No.136381

一騎討ち ~真・恋姫†無双~

Chillyさん

すみません。今回は習作です。短いです。

緊迫した戦闘シーンと三人称の練習で書いたものです。あぁ後、霞の似非大阪弁の練習でもあるかな……。
練習作なんて投稿してるんじゃないと言われそうですが、そこはお目こぼしをお願いします。

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2010-04-14 18:41:06 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:2709   閲覧ユーザー数:2459

 一陣の風が吹き抜け、砂埃が宙に舞う。

 

 唾を飲み込む音すら響くような無音の時が場を支配していた。

 

 中央に対峙するは、二人の女性。

 

 一人は、赤いチャイナドレスに紫色の鎧をまとった隻眼の女性。

 

 一人は、青い羽織に紺色の袴、胸にさらしを巻いた紫髪の女性。

 

 二人の額に浮かぶ汗の玉が、スッと一筋頬を伝い、あご先からポタリと落ちる。

 

 ピタリと互いに向けられた得物が陽光に輝く。

 

 七星餓狼と名付けられた黒い刃の大剣。

 

 飛龍偃月刀と名付けられた紅色の柄の豪槍。

 

 互いの隙を伺い、互いの隙を突く。

 

 時が止まっているように動かない二人だが、実際は違う。

 

“ジャリ”と砂を踏みしめ、摺足で動く。

 

“スッ”と僅かに肩を落とし、虚を見せる。

 

 互いが隙を誘い、互いが誘いを読む。

 

 均衡した実力故に攻めきれず、勝負の行方はわからない。

 

「惇ちゃん、ええでええでぇ。ウチ、めっちゃおもろいわぁ」

 

「霞! 今日という今日は決着をつけてくれる」

 

 ジワリジワリと円を描くように、互いを中心に動いていた二人の足が止まる。

 

 吸って吐いて、吸って吐いて……。

 

 呼吸のリズムが同調していく。

 

 吸って吐いて、吸って吐いて、吸って。

 

 一合。

 

 黒い刃と紅色の柄がぶつかり、黄色の火花を散らす。

 

 二合。

 

 跳ね上げられた大剣を無理やり引き戻し、袈裟斬に振るわれた豪槍を防ぐ。

 

 ほんの刹那のうちに放たれた二合の斬撃が出す音は、まるで繋がった一つの音の様に訓練所に響き渡る。

 

「ほんま、めっちゃおもろいわぁ。惇ちゃん、さすがや。あれ防がれるとは思わなかったわ」

 

 二合打ち合い離れた二人は、再び得物を構え対峙した。

 

 再び始まる緊張の時間。

 

 矢を放つために引き絞る弓のように、じりじりと力をためる静なる時間。

 

「それはこちらの台詞だ、霞。次で決める!」

 

 大剣を大上段に構えなおす春蘭に、霞は豪槍を下段に構えなおす。

 

 上からの斬撃と下からの斬上。

 

 防御を捨てた一撃に、互いのすべてをかけるようだ。

 

 気迫が周囲を満たし、空気が重さと形を持ったように肩に圧し掛かってくる。

 

 喘ぐように息を吸う周囲の兵士たちとは裏腹に、互いの顔に浮かぶ表情は笑顔。

 

 心底この対峙を、緊迫感を二人は楽しんでいる。

 

「そやね……こないおもろい時間を終わらせるのはしゃくやけど、ずっとこないなままっつうのは、あかんやろな」

 

 二人に浮かんでいた笑みの種類が、肉食獣のそれに変わった。

 

“動く!”

 

 周囲のものにもわかるほどの気迫の違いが、笑みの変質で感じられる。

 

「ハァァアアアアアア!」

 

 気迫を呼気として吐き出し、春蘭はただただ、大剣を力任せに振り下ろす。

 

「セィヤァアアアアア!」

 

 神速のすばやさで気迫とともに、霞は豪槍を振り上げる。

 

 黒い軌跡は一直線に霞の肩に向かい、赤い軌跡は弧を描いて春蘭の脇に突き刺さる。

 

 一瞬の交錯。

 

 ピタリと止まる互いの得物。

 

 春蘭の七星餓狼は霞の左肩の上、数ミリで止まり、霞の飛龍偃月刀は春蘭の左脇腹、数ミリのところで止まっていた。

 

 春蘭は上から霞の瞳を見下ろし、霞は下から春蘭の瞳を見上げる。

 

 ジッと見つめあうこと数秒、対照的に変わる二人の表情。

 

 苦虫をかみ締める春蘭と猫のようにニヤリと笑う霞。

 

「ちぃとばっかしあせったけど、ウチの勝ちやな、惇ちゃん」

 

 ゆっくりと得物を戻し、勝利宣言を春蘭にする霞は満面の笑顔を浮かべた。

 

「うぎぎぎぎ。もう一回だ、もう一回! 次は負けん」

 

 顔を真っ赤に染め上げた春蘭の叫びが、今日もまた訓練所に響き渡るのだった。

 

 

 

※飛龍偃月刀は原作中で青龍偃月刀が何度か槍と表現されていましたので、“豪槍”と表現させていただきました。


 
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