日本ゼロ年展
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人工的な可愛さを肯定しますか?
東松照明
1930年生まれ。半世紀に渡り活動を続けてきた、戦後日本を代表する写真家。長崎、沖縄など戦後日本の問題系を照らし出す創作活動の一方で、市川崑が総監督を務めた東京オリンピックの記録映画にも演出として関わる。今回出展された『キャラクターP・終の住処』は千葉、長崎、沖縄各地の海辺で、廃船や朽ちた岩場を背景に撮影された。なお『キャラクターP』と親密な関係にある作品に、近代日本の人工自然、人工風景としての桜をモチーフにした連作「桜」をあげることができる。

キャラクターPは東松自身が組み立てた、コンピュータ部品のかたまりだ。しかしどこかしら愛嬌のある、可愛らしい生物――語義矛盾だが多細胞の細菌――に見えてくるのは、けっして名前のせいだけではあるまい。キャラクターPが置かれている背景は朽ち果てた自然だと言う。にもかかわらず、この写真から産業廃棄物に汚された自然=死んだ場所を感じないのは、この不思議な可愛らしさ、サイケデリックな電子部品が放つ生命信号を、こちら側が敏感に受信してしまうからなのだろう。

このことから自然と人工、生物と機械が混在した――あるいは融合した、未来世界=今日が表象されていると感じるのは、おそらく間違いではない。パソコンに浸蝕されつつある今日の生は、やがて来るキャラクターPの世界をそこはかとなく予感させる。電撃文庫のCMではないが、「未来は僕のなかにある」のだ。廊下に置かれたスピーカから流れていた、せわしない男の声とセックス中の女の声は、キャラクターPが僕たち自身だと告げているのだろう。そうするとこいつを多細胞生物だと見るのもあながち間違っていない。とはいえ僕たちは、このような進化を肯定するのだろうか?

(編集部/相沢 恵)

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