No.139843

真・恋姫†無双 頑張れ一刀くん その17

ちょっと遅くなっちゃった(#゚ロ゚#)

前回が一番コメントが多かったです(*/∀\*)

この変態め( ・`ω・´)

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2010-04-30 02:40:00 投稿 / 全21ページ    総閲覧数:19933   閲覧ユーザー数:13585

 

 

雪蓮と一刀が呉に戻って間もなく、桃香たちは益州全土を手に入れた。抵抗らしい抵抗がなかったのは劉璋から人心が離れていたのと桃香の徳のおかげと言えよう。

 

 

 

そして国号を蜀とし、ここに曹操の魏、孫策の呉、劉備の蜀の三国時代が訪れた。

 

 

蜀は勢いそのままに南蛮を平定して後顧の憂いを取り除いた。

 

 

 

雪蓮率いる呉は荊州を攻め始めたのだが、開戦してすぐに劉表が病死して全面降伏を申し立てされた。雪蓮はこれ受け入れ、ほとんど損害もなく荊州を手に入れることが出来た。

 

 

大幅に領地を拡大した呉と蜀はそれぞれ徴兵を行い軍事力の強化に努めた。

 

 

 

そして残る華琳率いる魏軍は徐州進行からひたすら内政と軍事に心血を注いだ。

 

 

張角、張宝、張梁の三姉妹による徴兵活動による成果は他の二国のそれの比ではない。かつて大陸に混乱の渦を巻き起こした彼女たちの影響力は並々ならぬものだった。そうして集まった兵は暗殺などの愚行を二度と起こさないように覇王の戦い方を教え込んだ。こうして育てられた兵は精兵となり魏軍はいつでも出陣できる体制が整った。

 

 

 

そしてほぼ同時に呉と蜀に早馬による報せが届いた。

 

 

 

曹操が約八十万の軍勢を率いて呉に向けて出陣したとの事だった。

 

 

 

最後の戦いが始まろうとしていた。

 

 

 

 

長江流域にある赤壁。

 

 

呉蜀の軍勢はそこに集結していた。

 

 

呉軍約三十五万、蜀軍約二十五万。約六十万の兵が呉蜀の総兵力だった。

 

 

八十万対六十万

 

 

その兵力差は圧倒的。それに対抗するには呉が得意とする船戦に持ち込まなければならない。そのために呉蜀はほぼ全軍を赤壁に集結させた。雪蓮や桃香といった英雄が集まる戦場を華琳が無視するはずがなかった。

 

 

そして予想通り魏軍は赤壁へと進路を変更したのだった。

 

 

何らかの策があることは明らかだったのだが覇道を歩む華琳は、来るなら来なさいと言わんばかりの威風堂々とした態度だった。

 

 

赤壁へ到着した魏軍はすぐさま船を集める。そして船戦が得意な者に水軍の指揮をとらせた。もともと練度の高かった魏兵は呉軍に負けず劣らずの動きを見せるようになっていた。

 

 

しかしやはり普段、船戦をすることがないので船酔いをする者が多数出ていた。それに加えて慣れない土地での生活で風土病にかかる者も少なくなかった。

 

 

このようなことから魏軍は決して万全の体制とは言えなかった。

 

 

魏軍が万全ではないとは言え、兵力差は簡単には埋まらない。切り札である火計をより効果的に使用するための軍議が連日続けられるが一向にその策が浮かばなかった。

 

 

 

 

「……なんじゃ。また軍議か。下手な軍議、休むに似たりじゃな」

 

 

軍議の場にトゲトゲしい言葉と共に現れたのは祭。

 

 

「黙れ黄蓋。たかが前線の一指揮官が、偉そうな口を叩くな」

 

 

それに真っ先に反応したのは冥琳。

 

 

さらにその言葉に噛みつく祭。普段から言い争うことの多い二人だが今回は今までとは違い鬼気迫るものがあると一刀は思った。そして自分の歴史と照らし合わせてその事が策だと言うことにも気付いた。

 

 

「公瑾! 貴様、文官の分際で我らを馬鹿にするとは傲慢にもほどがあるぞ!」

 

「黙れ! 呉の手足でしかない貴様が、呉の頭脳である私に反論するな! 己の身分を弁えろ!」

 

 

どんどんヒートアップしていく二人に周りの者は黙ってそれを見つめているがほとんどの者が動揺していた。

 

 

「冥琳! 祭! 今は言い争いしている場合ではないだろ!」

 

 

見かねた蓮華が止めに入るが二人は聞く耳持たず争う。

 

 

「冥琳も祭さんもその辺にしときなよ。兵たちが動揺する――――」

 

「黙れ北郷! これは子供が口を挟んでいいような問題ではない!」

 

「公瑾め、子供にまで怒鳴り散らしおって」

 

 

さすがにもういいのではと一刀が止めようとすると冥琳が怒声を浴びせた。

 

 

「子供とか関係ないだろ! 俺だって呉のために頑張ってるんだからそんな言い方ないだろ!」

 

「ふんっ。呉に来てまだ日が浅い貴様が将気取りか」

 

「なんだとっ!」

 

 

なぜか冥琳と一刀の言い争いになっていた。

 

 

 

 

 

「おいおい、こんなことしてちゃあ曹操に勝てないぞ!」

 

 

一人の勇敢な者が意見をする。

 

 

「一兵卒ごときが呉の大都督に意見するとはいい度胸だな」

 

「わ、私は――――」

 

 

 

「はい、そこまでにしなさい」

 

 

この争いに終止符を打ったのは雪蓮。

 

 

「冥琳も祭も一刀もそこのあなたも熱くなりすぎよ」

 

「……御意。しかし黄蓋と北郷は上官不敬罪によって一兵卒に落とすことにします」

 

「なっ!?」

 

「……儂らを一兵卒に落とすじゃと……!」

 

 

冥琳は一刀と祭の役を剥がす命令を出す。

 

 

「……それは必要なことなの?」

 

「ええ」

 

 

雪蓮の質問に間髪いれずに返事をする冥琳。

 

 

雪蓮は少し考えた後口を開く。

 

 

「……分かったわ。これより黄蓋と北郷は一兵卒とする。二人は天幕に戻り後に正式な罰を言い渡す」

 

 

雪蓮が認めたことを周りの者は驚愕する。まさか雪蓮が一刀を一兵卒として戦場に出すとはおもわなかったからだ。

 

 

「姉様! なぜこのような――」

 

「これは決定したことよ。反論する者は誰であろうと罰するわ」

 

 

そして雪蓮も自分の天幕に戻っていった。

 

 

 

 

「あ、あのぉ~……」

 

「……なんだ?」

 

「この時期に喧嘩するの、良くないと思うんですけど……。…………あと一兵卒にするなら一刀くんください!」

 

 

ちゃっかりと一刀を要求する桃香。

 

 

「……桃香殿よ。いくら同盟を組んでいるとはいえ、呉の内部のことに口を出さないでもらおう。…………北郷はやらんぞ」

 

 

それに対して冥琳は睨みをきかせながら答える。

 

 

 

「同盟しているからこそ口を出しているのだ! 貴様らの不仲が戦況に響いたらどうする! …………一刀くんは我々で保護しよう」

 

「うむ。共に戦う者として、さきほどのような些細な口論は、今後謹んでもらいたいものだ。…………一刀くんをどうするつもりだ?」

 

「そうだそうだー! 一刀くんを渡せー!」

 

 

その冥琳に愛紗、星が反論し、さらに蒲公英の声に蜀の将は全員が頷く。どちらのことについて頷いたかは定かではない。

 

 

「……孔明。貴様も同じ意見か? …………いい加減北郷から離れろ」

 

 

冥琳は蜀の中で今回の口論について見抜いていそうな朱里に問いかける。

 

 

「言葉を返さなくても冥琳さんは分かってくれていると思います……。…………一刀くんはいただきます」

 

 

「そうか。ならこれにて軍議は終わらせてもらう。…………おもしろい。我が智を集結させ貴様から北郷は守って見せよう」

 

 

そして冥琳も自分の天幕へと戻っていった。

 

 

 

その場に残された者たちは動揺する者や、怒りを覚える者、自分の存在について考える者など様々な反応をしていた。

 

 

こうして波乱の軍議は幕を閉じた。

 

 

 

 

そして夜――――。

 

 

「……ふむ。そろそろ頃合いか」

 

「……そうだね」

 

 

一刀と祭は呉を抜け出し偽りの降伏をするために動き始めた。

 

 

そしてもう一人。

 

 

 

「な、なぁ。本当にするのか?」

 

 

白蓮がいた。

 

 

「なんじゃ? お主も今回の策が分かった上で冥琳に反抗したんじゃろ?」

 

「ち、違う! 私はただ止めようとしてだなぁ…………」

 

 

勘違いで連れて来られたのであった。

 

 

「まぁ良いわ。一兵卒のくせにあの冥琳に反抗するとは気に入ったぞ。名を何と申すのじゃ?」

 

「……公孫賛だ」

 

 

その名前を聞いた祭と一刀はしばしの間考える。

 

 

「ああ! 公孫賛っていえば袁紹に負けて桃香たちのところに逃れたんじゃなかったっけ?」

 

「おお、思い出したぞ。そういえばそうじゃったな……」

 

 

二人は頷きながら納得する。

 

 

「……もしかしてあなたがその公孫賛さんだったりする?」

 

「……そうだ。真名は白蓮だ」

 

 

不貞腐れながら答える白蓮に二人は居たたまれない気持ちになる。

 

 

「わ、儂の真名は祭じゃ。よろしく頼むぞ白蓮」

 

「お、俺は北郷一刀。真名はないから好きに呼んでいいよ白蓮」

 

「……ああ! よろしくな祭、北郷!」

 

 

名前を呼ばれた事が嬉しかったのか、いきなり明るくなる白蓮だった。

 

 

 

 

「雪蓮様ーっ!」

 

 

雪蓮の下に明命が急ぎ足で駆け付ける。

 

 

「ん? 明命? どうしたの、そんなに血相かえて」

 

 

明命は落ち着かない様子で、しかししっかりと内容を伝える。

 

 

「か、か一刀様が一部の兵を連れて、脱走しました! …………あと祭様も!」

 

 

そこには決して白蓮の名前が出ることはない。

 

 

「なにっ!?」

 

 

明命はどうしたら良いか判断出来ず、雪蓮たちに指示を仰ぎに来たのだ。そして雪蓮は冷静に追撃命令を出す。

 

 

「……追撃の指揮は陸遜に執らせる。周泰、呂蒙はその補佐をしろ。蓮華様と興覇は本陣で待機だ」

 

 

穏は今回の策に気付いているので、穏に指揮を執らせることにしたのだ。逆に蓮華は一刀が脱走したことにひどく狼狽するであろうと予想できたので本陣に待機ということになった。

 

 

 

事実蓮華は、

 

 

「嘘よ! …………一刀が私たちを裏切るなんて。…………そうよ。そんなことあるはずはないわ。きっと何かの間違いよ…………。…………フフフフ、カズト……イマムカエニイクワ」

 

「れ、蓮華様ーーーーっ!」

 

 

大変なことになっていた。

 

 

 

ゾワッ

 

 

「な、なんだいまのは?」

 

一刀は船の上で悪寒を感じていた。

 

 

 

 

「あの……蜀の方々にはどうお伝えしましょう……?」

 

「ありのまま、包み隠さず伝えて良い」

 

 

これは朱里が偽りの投降と気付いているので問題はない……はず。

 

 

「はっ! では!」

 

 

明命は指示を伝えるためにその場から消える。

 

 

 

 

 

「一刀くんが脱走しただとぉぉーーーー!?」

 

「不味いな……。このままでは一刀くんを魏に奪われてしまうぞ……!」

 

「うおぉぉぉ! 一刀を救いに行くのだー!」

 

「はわわー! 皆さん! 戦闘準備を! 一刀くんを救いに行きます!」

 

 

 

この展開は周公瑾にも読めなかったという。

 

 

 

 

 

 

「黄蓋様! 後ろから追撃部隊が……!」

 

「ふむ……旗は?」

 

「せ、先頭が陸! その後ろに孫、周、呂、関、張、趙、馬、馬、黄、厳、魏、諸葛、鳳、董、賈、呂との報告が!」

 

「多すぎるぞっ!」

 

「な、なんなんじゃこの数は!?」

 

 

呉からは穏、シャオ、亜莎。蜀からは桃香以外全員が追いかけてきていた。

 

 

 

「なんちゅう北郷愛じゃ……」

 

 

祭の呟きは船上の風に消える。

 

 

「ど、どうしますか?」

 

「ええい全力で逃げい! 今の奴らには鬼気迫るものがあるわ! あと、全力で抵抗しても構わん! 今の奴らじゃそんじょそこらの攻撃も効かんわ!」

 

 

こうして前代未聞の逃走劇が幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

なんとか逃げ切れた一刀、祭、白蓮の三人は華琳への謁見を許された。

 

 

「…………久しぶりね一刀くん。そして、あなたが呉の宿老と讃えられた黄公覆ね。…………あなたは、公孫賛だったかしら?」

 

「こんばんわ曹操お姉ちゃん」

 

「いかにも」

 

「私を知っているのか!? ここに来てよかったー!」

 

 

華琳に対して三者三様の反応見せる。中でも白蓮は本当に降ってしまいそうな勢いがあった。

 

 

「あなたたちは我が陣営に降るそうだが? その理由を述べてみよ」

 

 

華琳は今すぐにでも一刀に飛びつきたい衝動を必死に収める。ちなみにお姉ちゃんと呼んだのは一刀の策だった。

 

 

「僕が子供だからって莫迦にされたの!」

 

「誇りのために。……文官風情に罵倒されて黙っていられるか」

 

「私が輝ける場所をさがすため」

 

 

一刀の答える姿に一瞬クラっとする華琳だったが何とか持ちこたえる。

 

 

華琳はしばらく会話をしたあと、三人の降伏を受け入れた。

 

 

「黄蓋と、公孫賛は最前線にて指揮を執れ。その真意、背中で語って見せろ」

 

「御意!」

 

「分かった! よーし、目に物見せてやる!」

 

 

異常なまでに白蓮は張り切っていた。

 

 

「そして一刀くん。あなたは危ないから私の傍にいなさい」

 

「うん!」

 

「はうぅ!」

 

 

華琳は一刀のニコニコ顔に大きくダメージを受けた。

 

 

そしてその配下の者までお花畑状態になっていたのだった。

 

 

 

 

 

「まさかみんな追いかけちゃうなんてねー」

 

「……正直ここまでとは思わなかったわ」

 

 

一刀たちをあと一歩まで追い詰めた大船団を見ていた雪蓮と冥琳。

 

 

そして、

 

 

「なんであなたは柱にくくりつけられているの桃香?」

 

「もー、聞いてくださいよ雪蓮さん!」

 

 

桃香が言うには自分も一刀を追いかけたかったのだが家臣に止められ、それでも行くと言い張った桃香を一秒も早く一刀を追いかけたい愛紗と鈴々が素早く天幕の柱にくくりつけて飛び出していったらしい。

 

 

「……一刀のことになると凄いのね」

 

 

雪蓮は苦笑いしながら縄を解いて桃香を助け出した。

 

 

 

そこに一刀を追いかけていた者たちが帰って来た。

 

 

「こらー愛紗ちゃん! 私を置いて行くなんて酷いよー! それになんで、月ちゃんと詠ちゃんまで追いかけてたの!?」

 

 

世間的に死んだことになっている董卓と賈駆の旗まで使用したのである。

 

 

「へぅ~。ごめんなさい。出来心でした」

 

「……ちょっとした出来心よ」

 

 

反省はしているが後悔はしてないようだった。

 

 

「孔明よ、お前まで追いかけてどうする?」

 

「はわわ! しゅみましぇん! つい出来心で!」

 

 

それは流行っているのかと聞きたかったが時間が惜しいので皆に作戦を伝えるのだった。

 

 

 

 

 

「そういえば雪蓮は追いかけなかったのだな」

 

 

雪蓮と共に部隊の編成を行っていた冥琳がふと疑問に思った事を問う。

 

 

「当たり前よ。祭と一刀が私を裏切るわけないじゃない♪」

 

 

当然のことよと言わんばかりの笑顔を浮かべる雪蓮。そんな雪蓮を見て冥琳はため息を吐く。

 

 

「ふっ。確かに二人をよく知る者なら少し考えれば分かることだな」

 

「そうよー。蓮華なんか余裕がないからすっごく心配してたみたいだけどね」

 

 

実際にそうだった。

 

 

部隊の編成が終わった頃、長江が赤く染め上がる。風向きが変わると同時に祭と白蓮が魏の船団に放火したのである。

 

 

なぜ風向きが東南に変わったかというと、

 

 

 

 

 

 

 

「むむむー……えいっ! …………はわわっ! 東南の風が吹いちゃいました!」

 

「やった……! 東南の風、吹いてるよ、朱里ちゃん!」

 

 

はわわの暗躍があったとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さっ、お喋りはおしまいよ。私たちの家族を助けに行くわよ」

 

 

雪蓮は気持ちを切り替え精悍な表情で呉軍の先頭に立つ。

 

 

「……孫呉の勇士たちよ! 今こそ反撃の時! 黄蓋の放った火こそ、孫呉の栄光への狼煙と見よ! その魂に火を放ち、その炎で敵を焼き尽くせ! 皆の命、私が貰う!」

 

 

うおぉぉぉぉぉぉーーーーーー!!!!

 

 

雪蓮の号令により兵の指揮は最高潮に高まる。

 

 

「周泰!」

 

「はっ!」

 

「錐となって敵陣を貫け!」

 

「御意!」

 

 

雪蓮は次々に指示を出していく。

 

 

そして、

 

 

「各員、抜刀! 突撃せよ!」

 

 

おぉぉぉぉぉーーーーーーーっ!

 

 

呉軍による奇襲が始まった。

 

 

 

 

 

そして蜀――――。

 

 

「前方、曹魏の陣にて火が上がりました!」

 

「いよいよか……! 星、雛里! 私たちも参戦するぞ!」

 

「応!」

 

 

愛紗と星はやる気に満ち溢れている。

 

 

「蜀の勇者たちよ! 我が旗に続け!」

 

「狙うは一刀くんの身柄ただ一つだ」

 

 

完全に目的が変わってしまっている。

 

 

『全軍……突撃ーーーーっ!」』

 

 

愛紗と星の号令により、蜀の兵たちも参戦し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

祭と白蓮が帰還すると裏切りは周公瑾の策だと全軍に通達した。すると呉の兵たちはさらに士気を高めていく。

 

 

「祭、よくやってくれたわ。ところで一刀は?」

 

 

帰って来た祭を労いつつも一刀の安否を気遣う雪蓮。

 

 

それに対して祭の表情は優れない。

 

 

「申し訳ありません策殿。……北郷は敵の本陣にて曹操と共におります」

 

「なにっ!? 一刀は無事なのか!?」

 

 

祭の言葉に蓮華が激しく食いかかる。それを雪蓮は無言で制する。

 

 

 

「あの曹操の事だから一刀は無事なはずよ。それに人質なんてまねもしないと思うから戦いは続行するわ」

 

「ですが!」

 

「蓮華!」

 

 

雪蓮の怒声に蓮華はビクッとなる。

 

 

「あなたは王族なのだから今は大局を見なさい。……それに一刀は必ず私が助けるわ」

 

「……はい」

 

 

雪蓮から滲み出る一刀大好きオーラに蓮華は頷くしかできなかった。

 

 

 

 

「ならばよし。……蓮華、本陣の統率は任せたわよ!」

 

「ね、姉様!?」

 

 

雪蓮はそう言うと次々に船に乗り移って敵本陣に向かっていった。

 

 

「やれやれ。困った王様じゃのう。……黄蓋隊に告げる! 我らは策殿の援護をしつつ敵陣にかちこむぞ!」

 

 

こうして一刀救出劇が幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なんなんだ!? やつらの異常なまでの士気の高さは!」

 

 

春蘭は無残に命を散らしていく部下を見て叫んだ。それもそのはず。蜀の将たちは一刀の投降が作戦だった事を忘れて目を血走らせながら敵兵を切り裂いていく。その武と気迫に恐れをなして魏の兵からは逃げ出す者も出始めた。

 

 

「一刀くんはどこだぁーーーーっ!」

 

「一刀はどこなのだーーーーっ!」

 

「メンマの瓶を割ったのは誰だーーーーっ!」

 

「あわわーーーーっ!」

 

 

もはや魏の前線は壊滅状態に陥っていた。

 

 

 

「くそっ! ここで耐え切れなければ華琳様が危ない!」

 

「その通りだ姉者! ここは死んでも通させぬぞ!」

 

 

春蘭と秋蘭が敵を迎え撃とうと最前線に出た。

 

 

「……むだ」

 

「ぐぅ! 貴様は呂布!」

 

「くっ! 二人がかりで手も足も出んのか!」

 

 

恋は二人の攻撃をいとも簡単にいなす。

 

 

「先に行くぞ恋!」

 

「へぅーーーーっ!」

 

 

愛紗たちはこの場を恋に任せてさらに本陣へと迫っていく。

 

 

 

 

「華琳様! すぐにお下がりください! 敵はすぐに来ます!」

 

「分かったわ。……稟、防戦の指示はお願い」

 

「この命に代えても」

 

 

そして稟は華琳の護衛を季衣と典韋……流琉に任せてこの場を指揮することにした。

 

 

華琳はそれを大人しく聞いて一刀の手を引いて退却を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「将は愛紗たちに任せるとして……思春! 祭!」

 

「おう!」

 

「はっ!」

 

「二人で曹操への道を切り開け!」

 

「任せてくだされ!」

 

「甘興覇の力、とくとご覧あれ!」

 

 

 

祭と思春はみるみる敵陣を切り開いていく。士気が最高潮の呉兵に火によって浮足立っている魏兵では太刀打ちできわけがなかった。

 

 

 

ここでこれ以上対抗しても無駄と悟った稟、そして風は一度退いて部隊を再編することにした。

 

 

 

 

 

「敵軍、後退していきます!」

 

「今です蓮華様! 本隊へ突撃命令を!」

 

「分かったわ!」

 

 

本陣で待機していた冥琳は兵からの報告を受け、蓮華に指示をだす。

 

 

「聞け! 孫呉の兵たちよ! 我が同胞たちよ!」

 

 

蓮華の声が呉兵のたちに響き渡る。

 

 

「我らはこれより、曹魏の本陣に向けて突撃を敢行する! この戦いに勝利し、戦乱の世に終止符を打つのだ!」

 

 

ほとんどの者はこのために戦ってきたと言っても過言ではない。

 

 

「雄々しく掲げた牙門旗の下、覇王曹操を討つ! 全軍……突撃せよ!」

 

 

最後の大号令が蓮華によってなされた。

 

 

 

 

 

恋から命からがら逃げて来た春蘭と秋蘭は本陣に合流していた。そして他の将たちも同じように怪我を負いながらも命は無事だった。

 

 

「敵の本隊が攻め込んできます!」

 

「退路にも蜀の兵隊さんがいますからね~。逃げ場はないかと……」

 

 

兵の報告に風が付け足す。華琳は一刀の手を握りながら思案する。

 

 

「退路は断たれたか…………。ならば投降か最後まで抵抗するかね」

 

 

魏軍は脱走兵を含めると約四十万程になっていた。呉蜀の苛烈なる攻めにより当初の半数まで減らされていたのである。

 

 

「華琳様! 私はまだ戦えます! どうか突撃命令を!」

 

「春蘭……」

 

 

ぼろぼろになりながらもその目はまだ死んでいない春蘭を見て華琳は決心する。

 

 

「そうね。ここで投降などすれば私を信じてついてきた者たちを裏切ることになるわね」

 

「そうです! 呉蜀の連中など私が打ち破って見せます!」

 

「ふふっ。期待しているわ。…………聞け! 魏の精兵たちよ! これより我らは敵を迎え撃つ! おそらくこれが最後の戦いになるだろう! 命を惜しむな名を惜しめ! 曹魏の誇りを奴らに見せてやるのだ!」

 

 

うおぉぉーーーーーーーっ!

 

 

覇王自らの号令によって士気を上げる兵士たち。

 

 

「全軍……突撃ーーーーっ!」

 

 

最後の激突が始まった。

 

 

 

 

「呂布! 次こそ負けんぞ!」

 

「…………何度やっても同じ」

 

 

春蘭は再び恋と対峙していた。

 

 

「それはどうかな!」

 

 

春蘭の攻撃を恋は自らの武器で受け止める。

 

 

「っ……」

 

 

そこで恋は先程の春蘭とは違うことに気付く。

 

 

「どうだ呂布!」

 

「…………さっきより強くなった」

 

「今なら貴様にも勝てるぞ!」

 

 

もう後がない春蘭の気迫は今まで最も高まっていた。

 

 

だが、

 

 

「でも…………恋には勝てない……!」

 

 

一刀補正のかかって恋には及ばなかった。

 

 

「なっ! …………ぐはっ!」

 

 

春蘭の七星餓狼を真っ二つに叩き割った恋は動揺している春蘭の腹に拳を放ち、気絶させた。

 

 

 

「お腹減った」

 

 

そう呟いて恋は一刀がいるであろう曹の牙門旗を目指す。

 

 

 

 

「おお、確かお主は夏候淵じゃったかな?」

 

「ああ。よくもここまでやってくれたなものだな黄蓋」

 

 

ある場所では祭と秋蘭が対峙していた。お互い弓使いということなので距離は少し離れている。

 

 

「大軍を相手にするにはこうするしかなかったのでな」

 

「その借り、ここで返させてもらおう!」

 

 

秋蘭は弓を構え、間髪入れずに三本の矢を放つ。

 

 

祭はひらりと身をかわした。

 

 

「なかなかやりおるの。じゃがこれはどうじゃ!」

 

 

それに対して祭は四本の矢を放つ。秋蘭は間一髪でかわすが一本の矢が腕をかすめる。その隙を見逃さなかった祭は秋蘭との距離を一気に詰め当て身をくらわせる。そのまま秋蘭は吹き飛ばされ気絶した。

 

 

「息子を迎えに行かなくてはならんのでな」

 

 

祭も牙門旗を目指し走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか関羽とやれるなんて夢みたいやわ!」

 

「私もそう言いたいところだが今はそうも言ってられん!」

 

 

霞と対する愛紗はすぐに斬りかかる。

 

 

「な、なんなんや! 恋といい関羽といい前よりかなり強くなってるやんか!」

 

「一刀くんのおかげだぁーーーーっ!」

 

「ぐはっ!」

 

 

霞を瞬殺した愛紗。気絶しているだけなのだが。

 

 

 

「一刀くん待ってろーーーーっ!」

 

 

とどめをさす時間も惜しいと言わんばかりの愛紗だった。

 

 

 

 

その他の場所でも魏軍は呉蜀連合に大きく攻め込まれていた。

 

 

 

「一刀様ーーーーっ!」

 

「一刀くんはどこだ!」

 

 

明命と思春は一心不乱に牙門旗を目指す。

 

 

「なんや、ウチら完全無視やがな」

 

「仕方ないのー! みんな目が逝っちゃってるのー!」

 

 

 

 

 

「ドッカーン!」

 

「ぐぅ! 強すぎる!」

 

 

鈴々は楽進……凪を圧倒する。

 

 

 

「メンマと一刀くんを返してもらうぞ!」

 

「メンマは関係ないです!」

 

「メンマ美味しいよね!」

 

 

星は理不尽な怒りを流琉と季衣にぶつける。

 

 

 

 

 

「へぅっ!」

 

「おおっ!」

 

 

こんな戦いもあったとかなかったとか。

 

 

 

 

「…………もはやこれまでか」

 

 

華琳は戦況を見て呟く。そしてそれに返事を返す者がいた。

 

 

「そうね。あとは一刀を返してもらえばおしまいね♪」

 

「雪蓮!」

 

「孫策!」

 

 

一刀と華琳は同時に声をあげる。

 

 

「はぁ~い一刀。迎えに来たわよ」

 

「…………やはり偽りだったのね」

 

 

華琳は半ば予想していたのか表情はあまり変わらなかった。

 

 

「曹操お姉ちゃん、もう終わりにしない?」

 

 

一刀は華琳の手をギュッと握りしめ上目遣いで見つめる。

 

 

「そ、そそそそうね。こ、これ以上はいたずらに死者を増やすだけね。…………でも条件があるわ」

 

「動揺しすぎ。……っで条件って?」

 

 

雪蓮は若干不機嫌になる。

 

 

「この度の戦いの責任はすべて曹孟徳にあるわ。だから私の頸と引き換えに将兵には手を出さないで欲しいの」

 

 

華琳は自分の命と引き換えにしようとしていたのだが、

 

 

「えー、無理」

 

 

あっさりと雪蓮に却下された。

 

 

「……そう。残念だけど仕方ないわね。私は敗者なのだから……」

 

「そうじゃなくて、あなたの将兵はもちろんあなたの命もとらないわよ?」

 

「なっ!」

 

 

華琳は驚愕する。まさか将兵だけではなく侵略者である自分も生かしておくなどとは思っていなかったからだ。

 

 

 

 

「私はね、呉の民の生活が守れたらそれでいいのよ。あなたがもう侵略をしないならばそれでいいの。だから曹操には呉と蜀と三国同盟を結んでもらうわよ」

 

 

さらに華琳は驚く。領地すらも奪われずに自分がそのまま治めろと言われているのだから当然だろう。

 

 

「……分かったわ。三国同盟を結び、大陸の発展に尽力を尽くすわ」

 

「物分かりが良くて助かるわ。私のことは雪蓮と呼んでいいわよ」

 

「ならば私も華琳でいいわ。……一刀くんもね」

 

「わかった。俺は真名がないからそのままでいいよ」

 

「ええ。分かったわ。桂花!」

 

「はっ!」

 

 

華琳は空気と化していた桂花を呼ぶ。

 

 

「全軍に伝えろ! 全員武器を捨てて戦いをやめろと。そして呉蜀と同盟を組むとね」

 

「ぎょ、御意!」

 

 

桂花は伝令を飛ばすためにその場を去った。

 

 

 

 

こうして黄巾党の乱から始まった長い戦いは終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一刀くーーーーん! 今助けるぞーー!」

 

「……邪魔者は殺す!」

 

「ドッカーン!」

 

「メンマ―!」

 

「へぅ!」

 

 

 

愛紗たちが遅れてやってきて華琳に斬りかかりそうになったが一刀の姿を見つけると、皆一目散に一刀に飛びついて事なきを終えたという。

 

 

 

 

<おまけ>

 

 

祭が呉の陣営に帰って来た時の蜀軍。

 

 

「あー、白蓮ちゃんどこいってたのー?」

 

「ど、どこって」

 

「もしかしてサボってたの?」

 

「そ、そうじゃなくて」

 

「だめだよ? 今は大事な時なんだからね!」

 

「うがー!」

 

「ど、どうしたの? いきなり叫んで?」

 

「なあ桃香」

 

「なーに?」

 

「私ってなんなんだ?」

 

「んーとね、白蓮ちゃんは地味だけど普通の子かな?」

 

「……また曹操のところに行ってくる」

 

「またって白蓮ちゃんって曹操さんに会ったことあるの?」

 

「くそー! 曹操軍で有名になってやる!」

 

「ぱーいれんちゃーん!」

 

 

三国同盟後、魏の一兵卒の名前に公孫賛があったとかなかったとか……。

 

 

 

完。

 

 

なんか戦いが適当すぎるwww

 

何書いてるのかもわかんないし(つ∀-)

 

多分次回で最終回(*/∀\*)

 

 


 
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