No.135893

ARIAのSS

アツアギさん

すんごい昔(といっても3年くらい前)に作ったARIAの超短編小説です。

とりあえず、見習い卒業のために貼り付けます。

2010-04-11 23:37:23 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:4088   閲覧ユーザー数:4046

 

 

 前略、お元気ですか?

 ここネオ・ヴィネツィアは、水先案内人が活躍する季節、夏を迎えました。

 今はサンマルコ広場で、カフェ・ラテを飲みながら暫しの休憩中です。

「はひぃ。暑いです」

 この季節に飲むアイスカフェ・ラテは絶品です。何杯でもいけそうですが、そうも言っていられません。この一杯を飲んだらすぐに出発しなくてはなりません。

「灯里ちゃん。こんにちは」

「おじさんこんにちは~」

 郵便屋さんのおじさんもどうやらお昼を取りにサンマルコ広場まで来たようです。

「お隣にいいかい?」

「はひっ!どうぞ」

「最近大活躍みたいだね。灯里ちゃん」

「かげさまで。でも、最近自分の時間が取れないような…」

 おじさんは、やさしい表情でわたしを見ながら話します。

「人気があるのは、この火星で愛されている証拠だよ」

 火星で愛されているから、地球の旅行客も選んでくれる。と郵便屋さんは続けます。

「でも、自分の時間をしっかり取って楽しみながら仕事をしないと疲れちゃうよ」

「おじさんは楽しんでお仕事してましたもんね」

「ああ。楽しんでやってたよ」

 そう言うと遠い目で火星の海を見ていました。わたしも釣られて綺麗な海を見てしまいます。

「ところで灯里ちゃん。ゆっくりしているけど時間はいいのかい?」

「ほへっ? あああーー。し、失礼します」

 ちょっと話しすぎてしまったようです。

 水先案内人がお客さんを待たせてはいけません。ちょっとゴンドラを早めに向かわせ他方がいいようです。

 

 

 お客さんも無事に案内することができたその帰り、ゆっくりとARIAカンパニーにゴンドラを向かわせます。その途中、後ろから背中を何かで突かれました。

「あひゃっ」

「あひゃって何よ~。あひゃっ禁止!」

 藍華ちゃんです。

 ここ最近、以前よりちょっかいが多くなったような気もします。

「あれ?灯里さんじゃないですか…」

「あれ?アリスちゃんだー」

 わたしとアリスちゃんは、藍華ちゃんの方を見ます。

 仕事帰りに合同練習をしていた場所に寄るように言われていましたが、アリスちゃんも一緒だとは聞いていません。

 藍華ちゃんは企んだ目をしながらわたしたちにこう告げます。

「みんなで部下の調子を見に行こうって魂胆よ!」

「藍華ちゃん…部下って」

「部下…でっかいいい響きです」

 そして、以前合同練習していた場所に着きました。

 そこには、まだ幼さの残る容姿を持って、ぎこちなくオールを操る三人娘の姿がありました。

「晃さんもこんな感じだったのかな…ウシシッ」

「でっかいおちょくるです。キラーン」

「あらあら…って、アリシアさんの真似している場合じゃないよ!邪魔しちゃ…ほへっ」

 わたしは、二人を止めようとしたのですが、何かに躓いて塀の影から飛び出してしまいました…。

 後ろの方で顔に手を当てる二人がよく見えます。

「あれ…灯里さん。お仕事は終わったのですか?」

「え…あっ。そ、そうなの~これから帰るところ」

「じゃあ、少しだけお時間いただけませんか?オール捌きがうまくいかなくて…」

「はひっ。いいよ教えてあげる」

 

「そろそろあたしたちも行きますか…」

「そうですね。灯里さんが三人に攻められて困ってますしね」

 最近の日々は、長いようで短い。

 そんな日常の火星に、今日も水先案内人のプロと卵の明るい声が交錯します。

 

 

 


 
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