これこた
TINAMIX
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2.サブカルチャー内部の対立

東:あともうひとつの対立。そちらはもう少し微妙で、サブカルチャー内部の対立、いわゆるサブカル系とオタク系の対立ですね。実は僕は最初、『エヴァンゲリオン』を見て興奮したとき、『Studio Voice』に話を持っていったんです。ある編集者のマンションで、休日一日つぶして、『エヴァンゲリオン』のビデオも全部見せた。でもそのときはけっこう冷ややかな反応だったんです。うちの雑誌はアニメでは特集を組みたくないから、なんか、ほかのサブカル系のアイテムと絡められませんか、みたいな話になる。あとであの雑誌はエヴァ特集を組みますけど、最初はそんな反応だったんですね。他方オタク系の反応はと言えば、僕はサブカルの人だと思われたらしく、とにかく一貫して冷ややかで、あるアニメ誌編集者に「東さんみたいな立場の人にはアニメ誌は無理ですから」と言われたり、岡田斗司夫さんのWebマガジン『おたくWeekly』で、「最近の現代思想界はみっともなくて、『エヴァ』とかいうとすぐ飛びつくんだよね」とか揶揄されたり、そんなのが多かった。で、そのときも、これは僕が書いたことの内容ではなく、僕の立場や媒体やスタイルだけが問題になっているんだなあ、これはまったく不自由だなあ、と思ったんですね。

そしてそれ以降、アニメについて本を書きませんか、という話はいくつかの出版社から来たんだけど、実は、僕は一貫して断ってきたんです。僕は『エヴァ』以降もアニメは眺めていて、『こどものおもちゃ』にしろ、『機動戦艦ナデシコ』にしろ、『少女革命ウテナ』にしろ、『アキハバラ電脳組』にしろ……って並べてても仕方ないんだけど、そこいらへんはとても奇妙な作品だと思うし、個人的な友人にはいろいろ紹介してたんですけど、アニメ論を書く気はもうしなかった。というのも、そこではもう、問題は内容じゃなくなっていたんですね。僕がアニメについて書くためには、内容以前に、まず、その内容が書ける場所、それを読者に届けるための回路を作らなきゃいけない。現代思想を勉強して、デリダについて研究書を書く人間も、やはり時代と切れているわけではなく、アニメやコミックのような想像力と深いところで繋がっているんだ、ということを普通に発信し、受けとめる回路をつくらないといけない。そうでないと、文化全般について自由に語れなくなってしまう。だから、もしこの新たなWebマガジンがそういう回路として機能すれば、 本当に嬉しく思うし、そのためにできるだけのアイデアを出していきたいと思っています。

『Studio Voice』
インファス刊。


『こどものおもちゃ』
大地丙太郎監督,1996.4− 1998.3放映,テレビ東京。

『機動戦艦ナデシコ』
佐藤竜雄監督, 1996.10−1997.3放映,テレビ東京。

『少女革命ウテナ』
幾原邦彦監督,1997.4−1997.12放映,テレビ東京。

『アキハバラ電脳組』
ふじもとよしたか監督,1998.4−1998.9放映,TBS。

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