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No.1171808
英雄伝説~黎の陽だまりと終焉を超えし英雄達~
soranoさん 2025-08-06 22:19:07 投稿 / 全1ページ 総閲覧数:836 閲覧ユーザー数:702 |
市内を回って業務を行いつつ、情報を集めていたヴァン達が遊撃士協会の支部を訪問するとある人物達がヴァン達を迎えた。
~バーゼル・遊撃士協会バーゼル支部~
「あら、貴方達、ちょうどよかったわ。」
「レン先輩、ここにいたんですか。」
「なんだ、俺達に用か?」
アルヴィス達と共に自分達を迎えた人物――――――レンに声をかけられたアニエスは目を丸くし、ヴァンは自分達への用について訊ねた。
「少し、共有したい情報があってね。」
「やれやれ、別に裏解決屋とまで共有しなくてもいいんだが。」
レンがヴァン達への用について答えるとアルヴィスは溜息を吐いて呟いた。
「ハッ、みみっちいこと言ってんじゃねえよ。そんなんじゃモテねぇぜ?」
「な、なにぃ!?」
「もう、話が進まないから…………」
アーロンの軽口に一々反応するアルヴィスの様子にレジーナは呆れた表情で指摘した。
「その情報ってのは?」
「アンカーヴィルでの爆発事件―――やっぱりアルマータのせいみたい。取引のあった企業にも手伝わせたのがわかって現場は混乱が極まっているみたいね。」
「だからジンさんとエレインさんたち含め、複数の高位遊撃士が対処に追われててな。俺も応援に駆け付けたいんだが…………」
「昨日の事件もある――――――バーゼルのことも放っては置けないわ。」
「その通りよ、あくまで”本命”はこっちだという推測は変わらないわ。昨日、市内に人形兵器を放ったのもアルマータの”幹部”だったみたいでね。貴方たちが煌都で戦ったという二人で間違いないでしょう。」
「!あいつらか…………!」
「ヴィオーラとアレクサンドルでしたか…………煌都でも市内に魔獣や人形兵器を放っていましたが。」
「そ、そんな人たちが…………」
レンの話を聞いてすぐにヴィオーラとアレクサンドルを思いうかべたアーロンは厳しい表情を浮かべ、フェリは真剣な表情を浮かべて煌都での二人の行動について思い返し、レン達の話を聞いていたカトルはまだ見ぬアルマータの幹部達に対して不安そうな表情を浮かべた。
「と言っても、南カルバード州軍の部隊が守っている以上、市内が再び襲われる可能性は低いでしょうけど。」
「…………ぶっちゃけどのくらいのもんなんだ、南カルバード州軍――――――いや、”本国”の部隊ってのは?」
レンの話を聞いてバーゼル市内の警備についている南カルバード州軍の強さが気になったアーロンは真剣な表情で訊ねた。
「身内贔屓を抜いたとしても錬度ならゼムリア大陸全土に轟かせているその二つ名通り”大陸最強”――――――”一部の例外”を除けばどの国の軍隊よりも秀でている上、高位猟兵団にも匹敵、装備に関しては完全に上回るでしょうね。特にサフィナお姉様――――――現南カルバード総督は凄まじくてね…………3年前の”大戦”の勝敗を決定づける事になった”ハーケン会戦”では、メンフィル帝国軍側の”総大将”であるお父様――――――リウイ・マーシルンに”万が一の事があった為の保険”として”副将”を任せられていたわ。それとサフィナお姉様は私に大鎌を得物とした戦闘技術もそうだけど、飛竜を駆った飛行戦闘技術を教えてくれた人――――――つまり、私にとっては戦闘技術の”師匠”でもあるわ。」
「ハッ、”英雄王”とかいう大層な名で呼ばれているメンフィルの前皇帝の”保険”を任せられるくらいだから、南カルバード総督が相当な奴である事は間違いないだろうな。」
「まさかマーシルン総督閣下がレン先輩にとって戦闘技術の師匠であるなんて…………ちなみに先輩は本国の部隊は”一部の例外を除けばどの国の軍隊よりも秀でている”と仰いましたけど、その”一部の例外”というのは一体…………?」
レンの答えを聞いたアーロンは鼻を鳴らして真剣な表情で呟き、アニエスは目を丸くして呟いた後ある気になる事を思い出し、レンに訊ねた。
「”六銃士”が直々に鍛え上げた元ベルガード門の警備隊――――――今では”ベルガード師団”の名で呼ばれているクロスベル帝国軍の師団よ。」
「”ベルガード師団”か…………3年前の”大戦”でも活躍し、クロスベルがまだ自治州だった頃、エレボニア帝国軍との合同演習でかつてはメンフィルに次ぐ”大陸最強”と謳われていたエレボニア帝国でも”最強”と謳われていた第四機甲師団を破ったクロスベルの精鋭か。」
「あ、その話は聞いた事があります。何でもギュランドロス陛下達――――――クロスベルでの”六銃士”の台頭に警戒を抱いたエレボニア帝国のオズボーン宰相の提案による合同演習だったそうですけど、その結果は”宗主国”であった帝国軍が自治州の警備隊に敗北するというスキャンダルを作ってしまい、そのスキャンダルが世界中に知れ渡らないように裏でギュランドロス陛下達と交渉したとの事でしたが…………」
「4年前の”西ゼムリア通商会議”でカルバードの前総督と協力してクロスベルを謀ろうとしたが、二大国の動きを想定した六銃士の連中によって謀は失敗した挙句その謀に対する”報復”代わりに各国のVIP達やマスコミの前でエレボニア帝国軍がクロスベル警備隊に敗北している様子の合同演習の映像を流されたっつー話だったな。(そういえばツァオの野郎はその謀の件で行方不明――――――いや、六銃士かその関係者の連中に”消された”って話だったな…………)」
「郷でもその話は聞いた事があります。それとクロスベルと敵対した事によってあの”西風の旅団”と並ぶ”大陸最強”の猟兵団――――”赤い星座”が衰退する原因にもなったという話をアイーダさんから聞いた事があります。」
レンの答えを聞いたヴァンは真剣な表情で自身が知る情報を口にし、ヴァンの情報を聞いたアニエスとアーロン、フェリはそれぞれ心当たりがある話を口にした。
「ま、とにかく市内の警備は任せて問題ないってことだ。それよりアルマータの方がどう出るかが気になる。」
「そういえば、昨日貴方たちが遭遇した二人、”庭園”の関係者って確定したそうね?」
「ああ。二人共自分から”管理人”ってのを名乗ってな。4つの”庭”を司る管理人――――――今までの情報と合わせても間違いなさそうだ。」
「ですがそれぞれ微妙に立場が違うような印象でしたね。メルキオルという人はアルマータの幹部の一人のはずですが――――――人形使いの女性は単に”契約”で協力しているだけという口ぶりでした。」
「ややこしいな…………一体どうなっているんだ?」
アニエスの話を聞いたアルヴィスは疑問を口にした。
「さあな、あいつらが一体どういう繋がりかはわからねえが…………最悪のマフィアと最悪の暗殺者どもが手を組んじまっているのは確実だろう。」
「そうね、対策は必要そうだけど…………今はとにかくバーゼルのことね。貴方達の方は何か進展があったかしら?」
「残念ながらこれといったものは…………むしろAI化したキャラハン教授の居場所について先輩に何か手がかりがないかと…………」
「この辺の地理に詳しくないから手がかりになりそうなものはないわね…………一応導力ネットの方も探ってみたけど、さすがに尻尾は見せていないわ。期待に応えられなくてごめんなさいね。」
「いえ、やはりそう都合よくはありませんね。」
「強いて言うなら、七耀脈の流れにも注意した方がいいと念のため言っておくわ。」
「七耀脈…………ですか?」
「リゼットさんの話にも出ていましたね。」
レンの助言にフェリは首を傾げ、アニエスはリゼットの話を思い返した。
「特に注目すべきなのは導力ネットとの関係ね。現代技術の結晶でもある導力ネットとは縁遠いもののように思われるけど…………特殊な条件下で互いに影響し合う事は一年半前の事件でも確認されているわ。今回の事件との共通点も多い――――――もしかすると何らかの形で関わっているかもしれないわね。」
「なるほど、そんな着眼点があるのか…………」
「参考にさせてもらうぜ。ちなみに総督方面で何か目ぼしい情報はないか?」
レンの助言にカトルは目を丸くし、ヴァンは頷いた後レンに更なる情報について訊ねた。
「総督方面の情報は他の勢力が手に入れている情報と同じ――――――いえ、一つだけ遊撃士協会とは共有していない情報があったわ。」
「何っ!?」
「…………私達にも秘匿していたその情報を彼らに関しては共有するつもりだったなんて、一体どういう事なのかしら?」
ヴァンの質問に答えかけた後あることを思い出して呟いたレンの言葉を聞いたアルヴィスは驚き、レジーナは真剣な表情でレンに訊ねた。
「仮に共有しても、”貴方達遊撃士はよほどの事態に陥らない限り実行することがない情報”だもの。」
「”遊撃士がよほどの事態に陥らない限り実行することがない情報”とは一体…………?」
レンの説明にフェリは戸惑いの表情で首を傾げた。
「昨日のアルマータによるバーゼル襲撃を知った”本国”がアルマータを正式に”テロリスト認定”した事よ。」
「メンフィル帝国の本国がアルマータを”テロリスト認定”に…………確かに彼らの今までの所業を考えれば、”テロリスト”に認定されてもおかしくありませんが、それが何故”遊撃士はよほどの事態に陥らない限り実行することがない”ことに繋がるのでしょうか…………?」
レンが口にした情報を知ったアニエスは真剣な表情を浮かべた後困惑の表情でアルヴィスとレジーナを見つめ
「なるほどな…………仔猫がギルドにその情報を共有しなかったのは当然だ。――――――何せ”メンフィルにテロリスト認定されちまった時点で、そのテロリスト認定された連中に関する処遇の制限はメンフィル帝国領では全て消滅することになる”からな。」
「”テロリスト認定された連中に関する処遇の制限はメンフィル帝国領では全て消滅することになる”というのはまさか…………」
「ええ、お察しの通り、”メンフィルにテロリスト認定されてしまえばメンフィル帝国領では犯罪者としての人権すら消滅する”――――――つまり、メンフィル帝国領内ではテロリスト認定された人達に対して”どんな犯罪行為を犯しても犯罪にはならないのよ。”――――――それこそ、”拷問”もそうだけど”殺人”を犯してもね。」
「それは…………」
「ハッ、なるほどな。確かにその情報をギルドと共有した所で、甘ちゃんなギルドが実行する事なんてねぇから、その情報に関してはギルドと共有しなくても問題ない情報だな。」
ヴァンの話を聞いてあることに気づいて真剣な表情を浮かべたフェリの言葉に頷いたレンは説明を続け、レンの説明を聞いたアニエスが不安そうな表情で答えを濁している中アーロンは鼻を鳴らしてアルヴィスとレジーナに視線を向けた。
「問題大アリだッ!例え相手がテロリストに認定されるほど凶悪な犯罪者であろうと、法の裁きを受けさせるのがギルドの――――――俺達遊撃士の基本方針だ!」
「…………まさかとは思うけど、メンフィル帝国はクロスベル――――――北カルバードでもアルマータを”テロリスト認定”した上で、その処遇に関する制限の全消滅をクロスベル帝国に要請しているのかしら?」
アーロンに視線を向けられたアルヴィスは怒りの表情で声を上げ、レジーナは厳しい表情でレンに問いかけた。
「ええ、そう聞いているわ。――――――まあ、アルマータに関する処遇が”無法”なのは”エースキラー”の人達が証明しているのだから、その一員でもある私からしたら今更な話でもあるのだけどね。」
「”アルマータに関する処遇が無法なのはエースキラーの人達が証明している”ってどういう事なんだ…………!?」
「もしかしてそれって…………”皇帝勅命捜査令状”の事ですか?」
「”アルマータの捜査の為なら、違法行為でも認める”っていう、メンフィルとクロスベルの皇帝達が発行した例のチートじみた捜査令状か。アンタがメンフィルの皇女でエースキラーの一員でもあることから察してはいたが、その口ぶりからしてやっぱりアンタもあのチートじみた捜査令状を持っているようだな?」
苦笑しながら答えたレンの説明を聞いたカトルが信じられない表情で疑問を口にすると、心当たりがあるアニエスは複雑そうな表情で、アーロンは真剣な表情でそれぞれレンに確認した。
「ええ。それとアルマータが”テロリスト認定”されることに合わせてアルマータのボスもそうだけど、幹部達にも懸賞金をかける事も決定したわ。――――――ヴァンさん達にとっては”仕事の一部”でもあるのだから誰がいくらなのかの情報も今共有した方がいいかしら?確か”裏解決屋”の仕事の一部として、賞金稼ぎ(バウンティハンター)もあるでしょう?」
「”そっち”に関してはすぐに知りたい情報という訳でもないから今回の件が終わってからでいい。それよりもアルマータが”テロリスト認定”されたってことはその”協力者の一人であるキャラハンも同じ扱いなのか?”」
「あ…………」
「カトル君…………」
レンの確認に対して答えた後更なる質問を続けたヴァンの質問を聞いて呆けた声を出した後表情を青褪めさせたカトルに気づいたアニエスは心配そうな表情でカトルに視線を向けた。
「キャラハン教授に関しては私が”南カルバード総督代理の意見として”アルマータに協力する経緯もそうだけどサルバッドの件でのギャスパー元社長の件もあるから、”アルマータに騙されているか脅迫されている可能性も十分に考えられる為、アルマータと同じ扱いにするのは時期尚早”という理由で”本国”に”テロリスト認定”する事は思いとどまってもらっているわ。」
「ありがとうございます、先輩…………!」
「俺達はこのままキャラハンを追うつもりだが、アンタらはどうする?」
アニエスがレンに感謝の言葉をかけた後ヴァンはアルヴィス達に今後の行動方針について訊ねた。
「私達は市内の警備に参加するつもりよ。南カルバード州軍――――――ううん、メンフィル帝国軍にだけ任せるわけにはいかないから。」
「いくら実力が保証されてても、マルドゥックのようなお前達以上にうさんくさい連中を雇った上未だに国際法に加入しない所か、”テロリスト認定”をすればそのテロリスト認定された犯罪者相手なら無法を犯すことを認める国の軍だからな。」
「ハン…………?」
「その…………先輩、もしかして遊撃士協会(ギルド)とメンフィル帝国の関係はあまりよくないのでしょうか…………?」
メンフィル帝国軍を悪い風に見ている様子のレジーナとアルヴィスの答えを聞いたアーロンは眉を顰め、アニエスは複雑そうな表情でアルヴィスとレジーナを気にしながらレンを見つめて訊ねた。
「はっきり言ってしまうとそうなるわね。メンフィル帝国もそうだけどクロスベル帝国――――――”中央”は”一部の遊撃士”は信頼しているけど”遊撃士協会という組織自体”に対しては3年前の大戦の件で信頼度を下げているし、遊撃士協会も大戦――――――いえ、メンフィル・クロスベル連合によるエレボニア・カルバード侵略の件でメンフィル帝国もそうだけどクロスベル帝国への警戒度を上げたもの。そこに加えて1年前の”中央”と”本国”による民族テロの大規模摘発に仲間外れにされたことやその”結果”――――――相手がテロリストとはいえ、”皆殺しにした事”も気に食わないようで、エレボニアのかの”鉄血宰相”がエレボニアを牛耳っていた頃程ではないにしても、連合と遊撃士協会(ギルド)の関係はあまりよくないのよ。」
「それは…………」」
「えと…………ギルドが連合に対する警戒度を上げた事については理解できるのですが…………対する連合は3年前の大戦の件でギルドへの信頼度を下げたと言いましたけど、もしかして3年前の大戦の際ギルドは連合の重要な軍事作戦等を妨害とかしたのでしょうか?」
自分の質問に対して肩をすくめて苦笑しながら答えたレンの説明を聞いたアニエスが複雑そうな表情で答えを濁している中新たな疑問を抱いたフェリはレンに確認した。
「そうね。他には”とある遊撃士がメンフィル帝国に対して犯した失態”もそうだけど、”風の剣聖”の件もあるわね。」
「”とある遊撃士がメンフィル帝国に対して犯した失態”、ですか?」
「”風の剣聖”に関しては4年前のクロスベル異変の”主犯”の一人だったからだろうが…………その”とある遊撃士”とやらは一体メンフィルに対して何を”やらかしたんだよ?”」
フェリの推測にレンが頷いて答えた話が気になったアニエスは首を傾げ、アーロンは興味ありげな様子で訊ねた。
「単刀直入に言うと、遊撃士でありながら”国家権力に対する干渉”をしちゃったのよ。」
「ええっ!?だ、だけど遊撃士って確か規約で国家権力に対する不干渉を掲げていたんじゃ…………」
「ええ、規約第三項がそれにあたるわ。」
「だがその件はその遊撃士が護衛依頼を請けていた保護対象の為でもあったんだ。」
「”護衛依頼を請けていた保護対象の為”とは一体…………?」
レンの説明を聞いて驚きの声を上げたカトルはすぐにあることに気づき、カトルが気づいた事にレジーナは頷き、複雑そうな表情で呟いたアルヴィスの話を聞いたフェリは不思議そうな表情を浮かべた。
「アニエス達は3年前の大戦――――――メンフィル・クロスベル連合とエレボニア帝国の戦争が勃発した”切っ掛け”は知っているかしら?」
「えっと…………確かクロスベル帝国は内戦終結後エレボニア帝国のオズボーン宰相が内戦によって疲弊した帝国の経済を回復させる為やIBC(クロスベル国際銀行)による”資産凍結”の報復の為にクロスベルに侵攻した件が原因でしたよね?」
「メンフィルはエレボニアの内戦時に例の大英雄サマ――――――”灰の剣聖”の故郷に内戦から逃れて来たエレボニアの皇女を領主一家でもある”灰の剣聖”の家族が匿った事で皇女の身柄を狙った貴族派でも重鎮の大貴族が雇った猟兵達がその”灰の剣聖”の故郷を襲撃した挙句”灰の剣聖”の父親でもある領主に重傷を負わせた件が原因だって話だったな。…………って、オイ。まさかとは思うが…………」
レンの問いかけにアニエスと共に自分達が知る知識を思い出したアーロンは話の流れからすぐにあることに気づいてレンを見つめた。
「ええ、お察しの通り先ほど話に出た”とある遊撃士の保護対象”とは内戦時に”灰の剣聖”リィン・シュバルツァー総督の故郷ユミルに逃れて来たアルフィン皇女の事よ。で、その”とある遊撃士”はユミルの領主であるシュバルツァー男爵にアルフィン皇女をユミルで匿っている件をお父様――――――リウイ・マーシルン大使を含めて”本国”に知らせないで欲しいという要請をしちゃったのよ。」
「ええっ!?ど、どうしてそのような要請を…………」
「…………もしかして、内戦終結後アルフィン皇女殿下をメンフィル帝国領であるユミルが匿った件でアルフィン皇女殿下――――――いえ、エレボニア帝国がメンフィル帝国に対しての大きな”借り”を作ってしまう事を懸念し、そのような要請をされたのですか?」
レンの話を聞いたフェリが驚いている中話の中に出た”とある遊撃士”の考えを悟ったアニエスは複雑そうな表情でレンに訊ねた。
「正解。で、シュバルツァー男爵もメンフィル帝国の貴族ではあるけど”百日戦役”によってユミルがメンフィル帝国に帰属するまではエレボニア帝国の貴族で、それもエレボニアの皇家とも縁がある人物だったからその”とある遊撃士”の要請を受け入れちゃったのよ。そしてその結果は…………後は、言わなくてもわかるでしょう?」
「メンフィル帝国がエレボニア帝国に戦争を仕掛ける”切っ掛け”――――――エレボニアの”四大名門”のアルバレア公爵が雇った猟兵達による”ユミル襲撃”か…………」
「ちなみに大戦時その”とある遊撃士”は”ユミル襲撃”の責任を取らされた事によって降格処分を受けた上、エレボニアから追放されるような形でエレボニアとは遥かに離れている自治州の支部に左遷されたとの事だが…………レマン自治州にあるギルドの本部に”ユミル襲撃”の件でギルドや”とある遊撃士”の責任を追及したのはレンなんだぜ。」
「ええっ!?レ、レン先輩が…………!?」
アニエスの推測を肯定した後苦笑しながら問いかけたレンの問いかけにカトルは複雑そうな表情で呟き、ヴァンはアニエス達に件の裏話を教え、その裏話を知ったアニエスは驚きの声を上げてレンを見つめた。
「ハッ、なるほどな。だがその割には昨日の襲撃の際あんた達はそこの皇女の指示に大人しく従ったし、今もこうしてあんた達の拠点に招いているじゃねぇか。」
疑問が解けたアーロンはある事が気になり、アルヴィスとレジーナを見つめて訊ねた。
「彼女が指揮官として優秀な事は事実だし、市内の被害を最小限に抑えるという点に関してはギルドとしても相違ないからね。」
「それに”代理”とはいえ今の彼女は”南カルバード総督”だ。この非常事態での民間人の安全の為にも南カルバード総督であり、”エースキラー”の一員でもある彼女と市内の警備体制についての相談や情報交換をするのは遊撃士として当然の事だ。”とある遊撃士”――――――トヴァルさんに非があったとはいえ、トヴァルさんが陥れられた原因でもある彼女に対しては思う所はあるが、それでも今は遊撃士としての務めを優先すべきだからな。」
「ま、互いの関係があまりよくないとはいえ、今みたいに互いの利害が一致する時には協力し合う事もあるという事よ。何か進展があるまで私は市内にある総督府の”出張所”にいるわ。視察研修の方にも気を配らないと。アニエス、オデットやアルベール君たちが待っている事を忘れちゃダメよ?」
アーロンの疑問にレジーナとアルヴィスがそれぞれ答えた後苦笑しながら肩をすくめたレンはアニエスに忠告し
「――――――はい。先輩も、どうかお気をつけて。」
レンの忠告にアニエスは頷いた。その後市内の見回りを再開したヴァン達はクロンカイト教授を見つけるとクロンカイト教授に近づいて声をかけた。
~市内~
「あ、いました!」
「ヤン兄…………ここだったか。今日はすぐ見つけられてよかったよ。」
「ふむ、裏解決屋か。どうやら私に今一度話があるようだな?」
「ハッ、話が速くて助かるぜ。」
「…………ヤン兄なら状況はわかっていると思うけど…………政府が本格的に介入する前に今回のことを何とかしたいんだ。だからヤン兄に…………」
「私に?」
「……………………」
自分の言葉の続きを問い返したクロンカイト教授に対してカトルは黙ってクロンカイト教授を見つめた。
「今の状況についての関心は否定しない。マルドゥックは興味深いし、キャラハン教授の悪足掻きは更に面白い。一応最後まで”観察”はするつもりだが、昨日も言った通り――――――」
「ふう…………ヤン兄。話は最後まで聞いてよ。…………嫌という程思い知ったんだ。昨日言われたことも、自分の未熟さも、足りていなかったものも。すぐに成長できるなんて思わない――――――それでも今、この手で護りたいものがある。手を貸して、なんていうつもりはない――――――代わりに僕の仮説にフィードバックが欲しいんだ。」
「ほう…………?」
カトルの予想外の頼みにクロンカイト教授は興味ありげな表情を浮かべた。
「…………キャラハン先生は、”1と0の世界”に行ってしまった。だけど――――――先生の目的を考えるとどうしても納得がいかないんだ。あの時、マフィアにアウローラを破壊させたことに。」
「…………!」
「そ、それは…………」
カトルが抱いている納得がいかない部分を聞いたヴァンは目を見開き、アニエスは不安そうな表情を浮かべた。
「…………そうだな。それこそは明らかな”矛盾”だ。目的が反応兵器の完成なら、一番ネックになるのは”手段”だろう。彼がAI化したのはその一環でしかない。バーゼル随一の計算能力を持つ”アウローラ”は本来、間違いなく必要だったはずだ――――――ならば、次の課題は見えてくる。」
「――――――手段が不足している中、どうやって目的を達成するつもりか…………」
「上出来だ。」
「ハッ、なんだかんだ言いつつ助言をくれるなんざお優しいじゃねえか?
カトルの推測に肯定している様子のクロンカイト教授にアーロンが指摘した。
「妥当な仮説に対して、妥当なフィードバックを返したまでだ。答えに辿り着けるかはこれからだろう――――――その分なら問題なさそうだが。」
「ヤン兄…………」
「お前の言う通り、人はすぐに成長できない――――――だがお前は確実に前進している。その調子で励むといい。博士の名に恥じぬようにな。」
その後立ち去っていくクロンカイト教授を見送ったヴァン達は市内の徘徊を再開し、ジスカール工房を訪れると工房内は騒がしい様子だった。
~ジスカール工房~
「――――――もう一度確認してみろ!何度でも念入りにな!」
「は、はいっ…………!」
ジスカール技術長の指示に若手の技師が頷いてどこかに向かうと、入れ替わりにヴァン達がジスカール技術長に近づいてカトルとヴァンが声をかけた。
「技術長、どうかしたんですか?」
「なんかトラブルなら、相談は受け付けるぜ?」
「相談してどうこうなるもんじゃねえだろうが…………状況が状況だ。一応、お前らにも共有しとくか。」
ヴァンの問いかけに溜息を吐いて答えたジスカール技術長は事情をヴァン達に説明した。
「あの”新兵器”の部品が行方不明に…………!?」
ジスカール技術長からもたらされた情報にカトルは思わず驚きの声を上げた。
「ウチでもキャラハンの行方を追っていた矢先に判明してな。と言っても完成品が消えたわけじゃねえ。試作機の為に発注したパーツ群のリストに少しずつ食い違いがあった事がわかってな。その差分の所在が現在、完全に行方不明になっちまっている。全部でどれくらい消えちまったかも追いきれねえくらいでな。」
「おいおい…………」
「先日見かけたあの兵器の部品が…………」
事の重大さにアーロンは真剣な表情を浮かべ、フェリは不安そうな表情を浮かべて呟いた。
「そいつは確かにコトだな。俺達にどうこうできる話でもねぇ…………だが天下のジスカール工房にしては、いくらなんでもあり得ないミスだな。」
「ああ――――――半ば公表しているとはいえ、公式発表前の新兵器の試作機だ。万が一にもこういう事がねえように細心の注意を払っちゃいたんだが。タウゼントにゲキを飛ばした先にこれとは、不甲斐ねぇったらありゃしねえが。」
「…………たしか、ジスカール工房の部品発注は導力ネットを使った最新システムでしたよね?もしかすると今回の導力ネットのトラブルにも関係しているんじゃ…………?」
「ああ…………うちの若いのもその見解だ。今回起きている事を考えると色々と想像しちまうが…………」
「…………何か意図のようなものを感じますね。」
「ああ…………色々と信じられないような事が起きている今は特にな。」
カトルの推測に頷いたジスカール技術長は考え込み、不安そうな表情で呟いたアニエスの懸念にヴァンは真剣な表情で同意した。
「何がなんだかわかりませんけど…………一応、気を付けた方がよさそうですね。」
「悪いな、バーゼル全体が大変だって時にややこしい問題を起こしちまって。こっちでもキャラハンの行方を探ってるがまだ手がかりらしい手がかりは見つかっちゃいなくてな。普段人目につかねえ、打ち捨てられたような場所なんかがクサいと思ってるんだが…………」
「…………なるほど、可能性としてはあり得そうですね。」
「何かわかったらこっちにも知らせてくれ。」
その後ジスカール工房を後にしたヴァン達は情報を整理する為にカトルの提案によってカトルの住んでいる家――――――ハミルトン博士の家で行う事にし、ヴァン達はハミルトン邸へと向かった――――――
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第68話