「…それで、私はどうなるんだ?」
公孫瓚さんが聞いてくる
…どうなるって聞かれてもな
たまたま手違いで連れて来てしまったのにどうするもこうするもまったく決まっていない
「というか、貴様はなぜ気絶などしていたんだ?」
華雄が聞く
間違って運び込まれたとき、彼女は城門近くで気絶していたらしい
華雄の問いかけに公孫瓚さんはいきなり怒り出した
「なっ!お前が言うなよ!!私が関の偵察に出た所でお前の隊にやられたんだぞ!!」
本当?華雄、と俺が聞くと
「いや、まったく覚えが無い。私はあの時は完全に関羽しか見えてなかったからな…もしかしたら、そんなこともあったのかも知れない」
「なっ…!」
「…ねえ、霞。この人、本当に連合の人?一般人の人連れてきちゃったんじゃない?」
「一般人…!」
「う~ん、ウチもそんな気がしてきたなぁ。…というか外の奴等、な~んも言ってへんで?ホントどういうこっちゃねん」
「…うぅ、あんまりだ……」
とうとう泣き崩れてしまう公孫瓚さん…なんだか哀れになってきた
「まあ、本物かどうかは分からないけど、このままってわけにもいかないし、捕虜として俺達の撤退と一緒に連れて行こうか…それでいいかな公孫瓚さん?」
「本物だって言ってるだろう!疑問系で聞くなよ!…それに捕虜に待遇について聞くか?普通…お前等、本当に悪逆非道って噂の董卓の将か?」
公孫瓚さん…言いにくいから伯珪さんでいいや…の言葉に華雄と霞が反応するが手で制して俺が言う
「確かに俺たちは董卓軍の将だし、他では月…董卓がそう呼ばれてるのも知ってる…でも俺たちの董卓の事を悪く言うのはやめてくれ」
「…麗羽のことだからなんかあると思ってたら、やっぱりなんか事情があったみたいだな…すまない、さっきの言葉は訂正する」
俺の真剣な眼を見て事情を察してくれる伯珪さん…しかし謝るまでしてくれるなんてこの人は相当お人好しな人みたいだ
「ありがとう、伯珪さん」
「いや、こっちが悪かったんだ。礼を言われる筋合いは…ってなんで私の字を知ってるんだ?」
不思議そうに聞いてくる伯珪さん…そんな彼女に俺はおどけて答えた
「なんたって俺は、天の御使いだからね」
伯珪さんはますます分からないという顔をしていた
最初の戦闘から三日がたった
「それじゃあ俺たちは今夜撤退するわけなんだけど…」
霞と張遼に話を振る
「ああ、準備はできとるで。先に余った糧食は虎牢関におくっとるし、後は兵が脱出するだけや」
「ああ、後は殿だが…」
華雄が言う殿とは撤退の際に敵に追いつかれた際に軍の最後尾に立って軍全体を守る役目だ
「それなんだけど、華雄、霞…最初の時の意趣返しじゃないけど、連合の奴等に一杯食わせてやりたいと思わない?」
どういうことだ?という顔をしている二人に、俺はある案を話すのだった…
翌日、連合軍本陣
朝、諸侯の群議の下にある報告が届けられた
「諸侯の皆様!今朝、汜水関を見ると、城門が開け放たれており、旗、見張り共にまったくおらぬ状態になっておりました!」
「なんですって?おーほっほっほ!董卓軍の将たちは私の威光にひれふしたようですわね!」
馬鹿笑いをする袁紹にあきれながら、曹操は心の中でつぶやく
(この女の頭には空城計という考えは無いのかしらね、まったく…まあ、麗羽が自分で罠を確かめてくれるというなら要らない事は言わない方が…)
そう考える曹操だったが
「そうなのかえ?七乃?」
「うーん、でも空城の計って可能性もありますし、袁紹様の軍に先走ってもらって罠かどうか確かめてから動いた方がいいですよ、お嬢様♪」
「おおー!七乃はすごいのじゃ!」
…要らない言葉が要らない所から発せられた…しかも本人たちは内緒話のつもりだろうが全員に聞こえる声で…
(―ホント、この馬鹿一族は!!)
もちろんその内容が聞こえた袁紹はといえば
「…汜水関に先陣を切って乗り込む栄えある役目は劉備さんにお譲りしますわ」
「えぇー!!私たちだって嫌ですよ!!前は先陣を切ったんですから他の人にしてくださいよ!!」
「なっ!せっかく私が栄誉ある任務を与えて差し上げようとしたのに断る気ですの!?…もういいですわ!では、華琳さん…「お断りね」じゃあ美羽さん「いやなのぢゃ」…そんさ「やるわけ無いじゃない」…もう!貴方達!自分勝手すぎますわよーー!!」
そんなこんなで結局先陣を切らされた劉備が汜水関に突入したのはその日の夕暮れ時だったのだった……
そして、いないことに一切触れられない公孫瓚なのだった……
数日後、虎牢関
「きいたですよ、華雄、霞、一刀!汜水関で暴走したらしいですな!何を考えているのです!!」
俺たちが虎牢関につくとねねに開口一番に怒られた
「いや、俺と霞は暴走したわけじゃ…」
「武官でもない指揮官が戦場に出るわ、幾ら少なかったとはいえ防衛戦のための矢が尽きるまで射ち込むわ、これを暴走といわずなんというのですか!!」
うっ、と口ごもる俺たち…そういわれると確かに結果大騒ぎだったからなあ
「…ねね、それぐらいにしてあげる」
長々と説教を受けるおれたちを見かねたのか恋が助け舟を出してくれた
「恋殿がそういうなら…お前たち!恋殿の心の広さに感謝するですぞ!!」
「あー、はいはい、わかったわかった」
いい加減面倒になっていたのだろう、霞がおざなりに返す
「まったく…あ、それと一刀。洛陽にいる詠から伝言が来ているです。「あちらの方は案を了承したため、あとは防戦に徹しろ」だそうですぞ。ねねには聞かされてない策なのでさっぱりですが確かに伝えましたぞ」
「本当か!!それなら何とかなるかもしれないな」
ちなみにその連絡が洛陽から届けられたのが三日ほど前らしいので
(じゃあ早くても到着は一週間後ぐらいか…その後の事も考えるとちょっと微妙な所だよな…)
「…それで、お前等は退却してきたって言うのになぜ連合軍はまだ来ていないのですか?」
「ああ、それはね…」
俺たちは汜水関での事の顛末、それから今後の策についての話をねねと恋に話した
ついでに伯珪さんの事も紹介したのだが、俺達の後ろにいたにもかかわらず、二人に全く認識されていなかったことに彼女が傷ついていたことは余談である…
連合軍
「きぃぃー!!くやしいですわ!!」
連合軍の盟主、袁紹は苛立っていた
汜水関では空っぽの城なんていう馬鹿にしたような策に敵の撤退の時間を稼がれてその上、汜水関の軍功はすべて劉備に取られてしまった
(このままでは私が大将軍になるのに支障が出てしまいますわ!!)
そう思った袁紹は虎牢関に着いてからの軍議でこう発言した
「皆さん!董卓さんの軍は私たちの軍勢に恐れをなして汜水関をあのようにみっともなく捨てたのですわ!私はこれを好機と見て、この虎牢関では私自らの軍でもって董卓軍を蹴散らしてご覧にいれますわ!!」
袁紹の言葉に袁術がつづく
「それならばわらわも打って出るぞ!孫策や劉備ばっかりに目立たせる訳にはいかないのぢゃ!!」
「きゃー、美羽さまったらお子ちゃまなんだから♪」
この袁家の二人の発言に諸侯たちは呆れ返っていたがここでわざわざ要らない事を言って自分の兵を減らす事はない、と口を噤んでいた…
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董卓IF√本編十一話目です
誤字脱字等ありましたら連絡いただけるとありがたいです
追記 …ハムさんの人気を見縊っておりました まさか本腰で書いた華雄さんよりも目立つとは…w
ただ、ハムさんはハムさんなので連合戦のキーマンになるとかそんな予定はありませんのであしからず