No.143547

シュチュエーションで遊んでみる③

unwikiにネタ上がっていたのにびっくりしたけど
それ知らないで書いたんだぜ、俺
というわけでなのは×デジモン 再編集版 A's本編後

別のとこに載っけといてますが、仕様が違うバージョンに変更。

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2010-05-16 16:55:42 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:3434   閲覧ユーザー数:3298

 

 

 

「太一。週末なんだけど・・・・・」

 

帰り際。

友人が言いかけた言葉に、太一は慌ててそれにかぶせる。

 

「あ、わり。今週末、オレ駄目だ。親戚の子のお見舞い」

「お見舞い?」

 

意外な単語を鸚鵡返しにした空に、太一は鼻の頭を掻いた。

自分でもあまり見合う科白じゃないなとでも感じたのかもしれない。

 

「ん。ちょっと遠いトコに住んでいてさ。

せっかく部活もないしってことでヒカリといこうって」

 

親戚ともなれば、顔見知りでもない人間が同行していいものでもない。

空はポケットの中にあった、たまたま手に入ったサッカーの試合のチケットを軽くその手で確認しながら、黙っていたほうがいいだろうなと笑って流す。

余計なことを悩ませてしまう必要もないだろう。

これは大輔たちにでもやろうと思いながら。

 

「そう。気をつけてね」

「あぁ。わりぃな、空」

 

 

 

 

 

 

 

 

  ・「あれ?はやて身寄りなしなんじゃ」「細けぇこたぁいいんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

日差しは穏やかで、眠気を誘う中、電車でその町に着いた八神兄弟は、徒歩で海岸線を歩き、その病院にたどり着いた。

そこは比較的大きな総合病院で、受付で彼女の病室を確認してからエレベーターに乗り込み、病室のドアを叩くと、久しぶりの声が招きいれてくれる。

 

 

「はやて」

「太一兄、ヒカリちゃん」

 

ぱっと明るい笑顔が兄妹を迎えた。

きれいなボブカットが少しだけ揺れて、半分起こされたベッドの上いる割りに、その顔色は比較的よさそうだ。

たが、奥にはいつもの車椅子がある。

 

微笑む少女の元に、ヒカルが小さな音を立てて駆け寄る。

そっと重ねられた手は、歩いていたからか少しだけあったかく、迎えた少女には感じられた。

 

「ごめんね、はやてちゃん。あんまり来れなくて・・・」

「そんな。きてくれただけで充分嬉しいわぁ。

お台場からなんてけっこうかかるンやし・・・ホンマうれしい」

 

ソレより疲れたやろ?

お茶でも入れようとしているのか、身体を起こそうとする少女に、太一が慌てて制止の声を上げる。

 

「あ、無理に起きるなよ、おかまいなく」

「ホント、大丈夫なんよ。今回のやって単なる検査やし」

「検査?また悪いの?」

 

ヒカルが殆ど泣きそうにはやてに聞くが、彼女はむしろ嬉しそうに微笑んだ。

それは想わぬ意味を伴って。

 

「ううん。逆なんよ、ヒカリちゃん。やっぱお茶いれるね」

「え、わわ、わたしがやるよ、はやてちゃんっ」

「へいきへいきー」

 

太一が制したのを応じるように、がっちり握っていたヒカルの手をそっと解いて、彼女は本当に手馴れた様子でベッド脇においてあったポットに手を伸ばす。

これ以上の制止は無理と悟ったか、太一は息をついて話題に切り替えた。

 

「それより、逆ってなんだ?

お前のって原因不明って言ってなかったか?」

「お兄ちゃん!」

 

さすがに直接過ぎた問いに妹の非難じみた声が上がるが、本人はあくまでも穏やかに微笑む。

 

「んー、せやねぇ。ま、色々あってん」

「色々?」

「せや、色々」

 

説明する気が全くないというか、必要ないとでもいいそうな彼女の様子に、戸惑った兄妹が顔を合わせた。

そこでがちゃり、と扉が開く。

びっくりした二人の目線の向こう、落ち着いた雰囲気を纏った、ポニーテールの女性がいた。

知らない顔だった。

だが従姉妹の表情ははっきり彼女を受け入れていた。

 

「主はやて」

 

・・・・・・・・・・・はい?

 

「・・・?あるじ?」

「シグナム」

 

奇妙な言葉に本人は当たり前に笑顔で応え、来訪者は戸惑い気味に先客を観る。

微かな警戒の目に、兄妹は気付いたがなにも言わない。

 

「そちらは?」

「親戚の・・・」

「八神太一です」

「ヒカリです」

 

頭を下げた二人の子どもに、彼女は緊張気味に自分を名乗ろうとする。

 

「わたしは・・・」

「わたしの家族のシグナムや」

 

まるで彼女の言葉を遮るように、はやてがそう紹介した。

微かに驚いている彼女の表情を見逃して、太一は記憶を探る。

 

「・・・あぁ、例のはやての面倒見てるって言う外国のおじさんの関係か?」

「あー、まぁせやなぁ。まちがっとらんと想うで、それ」

「・・・・・・」

 

どうにも引っかかる、微妙な表現。

だが、ヒカリはそれらを差し引いても強い目線で異国の名を持つ女性をじつと見つめた。

 

「ヒカリ、さん?」

「あ、すいません、美人だなーって想って」

 

ほんわりと微笑む言葉に、偽りはないが総てとも思えない。

だが、太一もはやてもそれを肯定して微笑む。

 

「そうだよなー」

「せやろー」

 

「・・・・・・・・」

 

不意に妹が兄に目線を投げた。

短いそれを正確に解し、兄はちょっと下の売店いってくると立ち上がる。

 

「あ、おにーちゃん。ついでにアイスw」

「へーへー」

 

わーかりました。

素直に部屋を出る兄を見送った少女は、再び彼らに向き合う。

今のやりとりがいささか芝居がかり、彼が外に出る理由であると悟れないほど鈍い人間はここにはいない。

些か背筋を伸ばしながら、先ずはやてが確かめるように彼女の名を呼んだ。

 

「ひかりちゃん?」

 

受け止める目線は少々警戒を含めたもので、だから少女の目線はまっすぐそれに返す。

言葉ではなく、なんら問題はないのだと伝えるために。

それでも大切な従姉妹だ。

彼女はわかっていて、言葉にする。

 

「うん、ごめんね、はやてちゃん。聞いていい?」

「・・・・・・・・」

 

どんな言葉が来るか、彼女にはわかっていた。

わかっていたから沈黙して、果たして形になる。

 

「"どなたですか?"」

「ッ!!」

 

肩を大きく揺らしたのはシグナムだ。

だがはやてはごく自然に微笑んで、いったやろぅ、とのんびり告げる。

 

「家族、やよ。ヒカリちゃんの心配することなんてひとっつもないくらい、私の大切な・・・」

 

ヒカリは尚も重ねようとするはやての言葉を遮って、ゆったりと微笑んだ。

 

「そうなら、じゃぁもう私はなにも聞かない」

 

はやてもまた、その言葉に満足そうに頷き、心から「おおきに」と言葉を返す。

 

「あ、私お手洗い借りてくるね」

「んー」

 

わざわざ個室で部屋についているのを知っていて、共同のものへと廊下へ踏み出した彼女を、二人も止めない。

それが判っていて、遺された主従は目線を交わす。

 

「主はやて」

「ん、ま、ヒカリちゃんは特別やな。っかし益々不思議めいてく子やねぇ」

「申し訳ございません。配慮なく訪問してしまって」

「そない言わんといて。シグナム。

誰がなにを気にしようが、私は誰にだって胸を張っていってみせる。

私は、みんなの家族やって」

「はい」

 

 

 

 

 

一方兄は時間を計りながら、売店のコンビニ値段なアイスをいくつかあさっていた。

どれとはいわれなかったが、ここは人数分買うべきだろう。

 

(必要経費・・・・・・にゃならんだろうなぁ)

 

仕方が無い。

腹を括るか、と伸ばした手が、ぶつかった。

 

「あ」

「それ、私がもらう」

「え?あ、まぁ、うん」

 

きつめの目線を持ったみつあみの少女がきっぱりと自分が手にしようとしたアイスを勢いよく奪った。

その味に対しては最後の一個だったようだが、別にこだわっていたわけではない。

素直に譲る。

文句を言われるという想像があったのか(だとしたらよっぽど譲れなかったということか)一瞬きょとんとした彼女はだがサンキュ、と笑ってがっつりとソレを自分の手元に引き寄せる。

 

「へっへ」

 

嬉しそうにカウンターに向かっていく少女を見送ることも無く、さて本当に適当にいくかと手に取ったところで、不意に後ろ裾を引っ張られた。

 

「へ?」

 

振り返ると今しがたの少女が、びっくりする位沈んだ顔でそこにいた。

手にはアイス。袋もなければシールもないそれを、つい、とこちらに差し出す。

 

「えっと?」

「・・・・・・・・・やる」

 

どういうことだと聞くのは野暮というものだろう。

このシュチュエーションともなれば、予想されるのは限られてくる。

 

(あぁ・・・・・金なかったんだな)

 

思えば金なんてのが必要じゃない(一時その為に働かされたこともあるけど)旅をしてきた太一も、そういうシュチュエーションの絶望感はわからないでもない。

だからと言って見ず知らずのオンナノコにアイスを買ってやれるほど器用ではないのだ。

仲間内でもそんな配慮をしかも不審なく出来るのって、タケルくらいかなぁと思いながら、今更もう選んだからいらないというのも彼女の覚悟に冷たい。

ありがとうと受け取り、カウンターに持っていく。

 

じっ、とそれらが袋に入れるまではその目線を感じていたが、つり銭をもらって振り返った頃には既に彼女の姿は無い。

 

いっこ余分になったアイスの袋を持って、病室に戻る。

 

 

「不在中に来た」彼女に無言の目線で「黙ってろ」と脅迫されるまで、あと3分。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・

さて、何が書きたかったのやら


 
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