No.1029530

恋姫OROCHI(仮) 陸章・弐ノ肆 ~混沌の近江~

DTKさん

どうも、DTKです。
お目に留めて頂き、またご愛読頂き、ありがとうございますm(_ _)m
恋姫†無双と戦国†恋姫の世界観を合わせた恋姫OROCHI、103本目です。

あちらこちらで色々と巻き起こっています。

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2020-05-13 13:52:19 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:1685   閲覧ユーザー数:1582

 

 

 

「こ、これは…」

 

小波の眼前には小谷城が雄々しく聳え立っていた。

しかしその頂上、本丸御殿を目掛け、まるで砂糖に群がる蟻のように、鬼が群がっていた。

そして不思議なことに、そこにはお守りの気配はなかった。

つまり眞琴か市、あるいはその両方が城を空けているということだ。

 

「くっ…どうする?」

 

小谷に入り誰かと接触を図るべきか。

それとも一旦本軍に報告をすべきか。

逡巡した小波は、一度戻ることを選択した。

すぐには小谷は落ちそうには無かったし、もしこの鬼が西に向かえば本陣が後背を突かれることになる。

後ろ髪を引かれながらも、小波は来た道を引き返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

無人の野を行くが如く、雪蓮は鬼で溢れる坂本の街を縦断し、北側の出口に辿りついてしまった。

 

「あら…?なに、もうおしまい?」

 

そう呟いた矢先、雪蓮の背筋にぞくりと悪寒が走った。

冷たいモノを顔で追うと、街の外から喧騒が聞こえる。

 

「鬼さんこちら、ってわけね……鬼は向こうだけど」

 

頬を伝った汗を一度拭うと、雪蓮は悪寒を辿って歩を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『一刀さま!』

 

小波の声が頭に響いたのは、本陣が坂本の街に入ろうとするところだった。

 

「どうした!?」

 

ただならぬ様子に思わす声が大きくなる。

 

『小谷が…お味方の城が鬼に囲まれておりました!』

「なんですって!?」

 

今度は詩乃が声を荒げる。

お守りを持っている人とは同時通信できるようだ。

 

「え?えっ?いったい何があったんですか?」

 

一方、お守りを持っていないひよは訳も分からずうろたえている。

 

「味方の城、小谷城が……鬼に囲まれているようなのだ」

「そんな…」

 

冥琳に説明され言葉を失うころ。

 

『観音寺城も落城しており、侵攻路は南西からと思われます』

「そんな…いや、まさか…」

 

詩乃も言葉を失う。

想定外のことだったのだろう。

 

「お市さまは!?お市さまは無事なんですか!?」

「そうだ!お市さんと、浅井長政さんとは接触できたの?」

 

ひよの言葉に二人の安否を尋ねる。

本来の小波の目的はそれだったはずだ。

 

『いえ、それが城内にはお守りの気配が無く……ご両名、ないしどちらかが城内にいらっしゃらない可能性があります』

 

挟撃される恐れがあったので、ご報告を優先させました、と小波は続けた。

 

「挟撃……これは少し不合理だな」

 

冥琳が眉を顰める。

 

「不合理?」

「あぁ。確かこの国は真ん中に大きな湖があり、坂本と小谷はその対岸にあり、観音寺城は小谷の南西にあるのだろう?」

「あっ!」

 

詩乃は冥琳の言わんとしている事が分かったようだ。

 

「……道中に、鬼の通った形跡は無かった」

「そういうことだ」

「……どういうことですか?」

 

蚊帳の外の俺たちの気持ちを人和が代弁してくれた。

 

「もし南西から鬼が攻め込み、その後、小谷と坂本に分かれて進軍したとすれば、我々が通った道を通ったことになる。が、そのような形跡は無かった」

「また小谷を攻めながら一部が坂本に来たから回り込んだとすると、坂本がここまでの惨状になるのは、時間的におかしいんです」

「……つまり?」

「小谷・観音寺を攻めている鬼と、坂本にいる鬼は別の集団の可能性がある、ということだ。連動しているかどうかまでは分からないがな」

「「「………………」」」

 

冥琳と詩乃の推測に不気味な印象を覚える。

そんな重苦しい空気の中、

 

「たたた、大変だよぉ~~!!!」

 

雛が文字通り転がり込んできた。

 

「どうしたの!?」

「ま、眞琴さまとお市さまが、坂本の北側に…」

「いらっしゃるのですか!?」

 

渦中の人の情報に詩乃の声も大きくなる。

 

「そ、それに…しぇ、雪蓮さんが…」

「――っ!雪蓮がどうかしたのか!?」

「信じられないけど……一騎打ちで…どうしてここにいるのか……」

 

冥琳の問いかけにも、雛は充分に答えられない。

半分錯乱しているようにも見える。

 

「落ち着いて雛。ゆっくりでいいから、見たこと、あったことを教えてくれるかな?」

「う、うん。分かった……」

 

 

 

 

 

 

――――――

――――

――

 

 

 

少し前……

 

 

 

「壬月さま~」

 

雛は雪蓮を追いかける壬月と祭の隊に合流していた

 

「雛か。本隊はなんと?」

「はい。本陣も陣を上げるそうです」

「妥当な判断じゃの。しかし意味があったかどうか…」

「あー…雪蓮さんがもっと前に出ちゃったんですよねー」

 

紫苑の陣に立ち寄った時にその辺の事情は聞いていた。

 

「あぁ…まったく困ったお方じゃ」

 

ブツブツと文句を垂れる祭。

 

「それで、雪蓮さんは今どこにいるんですか?」

「それが完全に見失ってしまってな…さっきまでは雪蓮殿の声を頼りに追跡していたのだが、それも消え……」

 

ギィィィーーーンッ!!

 

壬月の言葉を遮るように巨大な金属音が轟いた。

 

「なんじゃあ!?」

「剣戟…か?」

「えぇ~……こんな大きな剣戟って聞いたことな…」

 

ギャイィィ……ンッ!!!

 

銅鑼同士を叩き付け合っているような轟音が幾度も鳴り響く。

 

「策殿、か?」

「可能性は高いですな。雛!」

「はーい。こっちでーす」

 

耳の良い雛の案内で音の発生源へと歩を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一目見た瞬間に、雪蓮の理性は吹き飛んだ。

ソレから放たれる強烈な死の臭いにつられ、圧倒的な『武』という存在目掛けて、剣を振るった。

 

ギィィィーーーンッ!!

 

初手で頚動脈を狙った必殺の一撃は、ソレが手にした槍の柄で止められた。

 

「はあぁっ!!」

 

そしてそのまま柄で押し返され、吹き飛ばされる雪蓮。

二、三度地面で身体が跳ねたところで、剣を地面に付き立て無理矢理勢いを止める。

 

「あはっ♪」

 

ソレを()め付ける雪蓮の瞳は、美しい碧から(くら)い紅蓮へと変わっていた。

 

「ヒュッ!」

 

歯の間から漏れた音と同時に、大地を強く蹴る。

 

ギィィィンッ!

 

刹那で間合いを詰め、逆袈裟に斬り上げる。

が、やはりすんでのところで防がれ、逆に相手の穂先が雪蓮の脳天目掛け振り下ろされる。

 

「ふっ!」

 

雪蓮は身体を屈めるとギリギリで、まるで背面飛びのように、ふわりと躱す。

着地と同時に引き胴のように足を狙うが、軽すぎたため音もなく弾かれた。

間合いを大きくとった雪蓮は、口の端をしっかりと上げて笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――

――――

――

 

 

 

「策殿ーー!!」

 

遠目に雪蓮の姿を捉えた。

互角の勝負をしている雪蓮に、祭は思わず声が出た。

中級以上の鬼とは、かくも手強いのかと祭は足を速める。

が、隣を走っていたはずの壬月と雛の姿が見えないことに気付き、後ろを振り返る。

すると二人は何故か呆然と、力無く立ち尽くしていた。

 

「お主らっ!何をしておるのじゃ!?早く策殿をお助け…」

「なんで…そんなはず……」

 

雛は虚ろに何かを呟いている。

一方壬月は我に帰り、腹に力を入れると、大音声を発した。

 

「何故だっ!?何故お前がここにいる!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「桐琴っ!!!」

 

 

 

 

 


 
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