No.124959

恋姫のなにか 6(前)

くらげさん

恋姫のなにかの新作。今回はセレブ組登場。
長くなったので前後編です。同時投稿

2010-02-17 11:14:41 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:18364   閲覧ユーザー数:10889

いつも御愛顧有難うございます。いつもの妄想全開キャラ崩壊です。

今回はパロネタ少な目、キャラ崩壊大幅UPです。

月と華琳の性格がえらい事になってます。両キャラが好きな方は注意。

 

長くなったので二分割してます。

「―――ねぇ?」

 

ゲームのコントローラーを握り、テレビから溢れる光で顔を濡らし、儚げな顔付きの雪蓮が声を上げ、ベットの上で漫画を読んでいた一刀がなに?と声を上げる。

 

「私達、付き合ってから何回ぐらいキスしたっけ?」

「・・・・・・200回はしてんじゃない?」

 

付き合いだしてから徐々に他人行儀は成りを潜めていき、無遠慮さが首を上げて。

初々しさ、会えるだけで、手を繋ぐだけで幸せに浸れていた頃は疾うに過ぎ去って。

 

「―――――もう無理かなぁ、こんなキス」

 

テレビ画面では、互いの命を貪るかのような口付けを交わす恋人達。

妄想でも、朧の住人でも、ソレを成し得る事は今の彼女には眩しく切なく。

このまますれ違い、互いを思えなくなり分かれて行く日が来るのだろうかと、在り得てしまう未来を嘆いた。

 

 

 

 

 

 

「分かる?!こんな風になって、一刀が『なら今からやってみる?昔みたいに』ってな感じで襲い掛かる未来を私は迎えたいの!」

 

所変ってとある喫茶のオープンテラス。テーブルに拳をガンガンと打ち付けて、注文したドリンクを波立たせる美人が一人。

 

「無理」「ありえねーですよ?」「ZZZzzz」

 

速攻で「諦めろ」と異口同音に笑顔で罵ったのは二人。

雪蓮にとって竹馬の友、冥琳と大富豪に負けないパイプをそこら中に撒き散らす、ともすれば世界征服をなし得れる唯一の存在・月。

 

「ちょっとは考えてよー!ただでさえお義姉さん達は曲者揃いなんだからー!」

「だから無理だと言っているだろ?同じ学校に通えていた時に唾付けられなかった時点でお前に明るい未来は無いよ」

「というか、本来の自堕落・無計画・無節操な本性隠して仲良くなってる時点で恋人になるなんて諦めてかかるべきですよー?」

「ZZZZzzzzzZZZZZzzzzz」

 

二人は揃って袋叩きにすると、寸分違わず雪蓮の小遣いが化けたドリンクを手に取りチューと中身を啜る。

華琳は変わらず夢の中。幸せそうにヨダレを腕に付けながら、イビキこそ掻かずにではあるが見事な『前日No睡眠でした』の図だった。

「こンの・・・・・・人が真剣に悩みを相談してるってのに・・・・・・」

「他人の不幸は蜜の味というだろう?」

「もし万が一何かの不幸で付き合えたらノロケぐらいは聞いてあげますよ。無事付き合えれば。の話ですけどねー?」

「お願いだから何か考えてよぉ!」

「ZZZzzzZZZzzz・・・・・・・」

 

雪蓮は半ベソかいて詰め寄るが、冥琳はうっとおしいという視線でソレをぶった切った。

月はニコニコしながら「店員さーん、バニラアイス追加~♪」と手を上げて可愛く注文を追加している。

 

「大体な、何の見返りもなく大魚を釣ろうなんておこがましいとは思わんのか?」

「ZZZzzz・・・」

「今お茶奢ってるじゃないのよぉ!」

「あれ?コレ今までの迷惑料じゃないの?」

「アンタマジぶん殴るわよ・・・」

「ZZZzzz・・・」

「あれぇ?もう直ぐ試験なのに講義ノート要らないんですか?あ、もしかして留年希望?」

「鬼!悪魔!」

「雪蓮?あんま調子ブッこいてるとアクセサリー付けてドーバー海峡横断させますよ?」

 

もうこうなっては白旗あげざるをえない。

こんな連中にしか相談出来ない己の交友関係を呪うばかりの雪蓮だった。

 

「というか、そもそも私は件の『一刀きゅん』の事何にも知らないんですけど?」

「あー、そう言えば華琳と月は会った事は無かったか?」

「え?!冥琳会った事あるの?」

「義妹の彼氏だからな」

「違うわよ!一刀はフリー!違う!私の彼氏になる予定なの!私が落札済みなの!Am○zon仕事しろ!」

「雪蓮、親友の義妹の彼氏寝取るとか人として終わってるよ?」

「ZZZ・・・・・・ZZZ・・・」

「だから!」

 

女三人寄ればなんとやら。近づけば眉を顰めたり肩を落としたりする人もいるかもしれない内容だったが、外から見ていれば美人が四人いるわけで。

 

「ねーねー?俺らと遊ばない?」

 

こういうのが寄って来たりするわけで。

 

「間に合ってるから消えて」

「うせろ、社会的に消すぞ」

「鏡でテメーの面見てから布団に包まってほざいてくださいね?」

「華琳いまーす・・・ZZZZzzzz」

 

美人のガン付けは恐ろしい。ガン付けしたのは雪蓮と冥琳で、月は愛くるしい少女の笑みだったが言ってる事がデンジャラスすぎる。

華琳はきっと普段の習性が出たのだろう、出席の返事をしていた。

雪蓮のガン付けは元より、冥琳のガン付けも筆舌に尽くし難い恐ろしさを秘めていた。

 

「な、なんだよ!ちぃっとばかりツラいいからって付け上がりやがって!」

「アンタ如きに媚びるほど悪い脳味噌持って生まれてないの」

「こ、この「あ、こっちこっちー♪」」

 

雪蓮の煽りに反応したイマドキの若い兄ちゃんは、背後からノーネクタイでコワモテなスーツのお兄さんに羽交い絞めにされた。

 

「根性はあるみたいなんでコキ使ってあげてねー?」「わかりやした!」

 

恐喝に近い言葉を受けながら、スモークを窓に張られ、中を伺う事が出来そうにない真っ黒なベンツに放り込まれる若い兄ちゃん。

ブロロロと去っていく車に入れ替わるように同じ車種の車がもう一台。どちらも助手席側に【董】という文字が描かれている。

「思わず合掌しちゃったわ・・・相変わらずねぇ・・・」

「売られた喧嘩は値段提示される前に買え。が家訓です♪」

「プライドが高いのは結構だが、程々にしておけよ?」

「冥琳は随分優しいよね?アレでよく溜飲下がるねー?」

「閻魔の判断基準がお前なら、どんな人間でも天国行きだろうさ・・・」

 

やれやれ。と被りを振って残ったドリンクを飲み干し―――さて、いい時間潰しだった。と冥琳は立ち上がる。

 

「あれ?冥琳もう行くの?」

「ああ、今日は久々にフリーなんでな、義妹と買い物をする予定なんだ」

「可愛がってるわねー。まぁ私もシャオが明命みたいに可愛けりゃそーするだろーけど」

「姉としてはシャオぐらい我侭を言って欲しい所だが・・・まぁ今はまだ仕方あるまい」

「何処でお買い物するのー?決まってないならウチで買ってねー?」

「ZZZzzz華琳おきてまーす・・・ZZZ」

「今日は明命の要望通り行くからな、ウィンドウショッピングで終わるかもしれん」

 

可笑しそうに、幸せそうに笑いながら冥琳はそう言うとケータイを取り出し―――義妹からのメールを見てその笑みを邪悪に歪めた。

 

「ハハハハ。雪蓮、お前いよいよヤバいぞ?」

「へ?」

「ウチの義妹な、もう直ぐ其処まで来てるんで合流するそうだ―――ちなみに一刀先輩と一緒。だそうだ」

 

冥琳は哂いながらそのメールに返信をしていく。鼻歌が聞こえそうな程気分が良くなった冥琳だが、雪蓮の機嫌は反比例だった。

 

ちなみに、月の眼も輝きだした。

 

「はぁ!?」

「わぁー、噂の『生一刀きゅん』だぁ~♪ てか雪蓮の公開処刑じゃんww超ウケるww」

「言うに事欠いて公開処刑とはなんだぁ!!」

「華琳!華琳起きろ!素晴らしいショーが見られるぞ!」

「華琳宿題やってませーん・・・・・・アイタッ!」

 

返信をし終えた冥琳がでこピンを華琳に打ち込んで無理矢理起こす。その眼は爛々と輝いていた。

「な、なに?ちゃんときいてたよ?確かに龍が○くの声優陣がオール俳優なのはどうかと思うよね?!」

「ちゃんと声優もいるわよ・・・じゃなくて!まだ付き合ってるって決まったわけじゃないし!一刀くんが女の子と買い物してるなんて日常茶飯事だし!」

「この前は二番目の妹さんとデートしてたんだっけ?」

「違うわよ!『友達同士』が会ってただけ!本人そう言ってたし!」

「姉に乱入されて屍山血河を作るほどの争いを起こしてる時点で照れ隠しだろ、それ」

 

雪蓮と蓮華の仁義無き争いは、本人達の口からは語られてはいない。

いないが、目撃者多数の時点で両者乙である。

閑話休題、話の流れが全くつかめない華琳ではあるが、多分いつものアレだろうと判断してみた。

 

「えっと、私はお茶漬けの元はわさびがベストだと思うの!でも個人的に松茸のお吸い物でお茶漬けするのはアリだと思う!」

「アンタは適当に話するのやめなさい!」

「え?雪蓮のダイエットの話でしょ?」

「違う!私はまだ太ってない!」

「夜食と称してコンビニのホットスナック買い占めてるようじゃ近い未来だねぇ、お・で・ぶ・ちゃん♪」

「踏みッ潰すぞ貧乳チビ!」

「テメー、私の身体的特徴がどうしたとコラァ!!」

 

どちらのワードに反応したかは定かではないが、確かに月の声色が変わった。目付きも変わった。

さっきまで日溜りを思わせる笑顔でチクチクと言葉攻めをしていたとは思えない、破壊者のソレだった。

 

「ちょ、ちょっと月も雪蓮も落ち着きなよ!公衆の面前で頭の悪さ披露するとかみっともないって!」

「「テメーには死んでも言われたくねーんだよダメ人間!!」」

「まぁそうなんだが、二人の言っている事は正しいんだが、流石に可哀想過ぎるぞ・・・」

 

と、その時である。

 

「お、お待たせしました!・・・・・・お、おおおねえちゃん!」

 

先程まで話題に上がっていた冥琳の義妹、明命の声がして―――言葉の意味を理解した冥琳から、涙が零れた。

時間を少し巻き戻し、冥琳が明命からのメールを確認する少し前の事。ちょうど若いにーちゃんが四人に声を掛けたぐらいの頃である。

 

「先輩先輩、今日はありがとうございました!」

「んー?別に買い物付き合っただけだろ? それに何も買ってないし」

「あう・・・どれも素敵に見えて迷ってしまうのです・・・」

 

普段忙しく彼方此方を飛び回っている冥琳。

未だ「冥琳さん」と呼ばれる事に不満のあった冥琳は義妹との関係を進ませようと一刀に策を練る様指示を下した。

同じ様に明命も一刀に助けを求めた。此方は気を使ってくれる冥琳に何かお礼をしたいというものだったが。

なんでこういう時の息はバッチリ会うんだろうと姉達にも抱いた疑問を腹に抱えながら一刀は一計を案じた。

というより、買い物ぐらいしか思いつかないとサジを投げた。冥琳には文句を言われ、明命には感謝された。

 

「まぁ首傾げながら選んだものより、自分が良いと思った物の方が冥琳先輩だって喜ぶさ。俺の意見を立てようとしなかったのも偉かったよ」

「そ、それについては申し訳ないことを・・・」

「なんで謝るのさ。明命が選んだプレゼントじゃないと、後で俺がお仕置き喰らうんだぜ?」

「そんな事ないと思いますけど・・・・・・でも、結局何も選べませんでした・・・」

 

眼に見えて落ち込んだ明命を見ると、普段は元気一杯で笑顔が似合う彼女だけに一刀も責任を感じた。

 

「きっと私、大きくなっても今日の事は一生忘れません。それぐらい、嬉しかったのです・・・」

 

だから恩返しがしたいのだと、明命は言った。己も同じ思いを抱いて歩んだ工程だけに、明命の辛さも痛いほど分かる。

 

(けど・・・コレばっかりはなぁ・・・)

 

過去、明命と同じ思いを抱き、けれどセンスなんて欠片も持ち合わせてはいなかった一刀は春蘭に何をプレゼントしたら良いか訪ねた事がある。

春蘭の答えはテンプレートそのままの【自分が選んだ物】だったのだがそれに一刀がフテくされ、春蘭が進めてくれた物をそのまま選んで―――鼻血が出て、瞼が腫上がるまで殴られた。

それだけ殴られたという肉体的な痛みもかなりの物だったが、普段は明るい春蘭が眼に涙を溜めて叱る様は精神的に一刀を少し成長させた。

一刀を殴ったという事実に恋がかなりキレたが、他の姉達の協力もあって何とか“御礼参り”だけは避けられた。

後で聞いたら他の姉達(特に凪)もかなりキていたらしいが、まぁ今更の事である。

 

「あの、先輩も・・・あ、何でも「俺もねーちゃん達とは血が繋がってないけどさ、そういうので他人に頼るのは良くないよ」」

「ど、どうして考えていることが?!」

「俺も昔同じことやったからなぁ。進めてくれたアイディアをそのまま採用して、ボッコボコになるまで殴られたよ」

「・・・どうして、自分で考えた物じゃないと、喜んで貰えないのでしょうか?」

「ベタな返しだと【気持ち】とか言うんだろうけどなぁ。実際、バレなきゃ良いじゃんって切り替えしたし」

「送る側としては、喜んでもらえればそれで十分なのです・・・」

 

フテくされるように俯いてしまった明命に、一刀は思わず笑ってしまった。

 

(この子は、そっくりそのままあの時の俺だ。殴られて、泣かれて。説教されて気がついたらまるっきり俺だ)

けれど女の子に手をあげるなんて事は一刀には考えもつかない。

人道に外れてしまえば姉だろうがぶん殴るが、きっと手を上げられる様な事をしでかすのは自分の方だ。

でも、それでも姉達は自分を見捨てないでいてくれる。だからこそ、此方も何かをしたいのだ。感謝の気持ちを、形で表したいのだ。

 

「―――なぁ、明命。このプレゼントで喜んでくれればーなんてのは、俺たちの思い上がりだよ」

「へ?」

「上げたい物プレゼントして、微妙な顔されたら次は同じ物あげなきゃいい。

 確かにリサーチして、欲しがってる物あげるのは良い事だし綺麗なやり方だと思うけどさ?

 俺達が上げたいプレゼントってそんなんじゃないだろ。大体、明命が必死になって探してるような物がホイホイ転がってる訳ない。

 そんだけ明命が冥琳先輩に喜んで欲しいんだから、そりゃ見つかんなくて当たり前」

 

怒られていると思っているのか、明命は溌剌とした笑顔が幻だと思えるように、小さく小さくなってしまう。

 

(やっぱ、春蘭みたいにはいかないなぁ)

「それに、一回お礼したぐらいで満足できるか?」

「―――あ! で、出来ないです!絶対絶対無理なのです!」

「だろ? だからさ、何回に分かれちゃっても良いじゃん。冥琳先輩なら待っててくれるよ」

「で、でもでも!その間にまた私は冥琳さんにご迷惑をかけてしまうのです・・・」

「あー、これは俺が言われたんだけどさ。なるほどなーと思ったわけさ、目から鱗ってこの事だと思ったね。

 『面倒や迷惑や思たら、その時に世話焼くんやめとるわ!』ってな。ま、俺の場合ねーさんに言われたわけだけどさ」

 

キョトンとした顔で言葉の意味を反芻する明命に、今度こそ一刀は笑ってしまった。

 

「な、なんで笑うんですか!」

「ご、ごめん・・・・・・多分俺もそんな顔してたんだろうなぁって思ったらつい・・・ぷっ!」

「ず、ずるいのです!なんか悔しいです!」

 

顔を真っ赤にして怒る明命にゴメンゴメン。と謝ってから深呼吸を繰り返して何とか人心地。

 

「冥琳先輩なら分かってくれるさ。あの人すげーんだから」

「凄いのは私も知ってるのです・・・」

 

まだ納得出来ない様子の明命。それはそうだろう、一刀だってアレから大きくなって―――漸く言葉の意味を理解しだしたのだから。

 

(これは反則技だけどなぁ・・・)「なぁ明命。とっておきのプレゼント、明命なら上げられるけどどうする?」

「せ、先輩ずるっこです!さっき見つからないって言ったのです!」

「うん、このままじゃ絶対見つからない。現に明命は見つけてないだろ?」

「そう言われると降参なのです・・・」

「ま、悪い先輩からのカンニングって訳さ。どうする?」

 

うーん。と明命は悩んでいた。真面目な彼女は『カンニング』という言葉が引っ掛るのだろう。それを狙っての言葉繰りだったわけだが。

本来なら自発的に行って欲しい。バレたら、死ぬほど感謝されるか死ぬほど怨まれるかのどちらかだ。

それに、もし今教えたとして―――明命が成長した時、自分から出来なかった事が後悔になって欲しくはない。

そのとき、明命のケータイが鳴った。あわあわと相変わらずの覚束ない手つきで操作して――恐らくは冥琳からの返信だったのだろう。

 

「先輩。教えてください」

「分かった」

 

覚悟を決めたのか、眼には力が宿っていた。

話しながら歩いていたので、冥琳達がいる喫茶店とはもう眼と鼻の先だったので、一時足を止めて策を授ける事にした。

 

「それで、とっておきってなんですか?」

「ん?メッチャ簡単。“冥琳さん”じゃなくて、“お姉ちゃん”って呼んであげたらいい」

「・・・・・・へ?」

「な?明命だけじゃ絶対見つけらんないプレゼントだろ?」

「た、確かに思いつかない―――じゃなくて!そんなのプレゼントじゃないです!それに・・・そんな大それたこと・・・」

 

多分、いや確実に其処には申し訳なさと恥ずかしさがあるのが直ぐに分かった。何せ一度通った道だ。

だからこそ、相手がどんな反応をするのかも手に取る様に分かる。

 

「騙されたと思ってやってみ?」

「無理です!絶対無理なのです!」

「恥ずかしいから?」

「はい! ではなくですね!その、冥琳さんに申し訳ないといいますか・・・」

 

思わず冥琳の心境を暴露したかったが、赤の他人、精々が知り合いと呼べるかどうかという程度の関係でしかない自分がバラしていい事ではない。

 

「もし喜ばなかったら俺に強要された!とか言っていいからさ」

「そんなの余計無理なのです!」

「じゃあどうする?見つかるかどうかもわかんないプレゼント探して、見つからなかったって落ち込んで。それを何時まで続ける?」

「でも・・・・・・」

 

意外に、この子にも鉄拳制裁の方が効くのかもしれないなぁと一刀は思った。冥琳は間違ってもやらないだろうが。

 

「コレは俺の経験論だけどさ。 夜に溜息吐いて悩んでる姉ちゃんの姿見てみ?どうしたんだろうって思うよな?」

「思うのです・・・」

「理由聞いてみて、自分に出来る事なら何でもやろうって思うよな?」

「思うのです・・・」

 

我ながら底意地が悪いなぁとも思うし、巧いやり方じゃないなぁとも思った。

しかし、これは言わば罰なのだ。姉の気持ちを鑑みれない、出来の悪い“弟・妹”(自分達)への。そう割り切って貰う事にした。

 

「・・・・・・理由が、“どうしたらお姉ちゃんって呼んで貰えるんだろう”って悩みだったら、死にたくなる。

 意気込んでたさっきまでの自分、ぶん殴ってやりたくなる。そんな事すら出来なかった自分、許せなくなる」

 

ホンの一瞬の一刀の後悔。それが眼に灯ったのを明命はキチンと見つけた。 

 

(そっか・・・)

「幸いっていうとアレだけどさ。まだ明命は全然セーフなんだから―――」

(先輩、ホントはこの話したくないんだ・・・でも、私の為に・・・)

「―――明命?」

「先輩。あの、その・・・・・・」

 

謝るべきでない。明命はそう思った。

この人はそんな言葉を望んでいない。そんな言葉が聞きたくて、辛い思い出を話してくれているんじゃない。

 

「私、頑張ります!」

「・・・おう!頑張れ!」

 

そして二人はまた歩き出して。

 

「うぅ・・・いざ呼ぶとなると緊張するのです・・・アドバイスが欲しいのです・・・」

「最初にデカイ声で叫ぶ。そうすれば、後は恥ずかしくなくなるさ」

 

一刀達からは冥琳達を確認出来たが、アチラはまだコッチを見つけていないのだろう。

 

「ほら、気付かれたら余計緊張しちゃうぞ?」

「うー・・・」

 

パンッ!と頬っぺたを自分で叩くと、気合を入れて一歩。

 

(この辺が、俺とは違うトコだよなぁ・・・眩しいっていうか、羨ましいっていうか・・・)

 

「お、お待たせしました!・・・・・・お、おおおねえちゃん!」

 

 

なんか一刀がいいおとこです。悔しい、でも(ry

後編に続きます。


 
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