No.983772

呂北伝~真紅の旗に集う者~ 第024話

どうも皆さんこんにち"は"。
黄巾の乱編に突入しましたね。

私の書く戦闘シーンは基本ざっくりしています。なので、戦いだけで2話など、そういったことは恐らく余りないかもしれません。
そこいらを踏まえて、皆さんのっぺり楽しんでいただければ幸いです。

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2019-02-12 23:58:35 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:1450   閲覧ユーザー数:1342

呂北伝~真紅の旗に集う者~ 第024話「無法地帯」

 「......先ほどは見苦しい場面を見せて、大変失礼をしました」

正気と冷静さを取り戻した一刀は頭を下げて謝罪する。

「い、いえいえ、元はと言えば奥方様に失礼なことを申し上げたこちらに問題がありますれば、今回の一件は、当然の報いでございましたことを深く受け止めます」

何処かの横領が見つかった社長が、記者会見で述べる謝罪の様に、劉備の口調がおかしくなっているが、彼女が頭を下げたと共に、関羽も頭を下げる。ちなみに張飛は一刀からもらったアイアンクローの影響で寝込んでおり、未だ謝罪を繰り返していた。

「そうか。では改めて、俺は扶風を取りまとめる呂北という。今回養父であり、中郎将丁原の代理で黄巾盗伐に参戦することになった」

「あ、ご、ご丁寧に。私は義勇軍を率います劉備って言います。私も盗伐に参加しようとしています」

「......劉備?君はひょっとして、風鈴(ふうりん)先輩の教え子か」

「先生を知っているのですか!?」

「あぁ、あの人が官軍に勤める前、幽州で私塾の講師を務めている時に手紙を貰って、それで君のことが書いてあった『公孫瓚と劉備というもの覚えがいい教え子がいる』てね。そうか......」

そう言いながら、一刀は義勇軍を見渡すと、そこにはいるのは兵装備もままなっていない千の農兵であり、彼は劉備に問いかける。

「劉備ちゃん、こんなこと聞くのもなんだが、本当に参加するつもりかい」

劉備は言っている意味がわからなかった。苦しんでいる民の声を聞いて立ち上がり、そして少しでも軍の助けになればと思いこうして向かっているのだ。

「はっきりいうとね劉備ちゃん。君たちはこのままじゃ門前払いをくらうよ。酷い言い方をすれば、このまま帰って畑を耕して兵糧の蓄えを作ってくれた方がよっぽど国の役に立つ」

一刀のこの言葉に義勇軍の若者達は批難の言葉を呂北に浴びせるが、関羽の一喝によって直ぐに鎮静された。

「奥方様に対してまでにも飽き足らず、私共の部下が無礼を働いて大変申し訳ございません。ですが失礼ながら問わせてください。何故我らがそれほどまでに言われなければならないのか」

先の一件以来、冷静を装っている関羽であるが、先の一件がありまた後ろの部下の無礼さえ無ければ自らが激怒した発言であった。関羽は怒りを押し殺して呂北に問いかけた。

「君たちにも一軍の将として自覚があるというなら遠慮なく言わせてもらう。まず装備が整っていない。それでは何処の軍にも物乞いと勘違いされる質だ。そして連携が取れていない。連合軍に集まる諸侯は訓練を受けた兵士だ。訓練も受けていない農兵が混じるだけじゃ逆に足を引っ張られる。そして自覚が無い。俺はこれでも大分大らかに包んで話したつもりだが、兵は怒りを抑えるより先に口が出た。関羽、君に関してもそうだ。自身は怒りを抑えているつもりでも、怒気が滲み出過ぎている。俺は風鈴先輩の教え子の軍だと思って敢えて口に出したが、このままいけば確実に門前払いを受けるよ。それとも盗伐軍にあてでもあるのかい。友人が軍の参謀、将の一人であるとか、そんな伝手はあるのかい」

呂北の言葉に、彼女たちはぐぅの音も出ないでいた。無論だ。彼の言っていることは正しい。実をいうと黄巾盗伐軍参戦にあたっての策は何一つ思い浮かんではいなかったのだ。劉備の友人である公孫瓚は、幽州の国を治めているが、自らの国の運営と領内の賊盗伐の為に離れるわけには行かなかった。怒気を溢れさせていた関羽も彼の最尤もな言葉に、劉備と揃って肩を落としてしまう。そんな彼女達を見かねて、呂北は一つの提案を述べる。

「まぁ、風鈴先輩には世話になった。俺の軍の末端としてなら、連れていくこともやぶさかではない。それに加えて、装備も兵糧も貸してやろう」

その言葉に二人は「え?」と言葉を合わせる。

「ただし、”貸してやる”だけだ。無料(ただ)ではない。出世払いで必ず返してもらう。この借用書に君たち二人の名を書くといい。ただし”真名”でな」

「ま、真名ですか?」

「そうだ。ただ名前を書くのであれば誰でも出来る。君たちを信用・信頼出来る程人間性を知っているわけでもない。だったらその真名(しんめい)に誓って貰うしかない。寧ろ裏切ればそれは自らの真名(しんめい)を裏切ったことに相違ならない。さぁ、どうする?」

二人はすこし考えてから、そこに自らの真名を署名することに了承した。無論1ヶ月につき5割増しなどという悪徳商業ではない。大きな文字で『収入と官位によって返済の割合は変わります。別紙参照の上、容量を考慮に入れて確実な返済を心がけて下さい』との記載を確認させて、二人は証明書に『桃香 愛紗』と署名をした。証明書を白華に預けて、確認書を劉備に預けた。

深紅に染まった呂北軍の装備の予備を、義勇軍に与え、一時的とはいえ傘下として動いて貰うからには命令には絶対に従ってもらうことであり、軍の規約には必ず従ってもらい、無論違反を犯せば処罰もされる。

装備を整った義勇軍を見て、劉備は呂北に尋ねた。

「あ、あの呂北さん。何故私たちにここまでしてくれるのですか?」

誰でも思う疑問である。見ず知らず相手に、何故これ程までの施しをくれるのか、呂北は手で顔を抑え怪しく笑うと、途端に語りだした。

「くっくっくっ、確かにさっき言ったように、風鈴先輩には恩義があるからその経緯で君に力を貸すのは嘘ではない。だがな――」

突然彼は自分の顔を劉備と関羽が当たるかぐらいまでに近づけると、彼女たちの目を見る。

「良い目だ。希望に満ちて、踏み潰されても潰されても何かを成し遂げようとする強い意志を感じられる。そういう人間はきっと何かを成し遂げる。俺の勘と経験が語っている。君たちは出世すると――」

自分たちの全てを見透かすその目に、年相応に二人は内心恐怖を覚えるが、呂北はそれと関係無しに、準備が整った連絡を受けると、軍の進行を開始する命を下す。

「あぁそうそう、さっそく君たちに最初の命を与えるが、俺と白華の近くに張飛を近づけるなよ。その時までに俺の彼女に対する怒りが収まっていればいいが、もし収まっていない状態で誤って近づければ.........もしかすれば、後ろから矢が飛んでくるかもしれないなぁ」

呂北のにこやかな黒い影を落とした笑顔を前に、劉備と関羽はまた違った恐怖に苛まれ、体を震わせた。

 一刀は義勇軍千の兵を加えた1万1千にて進軍し、盗伐軍が駐屯する弘農に辿り着いた。そこには先行していた東扶風の1軍もいた。

「若」

「おぉ夢音(ムオン)か。久しいな。元気でやっているか?」

「元気ではないです。若が老軍師(楊奉(ようほう))を連れていきぱなしでしたから、ボクの仕事の負担が倍だったのですよ」

「まぁそういうな。若いうちは苦労を買ってでも行なうものだぞ」

「.........若、ボクより年下でしょう」

笑い飛ばす一刀に対して、女性は不満そうに口を尖らせる。彼女の姓は(せい)、名は(れん)、字を徳易(とくえき)、真名を夢音(ムオン)といった。

下からロングブーツに、腰を防御するための付けられた佩楯(はいだて)の鎧。肘近くまであるグローブに、腹筋と二の腕部分を残して省略された肩まである胸当てを着込み、露出させているであろう肌の部分は、内側から顔のみを残し全身に着込まれた体を密着させる繊維の布。鎧の上からは漆黒のマントに身を包んでいる。

あたかも西洋の女性騎士が物語から出てきたかの様。この装備の鎧は銀を含んだ鉄で作られており、通常の鉄の鎧より軽く、そして水に錆びにくい。また鎧には幾つもの傷か付き、鎧の隙間から見える肉体は、布が密着している為によくわかる。鍛え上げられた腹筋に脚。その凛とした表情は、素人目でも歴戦の強者(つわもの)であるとわかる。さらに特出すべきは彼女の容姿もこの中華大陸に珍しい、ブロンズの髪とコバルトブルーの青空の様な目をしている。身長も5尺6寸程と、周りの兵士と見比べても大きさが突出しており、6尺の一刀とは良い釣り合いが取れていた。

その美しく、移民の血が流れているであろうと推測される容姿に、呂北陣一同と劉備と関羽は感嘆しながら見ていた。

「奥方様もお久しゅうございます」

「ふふふ、久しぶりね夢音ちゃん。今日はよろしくね」

「はっ。成徳易、この身に変えましても若と奥方様に勝利を――」

一刀と白華の前で拱手をしながら夢音は頭を下げた。

「ところで若、後ろに控える方々は?」

呂北陣営の面々は夢音と挨拶を交わし、劉備と関羽の出番となった時――。

「この子達は劉備ちゃんと関羽ちゃん。ウチの人の新しい愛人よ」

「「え?」」

突然の発言に、彼女たちは浮かぶ言葉が出てこなかった。

「......あぁそうですか。はいはい愛人ですね。それでは若、そろそろ軍議が始まりますので参りましょうか」

そんな白華の言葉を真に受け止めることもなく、流すようにして夢音は先に連合軍が集う天幕に向かった。

「白華、お前はまた懲りずに......」

「だってもっと夢音ちゃんに構って欲しいんですもの」

「その影響で二次被害が起きているじゃないか」

一刀が親指を劉備と関羽の方に向けると、二人は顔を赤らめており、劉備に至っては口を開けて狼狽している。

「ふふふ、ごめんなさい。それじゃあなた、夢音ちゃんもいることですし、私は参加しなくてもいいかしら」

「あぁ、のんびりしとけ。軍の事は郷里に任せて、先に今後の方針でも話し合っていてくれ」

「了解。それじゃ皆行きましょうか」

白華が皆を連れて張った呂北軍天幕に向かう中、劉備と関羽を一刀が引き留める。

「劉備ちゃんに関羽ちゃん、君達も参加してみるか?」

「え?」

「君達もゆくゆくは国を持つことが望みだろう?だったら今後の為にもこういったことは経験した方がいい」

「で、ですが、よろしいのでしょうか?」

「君達は漢ではなんの役職も持たない無官だから、発言権は無い。だから”参加するだけ”だ。大陸の諸将が会合する場だ。ただの集会では無い。無論問題を起こせば俺にも被害が及ぶことにもなる。だから君達それぞれが互いを抑止しあえ。劉備、関羽が怒りに身を任せそうであれば君が。関羽、劉備が下手なことをしそうであれば君が。もしどちらかが問題を起こすことがあれば、起こした方の首をその場で刎ねるから覚悟しろ。二人で起こせば無論両者共だ」

一刀の真剣な表情に二人は間をおいて頷く。

「深呼吸をしておけ。今から向かう澱んだ空気に耐えられるようにな」

一刀達は待たせている夢音を連れて、連合諸侯の集う天幕まで向かった。受付をしている場所があり、数人の男達が並んでいた。受付で名前と役職を記していることを見れば、今回参加する諸将の者達だろう。一刀はその男達を押しのけて、順番を抜かして割り込んだ。

「貴様、無礼であろう!このお方を一体誰と心得る!」

付き人らしき男が一刀に向かって吠えると、一刀はその言葉を返した。

「はてさて、一体どなたでございますか?」

「き、貴様。何処の田舎者だ!このお方は大将軍何進様の従姉弟であり、河南尹何苗(かびょう)様であらされるぞ!」

「あぁ、あの成り上がり肉屋の親族か。道理で目の色が死んだ豚の様なわけだ」

その言葉に、周りの空気が凍り付いた。周りにいた兵達も、その発言に固まり、皆一刀のその行動に視線を向けた。何進は元々屠殺業を営んでおり、妹の何太后が皇帝に見初められ、その経緯で漢の大将軍にまで成り上がったのだ。名門・貴族が集う王宮にて、元肉屋の経歴は自らの欠点にもなりうる。なので何進自身も消したい経歴であり、もし陰口を叩き、そのことが何進自身の耳にでも入れば身の破滅。何苗は勢い良く立ち上がって一刀に指差し、罵倒するかの如く周りの目も顧みずに吠える。

「き、ききき、貴様‼‼恐れ多くも大将軍の親族である私に無礼を働いたにも飽き足らず、大将軍様に対してのその物言い様‼‼何処の田舎者だ‼‼」

「五官北中郎将・尚書丁原の養子であり、彼の代理。扶風国主破虜(はりょ)将軍呂戯郷(りょぎごう)

破虜将軍は丁原が中郎将となった時、彼が一刀に与えた役職だ。彼の言葉を聞いた瞬間、何苗の顔は蒼白となっていき、向けた指も固まったままで、体を硬直させる。

「何苗殿、貴方の噂は”色々”と聞いているよ。”補填(ほてん)”もさせてもらったからね。その経緯で本当に大将軍様には”覚え”もめでたくなってしまったよ」

呂北が関わった漢臣が起こした問題の一件で、何苗が関わった事件があった。何進は自分の沽券にも関わると思い、何苗を助けようと何とかしたがどうにもならず、何かと交流のあった呂北に泣きついて、何とか問題は解決できた。無論その一件は本人が一番関わってしまったことである為に、何苗の覚えも新しい。彼自身呂北に対して何度も感謝状を贈ったほどだ。そんな問題を解決してくれた人物が目の前におり、しかも自分より高い位置の官位であり、何進からも「呂北を怒らせるな」とキツク窘められていた為に、何苗の体は震えだす。

「まぁ何苗殿。大将軍様より君のことを頼むと言われている。今回の戦でも互いに協力しあって頑張ろうじゃありませんか」

呂北が彼の肩を叩いき、夢音達を連れて天幕に入っていくと、呂北がいなくなった緊張が解けたのか、何苗の体から力が抜け、彼は尻餅を突いて、顔は歪んで涙ぐみ失禁をしてしまっていた。

四人が天幕に入ると、そこには鎧に身を包んだ将兵たちがいた。男女共に関係なく、財を極めた鎧に身を包んだ貴族もいれば、歴戦の強者らしく年季の入った鎧に身を包んだ者もいる。ちなみに現在一刀も(あか)を主張とした甲冑を身に纏っている。黒い着物の上からキャッチャーのレガースの様な膝当て。直接地面を蹴るかのように走りやすさを重視した足袋。腰回りを防御する佩楯(はいだて)。しかしこれは動きやすさを重視してか、前脹脛の部分は無く、左右の側面に付いている。鎖帷子を着込み、胸元の開いた肩当て、所謂威毛(おどしげ)と呼ばれる物に、腕を守る籠手を付けている。彼らが入ると、まず皆入ってきた者に対して、品定めの様な視線を向ける。その気味が悪い視線の正体がわからず、劉備と関羽は内心吐き気を催すが、皆が呂北の姿を捕らえた瞬間、途端に彼に向かって我先にと声をかけ始める。

「これはこれは呂北様。貴方様も参られたのですか」

「おぉ、呂北様が参られれば心強い。この戦の勝利は決まったようなものですな」

「呂北様。お父上様のご昇進、おめでとうございます」

「私は鉅鹿(きょろく)申伊(しんい)と申します。ご高名はかねがね。お会いできて光栄でございます」

呂北の下には関を切ったかの様に人が押し寄せる。押し寄せる人に、成簾達は引き離され、中央に流される呂北を尻目に、劉備は暢気に呟いた。

「ほぇ~。流石呂北さん、色んな人達に慕われているね」

「.........」

「どうしたの愛紗ちゃん。恐い顔して」

劉備とは対照的に、関羽は呂北に群がる人だかりを冷静な目で見据えていた。

「劉備さん、いい機会ですから、貴女はもっと人間観察を身に付けなければなりませんね。若に集う者達を見てどう思いますか?」

夢音は小さく「小声でお願いします」と付け加えると、関羽は言われた通りそっと答える。

「.........あの者達、表情は笑っているように見えますが、目と気配は笑ってはいません。言い方は悪いかもしれませんが、まるで油の火に群がる蛾のようです」

「ほう。言いえて妙ですね。詳しいことは後で話すとして、貴女方も叶えたい望みがあるのでしたら、この天幕での空間(とき)を、若がどう切り抜けるかよく目に焼き付けておきなさい」

未だ場の空気と気配の全てを理解できずにいる劉備は、成簾の助言がとても重要な意味をなすことだけは理解できたために、自らの全ての神経を用いて、場の空気を理解しようと試みる。関羽は呂北と彼に群がる者達の一刀一側に最新の注意を払いながら見つめる。

『何故彼らはおべっかを使うのか?何故一刀はそれを笑いながら受け止めているのか?何故戦前でこんなことをしなくてはならないのか?』あらゆる疑問を思い浮かべながら関羽が考えていると、後ろより女性の声が聞こえてくる。

「ちょっと。先に行かないのだったらそこどいてくれないかしら」

威厳に満ちた少女の声が三人の耳に通ると、通路の単純に邪魔してしまったことに申し訳なさを感じて道を開ける。護衛であろう薄紫色の髪の少女と、青い髪の女性が横切る。そんな三人に皆気付いたのか、闊歩する三人に先程呂北に浴びせられていた視線が集まるが、ただ一人一刀だけが驚愕を表現するように瞼を大きく開けていた。

 

おまけ~侍女長の妄想~

今日はちょっとした失敗をしてしまった。試作品であるお菓子をうっかりお嬢様に食べられてしまったのだ。なんてことだ。少し焦げ目も出来て食べさせられる様なものではないというのに。

それでもお優しいお嬢様はおいしいと称賛の言葉を下された。あぁ、なんとお優しい妹君なのでしょう。出来損ないの侍女である私などにその様な優しいお言葉をいただけるなんて。

音々音も一口食べて少し放心していましたが、すぐに笑顔に戻って「旨いですぞ」と言ってくれた。なんてことだ。こんな無垢な子供にまで気を使わせるとは。きっと放心したのも、味を見失ったからに違いない。なるほど、これが母子心というものなのだろうか。その眩しい笑顔だけで涙が出そうになる。

愛華(メイファ)様も食べて下さった。無表情ながらも「悪くない」と仰って下さるなんて。きっと食べ物に関しては侍女と認めて下さったのかしら。.........いやいや、油断してはいけない。そうした慢心が、また信頼を失う引き金にもなりかねない。

皆私の出来損ないの料理を美味しいと言って下さる。でも本当に食べてもらいたいお方は、今はいない。とにかく、主様が戻って来られるまでに、美味しい新作料理を完成させなくては――。

.........私自身が料理の具材になるのは?野菜や生肉のつくりを私の体に盛り付けて料理を食べてもらうのは‼

いや、ダメだ。その様な不衛生な真似は、濡れてきちゃ......じゃなく、みっともないからやめましょう。

.........でも、主様が望めばわたしは――。

 

その後、この計画の概要が白華にバレて、刃照碑の体を皿替わりにされた料理を、二人に美味しく食べられたのはまた別の話。

 


 
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