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真恋姫無双~風の行くまま雲は流れて~第21話

第21話です

皆さんのところは桜咲いてますか~

2010-03-28 18:49:45 投稿 / 全9ページ    総閲覧数:8278   閲覧ユーザー数:7550

はじめに

 

この作品はオリジナルキャラを主役とした恋姫もどきな作品です。

 

原作重視、歴史改変反対の方

 

ご注意下さい

 

 

戦場という場所は清々しいまでに平等だ

 

誰もが生き残りたいが為に

 

目の前が敵を殺し

 

誰もが死にたくないと望み

 

儚い命を散らして逝く

 

命の価値は平等なのだと

 

戦場でこそ実感できる

 

既に死んでいった者も

 

今生を実感している者も

 

平等に

 

彼女の餌食となっていく

 

そこには身分の差も

 

歳の差も関係なく

 

ただ順番に

 

彼女に命を狩られて逝く

 

 

アレは

 

 

彼女は

 

 

なんと美しいのだろう

 

 

彼女が腕を振るたびに

 

 

真赤な華が咲いてゆき

 

 

彼女が腕を振るたびに

 

 

散ってゆく

 

 

目の前に立つ者は

 

ただその順番を待つ

 

その様は

 

赤く染まる彼女は

 

なんと美しいのだろう

 

あるものは唯立ち尽くし

 

散って逝く

 

あるものは恐怖にかられ叫び

 

散って逝く

 

見ろ

 

次は俺の番だ

 

はははha…

 

あるものは

 

渇いた笑いを浮かべ

 

そして散って逝く

 

 

「ぎゃあああ」

「た…たす」

「うわああああ」

 

呂布を前に曹操軍の兵達は成す術もなく死んでいく

突然の暴風雨に立ち向かうのではなく、しかし逃げるでもなく…その場に立ち尽くす、信じられないものを見るように

その中を進む呂布は進む

まるで子供が木の枝で草原の草を払うように呂布の腕が振られれば

四体を飛ばし、唯の血肉と化していく

呂布の周りに肉片の山と血の池が浮かび上がった頃

 

ようやく彼らは正常な意識を取り戻す

 

恐怖という正常な感情を

 

それはあっという間に伝染して行き

 

恐慌の津波と化していった

 

「逃げろおぉぉ!」

「化け物だあぁぁ!」

 

剣を捨て、槍を捨て

精強を誇る曹操の軍は意地も誇りも捨て我先にと逃げ出す

 

逃げ出す彼らの

 

背を

 

頭を

 

赤兎馬に跨った呂布は踏み潰し、踏み越え

 

曹操の喉下を目掛けて

 

呂布は進む

 

 

「一旦引きなさいっ!体制を立て直す!」

 

もはや先陣の再構築は不可能と判断して華琳が叫ぶ

 

「退けえっ!」

「陣まで下がれ!」

 

春蘭、秋蘭の命令に先頭から走ってきた…否、逃げてきた兵達が意図を組み、ようやく落ち着きを見せ始める

 

「此処で防御陣を組み、構えろ!何としても奴の突破を防ぐぞ!」

 

集まる兵に春蘭が檄を飛ばし

 

「華琳様!本陣までお下がり下さい!此処で我らが留まり奴を止めます!」

 

主へ向け秋蘭が進言する

 

「解ったわ…一刀、沙和、真桜!親衛隊を引き攣れ下がるわよ!」

 

軍を集結させ、なんとか防御陣を組んでいく最中、華琳が声をかける

 

 

 

 

まさかあれ程の武とはね…董卓軍、いえ彼女の切り札に対する採点が甘かったわ

 

 

 

 

今尚、断末魔の声が上がる先を見て華琳は舌打ちをする

 

「待って!まだあの中に凪ちゃんがっ!」

 

沙和の悲鳴に一同が振り返る

 

「なんやて!?」

 

曹操軍の先陣を切り、今だ戻ってこない親友の姿に真桜の顔が青褪める

 

「くっそ!」

 

そして誰が声を発する前に走り出す者が一人

 

「一刀!!」

「隊長!?」

「ちょっ!?待ちぃな!」

 

連られるように走り出す真桜

 

「真桜ちゃん!」

「待ちなさいっ!沙和!!」

「か…華琳様!?」

 

同じく走り出そうという沙和を押し留める

 

「貴女まで出たら兵を誰が纏めるの!?」

 

反論は許さない

 

そう言ってのける覇王の瞳

 

 

 

 

あの馬鹿!

 

 

~左翼~

 

「比呂さん!」

 

斗詩の叫びに比呂が頷き

 

「重槍隊前へ!中央の軍を援護するぞ!弓兵は援護射撃!防御陣構築の前までで良い、奴らの脚を止めろ!」

「「「おおおおお」」」

 

命令に従い素早く動き出す袁紹軍

 

「斗詩!お前は麗羽様の下へ!本陣への突破、及び奇襲に備えろ!!」

「はいっ!」

 

自分の部下を引き連れ走り出す斗詩

 

 

 

あれほどの隠し玉を持っていたとは

 

 

 

内心の焦りを出さぬ様、大きく息を吸う比呂

 

 

 

そして

 

 

 

「…月殿っ」

 

 

 

虎牢関の城壁、その頂点に立つ彼女を見る

 

持久戦?…否、彼女はつける心算だ…この戦いに決着を

 

戦場であんな目立つ鎧を纏い呂布に命令をして見せた

 

そして

 

自分が董卓であると

 

「…詠殿でも止められなかったか」

 

月の行動に反対しないはずのない彼女を思い苦虫を潰したような表情になる比呂

 

「準備整いました!」

 

副官の声に再度頷き

 

「猪々子!」

「あいよ!!」

 

彼女を先頭に袁紹軍が動き出したその時

 

 

 

「おりゃああああああ!」

 

 

 

袁紹軍から躍り出た猪々子の部隊に突然突っ込んでくる騎馬隊

予想に無い横殴りに猪々子達が飲み込まれていく

 

「此処で奇襲か!?」

 

舌打ちと共に毒づく比呂

 

 

 

奴に釣られて此方が動くのを読んでいたな!

 

 

 

崖上から降りてきた騎馬隊に成す術もなく踏み砕かれていく袁紹軍

そして

 

 

 

…敵の軍師は詠殿だけではないな

 

 

 

いくら袁紹の独断で動く連合軍とはいえ、兵力ならびに戦術においては董卓軍の比ではない

袁家には悠がいるのは勿論のこと、劉備、曹操、孫策の下にも指折りの軍師が構えている

いくら呂布が無双とはいえ、是ほどまでに手玉にとられるとは

 

「隠し玉は一つではなかったという事か!」

 

絶妙の奇襲を仕掛けてくる敵の姿に額に汗が浮かぶ

 

そして騎馬隊が通り過ぎ

 

「猪々子!?」

 

無残に踏み潰された兵達の中に同じく倒れている彼女の姿を見つける

 

「猪々子!立て!奴らがまた来るぞ!」

「くっそ…脚が」

 

自らの剣を地面に突き立て立ち上がろうとする猪々子だが、その脚は本来の方向とは逆の方向に折れており、剣を梃のように地面に掛け這いずるのがやっとであった

 

踵を返して再度迫り来る騎馬隊の姿に比呂は弓を構え

 

「弓隊構え!」

 

己が矢を放たんとしたその時

 

「させへんでえぇ!!!」

 

突然自身に向けて振り下ろされる飛龍偃月刀を交し尚も弓を放つ比呂

 

ぎゃ

 

二本同時に放たれた矢に先頭を走る二人の兵が転げ落ち、先頭の転倒に後方の騎馬隊が飲み込まれていく

 

そこにさらにと降り掛かる袁紹軍の矢の雨

 

「ちぃ~惜しいなあ!また合うたなあ…別嬪はん」

 

己が武器を肩に担ぎにししと笑いかけてくる張遼

 

「高覧!」

「はっ!」

「ちょっ無視すんなや!」

 

目の前の敵将には目もくれず比呂は副官を呼び出す

 

「いい…文醜将軍を連れて本陣まで退け。その後はお前が後を継ぎ本陣の守備、文醜将軍には顔良将軍が引き継ぐと…行け!」

「はっ!」

「あくまで無視かい!」

 

高覧に担がれ、重槍隊に囲まれる様に引いていく猪々子を確認し、ようやく張遼に向き合う

 

「言っておく」

「…あ~ん?」

 

馬上で暇そうに髪の毛先を弄くる張遼が顔を上げれば

 

「二度目は無い…死ね」

 

 

 

 

ええ男やん

 

この間の腑抜けた面とは別人やな

 

 

 

視線だけで相手を殺さんとする比呂の瞳に胸が高鳴るのを感じる

 

「まあ、それはこっちの台詞やわ…華雄の様にはいかんで?」

 

ポンポンと馬の首を叩き、馬から下りる張遼

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ…死合おうや」

 

 

 

 

~右翼~

 

「はああああ」

「ちっ!」

 

二人の武器と武器がかち合い

 

「まさかあんたから奇襲を受けるとはね…華雄?」

「はっ!…ぬかせ」

 

左翼と同じくして奇襲を受け、両軍入り乱れの戦場で雪蓮と華雄は対峙していた

 

「大層な包帯だけど…その血が直に上る頭も取り替えてもらったのかしら?」

 

見れば華雄の両肩には包帯、先の戦いで比呂につけられたものだろう

まだ完治というわけは当然無く、既に包帯には血が滲みあがっている

 

雪蓮の挑発にも華雄は動じず…むしろ己が武器を地面に突き立て、真直ぐに此方を見据える

 

「そうだ」

「???」

 

いつに無い彼女の態度に雪蓮は首を傾げる

 

「私が…もっと冷静であったなら」

「華雄?」

 

視線を雪蓮から自分の手に在る斧に移す華雄

 

「私が…あんな失態を犯さなければ」

「…あんた」

 

その手に持つ斧が小さく振るえ

 

「あの方が…あんな処に立つ必要は無かったのだ」

 

華雄の視線に連られて見上げれば

真紅の鎧を纏い、遠くを…連合本陣を見据える董卓

 

「…華雄」

 

華雄の瞳の奥の悲しみを汲み取る雪蓮

 

「孫策よ、今少し私に付き合ってくれ…愚かだった私の…過去の私の弔いに」

 

自嘲気味な笑みを浮かべ斧を構える華雄

 

 

そこには

 

もはや己の意地も誇りも捨て

 

唯自分が主が為に武を振るうと決意した

 

勇将の姿があった

 

 

 

 

貴女が…こんな変わり方をするなんてね

 

 

 

南海覇王を構え目を瞑る雪蓮

 

 

 

 

やがて

 

 

 

 

「ええ、孫伯符!己が全ての力を以て…我が眼前の敵に挑ませてもらうわ!」

 

 

 

 

真直ぐに

 

唯真直ぐに

 

華雄を見据える

 

 

乱戦の最中いつしか

 

誰もが二人の戦いに目を奪われていった

 

 

あとがき

 

ねこじゃらしです

 

ここまでお読み頂きありがとう御座います

 

というわけで董卓の乱中編…のさらに中編です。

 

相変わらず戦場の表現があれですが

 

まあ次回もこんな感じ

 

それでは次の講釈で

 

 


 
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