No.1054752

空飛ぶ戦車ドクトリン 第五話 初めての同胞(トモダチ)前編

三日月亭さん

第五話で異世界の花である魔術師を出す事が出来ました。
と言っても顔出し程度の内容ですが。
前後編という事で後編で何とかこの世界での魔術に関して説明して空飛ぶ戦車のドクトリンの開発と戦争勝利への糸口が出来たらいいなと思ってる次第です。

魔術師アルフレッド・ギュンターに関しては以前の小説ではお人好しで過去に幼馴染の女性を滑落事故で失い、それに耐えきれずにいるところをそれまた幼馴染の軍人兼魔術師の幼馴染が死者創生の魔術を使って、女性の命を女性に同行していた双子の姉妹に移して形だけの組成を行われてぎくしゃくして…とかいうクッソ面倒くさい設定の結果無駄に文章が増えてひぃひぃ言っていたのでバッサリそんな女関係一切合切消して、酔狂人間になってしまいました。

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2021-02-18 20:20:40 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:428   閲覧ユーザー数:428

この世に無尽蔵は存在しない。

なのであるだけをの物を奪い合って戦争を行う。

この世に偶然は存在しない、それは知恵なしの言い訳に過ぎない。

奴らが言う偶然は複数存在する行動の帰結が交差して生まれたものなのだ。

 

誰かの必然が生んだ結果に過ぎないのだ。

この世の殺戮は必然で生まれた結果なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

致命的屈辱より数日、この俺トロイ・リューグナーは更なる地獄を見ていた。

 

簡潔にまとめよう、あの爺さんスタインバックはなんと現役の将校で階級は中将になる。

 

そしてそうとは知らず、話してしまった俺を将校クラスの会議に呼びつけ、名前を伏せた状態であろうことかみんなの前で発表し、無謀な作戦をとる他の士官のくぎを刺すのに使ったのだ、曰く。

 

「名は伏せるが、この窮地において現実離れしたバカな考えを作戦と言って一生懸命に立案と称した妄想を立ててるものが諸君ら士官の中にあることを聞いて、ワシは驚きを隠せないでいる、夢想の彼方に逃げたくなる気持ちはわからんでもないが、軍人はまず現実に目をそらさないことを忘れないでほしい。」

 

だとさ、全く…俺を呼びつける必要なんてない癖に絶対あの爺さん俺の事コケにしやがって…。

 

傷痍で傷心の少尉である俺は、未だ届かない義足にいら立ちを覚えながら例の場所、喫茶ラバンへと歩を進めていた。

 

「あ~…思ってたより人が多いな今日…」

 

いつもより重い足取りでラバンに向かうとそこにはいつも以上に客がいて俺の肝を抜く。

 

この店の人がいない感がよかったのに、何故か流行りの店の様な盛況っぷりだ、普段のメンタルであればこの盛況を喜び店主に声をかけたくなるんだろうが今の俺は限りなくダークに近いブルーなのだ。

 

石でも投げてたくなってしまうな、本当。

 

いつもの席にも誰か知らない人間が座っているな。

 

「お~い!少尉!!」

 

今日は公園にでも行って…。

 

「お~い空飛ぶ戦車の少尉!!」

 

「誰だ!俺の心の傷えぐりにかかってくるのは!!」

 

声は俺がよく座っている席の方から聞こえてきた。

そこには歳の頃は20代ほどの細身の顔立ちが整った身なりのいい男が座っていた。

よくよく見ればその男、知らない人間ではなかった。

 

「ギュンター卿…」

 

名をアルフレッド・フォン・ギュンターという、つまりは貴族の末裔である。

この時代になると殆どの貴族は議員や投資家などの近代化する時代追いつこうとその時代の流れに順応しようとしている中、かつての家名と胡散臭い魔術なる代物を大層誇りに思っているそんな時代遅れな男だ。

 

今の俺は流石にただの一軍人に過ぎない上に言わば平民だ、貴族の概念が崩れつつある今日であったとしても、まぁむげには出来んものだ。

 

ここに来る前の本当記憶が無くなりすぎて順応してるなぁ俺。

 

俺は松葉杖をいそいそと動かしギュンターの元へと向かう。

 

ギュンターの元迄来ると、彼は立ち上がり自身が先ほどまで座っていた椅子を俺に差し出した。

 

「なんのつもりです?」

 

思ったことがつい口に出てしまった。

 

「いやなに、寒いと思ってね君の席温めておいたんだ♡僕のお尻でね」

 

スッゲーキモイ、何この男。

 

「あ、いえその…自分は向かいの席でいいので…」

 

体よく断り、俺は向かいの席に座ろうとした時である。

ギュンターは健常者特有の二本の足による激早ムーブで向かいの席に着席する

 

「よし来た!尻が風邪を引かないように今から温めておいてやるぞ!」

 

なにそれキモイ。

 

「ギュンター卿、すみませんが私ほぼ初対面の筈ですが何か気に障ることしましたか?」

 

「逆さ、君とは波長っていうの?ウマが合うってやつ?そんな感じなんだ」

 

じゃなんでこんな嫌がらせしてくるんだこの男は?。

仕方ないので空いた方のよく自分が座っている席に座った。

 

「あらら、結局そっちに座るの?まぁいいけど…」

 

何だその残念そうな顔は?全く。

 

「まぁいいさ、時にトロイ・リューグナー少尉、君は戦車を飛ばしたいと少将に言ったそうだな?」

 

名前は伏せてたのに…あのジジイ喋りやがったな!!、俺はそう考えれを巡らすとすぐ顔に出てしまったらしい。

 

「中将は何一つ喋っていないぞ、君と中将の話を酒場の女性から聞いたのだ」

 

俺の思考を察知したが如くギュンターはくぎを刺す様に俺に言って聞かせた。

 

「行きつけの酒場でな面白い話をする娘がいたんだ、なんでも戦車を飛ばして敵をやっつけるんだって言ってる軍人さんを知ってるってな」

 

…ヴィルマ…さんが確か酒場で働いてたよな…。

あの女!私以外には言うなよって言っておいてその私がほかの人に喋ったら意味ないじゃん!!。

 

「どうして、彼女が話したかというとだな…」

 

「どうせ酒の肴にでもどうぞって言ったんでしょうよ」

 

酒場のバカ話、よくある世迷言、…結構真面目に考えていたのに考えというか現在存在しない技術というか何かを頼らないといけないものはこうも他者に馬鹿にされるものなのか…。

 

「よくわかったな、その通りだ」

 

あぁ…やっぱり…。

 

「そもそも、陸上兵器を飛ばそうと言ったのは私が先だからな!」

 

へ?なんだって?

 

「ヴィルマかあの娘が珍しく私の話を聞きたがるものだから理由を聞いたら軍人がそういうことを言ってると言い出してな、店に多額の貢献と酒をおごって何とか君の名前を聞き出した…というわけだ、トロイ・リューグナー」

 

「私は君と友情を育みたいと思っている、もし君の方にその気があるなら…」

 

そういうと、ギュンターは右手を俺の方に差し出した。

 

吉と出るか凶と出るか。

 

考えるまでもなく俺の中の答えは決まっていたわけだが。

 

俺はギュンターの差し出した右手を固く握りしめていた。

 

「と…トロイ?少し痛い…痛いよ?」

 

今まで何かこう心にあったこう…隙間?の様なものが埋められるようなそんな気持ちが強かったからだ、その気持ちが差し出された右手を壊しかねない程のホールドを実現しているのだ。

 

「痛い痛い!助けて!!」

 

そういうと、周りの客が集まりその中の一人が突然俺の側頭部を空き瓶で殴りつけてきた。

 

我に返る俺。

 

「誰だ今殴ったやつは!!」

 

瓶が壊れるほどの勢いで殴ったというのにこのトロイ・リューグナーの頑丈な体はビクともしない、凄いなトロイ・リューグナー。

 

「トロイ手を出すな!取り乱した私も悪いが、君も悪いぞ私の右手を握りつぶそうとして!!」

 

そうか俺の…トロイのゴリラパワーって案外凄いんだ、気を付けなければ。

 

「そうかそいつは悪かったな…ギュンター卿」

 

「トロイ、卿はいらないこれからは私の事は"ギュンター"でいい我々は今より同胞(トモダチ)になったのだから」

 

そういうとお互いに席に着きなおす。

 

そして、俺からギュンターを守るように集まっていたほかの客たちも元の席に戻る。

 

どうもこの客連中はギュンターの付き添いらしく、警護目的で一般市民の振りをしてこの店に来ていたのだ。

 

俺を殴ったやつ以外は。

 

「…俺は落ち着いているぞ、ギュンター出来ればこの空き瓶を振りかぶっている奴を下がらせてくれないか?」

 

「…ごめん知らない顔だ、すまないがもう大丈夫このゴリラのおじさんは冷静だから君ももう席に戻り給え…」

 

瓶を持った…男?いや男装した女っぽい奴は無言で空き瓶を地面にたたきつけて去っていった。

 

「アイツ…誰だったんだ?」

 

「私の護衛にはあんな奴いないから…純粋に喧嘩が始まったと思ったのか?」

 

「ここパブとかじゃないんだぜ?」

 

いろんな考えをめぐらしてしまったが、まぁ今はそんな問題は些末なことだ。

面白い話が聞かせてもらえる以上、このギュンターの話を聞かなければ。

 

ここに来て、ようやく何かが動いたと思った瞬間であった。


 
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