No.121774

真・恋姫✝無双 仙人で御遣い 18話

虎子さん

拙い文章ですが、よろしくお願いします。

2010-02-01 07:03:02 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:3718   閲覧ユーザー数:3105

~長安⇔天水の街道~

 

「はあぁぁぁぁ」

森に隣接した街道に、大きな溜息の音が響く。

溜息の主は、豪臣だった。

豪臣は、たった一人で街道脇の岩に腰掛けている。洛陽を出立したときに一緒だった朔夜と、豪臣が乗っていた馬が居ない。

(何て言い訳しよう・・・)

豪臣はガックリと項垂れた。

 

【回想・始】

洛陽を出立し、長安を通過。天水まで、もう数日で到着する、といった距離まで来たときだった。

朔夜がキレた。

洛陽を出てから、豪臣と共に落馬した数6回、朔夜のみ振り落とされた回数8回の計14回。

乗馬が一向に上達しない豪臣の所為で、気持ちが悪くなったり地面に叩きつけられたりした。

朔夜は、我慢の限界を迎えようとしていた。

そして、決定的だったのが、朔夜15回目の落馬のときだった。

「・・・ヒデ、ミ・・・もう、無理、です・・・っ!!」

朔夜は、前回までの14回と同様に、豪臣の肩から落ちた。が、次の瞬間、今までと違うことが起きた。

 

ドス!!

「ぎゃぷっ!!!」

ゴロゴロゴロ・・・・・・

 

落ちた朔夜が、馬に蹴られてしまった。

「朔夜!!」

豪臣は、馬を飛び降りて、朔夜の下に走る。

「・・・・・・・・・」

朔夜は、動かない。

豪臣は、不審に思う。

朔夜の体は、そん所そこらの武人では、傷を付けることすら出来ない程に頑丈に出来ている。

馬に蹴られたくらいでは、どうということも無い。

しかし、動かない。

「・・・さーくーや?大丈ブホッ!!」

声を掛けていた豪臣が、吹っ飛んだ。

一瞬で巨大化した朔夜の前足に殴り飛ばされたのだ。

「さ・・・く、や?」

体に『剛』も何も掛けていなかった豪臣は、痛みで上手く動けなくなる。

そんな豪臣の眼の前で、朔夜は、その身に殺気を纏っていく。

その殺気に当てられ、豪臣も、少し離れた場所に居る馬も動けない。

「もう・・・もう、我慢出来ません。四神(シジン)である西方白虎。その一部を以て創られたこのあたしを・・・」

豪臣が恐怖する程の殺気を放ち、俯いたままで呟くようにして話す朔夜。

「馬畜生如きが・・・足蹴にするなんて・・・」

朔夜が顔を上げる。

「・・・殺す」

 

一瞬で終わった。

馬の居た場所に、真っ赤な返り血を浴びた朔夜が居た。

馬の姿などは、何処にも無い。

ただ、無理やり押し潰されたかの様な肉の塊があるだけだった。

(おいおい。馬を相手に本気にならなくても・・・)

豪臣は、冷や汗を流しながらも立ち上がった。

「ぐっ!・・・腹いてぇ」

朔夜に殴られた腹部を押さえながら、朔夜の下へ歩いて行く。

そんな豪臣を、朔夜が振り返る。

「やり過ぎました。謝ります」

頭を下げる朔夜。

「何だ?反省はしているんだな」

そう呟く豪臣。

しかし

「反省はしていますよ?後悔はしていませんが」

そう言う朔夜に、豪臣は呆れて

「・・・おい」

と、言うが、プイ、とそっぽを向く朔夜だった。

【回想・終】

 

それから朔夜は、血を洗い流すために、水の匂いする森の中に入って行った。

そして、豪臣はたった一人で此処に残っている。

「あ~、圓(うぉん)さんに、何て言い訳するよ、これ?」

少し離れた所にある肉塊を見て言う。

「馬って高いはずなんだよな~」

迷惑を掛けている衛(えい)親子に、さらに迷惑を掛けることになってしまい、豪臣は、また溜息を吐く。

そのとき

 

「きゃあぁぁぁぁぁぁ!!」

 

悲鳴が響き渡った。

「何だ!?」

豪臣は、森を振り返る。

(女性の悲鳴?こんな森の中から?・・・!!)

不審に思った豪臣だったが、流琉と最初に出会ったときを思い出す。

「賊か!?」

豪臣は、そう舌打ちをして駆けだした。

 

~森の中~

 

【視点・??】

驚きと恐怖で、私は、有らん限りの声を出した。

蹲っていた私のすぐ近くに、大きな虎が居たから。

「グルゥゥ・・・」

虎は、私を見据えたまま、少しずつ近づいて来る。

私は、トス、と腰が抜けてしまった。

「え、詠、ちゃん」

逃げられない私は、震えながら親友の名を呟く。

もう、すぐそこまで来た。

虎は、私に襲いかかろうと身を屈める。

私は、ギュッ、と眼を閉じた。

しかし

「・・・・・・・・・・・・」

虎は、いつまで経っても襲ってこない。

フッ、と虎の気配が遠のく。

恐る恐る眼を開けると、虎は居なくなっていた。

(な、何で・・・?)

疑問に思い周りを見渡す。

そこには

【視点・終】

 

~森の中~

 

「え?何だ、この鳴き声?」

豪臣が声の方へ走ってると、何処からともなく「へぅ~・・・へぅ~・・・」と言う鳴き声が聞こえてきた。

声の方にしばらく走ると、朔夜が居た。

朔夜は、此方に背を向けて座っており、右の前足で何かをしている様だった。

そして、朔夜の足が動く度に「へぅ~」と言う声が聞こえる。

(何をしているんだ?)

豪臣は、朔夜の隣に立って覗き見る。当然、朔夜は豪臣の存在に気づいており、驚かない。

しかし

「・・・は?」

豪臣は、驚いた。

朔夜の眼の前には、頭を抱えて蹲り、此方に尻を向けている女の子が居たのだ。

そして、朔夜がその娘の尻を突っつく度に、女の子は「へぅ~」と声を上げていた。

 

ツンツン←朔夜が突く

「へぅ~」

ツンツン

「へぅ~」

 

これの繰り返し。朔夜は満面の笑み。

(何だ、この感情!?)

豪臣は、その様子を見ながら、内から湧き出してくる変な感情に疑問を持った。

(何だ?・・・嗜虐心と言うか、何と言うか・・・苛めたくなるな)

そんな豪臣を、若干悦に浸っていた朔夜が振り向く。

「・・・やりたいですか?」

ニヤ、と笑う朔夜。

「やりたい!!」と言いそうになりながらも、思いとどまり

「止めてやれ」

と、豪臣は言った。

朔夜は、残念そうにしながら

「ホントは、やりたい癖に」

と、豪臣を横目で見ながら、そう呟く。

豪臣は溜息を吐き、女の子の背に手を置きながら

「もう大丈夫だよ」

そう声を掛けた。

「へぅ?」

涙眼の女の子が、ゆっくりと豪臣を見る。

豪臣は、頭を撫でてやり

「怖かったね。でも、もう大丈夫だ」

そう笑顔で言ってやった。

すると

「・・・っ!!」

「っとぉ!」

女の子は、いきなり抱きついて泣き出してしまった。

そんな女の子を抱き留めながら

「あ~、参ったな、こりゃ・・・」

苦笑いをする豪臣だった。

 

おまけ

 

【視点・朔夜】

あたしは、虎に襲われそうになっていた女の子を発見した。

虎は2mくらいの大きさだった。が、あたしは、さらに大きい5mの巨体だ。

一睨みで、襲い掛かろうとしていた虎は逃げて行った。

女の子は、危機が去ったことに疑問を持ったのか、辺りを見回す。

眼が合った。

「ヒッ!!」

先程の虎よりも大きなあたしを見て、あまりの恐怖に震えだす。

(助けてあげたのに、その態度は頂けませんね)

あたしは、わざとゆっくり近寄っていく。

「た、助け・・・てぇ」

涙が、じわじわ、と眼に溜まっていく。

(もう少しだけ、懲らしめてあげます)

あたしは、足を振り上げる。

「っっ!!」

女の子は、此方にお尻を向けて頭を抱える。

あたしは、そのお尻を、ツンツン、と突いた。

すると

「へぅ~」

と、声をあげ、いえ、鳴いた。

(・・・・・・)

あたしは、もう一度突く。

「へぅ~」

女の子は、また鳴く。

(・・・ふふ、ふふふ、ふふふふふふふ!!)

あたしは、何だか気持ちが良くなってきた。

突く→鳴く 突く→鳴く 突く→鳴く

あたしは、それを繰り返す。

 

(ふふふ!さあ!鳴いて、泣いて、啼きなさい!ふふふふふ――――――――)

 

あたしは、止められなくなってしまった。

 

あとがき

 

どうも、虎子です。

いつの間にやら、お気に入り登録が三桁を超えてました。

皆様、ありがとうございます。

 

さて、作品の話ですが・・・

朔夜さんが、キレちゃいましたね。

彼女の言っていた四神ですが、知ってますよね? 青竜・朱雀・玄武と共に東西南北を守護するとされる獣です。

朔夜は「白虎の力の一部を借りて、豪臣の仙氣で創造された式神」という設定です。

まあ、仙術を使っていない豪臣をタコ殴りに出来るのは当たり前、ということです。

 

次回投稿は、早ければ2日。遅くとも3日終了までにと予定しています。

 

作品への要望・指摘・質問と共に、誤字脱字等ありましたら、どんどんコメント下さい。

 

最後に、ご支援、コメントを下さった皆様。お気に入りにご登録して下さった皆様。

本当にありがとうございました。

 

ではでは、虎子でした。

 


 
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