No.132941

本当の気持ち

雪月菜絵さん

パチスロ機スカイラブのアースとラブのカップリング小説です。

●注意事項●
・以前他所に投下したものです。
・元はエロパロでしたが、TINAMIが18禁作品準備中なので

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2010-03-29 00:15:13 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:886   閲覧ユーザー数:879

衝撃の結婚式から一夜明けた、エリシオン艦内ブリッジ、朝。

「艦長、アース隊長が昨夜から戻ってないようです」

「全く、何やってるんだ、アースの奴は・・・」

 そうは言っても、結婚式で振られたというのに何事もなくいられるほうが普通ではない。

(いや、どう考えてもこれは艦長が悪いですよ・・・)

心の中でつぶやく団員に対し、

年長であるライコウのみが唯一、思ったことを口に出す。

「一人でヤケ酒してたところに酒場のかわいいお姉ちゃんに誘われて、

 ふらふらついていってるかもしれんの~?」

「なっ!? そんな、アースが浮気なんて・・・」

「いやいや、なにせずっと想いあってると信じきってた女に最悪の形で裏切られたんだからのー。

 そんな心の隙間に、美人で巨乳のねーちゃんが入り込んできたらついていきたくもなるってもんじゃ。

 そういえばワシの知り合いの婆さんが孫娘の婿を探しててのう。

 小僧に紹介して、心の傷を埋めてもらうっていうのもテだぞい」

「ちょっ!? ライコウ、そんなことしたら許さないからな!」

「・・・ラブや。お前さんは結婚式であんな事をしでかしたんじゃぞ?

 もし本当にそんな事があったとしても、浮気だなんて咎める権利は無いぞい。

 よーく、考えることじゃ」

「う・・・」

 さすがは年長の余裕といったところか、

からかっているように見えるが、反省させる意図もあるのだろう。

 珍しくたじろいでいるラブを見て、団員達も口々にラブを責めはじめた。

「そうだ、さすがにこれは姉御が悪いぜ」

「式であんなことするくらいなら、せめてその前に中止にした方がマシだったのに」

「アースさんが気の毒です」

 いつもは信頼されているラブだが、さすがに今回は団員達から総スカンを食らってしまった。

「あーもうっ、わかったから!

 今回の件についてはあとで改めて説明するから、とにかく今日もパトロール開始だ!」

「はーい、了解です艦長」

 

とは言ったものの、あんな大事件があった後。

団員達の間で私語が絶えないのもしかたがない。

(しっかし、なんでわざわざ式まで挙げて断るかなー)

(姉御とアースって幼馴染なんだろ?

 腐れ縁でずるずる来ちゃったけど実は好きじゃないのに気付いて

 すっぱり諦めさせるためにあえて皆が見てる前であんなことしたんだったりして)

(さすがにそんな酷いことはしないだろ。けど、もしそうだったら俺にもチャンスあるかな?)

(お前じゃ無理だって)

(でも、アースさんのどこがそんなにいいんだかなー。あれでいいなら俺でも良さそうなもんだけど)

(だよなー、ライコウさんに同意だよ)

(本当に浮気してるから帰ってこないんだったりして)

(えー、でもアース隊長がそんなにモテるとも思えないけどなー?

 それにあの人艦長にベタ惚れじゃん、

 振られたからって簡単に割り切って乗り換えられるとも思えないけど)

(いやいや、心が割り切れなくても、体だけなら男は簡単に浮気できるぞー?)

(そういやさ、前酒場で話してた時に、店員のかわいくて巨乳のねーちゃんが

「あの人はどなた?」ってアース隊長のこと聞いてきたんだよ。惚れてるんだったりして)

(あいつ単純だからなー、「実はずっと前から好きだったんです!」なんて言われたら

 本当にほいほいついていっちゃいそうだよね)

(それで姉ちゃんに迫られたら確実にヤっちゃうわー)

(でもなー、本当にアースのやつ可哀相だよなあ、

 俺だったら絶対立ち直れないわー)

(なー)

 

ラブはあえて聞こえないふりをしていたが、言葉の端々がちくちくと刺さる。

アースなら自分の信念をわかってくれるはず、

そう信じているからこそラブはあんな行動が出来たのだ。

けれど、もし、皆がしているような下世話な想像通りに、

ヤケになって、他の女に誘われるがままにどこかにいってしまったら・・・?

そして、もしも、そのまま帰ってこなかったら・・・?

今更不安になってくる。

わかってくれると思い込んでいるのは自分だけかもしれない。

(アースが帰ってきたら、ちゃんと説明して謝ろう・・・)

 

・・・と、思っていたはずなのだが。

「た、ただいま・・・」

 ぎこちなく帰ってきたアースを見るなり、

「こらっ、アース、何やってたんだ!」

 ついついいつもの調子で怒鳴りつけてしまう。

団員達の見ているブリッジでのラブは艦長モード。

カリカリお説教をしてしまったのであった・・・。

一方のアースはというと、いつもと変わらないラブの様子に安心したような、

あるいは、男としてなんとも思われていないからこそ、

何事もなかったように艦長としてのお説教が出来るのか、

複雑な心境で話を聞いていたのであった。

夜。

ラブはエアルを抱っこして語りかけていた。

あるいは、自分の気持ちを整理するための独り言かもしれない。

「ちゃんとアースに謝ろうと思ってたのに・・・ダメだね、私」

「キュゥ・・・」

 エアルも悲しそうに泣いた。ラブの心に同調しているのだろうか。

「でも、アースがこの艦に戻ってきてくれて、本当に安心したの。

 もし、皆が言うみたいに、アースが誰かとどっかいっちゃって、

 そのまま帰ってこなかったらって考えたら、すごく胸が苦しくて、悲しくて・・・。

 おかしいかな? 結婚式を台無しにしたのは自分なのに・・・」

 ラブは少し泣きそうになってしまったが、すぐに涙をぬぐった。

実際にはアースは戻ってきたのだ。心配する必要なんてない。

が、団員の言葉がどうも引っかかる。

アースが知らない女にほいほい誘われて、あまつさえあんな事やこんな事を・・・。

物心つく前からずっと一緒にいた自分と、通りすがりのかわいいねーちゃんが同価値なのか、

なんて考えると、ちょっとムカムカしてきた。

そんな事は無いだろう、と、思いはするのだが。

「知ってる? 私とアース、エアルが生まれるずっと前から、

 毎日一緒に遊んで、勉強して、たまにはケンカもしたけど、仲直りして、

 その度にもっと大好きになっていったんだよ」

(私が一番アースを好きだし、アースも一番私を好きなはずなんだから)

「エアル。今からでも、遅くないよね?」

「キュッキュー!」

 今度はエアルは元気よく鳴いた。

「ふふっ・・・お前も応援してくれてるのかな? ありがとう。

 私、アースのところに行ってくるよ」

 

一方のアースも、遅刻した分遅くまで任務をこなし、自室に戻ってきていた。

なんだかんだ言って、昔から住んでいる部屋は落ち着く。

もっとも、本来なら、昨夜からラブと二人で新しい部屋に移る予定だったのだが。

(とりあえず今日は戻ってきたけど・・・俺、ラブとギクシャクしたままここにいられるのかなあ)

(あの娘に紹介してもらって、酒場で働かせてもらうのもいいかもしれないな・・・)

どうしようか考えていると、扉をノックする音が聞こえた。

「アース、私」

「ラッ、ラブ!?!?」

 アースは即座に扉を開けた。

頭ではさっきまでこれからラブとどう付き合っていくべきか、なんて考えていたはずなのに

感情では諦めきれていないのだ。体は正直である。

「この前のこと、ちゃんと説明しようと思って・・・」

 そう言いながらラブは後ろ手に扉の鍵をかけるなり、思いっきりアースに抱きついてキスをしてきた。

(ちょちょちょちょっ!?)

何もこれが初めてではない・・・というか、恋人同士として、それなりにやることは何度もやってきた仲なのだ。

こういう時にはどうすればいいか、体が反応してラブをぎゅっと抱き締め返した。

軽い口付けはつかの間、ラブは舌を差し入れ、より濃密な行為を求めてきた。

(今日のラブは積極的だなあ・・・

でも、俺、皆が見ている前で盛大に振られたはずなのに。

わけわかんないよ)

お互いの息遣いや体温を感じ、段々と体に熱がこもってくる。

顔を離すと、ラブは開口一番にこう告げた。

「アース! 私、アースが嫌いになったからあんなことしたわけじゃないから・・・

 自分たちだけ幸せになるより、空の平和だとか、まだ他にやることの方が大事だと思ったから、

 でも、私、アースに酷いことしちゃったから、

 それで、その・・・こうすれば、アースが好きだって、信じてもらえるかな、って・・・」

 いつもの凛々しい姿とは全然違う、もじもじと顔を赤らめた可愛らしい仕草にじーんときて

アースはまた、彼女をぎゅっと抱き締めた。

「うん、信じるよ、ラブ」

(ああ、やっぱり、俺はラブが大好きなんだな)

「アース、ありがとう。

 ごめんね、何の相談も無しにあんなことしちゃって。

 でも、あなたならわかってくれる・・・よね?」

「うん、さすがにショックだったけどさ。でも、そのほうがラブらしいよ。

 俺が嫌われてたわけじゃなくて、本当に良かった」

 ほっとしてラブははにかんだ。

「それで、空が平和になったら、改めて、私と結婚して欲しい。

 だから、それまで、他の女の子と浮気なんてしないでね?」

 浮気という単語にアースはドキッっとしてしまう。

昨夜ふらふらと、酒場のお姉さんに誘われるままに家に泊まらせてもらい、

あんなことやこんなことをしてきたばかりなのだ。

「・・・アース?」

「え!? あ、うん、大丈夫、大丈夫だって! アハハ・・・」

 沈黙したアースにラブは不思議そうに呼びかけ、その声に反応してアースはあわてて返事をした。

(えっと、昨日のあれは・・・本番はやってないし! ノーカウント! ノーカウントってことで!!!)

「アース。今夜はずっと一緒にいるつもりで来たから、

 おわびの代わりに、今日は私が・・・いっぱい・・・して、あげるからね」

 顔を真っ赤にしてうつむいて、最後の方は消え入りそうな声でつぶやいた。

(か、カワイイ・・・)

愛する彼女にこんな事を言われて平静を保てる男はそういないだろう。

元々へたれなアース、

「じゃ、じゃあ、お願いしようかな?」

 なんて、間抜けな返事を返すのが精一杯だった。

二人はしばらくベッドでいちゃついていたが、ラブはふと思い出して疑問を投げかけた。

「ね、アース。昨日はどこに行ってたの?」

 質問した本人にとっては深い意図は無い質問だったのだが、

罪悪感のあるアースにとっては見透かされているようで。

「ゴメンラブっ!! 実は、昨日は酒場のお姉ちゃんに告白されて、家に泊まらせてもらって、

 それでその・・・エッチなことも、してもらったり・・・」

 知らぬが仏なんてことわざを思い浮かべる余裕もなく、青くなってつい白状してしまった。

「このっ・・・私というものがありながら!!! 何してたんだ、馬鹿! 馬鹿!! 馬鹿~っ!!!!」

 ラブは真っ赤になって、グーでアースの胸や頭をぽかぽか殴る。

「わーっ、ゴメン、ゴメンってば!! 絶対、絶対もうしないから! 許して~」

「何よ! 美人でスタイルが良ければ誰だっていいの!?

 今まで私と積み重ねてきた想い出なんて、どうでもよかったの・・・?」

 さっきまでの勢いはどこへやら、今度は泣き始めてしまった。 

「そんなことないって!

 俺、今日ラブと一緒にいて、やっぱりラブが大好きだって何度も何度も思ったんだぜ?

 そ、それに、昨日は本番まではしてないし!」

「本当?」

「本当だって!

 大体、ここで嘘つくなら、最初っから昨日は浮気しちゃいましたーなんて言わないし、

 俺、バカだから隠し事も得意じゃないし」

 ラブはうー、と複雑な表情をして、しばらく何かを考えていた。

 

「アース、ごめんね」

「?」

 なぜ浮気した側の自分が謝られているのか、アースは全く話が読めなかった。

「今朝、ライコウに叱られたの。

 もし、アースが他の女の子に誘われてどっか行っちゃってたとしても、

 結婚式を台無しにした私には、浮気だなんて怒る権利は無いんだって。

 だから、ごめんなさい。

 ついカッとなって叩いちゃったけど、アースはなんにも悪くないんだよね」

「ラブ・・・」

 元々冷静な判断力を持っているラブは、自分の非を客観的に判断し、素直に認めた。

「皆がひそひそ話してたんだ、

 アースが帰ってこないのは本当に浮気してるからじゃないかとか、

 私たち、幼馴染でずるずる来たけど、

 本当は好きじゃないのに気付いて、諦めさせるためにあんなことしたんじゃないか、とか。

 もちろん私はそんなこと思ってないよ?

 けど、まさかアースが本当に酒場のお姉ちゃんについていっちゃったなんて思わなかったけど」

「だからゴメンって。もう絶対にしません」

 アースはいつもより丁寧な言葉で、頭も下げて誠意を示した。

「ううん、謝らなくていいよ」

「でも、俺、ラブが好きなのに、他の女の子と・・・」

 言いかけるアースに、ラブは首を横に振って制する。

 “振られたんだから他の女の子と何しようが関係ない”なんて開き直ることも出来るだろうに、

それどころかなお謝ろうとするのは、彼なりの誠意であり優しさなのかもしれない。

「もしもこのままアースが帰ってこなかったらって考えたら、すごく胸が苦しかった。 

 しかも、本当にそんなことまであったんでしょう?

 だけど、それでもちゃんと私のところへ戻ってきてくれて、本当にありがとう。嬉しかった」

 そう言ってラブは微笑んだ。

「俺もさ、実を言うと、結婚式で振られたっていうのにラブと今までどおりに付き合っていく自信がなくて、

 その娘に酒場の仕事を紹介してもらって、艦を降りようかなんて考えてた。

 けど、ラブが来たら、頭より先に体が動いてた。

 さっきまで、どんな顔して会えばいいのかなんて考えてたのに。

 どれだけ頭で難しい事考えてても、本当はラブと一緒にいたいんだなあって」

 お互いに想いを伝え合って、二人は笑いあった。

物心つく前からずっと一緒にいて、結婚まで約束した仲なのだ。

結婚式が台無しになるなんて最大級のハプニングがあっても、

長年培ってきた想いまで簡単に消えるはずがなかった。

「結婚はまだしなくても、私はアースが大好きだからね。

 ちゃんと伝えたからね? 今度浮気したら許さないからね?」

 またすれ違いが起きないように念を押す。

「うん、絶対にしないから。約束するよ」

「それから、これからも、ピース空賊団の仲間としてよろしく頼むぞ?

 早いところ空を平和にしないと、いつまでたっても一緒になれないんだから」

「わかってるって。俺、隊長だもんな。

 もっと強くなって、悪いやつらをぶっ潰してやるぜ!」

「もう、アースったら・・・」

 そんなこんなでこの晩は、愛を確かめるべくもう一周こなしたのだった。

ラブがアースに、浮気相手の女の子と比べてどうだった、なんて言って困らせる場面も見受けられたそうである。

 

 

その後・・・

結婚が破談になったはずの二人が、何故以前にも増して仲睦まじくなっているのか。

一部では、マンネリ化した生活に刺激を与えるためのヤラセだったのではないか?

なんて噂まで飛び交ったそうである。


 
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