No.127860

輪・恋姫†無双 十話

柏木端さん

十話投稿です。
一気に時間が飛びました。
というわけで今回は完全につなぎの話ですね。
………見捨てないでください。

2010-03-03 16:25:20 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:2845   閲覧ユーザー数:2528

 

曹操と共に転戦すること約半年。その間曹操、劉備両軍の間の交友もかなりあったが軍を隔てて真名で呼び合う関係になったのは一刀と祐一の間だけ。しかもこの二人は厳密には真名ではない。

 

曹操は此処でとうとう黄巾党の本隊に狙いを定めた。各地の利に敏感な諸侯のいくらかが曲陽という所に本拠地を見つけ、そこに向かっているという情報を手にしたからである。

 

何より曹操・劉備の連合軍が黄巾党の糧食を焼き、本隊と分隊のパイプを切り、黄巾党の力をどんどん切り崩していった結果、黄巾党の力がかつてとは見る影もないほどに弱まったからであろう。

 

各地でその噂は流れ、劉備軍としてはかなりおいしい名声を既に得てはいるが、此処で引く必要も理由もない。

 

だが、いくら力が弱まったとはいっても斥候からの報告では本隊に居る黄巾党兵は約二十万。一つの部隊でどうにかできる数ではないことは明らかである。

 

しかし、本拠地に向かっている部隊は一つや二つ程度ではない。官軍三万五千を皮切りに袁紹軍三万、公孫賛軍一万、孫策軍二万、曹操軍二万、劉備軍一万、その他の諸侯あわせて計約十五万。

 

普通に戦えば、将や兵の質から考えてまず負けることはない。しかし、初対面の軍同士が連携を取り合うのはかなり難しい上に、諸侯はそれを良しとしない。

 

 

なぜなら、諸侯が求めるものは『黄巾党本隊の息の根を止めた』という名声という利益であるから。

 

 

しかし、諸侯たちは自分たちの部隊だけで黄巾党をつぶすことはできないとも考えているはずである。

 

それでも、他者とはっきりと連携して動けば功のうまみが減るため諸侯が伝令を送ることはしないだろうし、こちらから行動しても適当に利用されて裏切られるだろう。

 

なので諸侯の動き、自分たちの動きはある程度絞られる。

 

それは諸侯の動きに合わせてそれぞれの部隊が集結する時期に合わせて参戦すること。そして、黄巾党と諸侯の隙を見て敵将を討ち取り、名をあげること。

 

「―――というのが、現在の私たちのおかれている現状です。」

 

朱里の説明が終了した。

 

諸侯の思惑の話の時に桃香や愛紗が顔をしかめた以外には、時折祐一があくびをかみ殺してたことを除いて何事もなく。

 

「曹操さんが今回の支援で終わりだと言ったことも、おそらく同じような理由ではないかと…。」

 

連合軍として行動していた曹操・劉備軍であるが、本隊に向けて出陣するという段になって曹操から支援の打ち切りを申しだされた。

 

美汐の商談のおかげか、最後の支援は結構な量いただいたが。

 

黄巾党本隊の居所に関する情報は既に劉備軍もつかんでいてそこに向かうに当たっては問題はないが、

 

いきなりどうして?と言い出した桃香に対して、劉備軍のこれからとるべき行動も含めて朱里が進軍しながら説明をしていたのである。

 

「ま、そんなこと抜きにしたって、もともと曹操があそこまでして俺たちと手を結ぶことに利益があったようにも思えないし。あるべき姿に戻っただけともいえるけど。」

 

ちなみにこの場に居ない雛里は、曹操と行動を共にしていたときに手に入れた曹操軍の組織編成などについての情報を整理して、劉備軍の各員に各役割を再分配する作業をしている。

 

その結果、大将に桃香、将軍に鈴々と愛紗、軍師に朱里と雛里、輜重隊長に美汐、偵察部隊長に太郎、衛生隊長に次郎、工兵隊長に三郎、親衛隊長に祐一が任命された。

 

半年の間に次郎は後方支援をさせて欲しいと祐一に願い出た。「この迷いを振り切ったら自分じゃ無くなりそうで。そして迷いの残る自分のせいで誰かを危険にさらすのが嫌だ」と言って。

 

しかし三郎は、未だ覚悟の結論を出せずにいた。なので、とりあえず三郎には後方の役職を当ててくれと祐一は雛里に打診したためのこの配属である。

 

本当は太郎と祐一の役職は逆の方が能力的には適正なのだが、とある町で迷子になった祐一に偵察は心許ないと朱里が言い出したためこうなった。祐一は予想外の反撃に地面に手をついたとだけ言

 

っておく。

 

そんなこんなで、劉備軍は曹操軍の後を追うように、黄巾党本隊とその指導者のいると思われる曲陽へ向けて進軍を開始した。

 

 

「もうヤダーーー!ご飯がちょっとしか食べられないのも、ずーーーっと天幕の中に居なきゃいけないのもー!」

 

黄巾党の陣地の中、ひときわ異常に大きな天幕の中に少女の悲鳴が響いた。……天幕の中には三人の少女しかいないが。

 

「天和姉さん…しょうがないじゃない。曹操と劉備っていうのに糧食ほとんど焼かれちゃったんだもの…」

 

「仕方なくないわよ人和!いつもみたいに別の所に行けばいいじゃない!」

 

「地和姉さん、私たちの活動は朝廷に眼を付けられてる。私たちだけでこっそり抜け出せるならともかく、連中を連れて移動したら狙い撃たれるわよ。」

 

「今までは移動できてたじゃない!」

 

「今までは、ね。色んなところにいた…黄巾党?の人たちが、どんどん此処に集まってきてるし、私たちが抜け出そうとしたら今までみたいについてくる人数は二、三万じゃ効かないかもしれない

のよ?」

 

「まったくもぅ。何でこんなことになったのー?」

 

「姉さんのせいじゃない!『わたし、大陸のみんなに愛されたいのー!』とかなんとか…」

 

「えー。それならちーちゃんも、『大陸、獲るわよ!』とか言ってたじゃない!」

 

「それは歌で獲るって意味で…!」

 

二人の姉の言いあいを見ていた人和がため息をつき、どうなだめようかと思い口を開こうとすると

 

「張角さま!張宝さま!張梁さま!よろしいでしょうか!」

 

天幕の外から呼ばれた。

 

さっと天和、地和と目配せすると二人はすっと姿勢を直して言いあいをやめる。

 

「……どうぞ。」

 

「失礼します!」

 

「どうかしたの?そんなにあわてて。何かあった?」

 

「はい!それが周辺を見回りに出ていたものが多方向から軍勢を確認したと!!」

 

「軍勢ー?」

 

「詳しくわかりますか?」

 

「はい!東方から曹と劉、南方から孫と官軍、北方から公孫、袁の旗がこの砦に迫ってきております!!」

 

「何ですってー!?」

 

 

劉備軍出陣から二日後の昼。

 

曹、袁、公孫、劉、そして官軍のものと思しき漆黒の華一文字と何の旗がひるがっていた。

 

そこに最後に到着したのは孫の旗。

 

「いい感じに集まってきてるわねぇ。」

 

「計算通りだな。これだけ集まっていれば互角以上に戦えるだろう。」

 

「じゃが、儂らの参戦する場所が無ければ功名も立てようがないぞ?」

 

「ふむ…穏、城内の地図を。」

 

「はーい…え~と…ありました、これですー」

 

作戦を考える孫呉の一同。この場で出た結論が、本人たちの預かり知らぬ所で、まったく知らない人間に多大な影響を与えるのだが、それはまた別の話。

 

孫呉の作戦決行まで、約六時間。

 


 
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