No.122876

真・恋姫✝無双 仙人で御遣い 21話

虎子さん

あとがきに、Q&Aがあります。

拙い文章ですが、よろしくお願いします。

2010-02-07 04:47:42 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:3537   閲覧ユーザー数:2962

 

~豪臣の部屋~

 

「ただいま」

「お帰りなさい」

豪臣が帰ると、朔夜はお座りの状態で待っていた。

「どうしたんだ?何か言いたいことでもあんの?」

豪臣は、首を傾げてベッドに腰を下ろす。

「仙氣らしき氣を感じました」

「っ!」

豪臣は、勢い良く振り向いた。

「いつだ?」

「1時間ほど前です。二度感じました。おそらく同じ術者です」

豪臣は、淡々と答える朔夜の言葉の中から、気になる点を見つけた。

「仙氣を感じたんだろ?何で仙人じゃなくて術者なんだ?」

「豪臣や陳の仙氣とは、似て非なる物でしたから」

「・・・貂蝉のときも、仙氣に近い、って言ってたな?なら、貂蝉じゃないのか?」

豪臣の問いに、朔夜は首を振る。

「違います。貂蝉は変態ですが、氣に関しては澄んでいました。しかし、今回感じた氣は、濁りを感じましたから」

「澄んでいる、ねぇ・・・おぇ!」

(想像したら、気持ち悪くなってきた)

豪臣には、貂蝉が清らかな者である、とは言えなかった。

「うっぷ・・・ふぅ。で、1時間前だったっけ?その時間なら、丁度、李儒の様子を窺ってたか離れてすぐか、って時間だな」

「とりあえず、この天水に、善からぬ者が存在することを頭に入れて置いて下さい」

朔夜は、そう言って丸くなった。

(善からぬ、ね。それは、その術者なのか李儒なのか。はたまた両方か。キナ臭いことだな。ま、考えても仕方ない。そう言った頭を駆使することは、筆頭軍師様が何とかするだろ)

豪臣はそう考えて、床に就いた。

 

~賈駆政務室~

 

次の日の朝。

「ハァ?筆頭の地位が欲しい?」

豪臣は、李儒たちの話を聞いたまま詠に話した。

「何?ホントに、そんなこと言っていたわけ?」

「ああ。昨日の晩に聞いたばかりの話さ。鮮度バッチリの情報」

「あんた、莫迦じゃないの!?そんなことのためだけに、こんなことやる訳無いじゃない!」

詠は、怒鳴りつけてくる。

「まあ、俺もそう思うけどな。ただし、話し半分で頭に入れとけよ」

「は?何言ってんのよ?」

詠は、不審げに見てくる。

「だ~か~ら。あいつらは、嘘か真か確かにそう言ったんだ。俺に気づいて無いなら、言ってたことが奴らの真意。気づいていたなら、しばらくは、そう見えるように振舞うはずだろ?」

「・・・だから半分、ね」

豪臣の説明に、詠は肩を落とす。

「すぐには、ことを起こさない。そう見ておくわ」

「そうしろ。ついでに、その期間で出来るだけ味方を作っとけよ」

(俺の知る歴史通りに進むと仮定するなら、李儒の野郎は董卓悪政の立役者?・・・いや、黒幕になりかねない)

「そんなこと、あんたに言われなくても分かってるわよ!」

詠は、そっぽを向く。

「・・・でも、時間があるかもしれない、って分かっただけでも助かったわ」

そう言って、詠は、チラッ、と豪臣を見る。

「で、その・・・ありが、とう」

「ん。どういたしまして」

(素直じゃないねぇ)

赤面する詠に、豪臣は苦笑して答えた。

 

<月>

 

 

~鍛錬場~

 

豪臣が天水に着いて、2週間が経った朝。

豪臣はこの2週間。月に、乗馬を習っていた。

理由はもちろん、豪臣があまりにも下手過ぎるためだった。詠によって、後ろ暗い政務には、あまり参加させてもらえていなかった月。そのため、時間のある月が、ほぼ付きっ切りで指導をしていた。

豪臣は、その甲斐あってか人並み程度には乗れるようになっていた。

そして、朝の乗馬を終え、日課になっている練習後の話をしている。

 

「もう、一人で乗っても大丈夫ですよ」

月が、そう切り出してきた。

「そっか。いや~、ありがとう月。ホント助かったよ。初め、詠に言われたときには、どうしようかと思ったからな」

豪臣は頭を掻きながら礼を言う。

豪臣が言っているのは、豪臣が天水に来て2日目の昼の話だ。

 

【回想・始】

豪臣は月に誘われて、月、詠の二人と昼食を取っていた。

「そう言えばあんた。馬を持って無いけど、あの朔夜って虎に乗って旅をしてるわけ?」

その昼食の途中、詠がそんなことを訊いてきた。

「いや。朔夜にはあまり乗らないな。単に、旅の連れ、って感じだよ」

「じゃあ、全部歩いて旅をしているんですか?」

と、今度は月が訊いてくる。

「ああ。元々、歩くことは好きだからな。あんまり苦にならないんだ。

 それに、乗馬が苦手でさ。洛陽から馬に乗って見たんだけど、落馬しまくって朔夜が怒って食べちゃった」

笑って答える豪臣。流石に、潰したから、とは言えない。

「馬にも乗れないなんて・・・情けないわね、あんた」

「いや、まぁ、そうなんだけどさ。苦手なものはしょうがないだろ?それに今まで、乗馬の経験なんて無かったんだから」

豪臣が、情けなさそうに言う。

すると、詠が少し考えた後で口を開く。

「ねぇ、月。月が、こいつに乗馬を教えてあげたら?」

【回想・終】

 

もちろん、このときの詠の意図を、豪臣は理解していた。

自分が政務をしているとき。李儒派の人間にちょっかいを出させないために豪臣の傍に置く、と言うものだ。

そのことについて、豪臣に文句は無く、少しは信用してくれたのかな、くらいに思っていた。

そして、この2週間。月に何かしら、行動を起こす者は居なかった。

これは、詠の読み通りなのか、元々李儒にその意図が無かったのかは分からない。が、二人は、穏やかな2週間を過ごしていた。

「それにしても、悪かったな、月。2週間も付き合わせてしまって」

豪臣は、そう言って軽く頭を下げる。

すると、月は

「いえ、良いんです。私は、太守として役に立てていませんから」

悲しそうに、そう答えた。

「役に立てて無いって・・・何で、そう思うんだ?」

「だって、詠ちゃんに任せっきりですから。私が必要なのは、落款をするときくらいです」

月は肩を落とし、だんだん、顔も俯いてくる。

「ホントに、そうなのか?月は、政務に関わって無いと、ホントに思っているのか?」

「私が関わることもあります。でも、必ず詠ちゃんが一緒です。詠ちゃんに負担ばかり掛けて、自分はただ落款しているばかり。このままじゃ、いつか倒れてしまうかもしれません」

月は、完全に俯いてしまった。

(そう言うことか)

豪臣は納得して、月の前に膝立ちになり手を取った。

「ふぇ?」

豪臣の行動に、月が首を傾げる。

豪臣は、そんな月に目線を合わせて言う。

「月。君はとても凄いな、ホントに」

「いえ、違うんです!私は、自分の役目を・・・」

そこまで言ったとき、豪臣は首を振る。

「俺が言っているのは、董太守の話じゃない。月の話だ」

「月、ですか?」

「ああ。確かに、君は太守として未熟かもしれない。気構えも手腕も、まだまだかもしれない。けどね」

豪臣は、優しげな眼で、その不安そうな眼を見据える。

「そんな君を、助けたいと動いてくれる者が居る。損得勘定無しで、だよ。これは、とても凄いことなんだよ?」

「凄いこと、何でしょうか?」

月は、縋るように訊いてくる。

「もちろんだ。これは、月という存在の魅力がなしていることなんだからな。誇れることだ」

「誇れること」

豪臣の言葉を、反芻する月。

「で、せっかく、支えてくれる人が居るんだけど。そんな人が居るのに、甘えてばかりで自分は役に立たない。何も出来ない。君は、そう言って同じ場所を回ってばかりで良いのか?」

その言葉に、月の眼に力が漲ってくる。

「そう、ですよね。努力を怠っていても、何も始まりませんよね」

「ああ、そうさ。君は、これから何だからな」

「はい!」

豪臣の言葉に、月は笑顔で頷く。

「ハハ!やっぱり、笑顔の方が可愛いぞ」

豪臣は、そんな月の頭を撫でた。

すると

「へ、へぅ~///」

先の力強さは何処へやら、赤面して縮こまってしまう。

それも見た豪臣は

(ああ・・・なんだろう。あのときの感覚が・・・)

月と出会ったときに感じたものを、思い抱いていた。

そして

 

ナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナデナ・・・・・・・・・・・・・・・・

 

撫で続けた。

そして、撫で続けられる月は

 

「へ、へぅ~~~~~~~~~~~~~~~~~~・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

と、恥ずかしそうに、鳴き続けるのだった。

 

 

 

 

ちなみに、これは詠が昼食を誘いに来るまで続く。そしてその後は、詠の『豪臣タコ殴りショー』が行われた。

 

<詠>

 

 

~賈駆政務室~

 

月が決意して数日後のこと。

「ふ~ん。そんなことがあったんだ」

詠は、納得したように頷いた。

詠は、ここ数日、精力的に政務に参加する月を見て疑問に思い、そのことを豪臣に訊いていたのだった。

「ボクは、月を負担だなんて思ってないのに」

詠は、悲しそうにそう呟いた。

「でも、悪い気はしないだろ?」

「誰も嫌だなんて言ってないでしょ!」

「はいはい」

豪臣は、苦笑する。

「まぁ、政務に参加するのは、別に良いのよ。ただ・・・」

「ただ、心が耐えられるかが心配か?」

詠は、溜息を吐く。

「あんたが分かってるかは、知らないけど。政治は、民のためになる綺麗事ばかりじゃないし。それに、いきなりあんな量の政務をこなしたら、体が持たないわよ」

つまり、汚い政治の世界に深く首を突っ込んで、月の心が侵されないかが心配。倒れるかもしれなくて心配、ということだ。

だが、豪臣は心配していなかった。

「はぁ。詠、ちょっと来い」

豪臣は溜息を吐き、詠の手を取る。

「ちょっ!何すんのよ!?」

豪臣は、詠の抗議に耳を貸さずに引っ張って行った。

 

~鍛錬場~

 

詠が連れてこられたのは、豪臣が乗馬の訓練に使っている鍛錬場だった。

豪臣は、あらかじめ練習のために借りて置いた馬の下へ向かった。

「何を始めるつもりよ?」

「まあ、見てなって。よっ!」

豪臣はそう言って、馬に乗る。

そして、馬の腹を蹴って走らせてみた。

詠は

(へ~。凄く上達してるじゃない)

と、素直に驚いた。

詠が豪臣の乗馬を見たのは、これで二回目。一回目は、この鍛錬場を初めて使ったとき。落馬しまくる豪臣を見て、溜息を吐いていた。

そのときの豪臣に比べたら、今は雲泥の差だ。

そう考えていると、豪臣が下馬して戻って来る。

「どうだった?」

「前に比べたら、マシになったんじゃない?で、こんなことを見せたかったわけ?」

素直に褒めない詠が訊く。

「ああ」

「はぁ。あんたね。ボクはこれでも忙しいんだから、こんなこと一々見せないでよ!」

素直に答えた豪臣に、詠は溜息を吐き怒る。

しかし、豪臣は苦笑いで頭を掻き

「何だ、分からなかったのか?」

そう訊いてきた。

詠は分からず、首を傾げる。

「つまり、2週間前の俺が、今の月だ。で、俺に乗馬を教えた月が、お前だ」

そこまで言われて、詠は気づいた。

「つまり、ボクが教えろ、と?」

「ん~。ま、教えるのは当たり前だけど、上手くコントロールして欲しい、てことだな」

「こんとろーる?」

詠には、聞き覚えの無い言葉だった。

「ああ、すまない。つまり、上手く制御しろ、って話だ。今の月は、やる気は十分だ。そんな状態で、多くのことを教えたら全部やろうとしてしまうかもしれない。だから・・・」

「制御?」

「そ。月には月のペース、じゃないや・・・そう!歩幅、って言えば分かるかな?それを、守らせないとな」

「そうよね、何、悲観的になってんだろ。ボクが、ちゃんとしなきゃいけないわよね」

詠は、拳を握る。しかし、豪臣は、その拳の上から手を乗せる。

「そう気張るな」

「え?」

激励だと思っていたのに、そう声を掛けられて、詠は戸惑った。

「ボクが言ってること、何か違う?」

詠に、不安そうに訊かれた豪臣は首を振る

「そうじゃない。俺が言いたいのは、一人で気張るな、ってことだ」

「一人で?」

「ああ。せっかく月と二人で支え合って行けるのに、また一人で背負いこむ気か?親友なんだろ?」

「あっ・・・」

詠は気づいた。今、自分がやろうとしたことは、前と何も変わっていない、と。

「そう、ね。二人で、頑張って行くのよね」

「月も、そう望んでるさ」

落ち込む詠の肩に手を置き、豪臣は言う。

「制御、とは言ったが、それは覚えるまでだ。今、俺が一人で乗馬していた様に、月だって一人で出来る様になる。そのとき・・・」

「二人で支え合って、ね?」

「ああ、親友だろ?」

「そうよ。親友なんだから」

豪臣の言葉に、詠は、頑張っていこうと思った。

こんな自分のために頑張ってくれる月のために。こんな自分に大切なことを教えてくれた豪臣のために。

「頑張ってる月のために、頼りにしてるぞ、筆頭軍師!」

「任せなさい!ボクは、筆頭軍師なんだから!」

二人は、ガッチリと握手を交わすのだった。

 

<朔夜>

 

 

~豪臣の部屋~

天水に来て2週間が過ぎた。

豪臣の部屋から、あまり出られない朔夜。

部屋から出れば、文官たちからは逃げられる。武官からは武器を突きつけられる。侍女には気絶される。

だから朔夜は、今日も部屋に籠る。

そして

 

「最近、あたしの出番が無いですね。仕方ないですけど」

 

そう呟く。

そして、昼寝をするのだった。

 

あとがき

 

どうも、虎子てす。

 

作品の話しです・・・

月の話を書いてたら、拠点っぽくなったので、詠の話もそんな感じに追加してみました。

ラブ要素は無いですけど。

さて、この董卓編も次回で終了です。それが終われば、2、3話洛陽編で、義勇軍編に入っていく予定です。飽く迄も、予定ですので悪しからず。

 

さて、だいぶ休んでいたQ&Aです。15~20話までにあった質問です。

Q.鈴花ってどんなタイプ?

A.そうですね、言ってみれば桂花とは逆ですね。もうすぐ、出番が多々ありますのでお楽しみに。

 

Q.青竜の“竜”って、“龍”じゃないの?

A.基本的に、東洋では竜。西洋のドラゴンを龍とする、って聞いたことがありましたので。あと、辞書などで引くと“青竜”で出てきますよ。

 

Q.お礼がお礼になってないよね?

A.ま、時代ですかね。風評が何より大事な時代ですから。

 

Q.朔夜の人化は、まだなの!?

A.洛陽編をお楽しみに

 

と、こんな感じです。

 

次回投稿は、早ければ8日。遅くとも9日終了までにと予定しています。

 

作品への要望・指摘・質問と共に、誤字脱字等ありましたら、どんどんコメント下さい。

 

最後に、ご支援、コメントを下さった皆様。お気に入りにご登録して下さった皆様。

本当にありがとうございました。

 

ではでは、虎子でした。

 


 
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