No.891236

九番目の熾天使・外伝 ~改~

竜神丸さん

βテスト(PDエグゼイド変身編)

2017-01-31 18:46:27 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1490   閲覧ユーザー数:886

ミッドチルダにて発生した未知の病原菌―――バグスターウイルス。

 

そのバグスターウイルスに感染したハルカが、バグスターユニオンとなって暴走。そんな彼女を助けようと奮闘するディアーリーズだったが、ウォーロックの力では彼女をバグスターから分離出来ず、苦戦を強いられる。

 

そんな時、ディアーリーズの前に謎の男が現れ、男は仮面ライダースニークに変身。ハルカをバグスターから分離させ、分離したバグスターを難なく撃破してみせた。

 

しかし、彼は戦いの中で、ディアーリーズのウォーロックドライバーを破壊。彼の体内にいたレグルスをブランクガシャットで吸収し、ディアーリーズの魔力を全て奪い去ってしまうのだった。

 

そして…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

OTAKU旅団アジト楽園(エデン)、医療室…

 

 

 

 

 

「―――ッ!!」

 

「お、やっと起きたか。ディア」

 

ベッドに寝かされていたディアーリーズは目覚めると共にガバッと起き上がり、ベッドの近くで椅子に座ったまま書類を書き上げている真っ最中のokakaが気付く。

 

「…okakaさん、ここは…」

 

楽園(エデン)の医療室だ。ハルカもお前の隣で眠ってるよ」

 

「! ハルカさ…」

 

ディアーリーズが振り向いた左側には、ベッドの上で今も眠りから目覚めないハルカの姿があった。しかし街でバグスターウイルスに感染していた時に比べて、今はだいぶ安らかな表情で眠っており、ディアーリーズはその寝顔を見て安堵する……が、ここでディアーリーズは重大な事に気付いた。

 

「!? ドライバーが…」

 

自身の腹部を見てみると、現在ズボンに巻いているベルトには手形のバックルが無かった。試しに普通の魔法を使おうと右手を宙にかざしてみると、何も起こらない。その事が今も信じられないディアーリーズは何度も試そうとするが、何度やっても結果は同じだった。

 

「…調べてみたところ、お前の体内からは魔力反応が完全に消失していた。恐らく、お前の体内にいたレグルスが奴のガシャットに吸収されたからだろうな。まさかレグルスをガシャットに吸収してしまうとは、流石の俺も予想が付かなかった」

 

「…どうして」

 

「?」

 

「…どうしてあの人は、僕の邪魔をしたんでしょうか…? 僕はただ、ハルカさんを助けたかっただけなのに…」

 

「…それについてなんだが。お前にもいくつか、知っておいて貰いたい事がある」

 

okakaは自身の懐からある物を取り出し、ベッドの上に乗せる。それはあの仮面ライダースニークに変身した男が使っていたのと同じ、ゲーマドライバーとライダーガシャットだった。

 

「!? どうしてokakaさんがこれを…」

 

「少し前に、ある仮面ライダーの世界で手に入れて来たゲーマドライバーとライダーガシャットだ。ガシャットの方はお前も見覚えがあるだろう? ミッドでもゲーム機として販売されているからな」

 

「ゲーム機が変身アイテム……じゃあ、今ミッド中で売られているゲームも…!?」

 

「いや、市販のガシャットには変身機能は付いていない。変身機能のあるガシャットは全て非売品だ……まぁ、今お前に知って貰いたいのはそこじゃない」

 

okakaはライダーガシャットを右手の人差し指でクルクル回しながら説明に入る。

 

「さっき俺が言った仮面ライダーの世界には、未知のウイルスが存在している。ハルカが感染したのがそれだ」

 

「ッ……教えて下さいokakaさん。ハルカの身に、一体何が起こったんですか?」

 

「ハルカが感染したのは、人体にも感染する未知のコンピューターウイルス……バグスターウイルスだ」

 

「バグスターウイルス……! それって、前にマスタードクターのテストをした時に言ってた…!」

 

「そう。バグスターウイルスは感染した人間の脳内に寄生し、宿主のストレスが溜まる事で活性化、感染した人間は高熱や寒気などに襲われる病気―――ゲーム病を患う事になる。このゲーム病は、現代医学じゃ治せない厄介な病気なんだ」

 

「ゲーム病……そうか。僕の魔法で彼女を治せなかったのは、ウイルス自体が普通じゃなかったから…!」

 

そのディアーリーズの言葉に、okakaは一瞬だけピクッと眉を反応させるが、ディアーリーズはその事に気付かない。

 

「…で、そのゲーム病を患ってしまった患者は、症状が悪化すると共に活性化したバグスターウイルスに肉体を取り込まれ、巨大な怪物となって暴走する。これがゲーム病の第1段階……バグスターユニオンだ。お前も既に見てるんじゃないか?」

 

「! あのランタンみたいな形をしたデカい怪物…!」

 

「そのバグスターユニオンは、普通の攻撃では患者を分離出来ない。お前の魔法が効かなかった理由の1つがそこにある」

 

「!? そんな、じゃあどうすれば…」

 

「そこで、これの出番だ」

 

okakaはライダーガシャットを回すのを止め、左手でゲーマドライバーを持ち上げる。

 

「ある世界には、このゲーマドライバーとライダーガシャットを使って、ゲーム病患者の治療をしている仮面ライダー達がいる。俺はそんな仮面ライダー達の事を、総称としてゲーマライダーと呼んでいる」

 

「ゲーマライダー…」

 

「ゲーマライダーにも、通常のゲーム同様にレベルが存在していてな。最初に変身する時、まずはレベル1の姿に変身するんだ」

 

「レベル1……もしかして、あの妙にゆるキャラっぽい姿をしたアレ…?」

 

「信じられないかも知れんが、あの姿にだって重要な役目があるんだぞ? 簡潔に言うなら、バグスターユニオンから患者を分離出来るのはレベル1の姿になったゲーマライダーだけだからな」

 

「!? そうなんですか!?」

 

「とはいえ、分離させてもまだ安心は出来ない。分離した後も、バグスターと患者は繋がったままだ。患者を助けるには、その分離したバグスターを確実に切除…つまり倒さなくちゃならない……訳だったんだが…」

 

「?」

 

「素直に言っておこう。たぶん分離した後も……お前じゃバグスターには到底、太刀打ちは出来なかっただろうよ」

 

「…どういう事ですかokakaさん」

 

これには流石のディアーリーズもokakaに睨みかかる。自分がバグスターユニオンを足止めしていた時の頑張りを全否定されたも同然の発言なのだから、ディアーリーズが納得出来ないのも無理は無い。しかし、そんなディアーリーズの睨む顔にもokakaは一切動じない。

 

「お前の魔法、あのバグスターの攻撃で簡単に掻き消されてただろう? その時点で何となく察する事は出来る」

 

「ッ…そんなの、やってみなくちゃ分からないじゃないですか! 倒す事は出来なくても、せめて足止めくらいなら…!!」

 

「やってみなくちゃ分からない、か……素人がよく言う台詞だな。根拠も何もありゃしない」

 

「何ですって!!」

 

苛立ったディアーリーズはokakaに掴みかかる……が、掴みかかった直後にokakaはディアーリーズの両腕を即座に掴み上げ、そのまま投げ飛ばして床に容赦なく叩きつける。

 

「が…っ…!!」

 

「やってみなくちゃ分からないという事は、やらなきゃ分からないくらい知識が足りていない証拠だ。プロの人間なら、やってみなきゃ分からないだなんて曖昧な発言はしない。何でお前じゃ無理か教えてやろうか……お前という存在が、ハルカ自身のストレスに深く関係しているからだ」

 

「ッ……ハルカの、ストレス…?」

 

「そうだ」

 

勢い良く叩きつけられた為か、打ちつけた背中を痛そうに擦りながら起き上がるディアーリーズに、okakaはハルカを指差しながら告げる。

 

「さっきも言ったろう? バグスターウイルスは患者のストレスによって活性化すると」

 

「それが、何だって言うんですか…ッ!」

 

「ウイルスの活性化も、患者のストレスの内容によって大きく変化する場合がある。ハルカの場合なら恐らく……自分の大切な人達と、永遠に引き離される事」

 

「…?」

 

よく分からないと言ったディアーリーズの表情に、okakaは更に説明を加える。

 

「そこでバグスターは考えるのさ。どうすればハルカを、ハルカの大切な人達と永遠に引き離せるか? 答えは簡単だ。その大切な人達の手で救えないように設定してやれば良い。ゲームでもあるだろう? 敵の攻撃で主人公はダメージを受けても、主人公の攻撃は敵にダメージを与えられない事が」

 

「…ッ!? あのバグスター、まさか…」

 

「あのバグスターはゲームで言う無敵判定を弄って、お前の攻撃によるダメージだけを受けつけないように設定してたんだ。ここがゲーム病の厄介なところなんだ。特定の人物では倒せないなど、厄介なクリア条件が付いて来る事例もあるからな」

 

「…じゃあ、僕の力じゃ…」

 

「そう、あのファントマバグスターとの戦いにおいては……ディアーリーズ、お前に出来る事なんて何も無かったという訳だ」

 

「ッ!!」

 

ディアーリーズは言葉が出なかった。自分の頑張りが全て無駄だったのではないか。そんな思想に至り、ショックを受けたような表情のまま彼は身動きが取れなかった……そして、とある考えに至った。

 

「…だからこそ、ゲーマライダーという存在がいるんだ。ゲーム病患者をまともに治療出来るのはゲーマライダーだけだ。こればっかりはどうしようもない」

 

「…そのゲーマライダー」

 

「ん?」

 

「…そのゲーマライダー、僕もなる事は―――」

 

「無理だな」

 

okakaはハッキリ断言し、ディアーリーズの淡い希望を瞬時に打ち砕く。

 

「ゲーマライダーだって、誰でも変身出来る訳じゃないんだ。変身するにはまず、体内にバグスターウイルスを投与して抗体を作る為の適合手術を受ける必要がある」

 

「じゃあ、僕にもその手術を…」

 

「お前のその身体、並のウイルスなら簡単に死滅させられるんだろう? ウイルスを投与したところで、お前のその身体が抗体を作る前にウイルスを死滅させてしまう」

 

「う…」

 

「仮に適合手術が可能だったとしても……お前、医療知識なんて無いだろう?」

 

「うぐ…」

 

「ゲーマライダーだって立派な医者なんだ。バグスターとの戦闘あって、どちらかと言うと医療行為と称した方が正確だからな。お前が普段使っている魔法じゃなく、ちゃんとした現代の医療知識が無いんじゃゲーマドライバーもライダーガシャットも渡せない。これについては団長だって承認済みだ。手術室において一番邪魔なのは、碌に医療知識も持たない素人だからな。前にマスタードクターのテストでお前を落としたのもそれらが理由だ」

 

「ッ…!」

 

「その医療知識だって、1年や2年程度の時間で身につくような物じゃない。この旅団でちゃんとした医療知識を持ってるのは、俺以外じゃ竜神丸とイーリスくらいだ。その二人だって過去に猛勉強したからこそ、今のTウイルスの研究が出来てるんだからな。それくらいお前だって分かるだろう?」

 

「…けど、僕にも何か出来る事だって―――」

 

-バキィッ!!-

 

「―――ッ!?」

 

「…まだ分かってないようだから教えてやる」

 

殴り倒されたディアーリーズを、椅子から立ち上がったokakaが見下ろしながら言い放つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やってみなきゃ分からない、自分にも何か出来る筈だ……お前がそういう甘い考えを持つ所為で、お前にとって大切な人の命が危うく奪われてしまうところだったんだ!! もし救えなかったらどうする? お前に責任なんて取れんのか? そういった事を理解した上で物を語りやがれ、にわか知識のアマチュア野郎がぁっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――……ッ…!!?」

 

ディアーリーズは何も言い返せなかった。実際その通りだからだ。現にハルカを救ったのもスニークであって、自分ではないのだから。床から起き上がろうとしていたディアーリーズは、衝撃を受けたように再び床に倒れ、その状態のまま全く動く事が出来なかった。

 

「…話は終わりだ。これでもう分かっただろう? バグスターの件においては、お前に出来る事なんて何一つ無い事がな」

 

okakaはゲーマドライバーとライダーガシャットを懐にしまい、倒れたままのディアーリーズを放置して医療室を出て行く。すると医療室の前で待機していた橘花が、医療室を後にしようとするokakaの後ろを付いて行く。そして医療室からある程度離れたところで、橘花が口を開いた。

 

「一城様、本当に良かったんですか?」

 

「何がだ」

 

例のドライバー(・・・・・・・)の事……ディアーリーズ様にお話しなくて」

 

「今のアイツには到底渡せんよ。少なくとも、自分の力量をきちんと理解しない限りな……それよりも今は」

 

okakaは服のポケットから、1枚の写真を取り出す。

 

 

 

 

 

 

「もう一度接触する必要がある。仮面ライダースニークとな」

 

 

 

 

 

 

その写真には、仮面ライダースニークに変身したあの男の横顔が写っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ、コイツは確かに見覚えがあるね」

 

「! 本当か」

 

ミッドチルダ首都クラナガン、その路地裏に存在する酒場『ダンテ』。その酒場の店主である男性―――フェルナンド・マッキから、okakaはスニークに変身する男の情報を入手していた。

 

「ドクター・ミザキ……本名は刻秋水(きざみしゅうすい)。このクラナガンの中心街に位置するオプティマ医療院に勤務していた超一流の外科医。名前を聞けば分かるとは思うが、出身地は地球だ」

 

「…なるほどねぇ」

 

okakaは周囲に客がいないのを確認し、フェルナンドに問いかける。

 

「勤務していた……って過去形で説明するという事は、何かあったんだな?」

 

「…この男、6年前に失踪してるんだ」

 

「失踪?」

 

「あぁ。同じ病院の関係者も彼を探し回ったが、誰も彼を見つけられなかった。結果、この男は死亡者として扱われる事となったのさ」

 

「6年前、か…」

 

「ついでに言うと、そいつが行方不明になってから約1年後に、その病院の関係者がまた一人失踪した」

 

「…そいつの名は?」

 

okakaの問いに、フェルナンドは一枚の写真を取り出した。写真に写っているのは眼鏡をかけた白衣の男性。

 

「ペイブ・ホーク。その刻秋水とは付き合いが古く、仲も良かったらしい」

 

「ペイブ・ホーク……こいつの失踪にも、この刻秋水という男が深く関係しているのか…?」

 

「そのペイブ・ホークが失踪した後だったかな……とある闇医者が、この裏の業界で名前を知られるようになったのは。その闇医者の名前こそが…」

 

「ドクター・ミザキ……刻秋水か」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フェルナンドによると、目撃情報が特に多いのはこの辺りだったか」

 

その後、フェルナンドから提供された刻秋水の目撃情報を参考に、okakaは再びクラナガン周辺の荒廃した都市区画を訪れていた。曰く、整地がされておらず人もいないこの地域は犯罪者達がよく隠れ家にする事が多く、管理局の目を欺くのには意外と便利なんだとか。

 

(灯台下暗しって奴か。海の連中もいい加減、他所の世界よりも自分の世界の治安を何とかするのを優先すべきだろうに。陸の連中の苦労が窺えるぜ……っと)

 

そうこう考えている内に、okakaはとある廃病院の前を通りかかり、そこで一度立ち止まった。一見すると特に何も無さそうに思える廃病院だが、okakaは見破っていた。

 

「間違いない、ここだな……トラップだらけで分かりやすいぜ」

 

okakaの目には、廃病院内のあちこちに仕掛けられているトラップが見え見えだった。ここに探している人物がいる事を確信したokakaは、敢えて堂々と廃病院に入って行く。

 

「…んん?」

 

しかし、廃病院に入ったokakaは違和感を感じ取った。先程から堂々と廃病院内を闊歩しているのに、彼が位置を把握しているトラップは何一つ作動していない。余所者が無断で侵入し、敢えてトラップの上を歩いているにも関わらずだ。

 

(おかしい、向こうは何故トラップを作動させない…?)

 

そんな疑問を抱きながら、okakaが階段で2階まで上がった時だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「診察希望か?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!」

 

2階の廊下を歩いていたokakaの前に、白衣を着たサングラスの男が姿を現した。長身で、かつ白髪の混じった黒髪などの特徴から、okakaは自身の前に現れた男が刻秋水である事を確信し、秋水も自身の前にいる人物が見覚えのある人物である事に気付いた。

 

「お前は…!」

 

「また会えて何よりだ、仮面ライダースニーク」

 

「…チッ」

 

okakaは笑みを浮かべながら告げるのに対し、秋水は嫌そうな表情を浮かべながら小さく舌打ちする。

 

「…何しに来た」

 

「ちと、お前さんに用があってな」

 

「俺はお前に用が無い。さっさと帰れ」

 

「そう釣れない事を言わずにさ。少しくらい良いだろ?」

 

「診察希望じゃない奴と世間話をしていられるほど、こっちは暇じゃないんでな」

 

「なら手伝おうか? 俺も医療知識ならあるぞ」

 

「断る。部外者の手は借りない主義なんだよ」

 

「強情だねぇ…」

 

秋水もokakaも互いに視線を反らさず、一触即発な空気となる。そんな時…

 

-ガシャアンッ!!-

 

「ふざけんじゃねぇぞテメェ!!」

 

「「!」」

 

窓ガラスが割れる音と共に、近くの医療室から黒スーツを着たマフィアのような風貌の男性が怒りの形相で飛び出て来た。

 

「誰だ?」

 

「俺の患者だ……たく、またこのパターンか」

 

「テメェ、何だこの手術代は!! こんな大金払える訳ねぇだろうが、ふざけるのも大概にしとけ!!」

 

「おいおい。どうせ他所から盗んだ金があんだろ? それ払えば良いじゃねぇか」

 

「冗談じゃねぇぞ!! 他に頼れる医者がいねぇからここに来てやったってのに、こんなんなら最初からここに来るんじゃなかったぜ!! 帰らせて貰うからな!!」

 

そう言って、マフィア風の男性が怒って帰ろうとするも…

 

「逃がすかよ」

 

-ポチッ-

 

「あ? な、ちょ…ぬぉわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

「…!?」

 

秋水がポケットから取り出した謎のスイッチを押した瞬間、突然床下から飛び出して来たアームがマフィア風の男性の右足を掴み、男性を転倒させる。そのまま何処からか伸びて来たロープにグルグル巻きにされ、マフィア風の男性は瞬く間に宙吊りの蓑虫状態になってしまった。

 

「…えぇ~…」

 

okakaが引き攣った笑みを浮かべる中、秋水は蓑虫状態となっているマフィア風の男性の前でしゃがみ込み、その頭をガシッと掴む。

 

「テ、テメェ…ッ…!?」

 

「俺が治療すると決めた以上、お前はもう俺の患者だ。どうしても金を払いたくないなら、治療が終わった後にでも逃げ出せば良い話だろうが……最も、この程度のトラップにも気付けないんじゃ、この俺から逃げられるかどうかも疑問だがなぁ」

 

「ほが!? ぁ、が…」

 

首元に麻酔をプスリと打たれ、マフィア風の男性はガクッと意識を失う。その一部始終を見ていたokakaはようやく理解した。

 

「なるほどなぁ。あちこちトラップだらけなのは侵入者を捕まえる為じゃなく、逃げ出した患者を捕まえて連れ戻す為だったって事か。道理で俺には反応しない訳だ」

 

「どうせそこんじょらで悪事を働いてる次元犯罪者なんだ。法外な手術代を毟り取ったって良いだろう?」

 

「! そいつ、やっぱ犯罪者なのか…?」

 

「そこらの病院から見捨てられた奴は大体ここに来るが、基本的には犯罪者ばかりだ。そいつ等から金を取ってるおかげで、こっちは問題なく生計を立てられる上に、医療器具も最先端の物を揃えられる」

 

「なるほどねぇ……お前さんが持ってるドライバーとガシャットも、それで買い揃えたのか?」

 

マフィア風の男性を降ろそうとしていた秋水の動きがピタッと止まる。

 

「…お前、何故ガシャットという名前を知っている」

 

「お前と同じ力を俺も持っている……と言ったらどうする?」

 

「! まさか、お前も…?」

 

「先生!!」

 

二人が話をしている途中で、ボロボロの服を身に纏った赤髪の少女が別の部屋から飛び出して来た。

 

「! お前か、どうした?」

 

「大変なの!! お母さんの熱がまた上がって…!!」

 

「!!」

 

それを聞いた秋水はすぐさま部屋へと向かい、気になったokakaもそれに続くように部屋に入る。部屋の中央の診察台には、布団をかけた状態で苦しそうに魘されている女性の姿があった。恐らく赤髪の少女の母親だろう。

 

「はぁ、はぁ…!!」

 

「お母さん、しっかりして!! お母さん!!」

 

「チッ……ウイルスが活性化してやがるな…!!」

 

「! まさか、この人も…」

 

「あぁ。ゲーム病だ」

 

どうやらこの母親も、バグスターウイルスに感染してしまっているようだ。ここでokakaは疑問を抱く。

 

(妙だな……つい最近まで、このミッドチルダでバグスターウイルスの反応が出る事なんて無かった筈なのに、何で今になって活性化を…?)

 

「はぁ…はぁ……ナナ、リー…!」

 

「! お母さん!?」

 

今にも死にそうなくらい苦しんでいる母親に名前を呼ばれ、赤髪の少女ナナリーが反応する。

 

「ぜぇ、ぜぇ……私の、身に…もしもの事が、あったら……あなただけでも、はぁ…生きるのよ……はぁ…!」

 

「嫌だよお母さん!! 私、お母さんと一緒に生きられないなんて嫌だ!!」

 

「ナナリ…ッ!? あ、ぁぐ…!!」

 

突如、ナナリーの母親は大きな頭痛に襲われ始めた。その様子を見た秋水がナナリーを引き離す。

 

「お母さん、どうしたの!? お母さん!!」

 

「待て、離れろ!!」

 

「ッ……マズい、発症したのか…!!」

 

「ぅ…あぁぁぁぁぁぁぁァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアッ!!!??」

 

okakaの予想通り、ナナリーの母親は悲痛な叫び声を共に全身がバグスターウイルスに飲み込まれていき、そのまま窓ガラスを突き破る形で外へ飛び出していく。そしてナナリーの母親を取り込んだバグスターウイルスは形状を変化させ、巨大な戦車の姿となって咆哮を上げ始めた。

 

『ギャオォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!』

 

「ッ……今日は窓がよく割られる日だな…!!」

 

秋水は懐から取り出したゲーマドライバーを腰に装着し、割れた窓から外へ飛び出す。それに続いて飛び出そうとしたokakaの袖をナナリーが掴む。ナナリーは今にも泣きそうな顔だ。

 

「お母さんは!? お母さんに何が起きてるの…!?」

 

「…安心しな。俺とあの先生が、必ず助け出してやる」

 

それだけ告げてから、okakaも同じように窓から外へ飛び出す。廃病院の外では、巨大な戦車の姿をしたバグスターユニオンがキャタピラを動かしながらあちこちに砲撃を放っており、秋水は厄介そうに呟きながらライダーガシャットを起動する。

 

「チッ…ここで暴れられちゃ迷惑なんだが、止むを得んか…!」

 

≪ステルスミッション!≫

 

周囲に複数のコンテナが配置される中、秋水は首を軽く捻った後、ライダーガシャットを半回転させてゲーマドライバーに装填。

 

「変身」

 

≪ガシャット! レッツゲーム! メッチャゲーム! ムッチャゲーム! ワッチャネーム? アイム・ア・カメンライダー!≫

 

「ゲームエリア、選択」

 

出現した複数のパネルの内、一枚のパネルを左手で殴りつけ、秋水は仮面ライダースニーク・ミッションゲーマーレベル1への変身が完了。すぐさま左腰のスロットホルダーに付いているボタンを押す。すると周囲の背景が一瞬にして変化し、荒廃都市区画から何処かの海岸に転移する。場所が変化してもなお、バグスターユニオンは周囲への砲撃をやめようとしない。

 

『ギャオォォォォォォォォォォォンッ!!!』

 

「さて、こいつの相手は流石に骨が折れそうだな…」

 

「なら助太刀するぜ」

 

「!」

 

そんなスニークの隣にokakaが並び立つ。

 

「お前……さっきも言っただろう? 俺は―――」

 

「部外者の手は借りない。それは医療知識の無い奴がいると邪魔だから……だろう? それなら、お前と同じゲーマライダーの力を持った奴なら文句は無い筈だ」

 

「……」

 

「ゲーム病患者を救いたいのは俺だって同じ……ここは一つ、協力し合おうじゃないか。話はそれからだ」

 

「…全く」

 

スニークは小さく溜め息をついてから、改めてバグスターユニオンと向き合う。

 

「…精々、俺の足を引っ張らないようにする事だな」

 

「その台詞、そっくりそのまま返すぜ……PD!」

 

≪よし来た、任せたまえ!≫

 

「!?」

 

突然聞こえてきたPDの声にスニークが驚く一方で、okakaはプロトディケイドライバーを腰に装着し、ライドブッカーから飛び出した一枚のライダーカードを右手でキャッチし、プロトディケイドライバーに装填する。

 

「変身!」

 

≪カメンライド・エグゼイド!≫

 

okakaの周囲にも複数のパネルが出現し、okakaはその内の一枚を右手で触れる。するとokakaの姿も同じように変化していき……ピンク髪が逆立ったような形状をした頭部が特徴の戦士―――仮面ライダーPDエグゼイド・アクションゲーマーレベル1への変身が完了された。

 

「お前、その姿は…!?」

 

「俺は仮面ライダープロトディケイド……今はエグゼイド・アクションゲーマーレベル1だ。これでお前も文句はあるまい?」

 

『ギャオォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!』

 

そんな中、バグスターユニオンが砲撃を放ちながら二人に迫り来る。スニークとPDエグゼイドは二頭身というなかなかシュールな姿のまま、それぞれのガシャコンウェポンを装備して迎え撃つ。

 

「これより、手術(オペ)を遂行する…!」

 

「ノーコンテニューで、クリアしてやるよ…!」

 

そして二人は、同時にバグスターユニオンへと飛びかかるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その様子を、遠くから双眼鏡で眺めている人物が約1名…

 

 

 

 

 

 

「特衛隊以外のゲーマライダーが2人か……これは僕も、調査に動いた方が良さそうかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

See you next game…

 


 
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