No.1001398

英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~

soranoさん

第32話

2019-08-09 23:10:37 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:1716   閲覧ユーザー数:1518

~太陽の砦~

 

「ヴァ、ヴァイスハイト陛下が僕達Ⅶ組やオリヴァルト殿下に聞きたい事、ですか?」

「ヴァイスハイト陛下は一体何を知りたいのでしょうか?」

ヴァイスの問いかけを聞いたエリオットは戸惑いの表情で答え、ガイウスは真剣な表情でヴァイスに問い返した。

「遠回しな言い方は止めて、直截に尋ねる。”ハーメルの悲劇”と”百日戦役”に加えて”貴族派”と”革新派”を纏めきれず内戦を勃発させた責任を取らない所か、メンフィル・クロスベル連合、そして”アルスター襲撃”を利用してエレボニアの代わりに2度ものメンフィルの”怒り”を鎮めたリベールとまで戦争するつもりでいる”鉄血宰相”を止めないユーゲント三世を皇帝の座から引き摺り下ろさないのか?」

「な――――――」

「ユ、ユーゲント皇帝陛下を皇帝の座から引きずり下ろすって………!」

「”帝位簒奪”…………!」

「何故自分達もそうですがオリヴァルト殿下にそのような恐ろしい事を訊ねたのでしょうか?」

ヴァイスの問いかけに仲間達がそれぞれ血相を変えている中ミュラーは絶句し、アリサは信じられない表情で声を上げ、ラウラは真剣な表情で呟き、ユーシスは目を細めてヴァイス達に問いかけた。

 

「お前達と同じ”Ⅶ組”であったリィンとセレーネ、そしてオリビエの妹であるアルフィン皇女もエレボニアを救う為に、メンフィル・クロスベル連合側になる事を決意したのだからな。その関係者であるお前達はこの状況でどうするつもりなのか、興味本位で聞いたのだ。内戦でのお前達の行動を考えると、今回の戦争を双方納得できる結末を探る為に行動するのだろうが…………俺達メンフィル・クロスベル連合もそうだが、リベールにすら恩を仇で返す”鉄血宰相”相手にそのような”甘い考え”が通じると思っているのか?」

「そ、それは………………」

「………………………………」

「ハハ…………確かにあの宰相殿に加えてリウイ陛下達まで説得するなんて至難の業だろうね。だけど何故そこで父上の帝位を簒奪する話に繋がるんだい?」

ヴァイスの指摘に何も答えられないトワは辛そうな表情で答えを濁し、アンゼリカは重々しい様子を纏って黙り込み、疲れた表情で呟いたオリヴァルト皇子は表情を引き締めてヴァイスに訊ねた。

 

「セドリック皇太子は療養の身、アルフィン皇女はエレボニアからの追放処分を受けた以上、唯一今も無事に活動しているユーゲント皇帝の血を引くお前がエレボニア皇帝に即位すれば、皇帝が持つ権限でエレボニア帝国政府にリベールもそうだが、メンフィル・クロスベル連合との和解を命令する事で、エレボニアと緊張状態に陥っている三国との関係を和解させる事ができるだろうが。――――――最もその過程で和解の障害となる”鉄血宰相”を殺す必要はあるがな。」

「オ、オリヴァルト殿下がエレボニア皇帝に即位するって…………!」

「…………失礼を承知で問わせて頂きますが、ヴァイスハイト陛下は”庶子”である為オリヴァルト殿下には”帝位継承権”が存在しない事はご存知ではないのですか?」

ヴァイスの説明を聞いたマキアスは信じられない表情で声を上げ、アルゼイド子爵は厳しい表情でヴァイスに問いかけた。

「フッ、戦乱の時代となった今の時代に”帝位継承権の有無”等些細な事だ。生まれ変わる前の俺もかつてはオリビエと同じ”庶子”だったが、戦乱の時代であった事に加えてメルキア帝国も内乱状態であった為、それらを利用して当時の皇帝であるジルタニアを殺してメルキア皇帝に即位した。」

(まあ、ジルタニア陛下の場合は事情が事情でしたものね…………)

(はい…………彼を止めなければ、メルキア帝国やその周辺の国だけでなく、アヴァタール地方にも様々な悪影響を及ぼす事になったでしょうし…………)

(ですが今の時代のオズボーン宰相という人物も、ある意味ジルタニア皇帝と同じかもしれませんね。)

アルゼイド子爵の問いかけに対して答えたヴァイスの答えを聞いたリセルとマルギレッタは複雑そうな表情で小声で当時の出来事を思い返し、リ・アネスは重々しい様子を纏って呟いた。

 

「同じ”庶子”同士とはいえ、野心溢れる君と父上から帝位を簒奪する等と言ったそんな恐ろしい事を一度も考えた事のない私を一緒にしないでもらいたいのだが…………第一”帝位継承権”も持たない私が父上の帝位を簒奪して即位すれば、例え国家間の関係が悪化し続けているリベール、メンフィル、クロスベルとの問題を解決できたとしても、今度はエレボニア帝国内で様々な問題が発生してしまうよ…………」

一方オリヴァルト皇子は疲れた表情で溜息を吐いてヴァイスに指摘し

「それでも国内の問題は時間をかけさえすれば、解決の糸口は見えてくる。エレボニアの為にメンフィル・クロスベル連合についたミルディーヌ公女達――――――ヴァイスラント決起軍もお前がエレボニアの為にユーゲント三世から帝位を簒奪する事を知れば、お前の後ろ盾にもなるだろうし、アルフィン皇女も自身が持つ”帝位継承権”をお前に譲る可能性は十分に考えられる。しかも残りの”四大名門”の関係者もお前に協力している。ミルディーヌ公女達とお前に協力している残りの”四大名門”の関係者が当主になって協力すれば、少なくても貴族達を抑える事はできるだろう。――――――戦争でエレボニアが滅ぶよりはよほどマシだと思うのだが?」

「…………確かにアルバレア公爵家に関しては父上が逮捕され、兄上が戦死した以上、名目上アルバレア公爵家の当主は俺という事になってはいるが…………」

「私の場合は皇帝陛下への忠義が篤い父上から”ログナー侯爵家当主”の地位を簒奪する必要があるかもしれないね。」

「アンちゃん…………」

「…………それは……………………」

「オリビエ…………ヴァイスハイト陛下。念の為に聞きますが、ミルディーヌ公女との会談の際にまさかオリビエ――――――オリヴァルト皇子がユーゲント皇帝陛下から帝位を簒奪した場合、ヴァイスラント決起軍はオリヴァルト皇子に協力するような事をミルディーヌ公女に訊ねたのでしょうか?」

ヴァイスの説明を聞いてユーシスと共に重々しい様子を纏って呟いたアンゼリカの様子をトワは心配そうな表情で見つめ、複雑そうな表情で答えを濁しているオリヴァルト皇子の様子を辛そうな表情で見つめたミュラーは表情を引き締めてヴァイスに訊ねた。

 

「ああ。――――――最もミルディーヌ公女自身は『ご家族を大切になさっているオリヴァルト殿下にそのような思い切った行動をする気概はないと思いますが』とも言っていたがな。」

「ハハ…………確かにミルディーヌ君の言う通り、私にはそのような覚悟は少なくても今はできないよ…………ちなみにヴァイス。万が一私が父上から皇帝の地位を簒奪して即位した場合、和解に協力してくれるのかい?」

ヴァイスの話を聞いて乾いた声で笑って呟いたオリヴァルト皇子は気を取り直してヴァイスに訊ねた。

「メンフィルがエレボニアに要求した”三度目の要求内容”の一部であるエレボニアの領土贈与とカイエン、アルバレア両前公爵をメンフィルに引き渡す件に承諾するのならば、和解に協力してもいいぞ。」

「…………その口ぶりですと、メンフィル帝国は領土贈与とカイエン公とアルバレア公の引き渡しの件については絶対に退くつもりはないという事ですか?」

ヴァイスの答えを聞いてある事に気づいたサラはヴァイスに確認し

「ああ。まあ、領土贈与の件に関しては話し合いの余地はあるかもしれんが…………――――――少なくて和解する為にはエレボニアは自国の領土を大幅に他国に贈与しなければならない事とカイエン。アルバレア両前公爵の引き渡しは”確定事項”だ。そしてリィン達もそれを納得の上で、今回の戦争にメンフィル・クロスベル連合側についている。」

「そ、そんなっ!?リィン達もエレボニアの領土が奪われる事やユーシスのお父さんが処罰される事も承知の上でメンフィル・クロスベル連合側についているって…………!リィン達はエレボニアを存続させる為に、メンフィル・クロスベル連合側についたんじゃないんですか!?」

ヴァイスの説明を聞いた仲間達がそれぞれ血相を変えている中アリサは悲痛そうな表情で声を上げて訊ねた。

 

「リィンさん達はエレボニアの件に関しては”ベスト”でも”ベター”でもなく、”何もしないよりはマシな結果”を目標としているとの事なのですから、エレボニアが敗戦後メンフィル・クロスベル連合に領土を削り取られる事や”戦犯”の引き渡しがされる事実も既に受け入れているとの事です。」

「そもそも戦争に敗北した国が衰退することなく、国を存続させる事等”夢物語”だ。まさかとは思うが、お前達は”エレボニアが何の対価も支払わずにメンフィル・クロスベル連合との和解する方法”という”余りにも愚かな理想”を求めて活動するつもりなのか?」

「そ、それは……………………その、領土贈与の件に関してはメンフィル帝国の要求通りではありませんが、オリヴァルト殿下と”四大名門”の関係者であるアンちゃん――――――アンゼリカ・ログナーと”アルバレア公爵家”のユーシス君と”ハイアームズ侯爵家”のパトリック君の苦渋の決断で、ユーゲント皇帝陛下のシュバルツァー家への謝罪と難民達の生活費の支払いの件はそのまま承諾して、領土贈与の件に関してはノルティアとサザ―ラントからは3割、ラマールからは5割、そしてクロイツェンからは8割に該当する領土をメンフィル帝国に贈与する事と”戦犯”の件はカイエン公とアルバレア公を引き渡す代わりに他の人達は”身代金”という形で多額のミラを対価にして許してもらう事と、残りの条約に関してもミラを対価とするつもりでした…………当然、例えその変更内容が受け入れられたとしても、エレボニア帝国は長期間貧困に苦しみ、内戦による被害の復興も遅れる事も承知の上です…………」

リセルと共に答えたヴァイスの問いかけに対してトワは辛そうな表情で答えた。

「…………なるほど。確かに普通ならば、その変更内容で和解を承諾する可能性はありえますわね。」

「ええ…………ですが、貴女達は”メンフィル帝国という特殊性”を考えていませんでしたから、恐らくその変更内容を交渉材料としてもメンフィル帝国を更に怒らせる結果になったかもしれませんね。」

「ええっ!?そ、それってどういう事なんですか!?」

「”メンフィル帝国という特殊性”と仰っていましたが、それは一体どういう意味なのでしょうか?」

静かな表情でマルギレッタと共に答えたリ・アネスの答えを聞いたエリオットは驚き、アルゼイド子爵は真剣な表情で訊ねた。

 

「メンフィル建国は人間族や”闇夜の眷属”を始めとした多くの種族達が共存する為に建国された国だ。そしてメンフィル帝国で人間族に次ぐ多い種族は”闇夜の眷属”だ。メンフィル建国前のレスペレント地方の”闇夜の眷属”は長年虐げられ続けてきても、決して魔族に堕ちる事なく、秩序を重んじ、同族達を大切にし、そして決して見捨てなかったという”誇り”がある。そのような”誇り”を金で買う等、リウイを含めた多くの”闇夜の眷属”の”誇り”を汚す事になると思うぞ。」

「それは……………………」

「”闇夜の眷属”の”誇り”か…………トールズに来るまではメンフィル帝国の本国で学んでいたリィンはその”誇り”も知っていたからメンフィル帝国はエレボニア帝国につきつけた”三度目の要求”を絶対に妥協しないとわかっていたからこそ、Ⅶ組に戻らず、メンフィル・クロスベル連合側についたのかもしれないな…………」

「ええ…………パント大使との会談の際に、和解の件が本格的な話にならなかった事は不幸中の幸いでもあったようね…………もし、あの変更内容を提示すれば、最悪メンフィルの怒りの炎に更に油を注ぐ事になったかもしれないでしょうしね。」

ヴァイスの説明を聞いたラウラは複雑そうな表情で答えを濁し、複雑そうな表情で推測したガイウスの推測に頷いたサラは重々しい様子を纏って呟いた。

 

「ヴァイスハイト陛下。昨日(さくじつ)オーレリアがミルディーヌ公女の為に手配したヴァイスラント決起軍がメンフィル・クロスベル連合と和解し、同盟を組む会談をリウイ陛下と行ったとの事ですが、会談の際ミルディーヌ公女はメンフィル帝国が要求した三度目の和解条約についての交渉等もしたのでしょうか?」

「ああ。会談の際に当然その話も挙がり、ミルディーヌ公女はリウイと交渉して和解条約の一部変更等も行ったが、変更部分は第一、二、六条で、それも変更内容はほんの一部だ。」

「ええっ!?ミルディーヌ公女は既にあの和解条約の変更も成功させていたんですか!?」

「それで具体的にはどのような内容に変更したのでしょうか?」

アルゼイド子爵の質問に答えたヴァイスの答えに驚いたエリオットは声を上げ、サラは真剣な表情で訊ねた。

 

「第一条に関してはハイアームズ侯爵だけ処罰から外し、第二条はサザ―ラント州を領土贈与の件から外し、更にラマール州も贈与する領土は全土から7割に減らす事、そして第六条に関しては入国料金の撤廃に成功している。」

「そんなにも変更させていたんですか!?」

「ハハ…………”帝位継承権”を持っていない為交渉の席にすらついてもらえなかった私とは大違いだね………………」

「オリビエ…………」

ヴァイスの答えを聞いたマキアスは驚き、疲れた表情で呟いたオリヴァルト皇子の様子をミュラーは複雑そうな表情で見つめた。

 

「あれ…………?でも、ミルディーヌ公女はどうしてハイアームズ侯やサザ―ラントに関しては最大限に庇って、ログナー侯を含めたノルティアに関しては何の変更もしてもらっていないんですか…………?」

「簡単な話だ。――――――ミルディーヌ公女にとってはログナー侯の存在は邪魔である為、もし戦後生きていてもメンフィル・クロスベル連合に合法的に排除してもらえる上ログナー侯の件で自分と敵対する可能性があるログナー侯爵家の”力”も落としてもらえる為、ログナー侯の助命やノルティア州の領土贈与の件に関する交渉は最初から行うつもりはなかったとの事だ。」

「……………………」

「ロ、ログナー侯爵や侯爵家がミルディーヌ公女にとっては邪魔な存在って一体どういう事なんですか!?」

トワの質問に対して不敵な笑みを浮かべて答えたヴァイスの答えに仲間達がそれぞれ血相を変えている中アンゼリカは目を丸くして呆けて黙り込み、アリサは信じられない表情で訊ねた。

 

「貴方達でしたらご存知かもしれませんが、ログナー侯爵はユーゲント皇帝に対しての忠誠が篤いとの事。戦後、例えユーゲント皇帝を皇帝の座から退かせてもログナー侯爵がユーゲント皇帝の復帰を企む事や、エレボニア帝国の存続の為にはメンフィル帝国との関係回復を最優先と考えているミルディーヌ公女と敵対して派閥争いする要注意人物と判断したからとの事です。」

「それどころか、あの公女は自分の結婚予定相手であるリィンが今回の戦争でログナー侯爵を討ち取ってくれれば、『四大名門当主の一人であるログナー侯爵を討ったという大手柄で将来の旦那様であるリィン少佐は更なる出世ができ、ログナー侯爵も排除できますから一石二鳥ですわ♪』と中々腹黒い事を言っていたぞ。」

「そ、そんな事をミルディーヌ公女が考えていたなんて…………」

「…………だが、エレボニアの将来の遺恨を排除するという考えは貴族としては間違ってはいないな…………」

「正直、カイエン公すらも比べ物にならない非情かつ冷酷な人物なんじゃないかしら、あの公女は。」

「ん。相当な曲者かつ腹黒だね、ミルディーヌ公女は。」

「ハハ…………ミュゼ君が想定している父上の行動はどれもありえそうな事は娘である私が一番良く理解しているから、反論できないね…………」

「アンちゃん…………」

リセルとヴァイスの話を聞いたエリオットは不安そうな表情をし、ユーシスは重々しい様子を纏って呟き、目を細めたセリーヌの言葉に頷いたフィーは厳しい表情をし、疲れた表情で呟いたアンゼリカをトワは心配そうな表情で見つめた。

 

「…………だが例えエレボニアの為であろうと、自分の考えだけでログナー侯を排除する等間違っている…………!第一邪魔な存在は全て排除する等オズボーン宰相のやり方と同じだ…………!」

「だからその考えが、”甘い”と言っている。戦乱の時代で自分達の考えを通す為には時には冷酷かつ非情な判断も必要だ。―――――――――ましてやリィンを欠いた今のお前達でその考えを通す等、不可能だ。」

「それってどういう意味?」

厳しい表情で声を上げたラウラの主張に指摘したヴァイスの指摘を聞いた仲間達がそれぞれ血相を変えている中フィーは真剣な表情で訊ねた。

「それはリィンが”時代が望んだ英雄”だからだ。」

「リィンが”時代が望んだ英雄”…………確かにオズボーン宰相達によって、リィンはエレボニアの”英雄”扱いはされているが、それが今の指摘とどう関係しているのでしょうか?」

ヴァイスの答えを聞いたガイウスは不思議そうな表情で訊ねた。

 

「――――――”時代が望んだ英雄”とは混迷の時代が混迷を終わらせる為に生み出す”怪物”です。その時代の流れが”英雄”となる者の飛躍を望み、新たなる時代を到来させる礎となる…………――――――それがその時代が望む”英雄”となる人物に神に、そして世界に決められた”運命”です。」

「知略や武勇に優れ、普通の人ではできないような事柄を成し遂げる人物も”英雄”とは呼ばれていますが、”時代が望む英雄”とは古き時代を終わらせ、新たなる時代を到来させる切っ掛けとなる者ですわ。」

「”時代が望む英雄”…………」

「意味不明なんだけど。それがリィンとどう関係するの?」

「………………………………」

リ・アネスとマルギレッタの説明を聞いた仲間達がそれぞれ困惑している中ガイウスは呆けた表情で、フィーがジト目でそれぞれ答えている中リ・アネスとマルギレッタの話を理解していたセリーヌは複雑そうな表情で黙り込んでいた。

 

「フム、ならばわかりやすい例を挙げてやろう。――――――かつて”獅子戦役”を終結させたドライケルス皇帝。彼(か)の皇帝も”獅子戦役”の時代が望んだ”古き時代を終わらせ、新たなる時代を到来させる英雄”と言っても過言ではない。」

「あ……………………っ!」

「確かにドライケルス大帝の存在は当時のエレボニアを変えたと言っても過言ではないね。」

「それはそうなのですが…………」

ヴァイスの指摘を聞いたアリサは声を上げ、真剣な表情で呟いたアンゼリカの言葉にラウラは複雑そうな表情で同意した。

「更にオリビエやミュラーにとってはもっとわかりやすい例としてエステルやリウイがいる。二人が為した偉業――――――特にエステルを身近に見てきたお前達ならエステルが”時代が望んだ英雄”である事を一番よくわかるだろう?」

「ハハ…………クーデター、リベールの異変、そして”影の国”…………”影の国”の件はともかくどちらもリベールに新たなる時代を到来させる切っ掛けとなった歴史に残る出来事で、それらを解決した一番の立役者はエステル君と言っても過言ではないね…………」

「それに”全ての種族を共存させる国であるメンフィル”を建国したリウイ陛下もまた、エステル君と同じ”時代が望んだ英雄”だな…………そしてそれはヴァイスハイト陛下、”影の国”で自分達と出会った当時の貴方にも当てはまるのでは?」

ヴァイスの説明を聞いたオリヴァルト皇子は当時の出来事を思い出して疲れた表情で呟き、重々しい様子を纏って呟いたミュラーはヴァイスに問いかけた。

 

「その点については否定はしない。実際、俺が即位した頃のメルキアは前メルキア皇帝のジルタニアの頃のメルキアと比べると明らかに変わっていた上、後のメルキアの歴史でも俺の事を”メルキア中興の祖”として称えているとの事だとの事だしな。」

「まあ、”英雄”と呼ばれるには少々似合わない異名もヴァイス様につけられてしまいましたが…………」

ミュラーの指摘に対してヴァイスは静かな笑みを浮かべて答え、リセルは疲れた表情で答えた。

「ほう…………?当時のヴァイスには一体どんな異名がつけられたんだい?」

「――――――”簒奪王”。当時の俺は庶子でありながら帝国に叛旗を翻し、皇帝とその側近である元帥の命を脅かした事から、そんなあだ名を歴史家達がつけたそうだ。」

「さ、”簒奪王”ですか………」

「確かに”英雄”につけるような異名ではないな。」

「というか現代でも、現在進行形でエレボニアを”簒奪”しようとしているから、まさにその異名通りじゃない…………」

オリヴァルト皇子の問いかけに対して不敵な笑みを浮かべて答えたヴァイスの答えにエマは不安そうな表情をし、ユーシスは厳しい表情でヴァイスを見つめ、サラは疲れた表情で溜息を吐いた。

 

「話をリィンの件に戻すが、リィンの元には様々な勢力の仲間が集結し続けている。元からいる仲間であるセレーネとメサイアは当然として、家族であるエリゼとエリス、メンフィル軍の訓練兵時代に結んだ絆、エステルと契約している使い魔達のように自らの意志でリィンに協力する事を決めたリィンの新たなる使い魔達、更には敵国の皇女、騎士、大貴族に加えて内戦の時はかつては”敵”であったアルティナ…………――――――敵、味方問わず”人を惹きつける力”もまた、時代が望む英雄に備わった力だ。そういった部分に関してエステルも同じだろう?」

「ハハ…………確かにかつてエステル君には遊撃士協会の関係者に限らず、私やミュラー、クローディア王太女達のように本来遊撃士とはあまり関わらない人物達もエステル君の仲間として加わった上、リベル=アークの決戦では結社の”執行者”であったレーヴェ君も仲間になったし、”影の国”ですらもセリカさん達に加えて強者揃いの”影の国”で戦った”試練の守護者”の中でも間違いなく”最強”と言って過言ではないフェミリンスさんすらもエステル君の仲間になったね…………」

「そしてメンフィル・クロスベル連合側についてからできた新たな仲間達に加えて本来メンフィル軍の一員として戦うはずだった”敵国”であるエレボニアの皇族であられるアルフィン殿下、”四大名門”の一角のミルディーヌ公女、代々皇族の守護職を務めた”ヴァンダール”の一員であるクルトと”黒の工房”の関係者だった”黒兎(ブラックラビット)”を仲間にしたリィンは確かに当時のエステル君を思い返すな…………」

ヴァイスの指摘にオリヴァルト皇子は疲れた表情で呟き、ミュラーは重々しい様子を纏って呟いた。

「リィンは己の目的の為に多くのエレボニア帝国の軍人達の命を奪い、更には元から敵対関係だったとはいえ、かつての仲間の親族であるルーファス・アルバレアも殺害し、自身の”踏み台”とする冷酷かつ非情なる判断を行った。――――――それを行ったリィン自身、もはや”後戻りできない”とは思っているだろうな。」

「そ、それは……………………」

「………………………………」

ヴァイスの推測を聞いたトワは不安そうな表情で答えを濁し、ユーシスは目を伏せて黙り込んでいた。

 

「自ら退路を断ち、己の目的の為に前に進み続ける覚悟を決めた以上、リィンは今回の戦争で飛躍するだろうな。――――――エレボニア帝国軍も、結社も、黒の工房も、二大猟兵団も、そして”鉄血宰相”すらも自身の”踏み台”にしてな。」

「て、”鉄血宰相”――――――オズボーン宰相もリィン自身の”踏み台”にするって、まさかとは思いますがリィンは今回の戦争でオズボーン宰相も討つつもりなんですか…………!?」

ヴァイスが口にしたリィンの将来を聞いてある事に驚いたマキアスは不安そうな表情で訊ね

「ああ。”鉄血宰相”はユーゲント皇帝に代わる三国と戦争し、呑み込むつもりでいるエレボニア帝国の”総大将”なのだから、奴を討てば間違いなく大手柄になる上…………真の意味で親子の縁を断つ為にも、”鉄血宰相”を討つつもりだそうだ。」

「な――――――」

「”真の意味でオズボーン宰相との親子の縁を断つ為”に…………確かにリィンはオズボーン宰相が自分の父親である事を知った時、思う所があるようだったが…………何故、そこまでしてオズボーン宰相との縁を…………」

ヴァイスの答えを聞いた仲間達がそれぞれ血相を変えている中サラは絶句し、ガイウスは複雑そうな表情で呟いた。

 

「フッ、何をとぼけた事を。お前達ならその件について一番よくわかっているのではないか?――――――”今のリィンにとっての本当の家族はシュバルツァー家”なのだから、”例え血縁関係があろうと、幼い自分を捨てて好き勝手に生きたにも関わらず、内戦で活躍すると今更父親面した挙句自分を利用しようとしている鉄血宰相をリィンは自分の父親とは認めない”事を。」

「……………それ…………は…………」

不敵な笑みを浮かべて指摘したヴァイスの指摘にエマは辛そうな表情で答えを濁し、アリサ達もそれぞれ様々な思いを抱えて黙り込んでいた。

「よかったな、オリビエ。お前が危険視していた”鉄血宰相”をお前がエレボニアの為に結成した”Ⅶ組”の一員であったリィンが排除するつもりでいるのだからな。」

「ハハ…………君は祝いの言葉を送ったつもりだろうけど、私にとっては皮肉な意味にしか聞こえないよ…………確かに私は宰相殿を危険視していたし、排除すべきという考えも持っているが、だからと言って、血の繋がった親子が互いを憎んで殺し合うなんて余りにも哀しい結末になって欲しいとは心から望んでいないよ…………」

「オリビエ…………」

ヴァイスの指摘に対して疲れた表情で答えたオリヴァルト皇子の様子をミュラーは辛そうな表情で見つめた。

「…………失礼を承知で問わせて頂きますがヴァイスハイト陛下自身、”皇として”ではなく”リィンに娘を嫁がせる親”としてリィンのその考えにはどう思われているのでしょうか?」

「別に何の問題もないと思っているが?リィン達に限らず、例え血縁関係があろうと互いを憎み、殺し合う親子等ゼムリア大陸に限らずディル=リフィーナにもよくある話だし、かつての俺のように血縁者も”踏み台”にして”上”を目指すその姿勢は娘(メサイア)を嫁として送り出す親としても心強いと思っているぞ。――――――マルギレッタ、お前はどう思っている?」

アルゼイド子爵の質問に答えたヴァイスはマルギレッタに話を振り

「私は例えどんな深い事情があれど、親子が殺し合う事は悲しい事だとは思ってはいます。ですが、”自分とオズボーン宰相という実例”を一番良く知っているリィンさんだからこそ、自分達はそうならないように、メサイアやエリゼさん達、そして将来できるであろうメサイア達の子供達を大切にしてくださると信じておりますわ。」

「要するにリィンさんは自分とオズボーン宰相の親子仲の悪さを”反面教師”にするという訳ですね…………」

「そもそもオズボーン宰相の場合、リィンさんと決別されても”自業自得”と言っても過言ではありませんね。」

ヴァイスに話を振られて答えたマルギレッタの答えを聞いたリ・アネスとリセルは静かな表情で呟いた。

 

「――――――オリビエ。”友人”としての忠告と提案だ。”鉄血宰相”は決して和解に応じるような玉ではない。奴は自分の目的を果たす為なら如何なる犠牲を払い、数多の人々から憎悪を買う事も躊躇わない。奴を本気で止めたければ、奴や奴の考えに同調する者達を抹殺するしか方法はない。そしてそんな奴を重用し、それが原因で内戦どころか世界大戦まで勃発させたユーゲント三世にもはや”皇としての資格”はない。――――――例え半分は平民の血が繋がっていようとお前は”皇族”。”皇族の義務”とは民の為に、そして国の為に働く事。そして国を乱し、民達の生活を脅かす輩は自らの手を血で染めてでも排除する事もそうだが、”例え国を乱す輩が血縁者であろうと排除する事が皇族の義務”だ。だからもし、アルフィン皇女のようにユーゲント皇帝と決別し、”鉄血宰相”率いるエレボニア帝国軍を排除する為にメンフィル・クロスベル連合に加わるのならばリウイやミルディーヌ公女、そしてクロスベル皇帝たる俺とギュランドロスとの会談を取り計らうぞ。」

「………………………………」

(オリビエ…………)

ヴァイスの忠告と提案に対して何も答えられず、辛そうな表情で黙り込んでいるオリヴァルト皇子の様子をミュラーは複雑そうな表情で見守っていた。

「…………――――――勝手な事ばかり言わないでください!」

「アリサちゃん…………?」

するとその時アリサが前に出てヴァイスを睨んで主張し、アリサの行動をトワは不思議そうな表情で見つめていた。

 

「確かに今回の戦争、ヴァイスハイト陛下の仰る通りオズボーン宰相もそうですけどユーゲント皇帝陛下にも否はあると思います。でも!オズボーン宰相もそうですけどユーゲント皇帝陛下にも何か深い事情があるかもしれません!その”真実”を知る事なく、メンフィル・クロスベル連合もそうですけどリィンもそれぞれの目的を果たす為にオズボーン宰相達を含めた多くのエレボニアの人々を犠牲にするなんて、納得できません!」

「アリサ君…………」

アリサの言葉にアンゼリカは驚き

「…………確かにアリサの言う通りだね。規模は全然違うけど、今回の件も内戦の続きのようなものだね。」

「ああ。エレボニアがメンフィル・クロスベル連合とリベールと和解する方法を探りつつ、オズボーン宰相達の真意を調べる事が”エレボニアの第三の風”である我らの役目だ。」

「それとクロウとジョルジュ先輩もそうだけどリィンやセレーネ、それにエリゼ君とエリス君、アルフィン殿下の件を何とかする方法も探らなければな…………!」

「クロウ達やリィン達の件もそうだが、ミリアムが今どこで何をしているか、そして合流方法も探らなければならないな。」

「今の状況のエレボニアを救う方法は普通に考えればリィンやミルディーヌ公女達の判断が”英断”なのかもしれない。――――――だが、だからと言って、それ以外の方法を見つける事を俺達が諦める訳にはいかん…………!」

「はい…………!内戦を超える事ができたのですから、今回の戦争の件もエレボニアやリィンさん達の為に私達にできる事が何かあるはずです…………!」

「うん…………!今の時点でもやるべき事は幾らでもあるね。」

「やれやれ………ほんとアンタたちと来たら。」

「リィン達も、まさか今度は自分達がアンタ達にどうにかしてくるとは思ってもいな――――――いえ、ひょっとした心の奥底では思っているかもしれないわね。」

「……………………」

アリサに続くようにフィー、ラウラ、マキアス、ガイウス、ユーシス、エマ、エリオットとⅦ組メンバーもそれぞれ決意の表情を浮かべ、その様子を見たサラとセリーヌは苦笑し、アルゼイド子爵は静かな笑みを浮かべて見守っていた。

 

「みんな…………ハハ、君達が諦めていない以上、”Ⅶ組”の設立者である私も諦める訳にはいかなさそうだね。」

「フッ、珍しくまともな意見を口にしたな。」

アリサ達の様子に目を丸くした後苦笑したオリヴァルト皇子にミュラーは静かな笑みを浮かべて指摘し

「――――――ヴァイス、先程の提案は悪いが断らせてもらう。最後の最後まで”悪あがき”もしないなんて、今までお世話になったⅦ組を始めとしたトールズの諸君もそうだが、リィン君やアルフィン達にも会わせる顔がない。」

「やれやれ…………お前達の為にもお前達の心を徹底的に折るつもりだったが、逆効果だったようだな…………まあ、そうなるような気もしていたがな。」

「フフ、どんな絶望的な状況でも諦めない事に関しては当時のヴァイス様や私と同じですものね。」

オリヴァルト皇子の決意を知って疲れた表情で溜息を吐いたヴァイスにリセルは苦笑しながら指摘した。

 

「――――――ならば”オリビエの友として”のせめてもの”譲歩の提案”だ。今後、クロスベルは”紅き翼”にも”依頼”を出してやろう。その代わり、一部の地域を除いたクロスベル地方内での活動を認めてやる。」

「紅き翼(オレ達)に”依頼”を出す代わりに、オレ達のクロスベル地方内での活動を…………何故、そのような事を?」

ヴァイスの提案に目を丸くしたガイウスは不思議そうな表情で訊ねた。

「知っての通り、”クロスベル帝国”は建国してからまだ日が浅いからな。おまけにディーター達の後始末やクロスベルの復興も残っている関係で、”遊撃士協会”は当然として”特務支援課”にも依頼が殺到している。ロイド達やクロスベルの遊撃士達の負担を少しでも軽くする為にも、”特務支援課”のように遊撃士に似た事も行っているお前達にも仕事を割り振ってやるという事だ。」

「なっ!?それってつまり、僕達を”便利屋”として利用するって事ですか!?」

ヴァイスの説明を聞いたマキアスは厳しい表情を浮かべて声を上げたが

「――――――待って、マキアス君!ヴァイスハイト陛下、先程わたし達がクロスベルが出す”依頼”をこなす代わりに、クロスベル領土内での活動を認めて頂けると仰っていましたが…………その活動にはクロスベル領土内での”紅き翼”の補給物資に関する交渉等も含まれているでしょうか?」

「無論だ。ちなみに活動を禁ずる区域はクロスベルの軍施設周辺――――――要するにベルガード門とタングラム門とその近辺だ。」

「ベルガード門とタングラム門とその近辺のみの活動を禁ずるという事は、カレイジャスが帝都となったクロスベルの国際空港に離陸し、わたし達トールズ士官学院のクロスベル市内での活動も許可して頂けるのでしょうか?」

「ああ。だがクロスベルにとっての犯罪やテロ行為もそうだがクロスベル市内にいるエレボニア帝国人に暴動を扇動するような行為を行えば、容赦なく制圧するがな。」

「ご忠告ありがとうございます。――――――みんな、多分だけどはオズボーン宰相を始めとした帝国政府の指示でエレボニア帝国領土内での紅き翼(わたし達)の活動は制限されているだろうから、ヴァイスハイト陛下の提案は受けておくべきだよ!」

トワが制止の声を上げてヴァイスに訊ね、自分が知りたい答えを知るとアリサ達を見回して助言した。

 

「確かにトワの言う通り、オズボーン宰相達にとっての”邪魔者”のあたし達がエレボニア帝国の領土内で活動し辛くする為に既にオズボーン宰相が手をうっている可能性は高いでしょうね…………しかもユミルも、トヴァルの件や今のメンフィルとエレボニアの関係を考えるとメンフィル帝国軍はあたし達の活動を絶対に受け入れないでしょうし。」

「ああ…………それを考えると正規軍に治安維持を任せているケルディックやバリアハートは無理だろうな。」

「ルーレも恐らくだが父上やノルティア領邦軍の監視の為に正規軍もルーレの治安維持に介入している可能性が考えられるから、ルーレで活動する事も正直危ないだろうね。」

「それに帝都近郊のトリスタも多分無理だろうね。」

「さすがにレグラムまでにはオズボーン宰相達の手は伸びていないとは思うが…………今のエレボニアの状況を考えると、内戦では活動できた地域のほとんどが制限されている可能性は十分に考えられるな。」

「つまりオレ達は今まで活動できた地域のほとんどの地域が活動できなくなった可能性があるから、新しく活動できる地域を増やす必要があるのか…………」

トワの助言を聞いたサラ、ユーシス、アンゼリカ、フィー、ラウラ、ガイウスはそれぞれ考え込み

「それとディーター達によって凍結されていたお前達のIBCの口座もそうだが、お前達の親族の口座も口座を引出す人物がお前達ならば無条件で引き出せるように手配しておこう。」

「へ…………僕達の親族の口座を引出す人物が僕達だったら、無条件で引き出せるってどういう事なんですか…………?」

そこにヴァイスが自分の”譲歩内容”の補足の説明をし、それを知ったエリオットは不思議そうな表情で訊ねた。

 

「――――――要するに私達はIBCに貯めこんでいる親の金を親に無許可で勝手に使っていいって事さ。私もそうだが、Ⅶ組のみんなの中には相当な資産家の親もいるだろう?それらのお金も利用できれば、資金不足の問題もある程度解消できると思うよ♪」

「その口ぶりだとアンちゃんはログナー侯爵閣下の口座からお金を勝手に引き出すつもりなんだね…………」

「ハッハッハッ、当然じゃないか。あ、それとハイデル叔父上も結構貯めこんでいると思うから、そっちも使って構わないよ。」

エリオットの疑問に対して口元に笑みを浮かべて答えたアンゼリカの答えにアリサ達がそれぞれ冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中トワは疲れた表情を浮かべ、トワの推測にアンゼリカは暢気に笑いながら答えた。

「さ、さすがにそれは不味いと思うのですが…………後で私達がその人達に話も通さずに勝手にお金を使った事が判明すれば、色々な問題が発生すると思いますし…………」

一方我に返ったエマが困った表情で指摘した。

「――――――俺の場合は父は捕まり、兄は既に死んだのだから、遠慮なく引き出して今後の活動の足しにして構わん。今回の戦争は父上と兄上も元凶の一端を担っているのだから、公爵家はともかく二人が貯めこんでいた金くらいはエレボニアの為に活動するつもりでいるオリヴァルト殿下や俺達の活動資金として有効活用するべきだ。」

「ユーシス…………私も母様の口座なら勝手に使っていいわ。どうせ母様の事だから、戦争するつもりでいるエレボニア帝国政府に兵器の売り込みをしているでしょうから、自業自得よ。…………まあ、母様の事だから、IBCの自分の口座からお金がなくなったとしても母様にとってはあまり痛手じゃないような気もするけどね…………」

静かな表情で申し出たユーシスの申し出を聞いたアリサは複雑そうな表情をした後ユーシスに続くように母であるイリーナ会長をジト目で思い浮かべながらユーシスと同じ申し出をした。

 

「…………ヴァイス。先程の口座の件だが、父上――――――ユーゲント三世個人のIBCの口座も引き出せるのかい?」

「ああ。それで”依頼”の件の提案はどうする?」

オリヴァルト皇子の質問に答えたヴァイスはアリサ達を見回して問いかけ、アリサ達がそれぞれ視線を交わして頷くとトワがアリサ達を代表して答えた。

「その提案、謹んで受けさせて頂きます!」

「――――――結構。現時点を持ってクロスベル双皇帝が一人、ヴァイスハイト・ツェリンダーの名の下にベルガード門、タングラム門とその付近を除くクロスベル地方での”紅き翼”の活動の許可を宣言する。――――――英雄(リィン)を欠いたお前達がこの状況で何を為せるのか、個人的に楽しみにさせてもらおう。――――――行くぞ、リセル、マルギレッタ、リ・アネス。」

「「はいっ!」」

「ハッ!」

トワの答えを聞いて頷いたヴァイスはその場で宣言した後静かな笑みを浮かべてオリヴァルト皇子達を見回してから外套を翻してオリヴァルト皇子達に背を向け、そしてリセル達と共にその場から去っていった。

 

 

こうして…………クロスベル地方の帝都であるクロスベル市を含むほとんどの場所での活動できるようになったアリサ達は”太陽の砦”で匿われているアルスターの民達からの情報収集を再開した――――――

 

 

次回は閃3ラストダンジョンが現れるあのイベントをフライング発生する話を書く予定です。なので新Ⅶ組キャラで唯一フライング登場していなかったあのキャラもフライング登場すると思います。なお、今回のBGMはアリサがヴァイスに反論する所までは閃3の4章ラストのダンジョンのBGMである”One-Way to the Netherworld”か閃4のラストダンジョンのBGMである”The End of -SAGA-”、アリサがヴァイスに反論するところからのBGMは閃3ラストダンジョンのBGMである”Spiral of Erebos”だと思ってください♪

 

 

 

 

 


 
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