No.1174635

英雄伝説~黎の陽だまりと終焉を超えし英雄達~

soranoさん

第70話

2025-10-01 21:07:39 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:910   閲覧ユーザー数:716

 

~オールト廃道~

 

「3年前の大戦時レン先輩がヴァンさんを雇った事でヴァンさんは一時的に”灰獅子隊”に同行することになった事が切っ掛けにヴァンさんとシュバルツァー総督閣下達はお知り合いになられたのですか…………」

”オールト廃工場”へ向かいながらヴァンとリィン達が知り合う切っ掛けをリィン達の説明によって知ったアニエスは目を丸くして呟き

「はい。ちなみにヴァンさんは”ハーケン会戦”時、お兄様がハーケン会戦を終結させる鍵となる作戦であるエレボニア帝国軍の総大将の早期討伐の成功にもお世話になりましたわ。」

「ハ、”ハーケン会戦”って3年前の大戦の勝敗を決定づけた事から『ヨルムガンド戦役の事実上の決戦』とも言われている超大規模戦闘じゃないか…………!」

「父(アブ)達郷の戦士達もそうですがアイーダさん達”アイゼンシルト”もヴァイスラント新生軍に雇われて連合側として戦ったと聞き及んでいます。父(アブ)達もですがアイーダさんもこう言っていました――――――『あれ程の大規模戦は今後起こりうる事は2度とないだろうから、貴重な経験ができた』と。」

「そんな後の歴史に語られる事が確定している大規模戦の決着の鍵となった軍事作戦の成功にオッサンが関わっていたとはな…………このオッサンの事だから、大英雄サマ達がエレボニア帝国軍の総大将と戦っている隙を狙ってエレボニア帝国軍の総大将を”闇討ち”で隙を作って大英雄サマにエレボニア帝国軍の総大将を討たせたのか?」

「だからオッサンは止めろって言っているだろうが!?それと”闇討ち”とかその聞き方だとまるで俺が”暗殺者”みたいに聞こえるだろうが、アーロン!」

セレーネの説明を聞いたカトルは信じられない表情でヴァンを見つめ、フェリは真剣な表情で自身が知っている知識を口にし、ハーケン会戦の決着の鍵となった作戦にヴァンが関わっていた事に半信半疑の様子を見せていたアーロンはリィン達に確認し、それを聞いていたヴァンは疲れた表情でアーロンに指摘した。

「ハハ…………ヴァンさんには俺達がエレボニア帝国軍の総大将と戦っている際、俺の仲間達と共にエレボニア帝国軍の総大将を助けようとした勢力への”足止め役”を務めてくれたんだ。」

「”エレボニア帝国軍の総大将を助けようとした勢力”と言うと…………シュバルツァー総督閣下達と戦っているエレボニア帝国軍の総大将の様子に気づき、エレボニア帝国軍の総大将の応援に向かおうとしたエレボニア帝国軍の別動隊等でしょうか?」

アーロンへ指摘する様子のヴァンを苦笑しながら見つめた後答えたリィンの話を聞いてある予測をしたアニエスはリィンに訊ねた。

 

「…………ああ、そのようなものだと思ってくれて構わない。それと公式の場でもないのだから、”総督閣下”は必要なく、普通に”リィン”と名前で呼んでくれて構わないよ。慣れてきたとはいえ、今でも”総督閣下”と呼ばれるのは正直面映ゆいんだ。」

「勿論わたくしの事も”セレーネ”と呼んでくださって構いまわんわ。」

「でしたら、どうか私達の事も名前で呼んでください。それにしても、セレーネさん達がリィンさんの”婚約者”だと知った時も驚きましたけど、まさかそのリィンさん自身と直に会えた上、協力関係になれるとは思いませんでした。」

「つーかアンタ、”エレボニア総督”だろ?幾らアルマータがヤバイ連中とはいえ、たかがマフィアへの対応の為にアンタ程の立場がある奴が”本業”を放ってこっちに来て大丈夫なのかよ?」

自分達に対して気安く接していい事を指摘したリィンとセレーネの言葉に答えたアニエスは苦笑しながらリィンを見つめ、アーロンは若干呆れた様子でリィンに訊ねた。

「俺は他の総督達と違って”補佐”の人がいて、その”補佐”の人がいればある程度は大丈夫なんだ。…………とはいっても1年半前の”ヘイムダル決起”の件もあるからさすがにクロウ達のように長期間”本業”を完全に休んで”A”の調査をすることはできないから、”本業”と”エースキラー”の務めを交互に行っているんだ。…………まあ、俺自身も最初”エースキラー”の一員である事を知らされた時は驚くと共に”エレボニア総督”の俺まで特定のマフィアへの対応として駆り出されることに疑問を抱いたけど、今ならメンフィル・クロスベルがアルマータの事を”そこまで危険視する存在”である事だと理解したよ。」

「それは…………」

「ハッ、ましてやバーゼルは南カルバード総督府のお膝元だからな。今回の件は南カルバード総督府にとっては顔に泥を塗られたようなものだから、メンフィルも”大英雄”であるアンタという”切り札”をバーゼルに出張らせたってワケか。」

「……………………」

「えっと…………もしかしてレジーニアさんとアンリエットさんもそうですが、レン先輩が”視察研修”の地をバーゼルに決めた理由はアルマータやアルマータの件でバーゼルでの調査を担当することになったリィンさん達の件があるからですか?」

リィンの話を聞いたフェリとアーロンは真剣な表情を浮かべ、カトルは複雑そうな表情で黙り込み、あることが気になったアニエスはレジーニアとアンリエットに訊ねた。

 

「レン皇女については知らないが、あたし達に関しては主達の件も関係している事は否定しないよ。まあ、バーゼルはあたしの知的好奇心を満たす地であったからという理由もあるがね、」

「わたしはその………クロスベル以外の場所はどこも初めてでどこでもよかったですから、いざとなれば主様達のお手伝いもできるという意味でもバーゼルは都合が良かった場所でしたので…………」

「ハハ…………何度も言っているが、俺達の事は気にせず二人共貴重な学生生活を満喫していいんだが…………その気持ちはありがたく受け取っておくよ。」

レジーニアの後に遠慮気味の様子で答えたアンリエットの答えを聞いたリィンは苦笑した後アンリエットの頭を優しくなで

「あ、貴方様…………」

(コイツもヴァンと”同類”かよ…………コイツのハーレム入りを狙っているアシェンも下手すりゃ”木乃伊(みいら)取りの木乃伊”になるんじゃねぇか?)

(冗談抜きでアシェンが心配になってきたわ…………)

(ふふっ、ああ見えて惚れた相手に対して一途になる娘だものね。)

「(アハハ…………)――――――そういえば、前から気になっていたのですが、ヴァンさんと”エースキラー”の皆さんの会話で時折”3年前の親睦会”という言葉が出てくるのですが、その”親睦会”とは一体……?」

リィンに頭をなでられたアンリエットは頬を赤らめ、その様子を見たその場にいる全員が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中アーロンはジト目でリィンを見つめて小声で呟き、疲れた表情で頭を抱えているマルティーナにユエファは苦笑しながら同意し、アーロンの小声が聞こえていたアニエスは苦笑した後今まで気になっていた疑問について訊ねた。

 

「”3年前の親睦会”とはエイドス様達が帰還される直前にエイドス様とオリヴァルト殿下の提案によって開かれた天へと帰還するエイドス様達が帰還前の関わった人々への挨拶もそうだが大戦後のそれぞれの勢力の慰労や親睦を兼ねた”親睦会”の事だ。」

「ちなみにその”親睦会”に招待されたのはわたくし達”灰獅子隊”を含めた3年前の”大戦”の”ハーケン会戦”や”決戦”の”表”と”裏”、それぞれの重要な部分に関わったメンバーに加えてメンフィル・クロスベル連合、リベール、レミフェリア、そしてエレボニアのVIPの方々で、その”親睦会”にはヴァンさんもそうですがエレインさんやジンさん、それにフィーさんやアネラスさんも招待され、参加なされたのですわ。」

「ハアアアア~~~~~ッ!?何なんだよ、その超豪華な面子が集まった”親睦会”は!?」

「3年前……いや、4年前の”クロスベル異変”時に”空の女神”が両親や先祖と共に現代のゼムリアに降臨して、”クロスベル異変”の解決もそうだけど3年前の”大戦”にも関わった話は知っていたけど、”空の女神”達が天へと帰還する直前にそんなとんでもない”親睦会”が行われていたなんて……」

「という事はヴァンさんやエレインさん達はあの翼の女神(アルージャ)と直に話をしたことがあるんですか……っ!?」

リィンとセレーネの説明を聞いて驚愕の事実を知ったアーロンは思わず驚きの表情で声を上げ、カトルは信じられない表情で呟き、フェリは尊敬の眼差しでヴァンを見つめて確認した。

「……まあな。つってもそんな超豪華な”親睦会”に招待してくれた礼の挨拶をしたくらいだぜ?」

「そ、それでもあの”空の女神”様と直に会って言葉を交わすだけでも凄すぎますよ……えっと……もしかしてリィンさん達と共に”親睦会”に参加したレジーニアさんやアンリエットさんもそうですが、レン先輩も空の女神様と直に会って言葉を交わしたことがあるんですか……?」

「ああ。会話自体はヴァン達と大して変わらないけど、大戦の決戦時は”最後の敵”を討つ際空の女神達ともそうだが、ヴァン達とも共闘したよ。」

(レ、レジーニアさん。ヴァンさんの為にもその話は言わなかった方がいいと思うんですが……)

フェリの確認に答えたヴァンの答えを驚きの表情で指摘したアニエスはレジーニア達に訊ね、アニエスの疑問に対して答えた後更なる驚愕の事実を口にしたレジーニアの話にアニエス達がそれぞれ冷や汗をかいて表情を引き攣らせてヴァンを見つめている中、アンリエットはヴァンを気にしながら小声でレジーニアに指摘した。

 

「忠告が遅ぇよっ!――――――それよりも、リィン。お前さん達と合流した時から気になっていたが、何で”北の猟兵”の連中が一人もいないんだ?昨日の襲撃時にも、イーディスを拠点に活動している4人全員がいた上俺達と共闘したからてっきり、お前さん達との合流時にもいると思っていたんだが。」

アンリエットの小声が聞こえていたヴァンは疲れた表情でアンリエットに指摘した後強引に話を本題に戻してリィンに訊ねた。

「彼らはアルマータや庭園(ガーデン)の幹部――――――メルキオルとオランピアでしたか。”二人を確実に捕らえる作戦の実行の為”に、既に目的地へと先行、並びに潜伏中です。」

「え………」

「あ、あの二人を”確実に捕縛する作戦”ですか……!?」

「……誤魔化す事なく答えたって事は、当然その”作戦”とやらにも巻き込む俺達にも詳しい内容を聞かせてくれるんだよな?」

リィンが口にした驚愕の事実を知ったアニエスは呆けた声を出し、フェリは驚きの表情で声を上げ、ヴァンは真剣な表情でリィンに確認した。

「ええ。と言っても、作戦の内容自体はそんなに複雑なものではありませんが――――――」

そしてリィンはヴァン達に作戦の内容について説明した。

 

「た、確かに今までのアルマータの幹部達の行動を考えれば、その幹部達の行動を逆手に取った”作戦”の成功率は高そうですね……」

「ハン、まさか既に”仕込み”をしていやがったとはな。エレボニア帝国軍の”総大将”もそうだが例の”鉄血宰相”とやらと正々堂々とやり合って勝利した事で大戦を終結に導いた大英雄サマが考えた割には、中々えげつない策じゃねぇか?」

作戦の内容を知ったアニエスは驚きの表情で呟き、鼻を鳴らしたアーロンは意味ありげな笑みを浮かべてリィンを見つめて指摘した。

「ハハ、作戦自体はルシエルが考えたものだから、俺が考えた訳じゃないよ。」

「”ルシエル”という人とは一体…………?」

「”ルシエル”とは、あたしと同じ主の”守護天使”の一人であり、主の親衛隊の副長兼参謀を務めているその優れた智謀で状況に合った戦術を導き出して戦場を駆ける頭脳派の天使で、階級は君達もよく知るメイヴィスレインと同じ第五位の天使――――――”力天使(ヴァーチャーズ)”だ。」

「あのメイヴィスレインと同じ階級の天使……(”ルシエル”………どこかで聞き覚えがあるような……?)」

(……”現在の状況に合った戦術”――――――彼女らしい策ですね。)

リィンの口から出た新たな人物の名を知って首を傾げているフェリにレジーニアが説明し、その説明を聞いたアニエスは呆けた後聞き覚えのある名前である事にも首を傾げ、メイヴィスレインは静かな笑みを浮かべてルシエルを思い浮べていた。

 

「つーか、”親衛隊”までいるとか、さすがは”現代のゼムリアの大英雄”サマだけあって、”いい御身分”じゃねぇか。」

「いや、リィンさんは”総督”なんだから、”総督”の身辺警護を専門とした部隊――――――それこそ”親衛隊”がいて当然の身分じゃないか。」

「ちなみにリィンの親衛隊の正式名称は”灰翼隊”で、所属している親衛隊員達は全員その名の通り天使か天使のような”翼がある異種族”で、話に出たルシエルという天使はリィン――――――”灰の剣聖”に仕える”灰の双翼”の片翼にして”知将”として各国の軍方面では有名な存在だ。………とは言っても、その”双翼”を遥かに超える”二人の化物”に関しては、さすがに極一部の連中しか知らないがな。」

意味ありげな笑みを浮かべてリィンを見つめて指摘したアーロンにカトルは呆れた表情で指摘し、ヴァンはルシエル達の事について説明し

「”双翼を遥かに超える二人の化物”とは一体…………?」

「えっと……もしかしてリィンさんにはレジーニアさん達以外にも、”契約”している方達がいらっしゃっているのでしょうか?」

「ああ。――――――ベルフェゴール、アイドス。」

ヴァンの説明を聞いて新たな疑問を抱いたフェリは首を傾げ、あることに気づいたアニエスがリィンに訊ねるとリィンはベルフェゴールとアイドスを召喚した。

 

「ちょっ!?そちらの黒い翼の女性の恰好、大胆過ぎない……!?」

「た、確かに……”黒亡街”のアダルト店の関係者の女性達でも、もう少し露出を控えている格好でしたし……」

「はい……!そちらの黒い翼の女性の恰好は破廉恥過ぎます……!」

「クク、”あの程度の恰好”で狼狽えるなんてまだまだガキだねぇ。……しかし恰好云々はともかく、そっちの痴女もそうだが、橙色の髪の女もとんでもねぇ”上玉”じゃねぇか。」

ベルフェゴールの姿を目にして下着姿と言っても過言ではないベルフェゴールの大胆な姿にカトルは顔を真っ赤にし、気まずそうな表情で呟いたアニエスの言葉に頷いたフェリは頬を赤らめてジト目でベルフェゴールを見つめ、カトル達の反応に対して口元に笑みを浮かべて指摘したアーロンは興味ありげな様子でベルフェゴールとアイドスを見つめた。

「ハ~イ、私の名はベルフェゴール。ご主人様の使い魔の一人にして、ご主人様のハーレムの一員よ。よろしくね♪」

「――――――初めまして。私の名前はアイドス・セイル-ン、ベルフェゴールやレジーニア達と同じリィンと”契約”している異種族にして、リィンの婚約者の一人よ。よろしくね。」

それぞれ自己紹介をしたベルフェゴールはアニエス達にウインクをし、アイドスはアニエス達に微笑んだ。

 

「えと…………話の流れから察するにベルフェゴールさんとアイドスさんが先ほどのヴァンさんの話にあった”双翼を遥かに越える化物”との事ですが……本当なんですか?特にアイドスさんはわたし達と同じ”人間”にしか見えませんが。」

「まあ、”神”にも様々な姿がいるだろうが、アイドスは見た目に関しては”人間”そのものだから、神気や魔力を感じる事ができなければ、アイドスの正体に気づけないのも無理はないかもしれないね。」

「………………え。」

「あの…………レジーニアさん、今アイドスさんの事を”神”と言いませんでしたか……?」

困惑の表情でアイドスを見つめて疑問を口にしたフェリにレジーニアが指摘するとレジーニアの指摘によって驚愕の事実を知ったアニエス達は石化したかのように固まり、我に返ったカトルは呆けた声を出し、アニエスは表情を引き攣らせながらレジーニアに確認し

「勿論言ったよ、アイドスの種族は”神”であることを。」

「…………おい、マジでその女は”神”なのかよ?」

確認されたレジーニアが答えるとアニエス達は再び石化したかのように固まり、我に返ったアーロンはヴァンやリィン達に確認した。

 

「信じられないかもしれねぇが、マジでアイドスは異世界――――――ディル=リフィーナの”女神”の一柱との事だ。」

「そ、その……ちなみにアイドス様は”慈悲の大女神”と呼ばれている女神様で神様達の中でも相当”格”が高い女神様でもあるんです。」

「ええええええええええええええっ!!??」

「はあああああああああああああっ!!??」

そしてアーロンの確認に対してヴァンが肩をすくめて肯定し、更にアンリエットがアイドスの事に説明するとアニエス達はそれぞれ信じられない表情で声を上げた。

「い、”異世界の女神”という事はアイドスさん――――――いえ、アイドス様はわたし達の世界で言う”翼の女神(アルージャ)”と同格の存在なんですか……!?」

「うふふ、”空の女神と同格どころか、それ以上の格の女神”よ、アイドスは。何せ空の女神本人も、アイドスの方が”自分より格上の女神”だと認めていたもの♪」

「エ、エイドス様ご自身が……」

「あ、ありえない……ん?”慈悲の女神”…………?その、アイドスさん…………じゃなくて、アイドス様、二つ…………いえ、一つだけ聞きたいことがあるのですがいいですか?」

信じられない表情で訊ねたフェリの疑問にベルフェゴールの答えを聞いたアニエスは呆けた表情で呟き、疲れた表情で呟いたカトルは何かに気づき、アイドスを見つめて訊ねた。

 

「フフ、私が”女神”だからと言ってそこまで畏まる必要はないわ。私の事も他の人達と同じ接し方や話し方でしてもらって構わないわ。――――――それで何を聞きたいのかしら?」

「えっと…………その、それじゃあお言葉に甘えて…………もしかしてアイドスさんには姉妹がいて、その中に”アストライア”という名前の人…………じゃなかった、”女神”がいるんじゃあ…………?」

「ええ、私は三姉妹の末妹で、二人の姉の内”アストライア”という名前のお姉様がいるわよ。」

「……………………」

「カトル君…………?もしかしてアイドスさんの事について、何か知っているのですか…………?」

自分の疑問に対して答えたアイドスの答えを知って再び石化したかのように固まっているカトルが気になったアニエスは不思議そうな表情でカトルに訊ねた。

「う、うん…………アニエスさん達は僕は天体観測が趣味である事は知っているよね?」

「はいっ。星座にもとても詳しかったですっ。」

カトルの確認にフェリは頷いて答え

「その”星座”には”星座ごとに様々な伝承”があるのだけどさ…………”乙女座”と”天秤座”という”星座が生まれた伝承にアストライアという名前の女神”が深く関係していて、アイドスさんもその伝承に少しだけ名前が出てくるんだ…………」

「ええっ!?という事はアイドスさんは…………」

「夜空に煌く星々を司る女神様なんですか……っ!?」

表情を引き攣らせてアイドスを見つめながら答えたカトルの説明を聞いたアニエスとフェリはそれぞれ驚きの表情でアイドスを見つめた。

 

「ええ。とはいってもそちらの彼の説明にあったように一般的にはアストライアお姉様の方が有名だから、私の女神としての知名度はこの世界の唯一神であるエイドスの方が圧倒的に上よ。」

「比較対象が”空の女神”とか非常識過ぎて、わかるかっつーの。…………ちなみに話の流れから察するにそこの痴女も相当ヤバイ存在なんだろう?」

苦笑しながら答えたアイドスに呆れた表情で指摘したアーロンはベルフェゴールに視線を向けた後リィンに訊ねた。

「ああ。ベルフェゴールは”闇夜の眷属最強の種族”である”魔神”と呼ばれている存在で、その”魔神”の中でも上位に相当する存在なんだ。」

「ちなみに”魔神”とはあたし達の世界では”魔王”という別名でも呼ばれていて、中にはその名の通り”神と同格の魔”の力を持つ”魔神”もいて、ベルフェゴールはその”神と同格の魔の力を持つ存在”の一柱でもあるんだよ。」

「ま、”魔王”にして”神と同格の魔の力を持つ存在”ですか…………」

「そんな”化物という言葉すらも生温い存在”を二人も侍らすとか、さすがは”現代のゼムリアの大英雄”サマってか?」

リィンとレジーニアの説明を聞いたアニエス達はそれぞれ冷や汗をかいた後アニエスは表情を引き攣らせてベルフェゴールを見つめ、アーロンは意味ありげな笑みを浮かべてリィンを見つめて指摘した。

「ハハ、一応褒め言葉として受け取っておくよ。」

「ちなみに今までの話で出てきていなく、アイドス様とベルフェゴール様のようにこの場で呼んで紹介していないお兄様と”契約”している異種族の方達があと二人いらっしゃるのですが…………そのお二人は現在、それぞれに所用があって、今はお兄様と一緒に行動されていないのですわ。」

「いや、その二人がいれば十分過ぎどころか”戦力過剰”だろ…………つーか、そもそも幾らアルマータと”庭園(ガーデン)”の幹部連中が相手とはいえ、その二人がいなくてもお前さん達だけでも戦力として十分過ぎるじゃねぇか。」

アーロンの指摘にリィンは苦笑しながら答え、リィンの説明を補足したセレーネにヴァンは呆れた表情で指摘した。

 

「…………そうですね。実際ルシエルが考えた捕縛作戦にも二人の加勢の予定はありません。ただ、マーシルン総督閣下の”警告”の件を考えると、ひょっとしたら”相棒”の出番があるかもしれませんが。」

「…………だな。その時は遠慮なくお前さんに頼らせてもらうぜ、リィン。」

リィンの答えに頷いたヴァンは口元に笑みを浮かべてリィンを見つめて指摘し

「ハハ、それは構いませんが他の人達はともかく、ヴァンさんでしたら例え相手が”兵器”であろうと、大丈夫なんじゃないですか?」

「えと……それってもしかして…………」

指摘されたリィンは苦笑しながらヴァンに答え、リィンの答えを聞いてリィン達が”魔装鬼(グレンデル)”の事を知っている事を察したフェリは真剣な表情を浮かべた。

「フフ、確か名前は”魔装鬼(グレンデル)”だったかな?他にも色々と興味深い事象まで起こるとの事だから、あたしもその時が来るのを楽しみにしているよ。」

「レ、レジーニアさん、せめてもう少し遠回しな言い方をすべきなのでは…………」

「あー…………既に”その場面”に出くわしている”北”の連中もそうだが、”エースキラー”の連中もいたから予想はできていたが、やっぱりお前さん達にも既に知られていたか。ただお前さん達もクロウ達から聞かされていると思うが、”アレ”はお前さんみたいに俺自身の意志で自由自在に化けれるって訳じゃねぇから、あんまり期待しない方がいいぜ?」

「ええ、勿論それも承知しています。」

「…………?」

興味ありげな様子でヴァンを見つめて呟いたレジーニアの言葉を聞いたアンリエットは冷や汗をかいて指摘し、ヴァンは苦笑しながらリィンに指摘し、ヴァンの指摘にリィンが頷いている中唯一”グレンデル”を知らない為会話の内容が理解できなかったカトルは不思議そうな表情で首を傾げた。

 

「うふふ、真面目な話はそのくらいにして。金髪の貴女、確か名前はアニエスだったかしら?」

「は、はい。私に何か?」

「こう見えて私は純情可憐な女の子が大好きで、その娘達が幸せになれるように色々と助言やお世話をしてあげたりすることもあるのよ。――――――特に貴女みたいな恋をしている女の子はね♪」

「ええっ!?」

「クク、面白い展開になってきたじゃねぇか。」

「わぁ…………!アニエスさん、どなたかに恋をしているんですか!?」

「ちょっ…………!本人に聞いていい事じゃないでしょ、そういうことは…………!?」

からかいの表情を浮かべたベルフェゴールの自分に向けた言葉にアニエスは思わず顔を真っ赤にして驚きの声を上げ、その様子を見守っていたアーロンは興味ありげな表情を浮かべ、興味津々の様子でアニエスに訊ねるフェリにカトルは慌てた様子で指摘した。

 

「これ、私のザイファの番号よ。恋に関する相談があったら、いつでもかけてね~♪何だったら、貴女が恋している男との”既成事実”を作るために二人きりになって押し倒したい時、あるいは私が魔術で誘惑してわざと貴女を抱くように誘導したい時とか協力してあげるわよ~♪」

「き、”既成事実”にお、押し倒…………っ!?わ、私は”恋”なんてまだですから、ベルフェゴールさんに相談する事なんて何もありませんっ!!」

ベルフェゴールのアニエスへのとんでもない提案を聞いたその場にいる全員が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中通信番号を書いた紙をベルフェゴールから手渡されたアニエスは真っ赤にした顔で必死の様子で否定し

「おや?アニエスが”ある人物”に向けている感情には”愛”も含――――――むぐっ。」

「(それ以上言うのは”野暮”だから、止めておきなさい。)――――――ベルフェゴール、からかうのはそのくらいにしておいてくれ。」

必死に否定しているアニエスの言葉に疑問を抱いたレジーニアが指摘しようとしたその時レジーニアの口を両手で塞いでレジーニアに注意したリィンは呆れた表情でベルフェゴールに指摘した。

 

「からかうだなんて心外ね~。私は恋する純情可憐な女の子にはいつも本気で力になってあげているわよ~?――――現にアリサは私がシャロンと協力して”お膳立て”してあげたおかげで、学生時代から抱いていた”初恋”を叶えてご主人様のハーレムメンバー入りしたじゃない♪」

「うぐっ…………と、とにかく!本人がベルフェゴールの協力を望んでいるならともかく、望んでいないならそれこそ”余計なお節介”だろうが。ヴァンさんの助手の人達への紹介も終わったし、二人は一旦戻ってくれ。」

ベルフェゴールに図星を突かれたリィンは唸り声を上げたがすぐに気を取り直して二人に指示をし

「ええ、わかったわ。」

「仕方ないわね~。という訳で気が変わったらいつでも連絡してね~♪」

リィンの指示に答えたアイドスとベルフェゴールはそれぞれリィンの身体と太刀の中へと戻った。

「――――すまない、ベルフェゴールの失言で君を混乱させてしまって。ベルフェゴールもああ見えて悪気はないんだ。」

「い、いえ。私は気にしていませんので、わざわざリィンさんが謝る必要はないかと。」

「そうそう、それにアニエスくらいの年頃の少年少女なら恋の一つくらいしてもおかしくねぇんだから、ベルフェゴールに図星を突かれたからってアニエスも恥ずかしがることはないと思うぜ?」

二人が戻った後リィンに謝罪されたアニエスが謙遜した様子で答えると、アニエスの言葉に頷いたヴァンは苦笑しながらアニエスにフォローの言葉をかけたが

「…………ええ、そうですね。ヴァンさんも学生時代はエレインさんと記念公園でデートしていたとの事ですから、学生の私が今誰かに恋をしていても恥ずかしがる事なんてありませんものねっ!!」

「何であの時あの場にいなかったアニエスまでその話を…………って、お前ら、アニエスにも話しやがったな!?つーか、そこでキレるとか、エレインもそうだったが難しいお年頃のお嬢さんは時々何を考えているのか訳がわかんなくなるぜ…………」

膨大な威圧を纏ったアニエスに微笑まれたヴァンは冷や汗をかいた後すぐにその場にいなかった話をアニエスまで知っている心当たりを思い出してアーロンとフェリに指摘し、疲れた表情で肩を落とし、その様子を見ていたその場にいる全員は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

 

(はっ、アニエスさんの息吹が怒りの焔で燃え盛って…………)

(えっと…………アニエスさんって、もしかしなくてもヴァンさんの事を…………)

「(つーか、むしろ今ので気づかないヴァンには引くぜ。)――――――そういやさっきそこの天使学生がアニエスの感情がわかるみたいな事を言っていたが、まさか”天使”って種族は人の感情がわかるのかよ?」

アニエスから感じる”息吹”にフェリが驚いている中気まずそうな表情で小声で呟いたカトルの確認の言葉に対して呆れた表情でヴァンを見つめて答えたアーロンはあることを思い出し、レジーニアに訊ねた。

「ん?ああ、あたしたち”天使”は人の”感情”に敏感な体質でね。仮にその人物が感情を自らの意志で律しようとも、あたしたち”天使”からすれば、即座にその人物が誰にどんな感情を抱いているのかすぐわかるのさ。」

「ええっ!?」

「人の”感情”を即座に見破れるなんて、さすがは本物の天使様ですっ!」

「マジかよ…………ってことは姉貴やオフクロもその気になれば、俺達の感情も見破れるのかよ。」

「………………………………え”。(メ、メイヴィスレイン。今のレジーニアさんの話が本当なら、貴女も私が誰に恋をしているのか気づいて

…………?)」

(せめてもの情けにあえて名前は挙げませんが、”貴女がヴァンの所で働くようになった頃からの事務所のメンバーのある男性に『愛』という感情を抱いている事”をレジーニアよりも位階が上のこの私が気づいていない訳がないでしょうが。)

レジーニアの答えを聞いたカトルは驚き、フェリが尊敬の眼差しでレジーニアを見つめている中、アーロンは表情を引き攣らせ、アニエスは石化したかのように固まって呆けた声を出した後念話でメイヴィスレインに確認し、確認されたメイヴィスレインは呆れた様子で答え、メイヴィスレインの答えを聞いたアニエスは再び石化したかのように固まった。

 

「アニエスさん?大丈夫ですか?」

「ハッ!?え、ええ、大丈夫ですっ!(ううっ…………まさかメイヴィスレインやレジーニアさんに私が誰に恋をしているのか気づかれていたなんて…………知りたくなかった事実を知ってしまった気分です…………)そ、それよりも!話は変わりますが、リィンさんはサルバッドでのアルマータの暗躍の件へのマーシルン総督閣下の判断に隠されている真意についても何かご存じなのではないでしょうか?」

そこにアニエスの様子が気になったアンリエットがアニエスに声をかけるとアニエスは我に返り頬を赤らめてジト目でレジーニアを見つめた後、露骨に話を変えた。

「へ…………」

「サルバッドでのアルマータの暗躍の件への南カルバード総督の判断に隠されている真意というと…………」

「ハッ、同じメンフィルの総督で、おまけにメンフィルの皇家からも信頼されているアンタなら知っていそうだなぁ?」

アニエスの疑問の意味がカトルが呆けている中、サルバッドでの出来事を思い返したフェリは複雑そうな表情を浮かべ、アーロンは鼻を鳴らした後意味ありげな笑みを浮かべてリィンを見つめた。

「えっと………僕だけ事情はよくわからないんだけど…………」

「ったく、あの件とは無関係の連中もこの場にいる事を忘れてねぇか?」

カトルが困惑の表情を浮かべて呟いた後ヴァンは呆れた表情で溜息を吐いた後カトルやアンリエット、レジーニアを順番に視線を向けた後アニエス達に注意し

「す、すみません。」

「ハッ、大英雄サマのハーレムの一員でもある”本国”からの留学生共は当然無関係じゃねぇし、今回のアルマータの件に関わっているそいつも厳密に言えば無関係とは言えねぇだろうが。」

「言われてみればそうですね…………カトルさんだけ仲間外れにするのはどうかと。」

「そうだよ、ヴァンさん。それに一部ではあるけど、僕も昨夜エレ姉と一緒にサルバッドでのアルマータの”実験”の件も聞いているし、僕も無関係じゃないよ。」

ヴァンの注意にアニエスが謝罪した後アーロンは鼻を鳴らして反論し、フェリとカトルはそれぞれアーロンの反論に同意した。

「ったく、仕方ねぇな…………」

アーロン達の言葉に反論がないのかヴァンは溜息を吐いた後事情を知らないカトル達にサルバッドでのロイド達”エースキラー”が導力シーシャによる薬物汚染をヴァン達よりも3日も前に把握していながらも、南カルバード総督であるサフィナの要請によって映画祭の前日の夕方まで対処せず、その理由についてルファディエルが推測していたサフィナを含めたメンフィル帝国の思惑についての話をした――――――

 

 

 


 
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