクラスでルームメイトです」
「じゃあ、俺が来た事伝えといてもらえる」
「分かりました、伝えておきます。さあネギ、帰るわよ」
「はい。じゃあ、ありがとねタダオ」
ネギは明日菜に手を引かれて帰っていく。
「…て、ちょっと待ていっ!!」
横島は二人を引きとめる。
「ど、どうしたんですか横島さん?」
「何故ネギが明日菜ちゃんと一緒に帰るんだ?」
「そ、それはアスナさんとこのかさんの部屋に住まわせてもらってるから…」
「何じゃとーーー!!」
「学園長に頼まれたんですよ」
「ルチしょ…学園長に?…まあ、子供なら問題ないか」
そう言って横島は振り返って歩き出す。
「じゃあな、おねしょはするなよ」
「しないよ!!」
「お休みなさい、横島さん」
横島は「おうっ!」と応えて手を振りながら歩いて行く。
部屋に帰った明日菜達は事の顛末を木乃香に話すと「何でウチを呼んでくれんかったん?」と一晩中愚痴られたそうな。
翌日、学園都市内にある宿に一泊した横島は詳しい事情を聞く為に学園長室に向かっていると何処からかネギ達の声が聞こえて来た。
「ひえ~~ん。おろして下さいよアスナさん、エヴァンジェリンさん達に会ったらど~~するんですか~~~っ?」
「学校で襲ってきたら退学にしちゃえばいいじゃない」
「そんな簡単な問題じゃないんですよ~~っ!」
ネギは明日菜に抱えられており、泣きながら抵抗している。
その周りには木乃香と数人の女生徒が居る。
「よっ!木乃香ちゃん、お久しぶり。ネギに明日菜ちゃんもおはよーさん」
木乃香は横島を見つけるととたんに笑顔になって駆け寄って来る。
「横島さ~~ん、お久しぶりや~~」
横島もそんな木乃香の頭を笑いながら撫でてやる。
「えへへ~~」
木乃香も頬を染めながらも満更ではなさそうに微笑む。
「で、ネギはどうしたんだ?」
「え~~ん、タダオ~~、助けて~~」
「ネギの奴、昨日襲われた事を怖がっていてずる休みしようとしたから無理やり連れて来たんですよ」
「それはいかんな、学校は行ける時には行かなきゃ駄目だぞ。それはそうと何でスーツ姿なんだ、ネギの通う小学校は制服は無いのか?」
「それはな~、ネギくんはウチらのクラスの先生なんや~」
「……はい?」
くいくいっ
横島が説明を受けて唖然としていると、鳴滝風香と史伽の姉妹が横島の服を引っ張る。
「ん、何だい?」
「ねえ、あなたはこのかさんのお見合いの相手だよね?」
「そ、そうだけど?」
「やっぱりそうだーー!!」
『ねえねえ、色々お話聞かせてーー!!』
鳴滝姉妹は横島に話をせがむが、
「ゴメンね、俺は此処にはGSの仕事で来てるんだよ。また今度ね」
嫌な予感がした横島はそそくさと逃げようとする。
「じゃあ木乃香ちゃん、俺は学園長に詳しい話を聞きに行くから」
「うん、じゃあまた後でな」
「タダオ~、見捨てないでよ~」
「詳しい話はよく分からんがとりあえずお前は学校へ行け」
「だそうよ。さあ、みんなも早く行かないと遅刻するわよ」
『ちぇ~、横島さーん。また後でねーー』
そうしてそれぞれの場所へと移動していった。
「みんな、おはよーーっ!」
「うわ~~~ん、ま、まだ心の準備が~~」
明日菜は今だ泣き続けるネギを連れてクラスに入る。
「あ、ネギ君、アスナー」
「おはよー、ん?ネギ君どうしたの」
「あは、ちょっとね。それよりまきちゃんはもう平気なの?」
「うん、すっかり元気だよ」
「何も覚えてないらしい」
そんな中ネギは席の最後尾を見てエヴァがまだ来てない事を確認した。
「あ、エヴァンジェリンさんはいないんだ。……ホッよかった」
「いいえ、マスターは学校に来ています。いわゆるサボタージュです」
いつの間にか後にいた茶々丸が答える。
「うわぁっ!!」
「…お呼びしますか先生?」
「い、いや、いいですいいです、遠慮します!!」
(あうう、吸血鬼のエヴァンジェリンさんにパートナーの茶々丸さん。まざか自分のクラスにこんなすごい二人組がいたなんて…)
「えへへ~~」
木乃香は朝から横島に会えた事でご機嫌だった。
「おや?どうしたでござるか木乃香殿。ずいぶんとご機嫌でござるな」
「あのね、前話していた横島さんが来たんだよ。ねえ、お姉ちゃん」
「うん、木乃香さん頭撫でてもらってた」
一瞬、ざわめきは消え去りその後すぐに大声が上がった。
『ええ~~~~~~~~~っ!!』
「ほ、本当アルカ?鳴滝姉妹!?」
「こ、この人が来たですか」
夕映は携帯の画像を見ながら聞いた。
「今どこの居られるでござるか?」
「吸血鬼の事件の事をじいちゃんに聞くゆうて学園長室に行ったで」
「それならば後で会えるでござるな」
「現役のGSがどれだけ強いか楽しみネ」
「でござるな。ニンニン」
そんな彼女たちの会話を聞きながらネギは思った。
(エヴァンジェリンさんには茶々丸さんというパートナーがいる。僕にもパートナーがいれば……)
その頃横島は学園長室で話をしていた。
「つまりあの娘は『登校地獄』という呪いで15年も学園に縛り付けられている吸血鬼で学園の警備員も兼ねているという訳か」
「まあ、そういう訳じゃの」
「なら、どうする訳にもいかんじゃないか。退治も出来なければ吸血をやめさせることも出来ん。俺は何をしに来たんだ?」
「すまぬな、ワシの知らぬ間に木乃香が横島君を呼ぶとは思わなかったんでな。とりあえずしばらくは此処にとどまって調査のふりでもしていてもらえぬかの。現役のGSが居ると分かればエヴァの奴も無茶な真似は出来ぬであろうし生徒達も安心できるじゃろうからの」
「仕方ないっスね」
「おお、引き受けてくれるか」
コンコン、
「学園長、失礼します」
そこに一人の教師が入って来た。
「高畑君、彼が以前から話をしておった横島忠夫君じゃ」
「よろしく、横島忠夫っス」
「ああよろしく、初めまして横島君。僕はタカミチ・T・高畑、気軽に高畑と呼んでくれていいよ。(この子があの魔神大戦の英雄、そして百合子さんの息子か)」
「学園の詳しい事は高畑君に聞いてくれ」
「了解っス」
「じゃあ行こうか横島君。学園の事は案内しながら説明するよ」
授業中、和泉亜子が教科書を読んでいる中ネギはボ-として考え事をしていた。
(は~~、新学期早々大問題が…。やっぱり、魔法使いにパートナーは必要なんだ。でも、パートナーなんてそう簡単に見つかる訳がないし……)
ネギはため息をつきながらクラスの中を見回す。
(この中に僕のパートナーがいたらなあ……ハア、そんなわけないか…)
「センセー、読み終わりました」
「は、はい。ご苦労様です、和泉さん」
「どうしたんですかセンセ、何か悩みでもあるんですか?」
「い、いえ、悩んでるという訳じゃ……」
だがネギはここであえて聞いてみる事にした。
「あ、あの…和泉さんは10歳の子供がパートナーなんてやっぱり嫌ですか?」
「え…ええ~~~!!パ、パ、パートナーってま、ま、ま、まさか人生の?…ウ、ウチ困ります。まだ中3になったばっかやし…」
和泉は突然ふられた話にあたふたしており、その隣ではのどかがあわわと赤くなっている。
「で、でも、あの、その、今はそんな特定の男子はいないっていうか…」
「はあ……宮崎さんはどうですか?」
「ひっ、ひゃいっ!?…あ、あの…その…わ、私は……へぅぅ~~」
のどかはのどかで、真っ赤になりながらやはりしどろもどろになる。
(おお、のどかチャーンス!)
(言うのです「わたしはOKです」と)
ハルナと夕映は心の中で応援をする。
「わわ…たわしは…じゃなくて私はオオ…オオ…オk」
「ハイ、ネギ先生!!」
「はい、いいんちょさん」
「私は超OKでs「ネギ先生、ここで耳より情報♪ウチのクラスは特にノー天気なのばっかだからね、「ネ、ネギセンセ、私と…わぷ「大体4/5位の奴は彼氏はいないと思うよ。まあ、私の調べだけどね」
「は、はあ…何の話を?」
「まーたとぼけて、恋人が欲しいなら20人以上のお姉さんからより取り見取りだね♪」
「へうっ!?い、いや、別にそう言う訳では……」
キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴り、授業の終わりを告げる。
「ハハハハ…すみません、授業と関係のない質問をしてしまって。忘れて下さい、何でもないので。では、今日はこの辺で」
そう言いながらもネギは暗く落ち込んだ表情で教室を出ていく。
「ちょっと、ネギ…」
「ねぇねぇ、ホントどうしたんだろ?」
「あんなに元気のないネギ君初めて見るよ」
「アスナさん、あなた何か御存じじゃなくて?」
ネギの後を追おうとした明日菜をあやかは呼びとめる。
「いや~、あ、あの、何かさ、パートナーっていうのを見つけられなくて困ってるみたいなのよ。見つけられないと何かヤバい事になるみたいで…じゃ、じゃあね」
そう言い、明日菜は立ち去っていく。
「パートナー?どういう意味なんだろ?」
「もしかしてネギ君、何処かの国の王子様だったりして…」
ザワッ
「そうか、先生というのは実は隠れ蓑で本当は結婚の相手を見つけに来たとか?」
『あり得る!!』
「そっかー、ネギ君王子様だったんだー。じゃあ私パートナーに立候補しようかな」
「ええっ!?」
「のどか、これはチャンスです。この機会にネギ先生に告白するです!!」
「ゆ、夕映~~」
「そうはまいりません!!ネギ先生のパートナーは私以外に考えられません!!」
「とはいってもネギ君の気持ちもあるしね」
「それなら私自信あるけどなー」
「な、なんですってーー!!」
「私がパートナーになってなぐさめてあげよっかな~~♪」
間違った情報でクラス中がわきかえっている頃、エヴァンジェリンは一人屋上で日向ぼっこをしていた。
「ふわ~~あ、(昼は眠い)」
その時、
パシンッ
何かが結界を越えて来た。
「む、何かが学園都市の結界を越え入りこんで来た。…仕方ない、調べるか。まったく、厄介な呪いだ」
ネギはその頃中庭でたそがれていた。
(はあ、僕は一体どうしたらいいんだろ?一人じゃエヴァンジェリンさんと茶々丸さんには勝てそうにないし、パートナーといっても誰になってもらえばいいのか)
「兄貴、兄貴」
(タダオ、結構強そうだったしパートナーになってくれないかな?)
「兄貴、兄貴ってば」
(ん、誰か呼んでるのかな?)
「兄貴ーー!聞こえないんすか!?」
「あ、あれ?ひょっとしてカモ君?」
「ふう、やっと気付いてくれやしたか。ネギの兄貴、アルベール・カモミール、兄貴に恩を返しに来たぜ」
ネギがカモと呼んだそれは一匹のオコジョだった。
「ネギーー!まったく、アイツったら何処に行ったのよ?」
明日菜がネギを捜しているとそこにエヴァと茶々丸の二人に出くわした。
「ほう、神楽坂明日菜か」
「どうも」ペコリ
「…あんたたち、ネギをどこへやったのよ?」
「ん?知らんぞ」
「え?」
「安心しろ神楽坂明日菜、少なくとも次の満月まで私達が坊やを襲う事は無い」
「…どういう事よ?」
「今の私では満月を過ぎると魔力がガタ落ちになってただの人間と変わらなくなる。ホラ」
指で口の中を覗かせると牙は無く普通の歯と変わりはなかった。
「今、坊やを攫っても血を吸う事は出来ないという訳さ。坊やに伝えておけ、パートナーを得るなら今のうちだとな。まあ、茶々丸に匹敵するパートナーがそうそうおるとは思えんが」
「な、何ですって~~」
「それよりお前、やけにあの坊やに肩入れするじゃないか。一緒の布団に寝て情でも移ったか?」
「か、関係ないでしょ。とにかくネギに手を出したらタダじゃおかないからね」
「フッまあいいさ。仕事があるから私達はここで失礼するよ」
「仕事?」
「お前には関係のない大人の仕事さ」
エヴァは手を振りながら去って行く。
「何さ、自分だっておこちゃまのくせに」
ブツブツ言いながらその場を離れようとすると何やら話声が聞こえて来た。
「こうなったら適当に強そうな奴を連れて来て仮契約を交わしちまいましょうよ」
「そ、そんなのダメだよ!無理やりなんて」
「ネギ?聞きなれない声だけど誰と話してるんだろ?」
「この女なんかいいんじゃないスか。何かこう、俺っちのセンサーにビビッと来るモンが有るんスよ」
カモはクラス名簿に載っているのどかの写真を指さして言う。
「のどかさんに?」
そうネギが首をかしげているとカモはオコジョ魔法を使い、地面に仮契約用の魔法陣を作る。
「ささっ!早くそののどかって嬢ちゃんを連れて来てこの魔法陣の上で一発ブチュ~~っと」
「ブチュ~~と何よ?」
「あれ?アスナさん」
「何なのこのヘンな生き物は、魔法に関係あるの?」
怪訝そうに自分を指さす明日菜を見てカモは、
「何だ、兄貴も隅に置けないっスね。もうパートナー候補を見つけてたんスか。じゃあ、さっそくブチュっと!!」
「だから何がブチュっとなのよ。さあネギ、帰るわよ」
「は、はい。あの~カモ君も連れて行っていいですか?」
「そうね、ネギの知り合いみたいだしまあ、いいか。そのかわり騒ぎにならない様にしっかり面倒見なさいよ」
「はいっ!よかったねカモ君」
「へいっ、恩にきやす姉さん」
そして、三人は寮へと帰って行く。“忘れ物”をしたまま…
「それにしても広い学園っスね~」
「ははは、学園「都市」の名は伊達じゃないよ」
横島は高畑に案内をしてもらいながら学園をまわっていた。其処に…
「おや、高畑先生ではござらぬか」
「あ、ホントネ」
「お久しぶりです高畑先生」
と、現れたのはバカレンジャーの三人。
バカリーダー(ブラック)
綾瀬夕映、
バカイエロー
古菲
バカブルー
長瀬楓
「やあ、久しぶり。皆元気そうだね」
「高畑さん、この子達は?」
「僕は彼女達の元担任なんだよ。そして今はネギ君が彼女達の担任なんだ」
「10歳の子供が中学の教師だわ、俺は255円の時給でこき使われたりするわ。……一体、この国の労働基準法はどうなってるんスかね」
「ははは……」
うなだれる横島の肩を高畑は優しくたたく。
「拙者は長瀬楓と申すでござるよ」
「私は古菲ネ」
「私は綾瀬夕映というです」
「ところで高畑先生、其処におられる御仁はもしかして」
「ああ、紹介しよう。吸血鬼の調査に来てもらった…」
「貴方が横島さんアルネ」
「なかなか強そうだ、腕が鳴るでござるよ」
「な、何で俺の名前を知ってるの?」
「貴方が木乃香さんとお見合いをしたのはクラス中が知ってる事ですよ」
「……何ですとーーー!!」
ピピピピピピピピピピッ
突然、高畑の携帯がなり、電話に出ると彼は何やら慌てだす。
「分かった、僕も調べてみよう。すまない横島君、急用が出来た。今日はこの辺でいいかな?」
「はい、かまわないっスよ」
「ありがとう、君達も遅くならないうちに帰るんだよ」
「分かったです」
「了解ネ」
「承知してるでござるよ」
そして、高畑が立ち去ったのを確かめると楓と古菲は横島に対し構えをとる。
「な、何でそんな楽しそうな眼で俺を見るのかな?」
「強そうな相手と闘うのは楽しいネ」
「そんな訳で一つ相手をしてほしいでござるよ」
「その後は色々GSの事とか教えてほしいです」
そんな彼女達の勢いに押されながら横島は後ずさって行く。
(ヤ、ヤバイ…夕映ちゃんはともかく、この楓ちゃんと古菲ちゃんはヤツと同じバトルジャンキーじゃ。一度でも闘えば絶え間なく相手をさせられるに違いない…何とか逃げなければ)
一歩二歩と下がっても、三歩四歩と迫って来る。
「逃がさないアルネ」
そこですかさず横島は禁断の裏技を使った。
「あーーーっ!!あんな所に」
「そんな使い古された手は通用しないでござるよ」
『やっぱり来てくれたんだね、兄さん!!』
「何と!?」
「マジアルカ!?」
二人は指をさした方に顔を向けるが当然そこには誰もいない。
「しまった!!」
「引っかかったアルネ!!」
すぐに横島に向き直すが当然横島は逃げ出した後だ。
『・・・・・・・・・』
そんな二人を夕映は残念そうな目で見つめていた。
「な、何でござるかリーダー、その目は…」
「や、やめるアル。そんな目で見ないでほしいネ!!」
「ふう、何とか逃げられたか」
横島は中庭にたどり着くとようやく一息ついた。
「それと、いい加減出てきて話でもしないか?」
「なっ!?」
横島は後ろを振り向き話しかける。すると木の陰から刹那が出てくる。
「…気配は完全に断っていたと思ったのですが」
「まあ、仕事柄気配には敏感だからね。それに木乃香ちゃんとのお見合いの時も隠れていたろ」
「!!あの時も気付かれてたんですか」
「まあね、おそらく木乃香ちゃんの護衛だろうと気付かないふりをしてたけどね」
「そうですか……さすがは現役のGSですね」
刹那は不謹慎と思いつつも気になっていた事を聞いた。
「横島さんはお嬢様との、そ、その…交際の事をどう思ってるんですか?」
横島は何時も通りに「ロリじゃないんやー」とふざけようとしたが刹那の目が真剣なのに気付いて真面目に答える事にした。
「そうだね、木乃香ちゃんはいい子だよ。俺なんかにはもったいないくらいにね。でも俺にその資格が有るのかは分からない」
そう、俯いて答えた。
「そ、そんな事は…お穣さまは貴方との事を嬉しそうに話していました。資格は…有ると思います」
「だったら刹那ちゃんにも友達の資格は有ると思うよ」
「な、何で私の名前を?それにお嬢様との友達の資格って」
「ごめんね、刹那ちゃんの事はさっき学園長から聞いてたんだ。木乃香ちゃんと距離を置いている事も、その理由もね」
「そうですか…だったら分かるでしょう、私は」
「木乃香ちゃんは刹那ちゃんと仲良くしたがってるんだろ、そして刹那ちゃんも。なら素直になればいいだけじゃないか」
「でもっ」
「あ~もう!でもはなしや!」
そう言って横島は刹那の頭を撫でる。
「……え…?」
刹那は不思議そうに見上げると横島は優しく微笑んでいた。
「あん時もそう言うたやろ」
「…よ、横島さん…覚えて」
「覚えてたと言うより思いだしたってとこかな。学園長の話を聞いていたらふとね」
横島は学園長とエヴァの話をする前に刹那の事を頼まれ、そしてその話から子供の時に木乃香と刹那に出会っていたのを思い出したのだった。
「人外の力を持ってる事だったら気にする事は無いよ」
「なっ!?」
刹那は自分が一番気にしている力の事を軽く言われ、カッときた。
「だったら分かるでしょう、こんな力を持った…こんなバケモノの私がどうやってお嬢様と仲良くできるんですか!?」
「そんな事を言われたら俺だってそうだよ。何しろ俺には今じゃ人間の部分は三分の一ぐらいしか残ってないんだから」
「……え…?…どういう事ですか?」
驚きを隠せない刹那に横島は話していく。
「前の闘いの時に俺は死にかけてね、今は霊気構造の殆んどが人外の物で補われてるんだ。色々あって生きている事に絶望しかかった事もあるけどある女(ひと)との約束もあって俺は俺として、俺らしく生きるって決めたんだ。君がどんな風に生きてきたかは大体想像出来る、だけど君が君を否定してはいけないよ。だってそれは君を友達だと思ってくれてる木乃香ちゃんの気持ちをも否定する事だから」
刹那はハッとして木乃香の事を想い浮かべる。幼いころ一緒に遊んだ事を、中学に入り再会した時からずっと話しかけてくれる事、そしてそっけない態度を取るとさびしそうな顔をする事を。
「…いいんでしょうか、お穣さまの傍にいて。お穣さまと…このちゃんと仲良くしても…」
「妖怪とのハーフとなんて仲良くしとうない、なんて木乃香ちゃんが言うと思う?」
「……くす、思いません」
「だろ、だったら後は刹那ちゃん次第さ。受け入れて歩くべきだと思うよ、自分らしくさ」
「はい、時間はかかると思いますが歩いて行こうと思います。自分らしく」
笑顔でそう言うと横島は笑いながら刹那の頭をポンポンと叩く。
「よし、頑張れ。じゃあ俺は今日の所は宿に帰るよ、しばらくは此処にいる事になりそうだからよろしくね」
そう言い背を向けて歩いて行く。
一歩
二歩
三歩
「あ、あの…横島さん」
刹那が呼び止め近づいて行く。
一歩
二歩
三歩
「もう少しお話をしたい…あっ」
「あぶない、刹那ちゃん。おっと」
足を滑らせ、倒れそうになった刹那を横島は支えようとするがよろけてしまい、一緒に「忘れ物」の中に倒れていく。
「いけね、いけね。魔法陣を消しとくのをすっかり忘れてたぜ」
カモは消し忘れていた魔法陣を消す為に一人戻って来ていた。
すると、その魔法陣の中に倒れ込み唇が重なる寸前の刹那と横島を見つけた。
「こ、これは!!…誰だか知らねえが5万オコジョ$ゲットのチャーンス♪」
そして二人の唇が重なった瞬間、
「仮契約(パクティオー!!)」
カモが魔法陣を発動させると眩い光が二人を包む。
だが、横島と刹那はあまりの出来事に呆然となりその光には気付かなかった。
そしてようやく今の状況に気がつく。
『ぷはっ!!』
ツウ~~~、プツンッ
「あ、あ、あああ……よ、よこひまひゃん?」
刹那の顔は言うまでも無く真っ赤である。
「せ、せつなひゃん?」
横島が自分の名を口にすると、
バボンッ!!
体中から爆発したように湯気を出し立ち上がるとそのまま逃げだす。
「す、す、すみませ~~~~~ん!!」
横島はというと、当然転げまわっていた。
「ちゃうんや~~~!ワイはロリやないんや~~~!口の中に何かが入って来て気持ちよかったなんて思ってないんや~~~!」
そんな横島を横目に見ながらカモは現れたカードを見る。
「ほ~、あの姉ちゃんは妖怪とのハーフか。しかし、コイツは強力そうなアーティファクトだな」
カモはカードをどうしようか悩んでいると横島はゆっくりと立ち上がる。そしてその口は微妙に歪んだ笑みを浮かべていた。
「フフフフフフ・・・・ダレダ、コンナグウゼンヲヨソヲッテオレヲロリニオトソウトシテイルヤツハ・・・・ユ・ル・サ・ン」
横島は病化して病島(やこしま)になっていた。
そんな横島を見ていたカモはガタガタ震えながら嫌な汗を流していた。
「な、何なんだあの兄さんは?や、やばい。俺っちが魔法陣を発動させたと知られたら……に、逃げよう」
カモは一目散に逃げ出した。
「ソウカ、コンナコトガデキルノハキーヤンニサッチャンダナ」
『違います!!』
『濡れ衣や!!』
二柱はあまりのプレッシャーに抱き合ってガタガタ震えていたらしい。
その夜、照れたり、赤くなったり、唇を押さえて笑ったりとか、挙動不審なルームメイトを真名を怪訝な表情で見ていたらしい。
続く
仮契約カード
絵柄・翼を出した刹那が二本の両刃刀を構えている
従者・桜咲刹那
色調・黒
称号・翼を持ちし栄光の剣士
方位・北
星・太陽
徳性・正義
アーティファクト
栄光の剣(ソード・オブ・グローリー)
両刃刀で鍔にあたる部分に半円状の宝玉が有り、其処に文字を刻む事で魔法剣の力を得る。
文字は何度でも書き換えれるがその際には一旦文字を消してからではないとならない。
例・【火】→【無】→【雷】といった具合。
二本あり、宝玉の背同士を重ねる様に一本の剣にする事で二文字連結が可能になる。
その際はアーティファクトを解除しなければ文字は書きかえれない。
【破/魔】で明日菜のハマノツルギと同じ能力を得る。
【分/身】だと同じ身体能力を持つ分身を作れる。(ただし頭の中身はちびせつなと同じ)
と、言う訳でようやく第四話完成しました。
我ながら文才の無さに情けなくなりますね。
仮契約のシーンはキーやんとサっちゃんが魔法陣を発動させたとしてましたがやはり、彼らがかかわってくるのはおかしいかなとカモが発動させた事に変更しました。
没シーンは最後のページに移しておきます。
カモの登場やら刹那の仮契約やアーティファクトなど原作と違う所が有りますがそこは私のオリジナルという事でご容赦ください。
では、次はなるべく早く更新をしたいと思います。
見捨てないで下さいね。
《次回予告》
絡繰茶々丸、科学と魔法が生んだガイノイド。
作られた体、作られた頭脳、だが、その魂と心は?
人々に愛され動物達も懐く彼女を見てネギは悩む。
「アイツは敵なんスよーー!」
「お前はどうしたいんだ?お前の気持ちはどうなんだ?」
「悩むがいいでござるよ、悩まなければ間違ってしまう事もあると拙者は思うでござる」
僕は立派な魔法使いに……
次回・第五話「私はガイノイド、私には心など…by茶々丸」
没シーン
一歩
二歩
三歩
「あ、あの…横島さん」
刹那が呼び止め近づいて行く。
一歩
二歩
三歩
『今や、キーやん!!』
悪魔が囁いた。
『任せて下さい!!』
「悪魔」が応えた。
「お聞きしたい事が…あっ」ツルッ
「偶然」足が滑り、
「あ、危ない。…お?」ヨロッ
「偶然」体がよろけ、
「きゃっ」「うわっ」
「偶然」重なり倒れた所に「忘れ物」があり、
「はむっ」「ふむっ」
「偶然」二人の唇が重なった。
『よっしゃーーー!!パクティオーーー!!』
悪魔の叫びと共に「忘れ物」から光が放たれる。
横島と刹那はあまりの出来事に呆然となりその光には気付かなかった。
そしてようやく今の状況に気がつく。
『ぷはっ!!』
ツウ~~~、プツンッ
「あ、あ、あああ……よ、よこひまひゃん?」
刹那の顔は言うまでも無く真っ赤である。
「せ、せつなひゃん?」
横島が自分の名を口にすると、
バボンッ!!
体中から爆発したように湯気を出し立ち上がるとそのまま逃げだす。
「す、す、すみませ~~~~~ん!!」
横島はというと、当然転げまわっていた。
「ちゃうんや~~~!ワイはロリやないんや~~~!口の中に何かが入って来て気持ちよかったなんて思ってないんや~~~!」
そんな横島の前に一枚のカードがひらひらと落ちて来た。
「な、何じゃこれは?刹那ちゃん」
悪魔達の策略によって横島と刹那の仮契約は成立した。
『あのオコジョのおかげでうまくいったなキーやん』
『ええ、これで面白くなりそうです』
『次は夕映っち辺りがええと思うんやけど』
『しかし、あの楓という子や古菲という子も捨てがたいですよ』
『まあ、焦る事も無いやろ』
『そうですね、とりあえず5万オコジョ$が手に入った事ですしパーと飲みに行きますか?』
『ええな、丁度新しいボトルを入れたいと思っとったんや』
悪魔達は笑いながら何処かへと去って行く。
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すみません。
NK一姫「いいかげんにしにゃいと見捨てられるにゃ」
それだけは嫌です。
NK一姫「だったらもっと頑張るにゃ」
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