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「改訂版」真・恋姫無双 ~新外史伝~ 第36話

今回は物語の展開としてはあまり進んでいません。

そして久しぶりに一刀たちは登場していますが、少し影が薄いかも。

では第36話どうぞ。

2018-09-09 21:51:07 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:3585   閲覧ユーザー数:2966

ふん……また来たのか賈駆よ。暇を持て余しているわらわの元に来るなど、お主も余程の暇人よの」

 

「貴女が正直に答えてくれたらボクも貴女の顔を見ないで済むわ。それでいい加減、何進様の事を白状したらどうなの」

 

現在董卓たちは十常侍を含む宦官たちを殆ど一掃したため、早急に政権掌握に務めていたが、そんな中賈駆は何太后の元を訪れていた。今回の動乱の引き金となった何進暗殺に何太后が関わっていると見た賈駆は数度何太后を尋問したが、何太后は雑談に応じるものの、何進の事についてはのらりくらりと回答を避けていた。

 

「それよりも賈駆よ。わらわは皇帝陛下の母じゃ、何時までこのような軟禁を行うのじゃ?そちたちがやっていることは陛下をないがしろにしているのも同然の行為じゃ」

 

「それを言うなら劉弁様の母親であることに感謝することね。貴女が劉弁様の母親で無ければとっくの昔にボクの手で拷問を掛けて自白をさせているわよ。月…董卓様が許可さえすればいつでも貴女を拷問に掛けてやるわ」

 

何太后は皇帝である劉弁の権威を利用して自分の軟禁を解くように迫るが、賈駆はそれを無視して逆に暗に拷問を掛けることは時間の問題だと何太后にプレッシャーを掛ける。

 

何太后もこれ以上余計な発言をしてボロを出すのを恐れ無言になる。

 

現状では何太后が皇帝陛下の母親であることから賈駆は主君である董卓の許可無しで強引な手法を取る訳には行かず

 

「また都合が悪くなると何時ものだんまりね……それが何時まで続くかしら、次会う時は董卓様の許可を貰って貴女を拷問に掛けるわ。それまで時間はあるから精々考えなさい」

 

賈駆は何太后に一方的に告げ部屋を出て行った。

 

「……今に見てなさい」

 

部屋に残された何太后は賈駆の言葉に対して慌てる様子は無く不敵な笑みを浮かべていたのであった。

 

「どうだった詠ちゃん…」

 

「また都合が悪くなると何時ものだんまりよ!月、何太后様の拷問を許可して!!」

 

賈駆は董卓の執務室に戻ると先程の何太后とのやり取りを説明して董卓に何太后への拷問の許可を求める。

 

「詠ちゃん、気持ちは分かるけどそれは許可できないよ。何進様の死の真相を知りたいのは分かるけど今の私たちは他にやることが沢山あるから…」

 

「……分かったわ、月。取りあえず今は間を開けるわ。当面は何太后への監視を強化して何か企てた場合は躊躇なく捕らえて拷問に掛けるわよ。それと…月、陛下や皇甫嵩将軍と盧植将軍らの協力は得れそう?」

 

「陛下について私たちが張譲様を殺めたことで陛下が『私たちが怖い』と言って会ってくれないの。取りあえずは側近の穆順様が私たちの命が狙われた事情を分かっているから陛下の気が落ち着いたら面会できるように取り計らうとは言っているけど…。それと皇甫嵩将軍と盧植将軍については陛下に害を及ぼさないという条件であれば私たちに協力してくれるって」

 

「そう…陛下と会えないのは不味いわね」

 

「うん…まずは何太后様を解放して陛下の心を和らげた方が…」

 

「それは駄目!今、解放したらあの女また何をしでかすか分からないわ!」

 

「でも他に方法がある?」

 

「……月、この件、ボクに任せてくれる?」

 

「いいけど……詠ちゃん無茶したら駄目よ」

 

「心配しなくていいわ。ちゃんと話し合いで解決するようにするから」

 

賈駆は董卓の心配を他所に問題解決に不敵な笑みを浮かべていた。

 

翌日、賈駆は劉弁の側近である穆順と対面する。

 

「さて…賈駆よ。そなた董卓の代理として来たらしいが劉弁様の気分は今だ優れぬ、陛下と対面はできぬ。そうそうに下がるがよい。それと陛下のご生母である何太后を何時まで監禁するつもりじゃ、陛下の気分が優れぬのもそれが原因かと思われるぞ」

 

「いいえ穆順様、私は陛下に面会を求めに来たのではありませぬ。我が主董卓は陛下と対面できないことで心労を発症してしまいこのままでは政務を務めることが出来ないとの意向で職を辞してこのまま元の領地に引き上げようと思います」

 

「それは気の毒な。まずは故郷に帰って体調を整えるのが宜しいかと。それでは賈駆、都から離れる時には何太后様も解放するのじゃな」

 

穆順は口では残念そうに言っているが表情は全く残念そうに見えなかった。賈駆は穆順の言葉を聞いて劉弁が何太后を解放する為の方便で面会を拒否していると確信した。賈駆は穆順の問いには答えず

 

「穆順様。今回の一件で我が軍の将軍たちが、十常侍たちが月…董卓の事を監禁しようとしたことにまだ根に持っています。先の件で関係していると疑わしい人物や更に董卓様を陥れようと陛下に讒言する者を血祭りに上げようと未だ息巻いているわ。今は董卓様の意志もあり何とかボクが止めているけど……陛下が仮病を使って我が主を虐めていると聞いたらボクにも止められないし、ボクたちが引き上げる時に何太后様もどうなるか保証できないわ…ではこれで」

 

賈駆からあからさまな脅しの言葉を聞いた穆順は顔色が変わる。

 

「ちょ…ちょっと待て賈駆!それはどういうことだ!?」

 

「いえ…これだけ私たちが朝廷に尽くしているにも関わらず、何もしてくれない陛下や朝廷に皆が失望してその不満が出ているので…」

 

「陛下が仮病で董卓を虐めているとは誤解じゃ!へ、陛下に身体の具合を聞いてくる、し…しばらく待て!!」

 

穆順は慌てて劉弁の元へ向かった。

 

「へ、陛下!!」

 

「どうした黄(この物語上の穆順の真名)。賈駆に母上を解放するように言ってきたか?」

 

「そ、それが…」

 

穆順が賈駆との会談を説明すると

 

「は…はったりじゃ。朕や母上に手を出す訳がない」

 

劉弁は声を震わせながら言うが

 

「陛下それはどうかと……今回の一件の黒幕に何太后様が関わっているという噂があります。十常侍を皆殺しにした董卓軍の事です。その怒りが何太后様に向けられる可能性が否定できません……」

 

劉弁は董卓を困らせて母である何太后の解放を引き出そうと考えていた。これについては何太后から頼まれた訳では無く劉弁自身の意図で行われていた。

 

しかし華雄ら董卓軍の将の怒りは今だ収まっておらず、もし董卓軍の怒りが自分に向くと考えたら劉弁はがっくりした表情をして椅子に座り込み

 

「……仕方ない。董卓と面会する」

 

力無く回答するのがやっとであった。

 

そして董卓軍の怒り機嫌を取ろうと思った劉弁は何と董卓に相国の地位を与えたのであった。

 

董卓が十常侍たちを殺害して相国に就任した情報は色んな形で各地に流れたが、これが大きな波紋を呼び、新たな戦乱を巻き起こす切っ掛けとなる。

一方、紫苑たちが孫呉との会談を無事に終え、孫権こと蓮華を連れて帰ってきていたが、一刀の元には洛陽の政変の情報は入っていなかった。

 

そんな中、一刀たちと蓮華がお茶会を開いていたが、一刀たちは蓮華のある悩みを聞いていた。(既に一刀たちと真名を交換済みです)

 

「もし貴方がシャオを選んで私に孫家に残れば、孫家のために何ができるかしら……」

 

姉である雪蓮と一刀の事について言い合いして勢い良く西涼に乗り込んできたが、いざこちらに来てから紫苑や璃々、それに馬姉妹と既に結ばれていることに気後れし始め、物事を悪い方に考え出した。

 

もし一刀が孫家の三人の中でシャオを選んだ場合、蓮華が孫家に残ることになるが現状の蓮華の立場はまだ政には口出しできない立場であり、もし雪蓮に何かあればという時のスペアみたいな存在でしかない状態だからだ。

 

シャオは幼いながら武勇があるので何れ一角の将になると見込まれているが、蓮華自身は武の才能は今一つだと自分でも分かっている。だからこそ知の方で孫家の役に立ちたいと思っているが活躍の場が与えられないことについて不満もあった。

 

「私は、子供の頃から皆から学問、兵法、礼法、そして武芸と色んな事を教えて貰ってきて自分の中ではもう大丈夫だと自負はしている積りよ。だけどお母様たちは未だに全てにおいて関わる事を許してもらえない!何故なの!!」

 

蓮華は一刀たちと話して行く内に、表情が険しくなっていく。孫呉の誰にも話しても相手にして貰えない悔しさを思い出したのか一刀たちに感情をぶつけてしまう。

 

一刀と紫苑が戻った世界では教師を行っていたので、生徒の進路への悩みや人生相談などよく聞いていた。まずは蓮華が落ち着くまで何も言わずに話を聞いていた。

 

蓮華が一通り語った後、紫苑が優しく声を掛ける。

 

「蓮華ちゃん、人には時期という物があるのよ」

 

「時期……?」

 

「ええ、人間の才能は早咲きの者も居れば遅咲きの者もいる。蓮華ちゃんは間違いなく後者よ。だからこそ炎蓮さんも蓮華ちゃんを大事に育てて時期を見ていると思うわ。もし蓮華ちゃんに才能が無ければ炎蓮さんの事、痺れを切らせてとっくに実戦教育と言って何かしらの現場に出して身体で覚えさせていると思うわ」

 

確かに蓮華の母親である炎蓮はお世辞にも我慢強い性格とは言えないので、紫苑の言う事にも一理あると少し納得したような表情を見せる。

 

「それに蓮華、君は炎蓮さんや雪蓮に変に劣等感を抱いていると思うよ」

 

「当たり前でしょう?一刀。母様は孫家の主、そしてお姉様もその後継者として立派な人間よ。当然孫家の血を引く私も当然母様や姉様のような人間でなければならないじゃない。それなのに私なんか……」

 

「ちょっと待った。蓮華、その前提が間違っていると思うよ」

 

「間違い?」

 

「ああ、炎蓮さんは炎蓮さんの良さがあるし、雪蓮は雪蓮の良さがある。そして蓮華にも蓮華の良さがある。だから蓮華は蓮華らしくする。これが一番だと思うよ」

 

「私が私らしく……」

 

「ああ、炎蓮さんや雪蓮とは違う。そうだな蓮華はシャオみたいに振舞ってもいいんじゃないかな」

 

「シャオみたいって…」

 

蓮華は自分がシャオの様に天真爛漫に振舞うことに疑問の声を上げる。

 

「でもシャオは幼いながらも自分を表現している点はあるよ。同じく事を何度も言うけど蓮華は炎蓮さんや雪蓮でもない。蓮華は、蓮華らしく生きることこれが大事だと思うよ」

 

「そうそう蓮華お姉ちゃん。何時も気を張り詰めていたら身体が持たないよ」

 

「私が私らしく生きるか……」

 

一刀と璃々の言葉を聞いて蓮華は頭の中で反芻する。

 

「……ありがとう。皆、今すぐにはできないけど、少し考え方を変えて見るわ。どうすれば自分を表現できるかを」

 

蓮華は力強く一刀たちに告げた。

 

そして蓮華の言葉から五日後、孫呉から急使がやって来た。

 

董卓が蜂起して十常侍を殺害、自ら相国に就任したという情報が飛び込んで来た。これにより一刀たちは新たな決断を迫られるのであった。

 


 
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