No.109736

新たなる外史の道 外伝 蓮華修行編 2

タナトスさん

恋姫無双の愛紗ルート後の二人が真の世界にやってきたら?
という妄想から生まれた駄文です。
読んでもらえれば幸いです。


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2009-11-30 03:55:16 投稿 / 全10ページ    総閲覧数:6598   閲覧ユーザー数:5170

私こと蓮華が蒼にて修行を開始してから5ヶ月が経過した・・・

 

今は私自身が扱う技も完成し、技の数を増やす段階に来ている・・・

 

相変わらずあの四人は化物してるが・・・

 

これからどうなるのだろうか・・・

 

不安ではあるが、呉にいた時に比べれば充実している・・・

 

私は呉にいた時、自分で何かを考えず、与えられた物を唯何も考えず過ごしていた・・・

 

ここに来てからは与えられた物を考え、自分で動き、必死で何かをする様になった・・・

 

自ら書類の為に図書館なる所で調べ物をし、訓練には如何したら良いか必死に質問する・・・

 

私は自分で何かをしている・・・

 

何かを考えている・・・

 

そんな気がした・・・

 

 

桃香が任務から帰って来たのは丁度1ヶ月前のことだった・・・

 

私達は桃香が帰ってきたときその姿に驚きを隠せなかった・・・

 

あの桃香が・・・返り血を大量に浴びた服を身に纏いながら帰ってきたのだ・・・

 

確か、桃香は実戦は初めてのはず・・・

 

それにあの顔つき・・・

 

桃香の顔立ちからは甘さが消えていた・・・

 

優しい顔立ちや穏やかさは変わりないが、何か甘さが無い、お姉様や華琳とは違った王の風格を感じさせる・・・

 

これが・・・桃香なのか・・・?

 

私と華琳は驚きを隠せずにいた・・・

 

「華琳・・・あれは桃香か・・・?」

 

「ええ・・・でも・・・雰囲気変わったわね・・・」

 

そう言いながら私達は桃香を見つめていた・・・

 

 

そんな事を考えていると次に私の順番が来た・・・

 

今日は私達で1対1の組手をすることになった・・・

 

二人が戦っている間、一人は観戦といった感じだ・・・

 

準備運動や休憩は無い・・・

 

愛紗殿曰く、実戦では休みなどある筈がないし、敵が自分を休ませてくれるわけが無いとのこと

 

相手は桃香か・・・

 

桃香は先ほど華琳と戦っていた・・・

 

悪いが全力で行かせて貰う!

 

「両者! 中央に!!」

 

愛紗殿の掛け声で私達は中央に立つ・・・

 

お互い無言で構える・・・

 

「始め!!」

 

私は先制攻撃で氣を自分の剣に展開、それを上から下に振るい斬撃と共に飛ばす・・・

 

愛紗殿の技を参考にした技だ。

 

しかし、赤い斬撃は桃香に飛んでは行かなかった・・・

 

私が剣を振るいきる前に桃香の剣がそれを阻んだ。

 

いや・・・正確には桃香の剣が私の斬撃を逸らした。

 

桃香は自分の剣を私から見て、下から上の右回りに刃を回す様に振るい私の斬撃を逸らした・・・

 

次の瞬間、私の左胴に刃が止められていた・・・

 

「それまで!! 勝者! 桃香!!」

 

ま、負けた・・・

 

桃香に負けた・・・

 

「これで桃香は二連勝、二人とも頑張りなさい」

 

何!? 華琳も負けたのか!? 考え事していて見ていなかった・・・

 

本当に桃香は変わった・・・確かに桃香は強くなったが、あくまで訓練での事と考えていた・・・

 

だが実際戦ってみたら私達は負けた・・・

 

いや・・・桃香の心構えが変わったんだろう・・・

 

何か目標の為に自身を高める事を知り、努力し続ける様になった・・・

 

つらい修行も泣き言言いながらでも真剣に取り組むようになった・・・

 

いや真剣には真剣だったが昔はやはり甘さが多かった・・・

 

人にも自分にも・・・

 

優しい事には違いは無いが・・・

 

優しさと甘さは違う・・・

 

それを理解した感じだった・・・

 

私も変われるだろうか・・・・・・?

 

桃香の様に・・・・・・

 

考えなかった日は無い・・・

 

桃香が任務から帰ってきての変わり様は最早、進化の域だ・・・

 

私は強くなっているのだろうか・・・?

 

私は進化できるのだろうか・・・?

 

桃香のように・・・?

 

 

≪一刀サイド≫

 

「蓮華が何だか上の空だって?」

 

俺がそう言いつつ白い石を盤上おく。

 

執務室に石と碁盤の当たる音が響く。

 

「ええ・・・心ここに在らず、と言った感じです・・・」

 

愛紗はそう言いながら黒い石を盤におく。

 

「ん~・・・如何したものか・・・」

 

俺そう呟きながら石を盤においた。

 

俺達は昼休みの時間を利用して囲碁をしながら蓮華のことについて話していた・・・

 

「ん~まあ、一時的な問題ならまだしも、それが続くとなると問題だな・・・」

 

「ええ・・・如何したものか・・・」

 

俺達は交互に石を置きながら考える・・・

 

「一刀様は行き詰った時や考え事をするとき何か良い案がありますか?」

 

「原因が解れば対処しようがあるが・・・原因不明では対処できない・・・」

 

俺はそう言い石を盤に置いた。

 

 

「・・・待てよ・・・蓮華が考えだす様になったの桃香が任務から帰ってきた時じゃないか?」

 

「・・・そういえば・・・でも何で?」

 

愛紗の呟きに俺は思い当たる節があった。

 

「これは俺の考えで多分間違ってるとも思うからそれを前提で聞いて欲しい」

 

「珍しく前置きをおきましたね・・・何です?」

 

俺の前置きを聞いてそう言う愛紗。

 

「多分、桃香の成長を目の当たりにして考えたんだろう・・・自分は成長できているのかと・・・あのお嬢さん、思い詰める所があるからな・・・」

 

愛紗は納得した様に呟く。

 

「確かに・・・桃香の成長スピードは実戦を体感してからは進化の域ですから・・・そう考えると蓮華の戸惑いや驚きが焦りに変わってるのも理解できます・・・

誰もが通る道ですから・・・私もそうでした・・・」

 

「進化・・・か・・・我々マスタークラスが自分より強い敵と対峙した時それが起こるが・・・やはり弟子も進化する・・・厳しい環境や極度の恐怖、覆せない現実を目の当たりにした時、人はありえない力でそれを解決していく・・・火事場の馬鹿力に似た状況を一時的に桃香に体験させる事でそれの引き出し方を頭と体で今回覚えさせた・・・

更にメンタル面では実戦の恐怖と戦う事の意味を理解させ戦う覚悟の意味を知った・・・

更に桃香は性格的に素直だ・・・これは重要な素質でもある・・・

蓮華や華琳は確かに実力で言えば桃香より高いが、それが必ずしも実戦に結びつくとは限らない・・・

素直に感じ、素直に考え、素直に行動する・・・更に桃香はそれを冷静な判断とシビアな考え方で物事を見るようになった。まだまだ甘い所はあるが・・・

任務の前と後では雲泥の差だ。静の氣の扱い方の極意を解ってきた見たいだ」

 

俺の言葉に愛紗は苦笑しながら呟く。

 

「たしかに・・・あの二人には素直さが無いですからね・・・特に動の氣の使い手は自分の感情に素直になる事から始めるのにあの二人は素直になりきれていないですから・・・特に蓮華は・・・環境もあるのでしょう・・・次期王としての教育やプレッシャー・・・更に真面目ですから余計根を詰めるのでしょうね・・・しかも、少し、世間知らずのお嬢様が入ってますし・・・」

 

「動の氣の使い手はツンデレやクーデレ、素直じゃない奴が多いな・・・何でだろ・・・」

 

「静の氣の使い手は自分に正直過ぎる人や、やたら計算高い人が多いです・・・何ででしょう・・・」

 

「「解らんな・・・」」

 

「と、そんなことは措いといて・・・蓮華の事を考えよう」

 

「そうですね・・・」

 

 

俺達は如何したものかと考えた・・・

 

「そうだ! 有るじゃないか! 蓮華を鍛えるのにお誂え向きの任務が!」

 

俺の思いつきに愛紗が問いかける。

 

「何ですか? その任務とは?」

 

「これだ」

 

俺はそう言いながら書類を愛紗に見せた。

 

「確かに・・・これは良いかも知れません・・・」

 

俺達は関係省庁に連絡した。

 

 

今回、私達はとある任務に付いていた・・・

 

その任務とは、呉国境沿いにある村の調査だった・・・

 

何でも、村が例年にないほどの不作らしい・・・

 

その為の税金の免除と村人達の生活支援を国に要請してきた・・・

 

その調査の為に私と愛紗殿が調査する事となった・・・

 

馬に揺られる事三日・・・対象の村に到着した・・・

 

その村の何処か活気が無く寂れた村だった・・・

 

「さて、調査を開始しますか」

 

愛紗殿がそう言い村の役所に向かう。

 

役所では村の役人が出迎えてくれた。

 

書類を見た時、私は凍りついた・・・

 

餓死者がかなり出ている・・・

 

私達は役人の案内で村を回った・・・

 

この時、私は愕然とした・・・

 

田畑は荒れ果て、人々は痩せ細り村人達は生きる気力が無い目で此方を見ていた・・・

 

「これが現状です・・・どうか!! どうかお願いします!! 村人達を助けてください!! どうか・・・」

 

そう言い役人は涙を流しながら深々と頭を下げた・・・

 

愛紗殿はその役人の肩に手をそえ優しく呟いた・・・

 

「解りました・・・安心してください・・・私達が何とかできる様取り計らいます・・・」

 

「あ、有難うございます!!」

 

 

村を出て私はまだ尾を引いていた・・・

 

「これが今、この大陸の現状なの・・・多くの民達が飢えで死んでいっている・・・

私達は戦争だ、富国強兵だと民達から税金をむしり取り若い男達を戦争に駆り立てる・・・けど、そんなこと民達には関係がないのよ。今日明日を生きる事で必死な彼らには・・・

私達国の都合など・・・」

 

今なら解る・・・愛紗殿や一刀の想いが・・・

 

私は最初この言葉を聞いたとき心の中で国が強くなるには仕方ない事、この戦争に勝つには仕方ない事と思っていた・・・

 

だが、現実はどうだ・・・彼等の為に政治があるのに・・・

 

私達呉は結局自分達、国の都合で民を蔑ろにしていたのではないか・・・

 

思い返せばそんなことばかりだ・・・

 

私は・・・上からでしか民や国を見ていなかった・・・

 

改めて思い知らされる・・・私達呉と蒼の政治に傾ける姿勢の違いに・・・

 

民なくして国は成り立たないというのに・・・

 

それと同時に彼らを助けたい。

 

そんな事を強く思った・・・

 

「愛紗殿・・・お願いがございます・・・」

 

「何かしら?」

 

「私に・・・今回の村人達の生活支援の資金繰りをやらせてください!!」

 

そう頼んでいた・・・

 

 

それから私は寝ないで資金繰りを開始した。

 

どの様にしたら効率よくかつ的確に公平に分配できるか、国庫からどの位捻出するかなどなど、過去の事例や書類を読み漁り、愛紗殿や一刀に質問し、修正や指導、指摘を幾度と無く繰り返し、ようやく完成した・・・

 

食料支援の時私は村に行き、食料配給を自ら行った。

 

 

資金投入の書類に調印を貰い帰る時、丁度夕暮れどきだった・・・

 

私は今回知った・・・私がやってきた事は結局自分の都合だということが・・・

 

相手のことなど考えていなかった・・・と・・・

 

私は・・・民の為の政治が出来る王になろう・・・

 

この想いが有る限り私はそんな王になれる・・・

 

そう思った・・・

 

誰の想いでもない・・・私だけの私が抱く王のあり方・・・

 

この気持ちだけは絶対嘘は付かない・・・

 

いや、付きたくない・・・

 

 

 

 

私は半分に沈んだ太陽を見ながら誓いをたてた・・・

 

 

私自らに課す誓いを・・

 

 

 

 


 
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