晴天おさかなセンター。
数多くの魚屋がひしめき合っているこの場所、その中の一軒「魚崎鮮魚店」。
女性客A「こんなに安くしてくれてありがとね、一番ちゃん!」
女性客B「じゃあまたね、一番ちゃん!」
一番「はーい、こちらこそまたよろしくー!」
一番「はぁ~、また調子に乗って仕入れ値より安い値段で売っちゃったよ。俺ってどうしていつもこうなんだろ? これじゃ今月も赤字確定だよ、とほほほほ~…」
ため息をついたこのヒューマンの青年は、魚崎鮮魚店の若き大将・魚崎一番、27歳。
明るい性格のイケメンで、年令を問わず女性に優しいので、訪れた女性客たちからは親しみを込めて「一番ちゃん」と呼ばれている。
魚を見る目は他の誰よりも本物だが、調子に乗りやすいのが玉に瑕、ちょっとドジな二枚目半なのである。
一番「ま、嘆いていても仕方がない。さ、仕事仕事っと。さあーいらっしゃいいらっしゃいー! 今日は金目鯛がお買い得だよー! さあいらっしゃいー!」
『きゃあーっ!!』
一番「!?」
駆け寄る一番。
一番「どうしましたおばあさん!?」
老婦人「あ、あのモモンガ男が、私のバッグをひったくって!」
一番「何ですって!?」
モモンガ男「ヘッヘッヘ、女が金なんて贅沢なんだよ! 俺が競馬で有効に使ってやるから安心しな!」
そこに立ち塞がったのは──。
一番「おい」
先程の残念なイケメンの表情とはうって変わり、氷のように冷酷な表情を浮かべている。
モモンガ男「あ? 何だてめえは?」
一番「そのバッグ、おばあさんに返すんだ」
モモンガ男「うるせえ! てめえには関係ねえだろ。そこをどけ!」
一番「いいや、どかないね。さあ、返すんだ」
モモンガ男「ゴチャゴチャとうるせえんだよ!」
サッ!
モモンガ男はナイフを取り出した。
モモンガ男「死ねえええーーー!!」
ナイフを一番に向けて突進するモモンガ男。
しかし、一番はそれをいとも簡単に交わし、モモンガ男のナイフを持った手を強い力で捩じ上げた。
ギュウウウーッ!!
モモンガ男「ぎゃあーっ!! 痛い痛い痛い!! 離して離して離してー!!」
一番「ん、離して欲しいのか?」
モモンガ男「ああ! 離せよこの野郎!!」
一番「お前それが人に物を頼む時の態度?」
ギュウウウーーーーッ!!!!
更に強い力で捩じ上げる。
グサッ!
手から滑り落ちたナイフが、モモンガ男の足の甲に突き刺さった。
モモンガ男「ぎゃあーっ!!」
バキイッ!!!
モモンガ男「ぎゃあーっ!! 腕も折れたー!!」
地面をのたうち回るモモンガ男。
一番「関節が外れただけだよ、大げさな。足にナイフが刺さったのは知らんけどな! しばらく眠ってな!」
ドカッ!
モモンガ男「うっ!」
一番「これでよしっと」
鬼の形相からスウッといつもの愛嬌たっぷりな二枚目半の表情に戻った一番が、老婦人にバッグを手渡す。
一番「取り返しましたよおばあさん。ちょっと泥で汚れちゃったけどごめんなさい」
老婦人「いいえ、本当にありがとうございます」
一番「どういたしまして! おっと、通報通報っと。あー、警察ですか? ひったくりを捕まえました。場所は晴天おさかなセンターの魚崎鮮魚店前。そうです、魚崎鮮魚店の前です。よろしく!」
フィーア「逮捕されたのは、モモンガ型セリアンスロゥピィの無職、残年千代無容疑者です」
(「ひったくり犯を捕まえた お手柄の魚崎一番さん」の字幕)
一番『いやー、つ、つ、捕まえられてよかったでっす;;;; でもとっても怖かったぁ~あはははは;;;;』
フィーア「晴天おさかなセンターでは最近、女性をターゲットにしたひったくりやスリなどの事件が多発しており、警察では全て残年容疑者の犯行と見て、同容疑者を厳しく追及しているとのことです」
1週間後。
天空市晴天漁業振興交流センター(晴天おさかなセンター)理事長室。
理事長「遅くなったけど、ひったくり犯の逮捕ご苦労様、一番君」
一番「どうもっす」
理事長「あれ以来事件は起きてないわ。やはり全てあのモモンガ男の犯行だったようね」
一番「そうみたいですね」
理事長「しかしあのニュースは傑作だったわ。あなたがまるで気の弱い青年みたいになっちゃってて、テレビの前でお茶吹き出しちゃったわよw 世を忍ぶ仮の姿もすっかり板について来たわね」
一番「ヘヘッ、そうですか?w」
理事長席に座っているのは、何と見た目が15歳ぐらいのヒューマンの少女。
この子が理事長なのだろうか?
そして、一番の正体とは──?
=To be continued=
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