No.105109

新たなる外史の道 14.5

タナトスさん

恋姫無双の愛紗ルート後の二人が真の世界にやってきたら?
という妄想から生まれた駄文です。
読んでもらえれば幸いです。


2009-11-04 00:04:33 投稿 / 全6ページ    総閲覧数:7808   閲覧ユーザー数:6162

酒は、人類と共に歴史を重ねてきた・・・・・・

 

酒は、人類の繁栄と没落を見てきた・・・・・・

 

酒は、人類の活力と堕落を与えてきた・・・・・・

 

酒を楽しむ者、酒に酔いしれるもの、酒に溺れる者・・・・・・

 

酒は人類の歴史の生き証人なのかもしれない・・・・・・

 

今宵、男女が二人、酒と共にどの様な思いを飲み込むのか・・・・・・

 

袁紹との戦が終わり、俺と星は町に繰り出し、飲む事にした。

 

なんや、かずピーがデートか、と騒いでいたが、俺等にそんな色気を求めんなや・・・

 

俺と星は並んで歩く。

 

「公務が忙しゅうて、町をあんま回れなんだけど・・・以外に繁栄しとるな・・・稟ちゃんや風ちゃんから見せてもろおた書類では栄えとんのが解るけど、実際に見るのとでは大違いや」

 

「そうだろ、一刀様と愛紗様、そして、私達や村人達が小さいが町にし、今では大陸にその名を知れれる都市になった」

 

星は誇らしそうにワイに言う。

 

「かずピーと愛紗ちゃんが来てから全てが始まったか・・・」

 

俺は感慨深く呟いた。

 

「そんな事より、ホラ、あそこだ! メンマと酒が合う店だ! 行こう」

 

俺の手を引っ張り、俺を引き摺る。

やれやれや・・・元気な娘やな・・・

 

ワイは28歳・・・18歳の星とはエラク年が離れとる・・・

 

・・・年には勝てんな・・・ワイも・・・

 

18いや、女子高生か、女子大学生・・・

 

ワイもそんな時機があったな・・・

 

あの頃の自分はココまで一生懸命やったんやろうか?

 

この子達みたいに世界と向き合うとたんやろうか?

 

高校卒業して、俗に言う一流国立大学でて、大企業に就職して、上司にケツ蹴られて、下げたくない頭下げて、取引さんとこにオベッカつこうて、勤務成績に命を懸けて、飲めると事、ナンパ出来るところがあれば、世は事も無し・・・

そんな世界に窒息しそうな時やった・・・

ああ・・・そうか・・・あの時から、ワイは世界と、世界の矛盾と向き合う様になったんわ・・・

あの二人がワイに道を・・・ワイが歩く道を示してくれたんは・・・

その道は険しいし、死にそうになるし、見たくないものまで見たし、苦しい事もあった。

 

けどや・・・この道を歩いて、あいつ等と歩いて、ワイは幸せや。メタルギア核発射阻止作戦の時も、存外笑顔で死ねそうやった。

今でも、笑顔で死ねる気がすんや・・・

いい人生やったと・・・

 

こいつ等と、かずピーと愛紗ちゃんと星と鈴蘭と稟ちゃんと風ちゃんとこの町の人達と歩けたこの道が最高にツライけど、最高に楽しい道程やったと・・・

 

そんな気がするや・・・

 

ヤッパ、男の価値は笑顔で死ねるかどうかやな・・・

 

酒を煽りながら星と話してそんな事を思うた。

 

イカン・・・過去を振り返るのは年な証拠や・・・

≪星サイド≫

佑は何か思い出を掘り起こすような・・・そんな重みがあった。

 

主や愛紗様が話してる様な重みが・・・

 

あの軽い口調から一体どれ程重たいものを背負っているのか私にも解らない。

 

我々の人の寿命は約50年、子供でも生まれたら直ぐ死ぬ、事故や戦乱、飢え、病、60以上は滅多とお目にかかれないこのご時世、人生の折り返しを過ぎた男の悲哀が佑から伝わってきた。

考えてみれば、私と十も年が離れていたことを思い知らされた。

楽しい会話の奥底にある男の悲哀か・・・

 

興味深い・・・この男を上司にしてから、こんな感情が生まれた。

 

最初はノリの軽いチャラけた軟派男かと思ったが、狙撃銃を持つこの男からは超一流を超越したモノをヒシヒシと感じさせた。

軍の指揮の時も私より遥かに効率的で、兵の信頼も厚かった。

私は佑からかなりの事をここ数ヶ月で学んだ。

でも・・・私はこの男を知らない、この軽そうで重い物を背負い込んでるこの男を・・・

 

 

「佑、私しか知らない穴場がある、そこで飲み直さないか?」

 

私は何故かそう提案していた。

 

星の提案で、星のお気に入りの場所で飲む事になったワイ等。

 

そこは、森を抜けた所になる、中央に大きな岩がある広場だった。

 

ワイ等はその岩に背中合わせに腰掛け、酒をあおりはじめた。

 

突如、星がワイに質問する。

 

「佑、質問していいか・・・?」

 

ワイも答える。

 

「なんや・・・?」

 

「お主の過去を知りたい・・・出来るだけでいい、話せるだけでいい・・・話してくれ・・・」

 

ワイは星の言葉に自然と口が開いた。

 

「・・・あんまり、面白いもんでもないし、酒の肴するには向かんが・・・それでもか?」

 

星は俺の背に寄りかかり呟く。

 

「・・・それでもだ・・・」

 

≪星サイド≫

佑から話された話は、色々あった。

学校なるものでの主との付き合い、会社なる大きな商いをする所、再び主と出会い、愛紗様とも出会い、共に戦場をかけたこと、中でも私の心に残った話が二つ・・・・・・

一つ目は佑が始めて実戦に出た時のことだった。

正規軍が村を襲撃、迫撃砲なる物で村の建物を吹き飛ばし、炎で村を焼き払い、小銃で男どもは撃ち殺され、手足を鉈で斬られ、動けなくなった所に銃弾を打ち込む、子供は炎が燃え盛る家屋に投げ込まれるか、銃剣で突き殺される。女達は強姦され最後は銃殺されるか、家畜のように扱われ殺される。少女も例外ではない。死体は見せしめのために、放置される。家畜も殺す徹底ぶり。

佑が到着した後には地獄の後だけが残されていた。

新兵である佑は耐えられず吐いたらしい・・・

死体の異臭、酷い殺され方をした死体の山・・・

 

佑はこの時現実を知ったそうだ・・・『俺等がノウノウ生きてる時、世界ではこんな地獄が繰り返されたことに・・・』始めて理解したそうだ。

『先進国では飯は腐るほどあんのに、発展途上国では飯が食えれんで飢えて死ぬ・・・先進国では殺人なんて瓦版に掲載される事やのに、発展途上国では民族浄化の名の下に虐殺なんて当たり前、そんな矛盾をワイは知ってしもうた・・・いかにワイ等が奇麗事ホザイとるドアホウやった事を・・・ワイはこの地獄の後を見るまで理解していなかったんや・・・』

 

政府軍を倒し、国を解放しても佑にはこの矛盾はきえなかったそうだ。

 

二つ目の話は、自分の敬愛する師匠を殺した事・・・

佑の任務だったそうだ・・・

佑の師匠は狙撃の神なんて呼ばれた御仁でその人が任務中に裏切り、対決せざるおえなくなったそうだ・・・

『後にも先にもワイが生涯、最高で最良の狙撃をしたんは師匠との狙撃対決の時だけや・・・

 

あの師匠に・・・狙撃の神様に・・・心臓を一撃で射抜いたんや・・・

 

死ぬ時の今際の際が、『いい腕になった』やで・・・信じられるか・・・

 

神様に、師匠に褒められたんが、後にも先にもそれだけやった・・・』

 

そう話す佑には、悲しさと辛さ、ほんの少しの誇らしさがない交ぜになっていた。

 

「さ! 夜も更けて来たことやし、帰ろか」

 

その背には男の悲哀と悲しみが満ちていた。

 

 

 

 


 
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