No.121341

恋姫無双SS魏√ 真・恋MIX 10話

とにーさん

10話目となります
真・恋姫無双のSSではなくてあくまで恋姫無双の魏ルートSSです。
ただしキャラは真・恋のキャラ総出です。

無印恋姫無双は蜀ルートでした。

続きを表示

2010-01-30 09:58:04 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:16719   閲覧ユーザー数:12821

俺たちは海路で烏林につくと陣張りを始めた。

「なんだ、真桜が先に行っていると聞いていたのですでに陣張りが済んでいるのかと思ったが・・・。」

船酔いでへろへろに成っている春蘭は愚痴るように言った。

「ああ、済まないね。真桜は別の要件を使わせてあるんだ。」

「そんな、一刀様に謝って頂かなくても。陣張りなんぞ私があっという間に済ませて見せます。」

「いや、陣張りは雑兵にさせればいいよ。春蘭達は周辺の警護を頼むね。」

「そう言えば凪達の姿も見えませんね。」

周りを見回した秋蘭がいつも通り冷静に言う。

「あぁ、凪と沙和も真桜の手伝いに行かせている。そんな訳で警護を頼むよ。霞もよろしく。」

「がってんや。」

返事をする霞に笑顔で答え、黄河から吹く風に打たれながら俺は思いを馳せる。

 

『そろそろ来る頃かな・・・・・間諜の報告だと3日ほど前に仲違いが有ったらしいし。』

ここから先はかなり綱渡りだ。

しかし、その綱を極力太くすることが俺の役目でもある。

そんなことを思っていると伝令係が慌てて陣幕に飛び込んできた。

「敵将が1人で陣に入ってきました。」

「そうか・・・。」

「現在張遼将軍が相手をしていますが、いかんせん強くて・・・・」

「霞には手を出さないように連絡を・・・・・まぁ俺が行った方が早いか。」

そうして俺はその将の所に向かった。俺には誰か解っている。呉の黄蓋だろう。

俺がそこに出向くと、霞と黄蓋が対峙をしていた。

そして、その後ろに少女が1人・・・

「こわっぱが、そこをどけ!天の御遣いの所に案内せい。」

「得体の知れない輩を一刀様の前に連れて行く訳にはいかんわ。ボケ!」

「お主で儂を止められるかな?」

「ウチをなめんときぃ。魏軍にその人有りと言われた張文遠やで。」

「ほほう、魏軍一と言われた神速の槍もその程度では赤子でも捕まえられそうだ。」

「なにぃ、ウチの本気、見せてやるでぇ。」

「霞、やめておけ。」

俺は頭に血が上っている霞を宥めると、妙齢の将に話しかけた。

「黄蓋さんだね。俺が天の御遣いと呼ばれている北郷だ。何度かお会いしているか・・・・。」

「おお、そう言えば、先日は儂の矢を切り落としてくれたか、あの技は驚かせて貰った。」

「今日は、どんな要件でここに訪れたのかな?」

「ふふふ、さすが天の御遣い様だ。突然現れても動揺もしないか・・・・。」

「その呼び名はあまり嬉しくないね。北郷、もしくは一刀で構わないよ。」

「それでは北郷様、お話したいことがあります。一席設けて頂けますか?」

「あぁ、是非とも聞かせて頂こうか、そちらのお嬢さんも一緒にね。」

ニコッと笑う俺に少女は帽子を深々と被る。

「あわわ。」

「ほほう、噂に聞く漁色家ですな。」

「あぁ、可愛い女の子は好きだよ。綺麗なお嬢さんもね。」

「・・・・・・儂のことをお嬢さんと呼ぶか・・・・これは一本取られたな。」

周りの視線は若干痛いが、俺は黄蓋と会談をし、その投降を認めた。

そうして赤壁の戦いはまた一歩進行していった。

その日の晩だった、政務をしていた俺を黄蓋が訪ねてくる。

その際、1人の少女を連れてきた。

「ちょっと良いかのう、北郷殿。」

「ああ、良いよ。黄蓋さん・・・・そう言えば昼間はばたばたしていて真名を教えて貰わなかったけど、許しては貰えないんだね?」

「あぁ、まだ儂は魏の中で信頼を得たとは言えないからのう。」

「そんなこと気にしなくても良いのに。まぁ俺に真名がある訳じゃないからどちらでも良いけど。」

俺は全く意に介さないように黄蓋に向けて微笑む

「それでなに?」

「実は先ほど陣中を見ていて気が付いたのだが、船酔いで弱っている兵が多いな。夏侯惇などもその1人だろう。」

「さすが黄蓋さん、良く気が付いたね。春蘭とか季衣が船に弱くってね。」

「この状況を周瑜に気が付かれたら早速行動を取られるかも知れんな。」

「たしかにねぇ、黄蓋さんは船になれているのだろうけど何か策があるの?」

「時間があれば儂が教練を付けてやっても良いが、そんな時間も無かろう。そこで、この鳳統からはなしがあるそうじゃ。」

そう言って黄蓋は後ろの少女を前に出るように促す。

鳳統と呼ばれた少女は、オドオドしながらも俺の前に立ち、囀るような声で話し始めた。

「実は、船の揺れをなくす策があります・・・。」

「へぇ、君が鳳統先生なんだ。それじゃぁ、お教えを聞こうか。」

「あわわ・・・・・私、有名かしら・・・。」

「識者って聞いてるよ。呉にいたんだねぇ。」

「はい・・・・それでは話しますね。船の揺れを無くすには船と船を鎖で繋いで板を掛けるのが一番良いです。」

「ふむふむ、なるほど。それなら確かに船は揺れなくなるかもねぇ・・・」

俺は感心したように答えるが突っ込むことも忘れない。

「でも、それだと火を掛けられたら全部燃えちゃわないかい?」

「この時期は西北の風しか吹きません。もし、呉軍が火を掛けたら自分の方に火が移ってきます。」

「そうかぁ、それなら大丈夫だね。」

「しかし、鎖を今から用意するとなるとなかなか大変だね。」

「鎖は当方で用意させて頂きました。もしなら設置も済ませますけど。」

「いや、そこまでさせては悪いな。設置はこちらでするよ。・・・・・・ところで・・・。」

そう言って鳳統を見つめると、微笑みながら言う。

「鳳統さんも良かったら魏軍に力を貸してくれないか。優遇するよ。」

「・・・・あわわ・・・。」

照れて赤くなる鳳統に黄蓋が口を出す。

「やめておけ、ついでに処女も無くなるぞ・・・。」

「酷いなぁ、黄蓋さん。まぁ急ぐ必要はないよ鳳統さん。考えておいて。」

「・・・はい。」

真っ赤になった鳳統はなんとか言葉を絞り出す。

「じゃぁ、詳しい話は桂花としてくれるか。黄蓋さん、今日は有り難う。」

「・・・あぁそれでは疲れたから今日は休ませて貰おう・・・・。」

彼女を見送った後、俺は桂花を呼んで詳細を話した。

そしてその後、真桜達と会って打ち合わせをして、そのまま3人と寝た。

その晩の内に兵の少しがいつの間にか居なくなっていた。

 

 

次の日の朝から鎖を繋ぐ作業が始まった。

もちろん、真桜指示の下、つなぎの部分には前もって作っておいたワンタッチで外れる部品が付いている。

「しかし、最初は解らへんかったけどこの部品はこんな風につかうんや。」

「とりあえず昨日言ったように実際に使うときまでこのことは3人だけの秘密にしておいて。」

「はいな。」

「それで、例のからくりだけど順調かな?」

「はい、順調に動作しています。すでに8割方は終了しました。」

手伝いに行った凪が答える。

「そうかぁ、おそらく数日の内に敵の動きがあるからね。みんなも対応出来るように心構えておいてね。」

「はいなの。」

元気よく返事をする沙和を軽く撫でて、俺は陣幕に戻った。

そして風の変わるのを静かに待っていた。

 

時は数日前に遡ります。

 

冀州方面に山賊狩りに出かけた秋蘭が戻ってきて一刀に挨拶に現れた。

「ただ今戻りました、一刀様。」

「お帰り秋蘭。ずいぶん早かったね。」

予定よりは三日ほど早い帰国だ。

「実は私が向かったときに、すでにある程度山賊は退治されていまして・・・。」

「へぇ、冀州の州牧が頑張ったんだね。そんな戦力有ったんだ。」

「それが、州牧が傭兵を雇いまして、その人物のお陰で山賊退治が順調だったようです。」

「そうなんだぁ・・・・所でその人物って?」

「一刀様も興味を持たれると思って、実は連れてきました。入るが良い。」

そう言って秋蘭は後ろから人を呼んだ。その人物は汜水関と虎牢関で相対した人物だった。

「それでは失礼する。そちらが北郷殿か。私の名は華雄だ。」

「おお、華雄将軍。君だったか。」

「夏侯淵将軍がきっと雇ってくれるからと言うので参上した。いかがであろう、私の武力使ってみないか?」

「是非お願いするよ。戦力はどんなにあっても余ることはないし、それに・・・・。」

そう言いかけたときにちょうど霞が通りかかった。

「おお、華雄やないか、どうしたん?」

「おぬしは張遼ではないか。北郷に使えているのか?」

「ああ、そうや、月も、詠も恋もいるで。」

「そうか、董卓や呂布まで・・・・・」

「霞、華雄将軍も俺に力を貸してくれるそうだよ。」

「ほう、そりゃめでたいなぁ。董卓軍そろい踏みや。」

「すでに董卓軍ではないがな・・・。」

「そう言えば華雄将軍、君のま・・・・・・・・ゲフン、ゲフン。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・では私は貴殿のことを北郷様と呼ばせて貰おう。」

「それではよろしく頼むよ、華雄将軍。ちょうど良い、早速頼みたいことがある。」

「うむ、よろしく頼む。」

「なかなか順調のようね。」

孫策は周瑜に話しかける。

「うむ、先ほど船を鎖で繋いだと連絡が入った。後は風が変わった後に火を付けるだけだ。」

「だけど、あの子はどこに行っちゃったのかしら・・・。」

「尚香様のことか。確かに心配だが今のところ情報が掴めないな。」

「シャオのことだからそう簡単に大事には至らないとは思うけど・・・。」

「まぁ、いいわ、とりあえず前の事だけを注意しましょ。多分大丈夫よ。」

「そういえば間諜からの連絡で少し気になることがありましたぁ。」

隣にいた陸遜が話し出す。

「柴桑の対岸当たりでお化けを見たとか。」

「なんだ、我が軍の間諜にそんな降らないことを言っているのがいるのか。」

「どうやら四角い箱がものすごい速さで走り抜けていったそうで、馬も何も付いていなかったそうですよ。」

「坂道でもなければそんなことはあるまい。大方何か動物と見間違えたのであろう。」

「ですよねぇ。」

「さぁ、そろそろ風が変わるぞ。蜀の陣営にも連絡しろ。」

そうして呉軍は戦の準備を始めた。

 

その日、蜀の陣営では鳳統が帰着していた。

どうやら鎖の受け渡しと同時に黄蓋に戻るように促されたらしい。

「このまま居たらあの天の御遣いに落とされてしまうかもしれんからな。」

冗談気に言ったが、意外と的を射ているかも知れない。

鳳統は報告を済ませた後、諸葛亮と有っていた。

「あわわー、天の御遣い様近くで見ると想像以上に素敵だったー。」

「はわわー、あの笑顔は凶器だよねー。」

「一瞬、桃香様のことを忘れかけたもの・・・。」

「ダメよ雛里ちゃん、今私たちがすることは蜀を守ること。桃香様の想いをみんなで実現させることなんだから。」

「うん、そうだよね・・・・・。でも思うの、あの優しそうな天の御遣い様がなぜ、他国の侵略をするのかって・・・。」

そう言った鳳統の言葉を諸葛亮は考える。

天の御遣い様とは何度かお会いしている。本当に優しそうな人だ。だけど今回の呉進攻は明らかに侵略行為だ。

これを許せば多分蜀も同じ運命をたどることになる。

『たとえ、目的が同じでも経過が違えばそこで衝突が起こります。蜀と魏の間にはほんの少しの擦れしかないのかも知れません。』

『しかし、今は私たちの夢を叶えるためにこの侵略を防がなければ成りません。』

そう、東南の風が吹く今日このときに。

 

そして、その時は訪れた。

 

「風だ、風が吹いたぞ。」

知らせが黄蓋に入る。

「よし、行動に移すかのう。船に火を付けるのじゃ。」

そう部下に知らせると、船に火矢を放ち始めた。

燃える戦闘艦、策は順調に進行していった。

 

「船に火がついたぞ。」

周瑜は東南の風が吹いた時点で戦力を移動させていた。

「よし、仕掛けるぞ。みんな戦闘準備だ。」

「雪蓮は先陣を切って。明命と亞莎はそれに続いて。」

「蓮華様は思春と祭殿の救出を。」

「穏は主力を率いて先陣の後詰めを。」

周瑜は矢継ぎ早に指示をすると燃える敵軍を見つめた。

それは勝利を確信したようにも見えた。

 

俺は風の変わったのを感じて、部下達を配置に付かせた。

今回は向こうの策が成功したと思わせて、おびき寄せるのが重要だ。

一度船に火を付けさせなくては成らない。

故に消火活動のタイミングが策の要となる。

予想通り黄蓋の部下らしき一団が火矢で船に火を付け始める。

消火は早すぎても遅すぎても行けない。

俺は呉、蜀軍の動き、火の周り具合、全てを見計らって合図を出す。

すると、延焼してない船にいた配下がからくりを動かすと鎖が一斉に外れた。

さらに船の中から突然木の筒が出て水を噴きだした。

手動のスプリンクラーだ。

一時はかなりの火勢が有ったが、あっという間に沈静していく。

そうして、魏軍は呉、蜀同盟と一大決戦となった。

 

「なんで・・・・・突然火が消えるなんて・・・・。」

周瑜は絶句した。

「どうやら天の御遣いは妖術使いだったみたいね。」

孫策は呆れたように言い放つ。

「いいわ、こうなったら力でねじ伏せるまでよ。」

「孫呉の海戦の強さを思い知らせてやるわ。」

 

「はわわ、火が消えちゃいました。」

「あわわ、天の御遣い様、恐るべしでしゅね。」

諸葛亮と鳳統が本陣でわたわたしている。

そこに関羽が話しかける。

「しかし、だからといって今引く訳にはいかん。」

「確かにそうですが、策が失敗した時点ですでに勝機はほとんどありません。なるべく離脱する方向で、これは呉にも言えます。」

「伝令を送って再戦に掛けるように孫策さんに連絡してください。」

 

もともと戦力的には魏軍の方が有利だった。

さらに敵の策を失敗させたことによってその心理的ダメージも計り知れない。

状況はかなり一方的になった。

「これは、失敗じゃな。儂の演技が下手だったと言うことか・・・。」

黄蓋は自分の為に用意された天幕で呟いた。

すでに戦闘用意は済んでいる。このまま本陣に1人で特攻を掛けるつもりのようだ。

「いや、黄蓋さんの演技は完璧だったよ。でも惜しむらくは俺に天界の知識があったと言うことかな。」

俺は天幕の入り口から声を掛ける。

「ほう、北郷殿。大将が本陣から離れてこんな所に来ていてもいいのかのう。」

言葉は冷静だが端々に殺気が混じり込む。

「天界の知識か、それは便利じゃのう。だがな、お主をここで儂が倒せば形勢は逆転するとは思わんか?」

「それが出来ればね、でも俺は切り札を持ってきたから。」

「ふーむ、確かにお主を倒すのは大変そうじゃが、お主の他には強い気は感じないが・・・。」

「でもね、黄蓋さんには通用すると思うよ。おいで、シャオ。」

「祭、久しぶり。」

ひょいと顔を出したのは小蓮だった。

「小蓮様、ご無事だったのですか?」

流石の黄蓋もこれには驚いた。

「私ね、一刀を籠絡しようとして魏に紛れ込んだんだけど逆に落とされちゃった。祭に教えて貰ったとおりにやったんだけどなぁ。」

「そうじゃったのか。」

「でね、今度は一刀のお后を目指してるの。祭、また色々教えてよ。」

どうやら黄蓋は呉で小蓮の教育係を務めたことも有ったらしい。ずいぶん可愛がっていたようだ。

「どうかな、小蓮の教育係としてでも良いから俺に降ってはくれない?」

「しかし、儂は呉に忠誠を誓った身、おいそれと他国に帰順する訳にはいかんのう。」

「事態が落ち着けば孫策さんにはまた江東を治めて貰うよ。そうしたらまた孫策さんの下について貰えばいいし。」

「・・・すでに占領したような言いぐさだがまだこの一戦に勝利しただけであろう。戦力を立て直せばそう簡単には呉は落とせまい。」

「でもね、先ほど建業が落ちたと知らせが入ったから。流石にこれ以上の抵抗は無意味だと思うよ。」

「なんじゃと?まさか・・・・。」

その俺の言葉は黄蓋には俄信じられないものだった。

 

 

ここは建業

 

隊長らしき人物に斥候から連絡が入る。

「建業から北に2里の所に魏軍が現れました、その数およそ1万。」

「まさか、わずか二日ほど前にほぼ全軍が赤壁で我が軍と対峙していると報告があったばかりだぞ。」

「はい、1万もの予備兵力が有ったとは思えませんし、ここまで来ることも考えられません。」

「しかし、1万程度でこの建業が落ちると思うか。守備兵2万はどうした?」

「あっさり突破されました。」

「なんだと、敵将の旗は、どんな旗が翻っているのだ?」

 

「旗は、顔、文、張、陳、そして呂と華と賈とさらに袁の旗が2種類。かなりの混成部隊かと・・。」

「呂だと、呂布が来ているというのか!?」

「あとは、顔良、文醜、華雄とどれも名前の知れた将軍です。」

 

「やっぱ戦いだよなぁ・・・アタイの力見せてやるぜぇ。」

「一刀様のために頑張らなくっちゃ。」

「おほほ、猪々子、斗詩、やぁっておしまい。」

「麗羽さまは見てるだけですものねぇ。」

「一刀さんが見てるだけで良いって言うんですもの。指揮を執りたいって言ったら、詠さんに任せるって・・・。」

 

「ななのぉ、攻城戦じゃぞ。得意の櫓でやってしまうのじゃ。」

「はいはい、わかりました。お嬢様は見ていてくださいね。」

「おうおう、そうして一刀に褒めて貰うのじゃ。」

「あらあらすっかり一刀様に手なづけられちゃいましたねぇ。でもやられちゃう前に私が戴かないといけませんねぇ。」

「何を戴くのじゃ?」

「可愛い、可愛い美羽様をですよ。」

「おおぅ、妾をもっと褒めるのじゃぁ。」

「はーい」

 

「・・・ご主人様のためにこの城落とす・・・・。」

「恋殿、頑張るのですよ。そして一刀様のお心を手に入れるのです。」

『そうすれば恋殿がこの国の影の支配者に・・・・』

「・・うん、頑張る。」

 

「私の力を必要としてくれた北郷様の為に、私はやるぞ。猛将華雄ここに復活だ!」

 

「なんで、こんな猪武者やお馬鹿さん達の面倒をボクが見なくちゃ行けないのかしら・・・。」

「でも、月とご主人様の未来のためにも頑張らないと・・・・。」

「しかし、鉄で出来た道の上に箱を走らせるだなんて、あいつ、やっぱり天の御遣いなのね・・・。」

「短期間で大軍の輸送を可能にするなんて、普通考えつかないわ。」

 

そうして、建業は落ちた。

 

「建業が落ちた・・・・・なぜ?ほぼ全軍がここにあった筈じゃぞ。」

「色々仕掛けがあってね。別働隊に動いて貰ったんだ。兵は一昨日連れて行った。」

「一昨日じゃと・・・・・・火を消したからくりといい、それも天界の技というものか・・・。」

「まぁね、でも我が軍にいる天才からくり師のお陰だよ。俺は理論を教えただけだよ。」

 

俺は大学は物理工学を専攻するつもりだったし、ある程度勉強していたことがこんな所で役立つなんて・・・・。

それと大量の鉄を加工するためにちょっと前に見学した反射炉が役に立ったし。

「ふははは、負けたよ、北郷殿、いや、皆と同じように一刀様とお呼びしよう。儂の真名は祭じゃ。」

「雪蓮様を説得するのだろう。その役、儂が請け負った。」

「ああ、そう言ってくれると嬉しいよ。祭、よろしく頼むね。」

 

 

「ダメです、お味方は総崩れです。」

報告に来た周泰が叫ぶ。

「流石にもうダメね。撤退するわ。雪蓮にもそう伝えて。」

「もう戻ってきてるわ。」

撤退の指示を出す周瑜に孫策が話しかける。

「今回はやられたわね。だけど、まだ完全に負けた訳じゃないわ。」

「うむ、すでに蜀軍は撤退したわ。私たちもとりあえず建業に戻りましょう。そして立て直してもう一度魏軍に挑みましょう。」

 

「次が有ればいいのだがのう・・・」

 

話し合う二人に突然声が掛けられた。

その声は孫策達にとってはとても嬉しい声だったのだが・・・・・

「祭!」「祭殿!」

「無事だったの、あの状況から良く逃げて来られたわね。」

喜ぶ孫策に少し意地悪そうな顔をして祭は答える。

「それは簡単じゃ、逃げてきたわけではないからの。」

「逃げてきた訳ではない・・・・それはどういう事ですか?」

その言葉の意味に気づいた周瑜が祭に尋ねる。

その横で周泰はキョトンとしている。

「その言葉通りじゃ。儂は一刀様の命を受けて来た。おぬし達を説得するためにな。」

「ええっ!」

驚いて声を出す周泰。周瑜は戸惑いを隠せないながらもあくまで冷静に対応する。

「ほう、まさか黄公覆が魏に降ったと言うのか。演技ではなく。」

「あぁ、今回一度魏に降ったのは演技ではあったが、そこで天の御使いの大きさに感服して本当に帰順したのじゃ。」

「そうしておぬし達を降るように説得しに来たわけじゃな。」

「祭にそこまで言わせる北郷に興味はあるけどね、まだ終わった訳じゃないのよ。」

孫策はキッと祭を睨み付けそう言葉にする。

「終わった訳じゃない・・・・か、ではまだこちらには報告は入ってないと見える。」

と、そう話したタイミングで伝令が大慌てでやってくる。

「孫策様、建業が魏軍にて落とされたとの報告が入りました。」

伝令の言葉に周瑜が反応する。

「なに、それは本当なのか!」

「すでに建業には魏の旗が。それと呂、華、賈などの旗が掲げられています。」

「どうじゃ、奴は今まで倒した軍勢を全て取り込んでおる。なんと懐の大きいところじゃ、しかも・・・。」

「雪蓮姉様・・・。」

そこに出てきたのは小蓮だ。その横には北郷一刀本人も居る。

「私、一刀に保護されてるの。でもね、人質じゃないのよ。一刀は人質として使うのは本意じゃないって。」

「出来れば呉の皆さんにも帰順して貰えないかな?いずれ落ち着いたら江東は孫策さんに治めて貰うようにするけど。」

そう言った俺に対して孫策は刀を抜いた。

「うーん、それより北郷さんをここで倒しちゃう方が現実的かな。」

だが祭がその間に入る。

「雪蓮様、まさかそれは本心ではあるまいな。」

「そうねぇ、じゃぁ私と北郷さんの一騎打ちで決着を付けるのはどう?」

「なるほどねぇ・・・・祭、そこをどいて良いよ。なら、そうしようか・・・」

そう言った俺は一刀を抜いた。

 

剣を抜いて俺に対峙する孫策。

鋭い気迫で俺を圧迫する。

「やはり一筋縄ではいかないね。」

俺は少し軽口をたたくが顔は笑えない。

「北郷さんもなかなかよ。我が軍に欲しいくらいだわ。」

負けずに軽口を返す孫策だが当然顔は笑っていない。

その様子を周りの人達は固唾をのんで見守っている。

「そろそろ行くよ。」

俺は一刀を青眼に構えると切っ先を孫策に向けた。

しかし、一触即発の状況であったが突然孫策が剣を下ろした。

 

「やーめた。」

 

拍子抜けする俺に孫策は言葉をかける。

「だって北郷さん、私を傷つけたくないって思いで一杯なんだもの。」

その台詞は俺の本心を見抜かれていた。動揺しながらも俺は返事をする。

「解るの?」

「うん、解るわよ。伊達に孫家の頭領をやっている訳じゃないわ。」

「そうか、で、どうする?」

「なんか、毒気を抜かれちゃった。いいわ、あなたに降ってあげる。」

「そうか、魏に降ってくれるのか?」

「いいえ・・・・魏に降るのではないわ。貴方に降るのよ。冥琳も、それで良い?」

「どちらにせよ選択肢がないからな。雪蓮が北郷殿に降るというのであれば、呉軍全軍が貴方に降ろう。」

「戦いを終了するように伝えい。呉軍は天の御使いに降ったと通達するのだ。」

 

そうして呉軍が北郷一刀に降ったため、残るは魏の他には蜀一国と成った。

 

             続く

 

 

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
103
12

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択