No.870451

真・恋姫†無双 〜穢刀の幻想~ 壱

hirowiさん

こんにちはhirowiです。
初投稿作品ですのでお手柔らかにお願いします。
一刀は性格をちょっとだけ悪にしようと思っています。

それでも良ければ、よろしくお願いします。

2016-09-22 01:38:09 投稿 / 全12ページ    総閲覧数:2353   閲覧ユーザー数:1933

 

○○○はしがき○○○

 

この作品は北郷一刀が【三国志の外史】を統一しようとする物語です。

 

読みにくい文章になるかも知れませんが、よろしくお願いします。

 

 

太古より天は凄い物だと言われているが、神でない人間には余り共感出来ないだろう。

 

だが、その手で剣を握れば天下を我が物に出来るかも知れない。

 

歴史には無類の人間が存在する。

 

しかし……歴史の中で語り継がれて来た人物は、本当に名を遺す程の英雄なのか?

 

悪党と言われて来た者は本当に悪党なのか?

 

善玉と言われて来た者は本当に善玉なのか?

 

歴史は善と悪だけで割り切れるものではない。英雄とは尋常の物差しで計れないのだ。

 

国を主導してきたのは常に「武」であり剣であった。

 

常識や理想や論理は後回し。剣こそが全ての権力を握り、国の現実と運命を決定して来た。

 

権力に忍び寄るのは剣を使う者だけではない。

 

ありとあらゆる人々が権力に近づいた。

 

権力が持つ煌びやかな魔力が人々を魅きつけたのである。

 

しかし、権力は両刃の剣だ。人を活かしもするし殺しもする。巨大で怪しい力なのだ。

 

しかも、その権力者が剣の使い方を知らないで、宮中で宦官や王妃の一族が陰謀を謀れば権力はどうなるのか?

 

正しい人が陥れられ、真面目な人が獄に繋がれればどうなるか!

 

官位が金で売買され、盗人や詐欺師が権力を補佐したり、実権を掌握すればどうなるか!

 

国が病む。怨嗟が国中を蔓延る。大乱世の予兆だ。

 

 

 

時は二世紀も末の頃、歴史はこの地に一人の男を顕現させた。

 

その男は長髪の茶髪を靡かせ、二本の刀を腰に差し、顔に真一文字の傷をつけている。

 

無双の秘めた血が織成す物語が今、始まるのである……。

 

 

 

 

~~~~~とある場所~~~~~

 

ここ数日、街に雨は降っていない。

 

だから、地面が濡れているのは女の血が降ったからなんだろう。

 

鉄錆のような臭いでいっぱいの路地を歩いていた。

 

また一つ、女が死ぬ音が聞こえる。

 

悲鳴、肉を裂く音、肺に穴が開いたような空呼吸音。

 

それがまた一つ……また一つ……。

 

何かが女を肉の塊に変えている。

 

だが、時には死体ではなく裸の女が転がっている事もある。

 

衣服が剥され、手足の骨を折られ、鼻からは血を流し、膣からは精液を垂れ流す。

 

そんな事がここではよく見られる光景だ……。

 

 

────だが───そんな非日常が──

 

────"ここ"では日常なのだ────

 

 

 

 

後漢≪東漢帝国代十二王朝≫

 

≪特別禁止区域≫

 

通称≪牢獄≫

 

 

 

 

峻厳な崖壁により周囲より隔絶された、国の底だ。

 

男「放せよっ! 俺はあの女を助けてやっただけだっ! その見返りに抱いただけだろうがっ!」

 

縛られている男が大声を出している。

 

男「あいつは売り飛ばされてたんだ。別にいいだろ?! 何とか言えよっ」

 

男が喚き散らす。その度に男に繋がった縄が左右に引っ張られる。元気なものだ。

 

捕まる前は恐怖で震えていたくせに、拘束した途端に騒ぎ始める。

 

一刀「娼館の文句は娼館に言え。俺は”取引”によってお前を捕まえただけだ」

 

そう言うと、一刀は自身の後ろにある娼館の扉を開けた。

 

すると、机で帳面を捲っていた李傕が手を止め、目を上げた。

 

李傕「これは一刀さん、お疲れさまです。もうお済で?」

 

一刀「あぁ、こいつで間違いないか?」

 

一刀は捕まえた男を李傕の前に放りだす。

 

すると李傕が、触れれば切れそうな視線で男を眺め回す。

 

李傕「こいつです、間違いありません」

 

一刀「そうか」

 

男を李傕に引き渡す。これで取引完了だ。

 

男「お、俺をどうするつもりだ」

 

李傕「…………」

 

怯えて訊ねた男を、李傕は視線だけで黙らせた。そして一刀に向き直る。

 

李傕「いつも、つまらない仕事をお願いしてすみません。貴方以外では、こういう取引はなかなかこうはいきませんので」

 

一刀「無駄話はやめろ」

 

李傕「………失礼……おい、誰か!」

 

すぐさま、娼館の奥から下っ端が出て来る。

 

下っ端「へい」

 

李傕「一刀さんがお仕事からお戻りだ」

 

下っ端「へ、へぇ、それが…………」

 

下っ端は話が掴めてないのか、曖昧な解答を口にする。

 

李傕「このクソが! 酒くらい持ってこいって言ってんだ、馬鹿野郎っ!!!」

 

李傕が投げた酒瓶が下っ端の顔に当たる。ぱっと鮮血が散った。

 

一刀「構うな。どうせこれから呑みに行くつもりだ」

 

李傕「……そういうことでしたら、ここで呑むのはもったいないですね」

 

顔を押さえて呻いている下っ端を尻目に、あっさりと言う李傕。

 

一刀「これで薬でも買え」

 

下っ端の前に、銭数枚を放った。

 

李傕「ほう……羽振りがいいようで……せっかくですし、一刀さんも遊んでいったらどうです?」

 

李傕は陰惨な笑みを浮かべる。

 

男「お、お前ら、あの娘は俺が助けたんだ。何かしたらっ!?」

 

黙って縛られていた男が、弾かれた様に口を開いた。

 

──ドスッ──

 

李傕が男を殴った。一撃で床を転がる。

 

──ドスッ──ドスッ──ゲシッ───

 

その男の顔へ、容赦なく李傕の足が降る。

 

男「ぐっ………ごほっ………」

 

泡だった血と共に折れた歯を吐き出す。赤い液体の中で、その白さが妙に冴えていた。

 

男「こんな事をして………衛兵が黙っているわけが………」

 

床に伏せながら赤く染まった口を開く。

 

李傕「あぁ……黙っちゃいないな。お前の財布を抜いて、俺と山分けの相談をするだろうよ」

 

男「そ、そんな…………」

 

ここ"牢獄"じゃ当たり前の事だ。

 

李傕「なんだぁ? 後漢の刑務所、牢獄は初めてか?」

 

男が頷く。

 

李傕「女を抱きたい為に糞の掃き溜めに来るなんざ、律儀なもんだ」

 

そう、男に吐き捨てる。

 

そんなやり取りを見て、一刀は出口へ足を向ける。

 

一刀「俺は行くぞ」

 

李傕「はい、また取引の方、よろしくお願いします」

 

一刀「あぁ」

 

李傕の声を背に娼館を後にする。

 

取引とはいえ、喉が渇いた。

 

 

 

 

 

一刀は娼館街の入り口近くにある酒場に足を運ぶ。

 

店主は孫乾。

 

かつて盗賊に捕まっているところを助け……以降、一刀の世話をしながら酒場の主になった。

 

一刀「…………?」

 

酒場に向かっていると、路地から出て来る人影に気が付いた。

 

一刀「胡花」

 

胡花「あ、一刀さん」

 

小走りに駆け寄って来る。

 

胡花「丁度、呼びに行くところでした」

 

一刀「俺に何の用だ?」

 

胡花「美花さんがお金をスられたらしいです」

 

一刀「掏摸(スリ)? いい歳してなにやってんだ……あの女……」

 

掏摸なんて牢獄には腐るほどいる。証拠も掴みにくく、面倒な事この上ない。

 

胡花「しかも、盗られたのが今月の上納金らしいのです」

 

一刀「なんだと?」

 

≪組織≫への上納金……という事はかなりの額になる。

 

そもそも上納金が未納では酒場は勿論、その店主もまずい。

 

一刀「ったく…………掏摸の特徴は?」

 

胡花「男の子です」

 

一刀「逃げた先の心当たりはあるのか?」

 

胡花「それが…………特区です………」

 

………特区だと?……………

 

胡花「先に≪組織≫の人が追って行ったので、どうなったかは……わかりません……」

 

一刀「わかった。後は任せろ。お前は帰れ」

 

胡花「え?……でも……」

 

一刀「いいから消えろ。ここに居ても足手まといの他、何ものでもない」

 

胡花「………わかりました…………」

 

そう言い、胡花は来た道を戻り始めた。

 

その目の下には必要とされないのが、悲しいのか涙を溜めていた。

 

 

 

 

 

一刀は特区を走る。

 

異臭が蔓延する裏通り、烏が肉片を食い散らかしたまま放置されている。

 

そんな事を思っていると……

 

組織の男「一刀さんっ、一刀さんっ」

 

男に呼び止められる。

 

見たことある≪組織≫の男だ。

 

組織の男「胡花に会われましたか?」

 

一刀「あぁ、会ったな。掏摸は見つかったのか?」

 

組織の男「いえ………一刀はさんはどうされるのですか?」

 

一刀「このまま、特区を探すさ」

 

組織の男「お気をつけて……まぁ、一刀さんでしたら大丈夫だと思いますが………」

 

一刀「まぁな」

 

組織の男と情報交換して別れる。

 

女性の声「─────っ!?」

 

異質な声が誰もいない通りを響かせた。

 

一刀「……こっちか……」

 

足音のテンポが早い………歩幅の小さな人間の音が聞こえる……。

 

少年の乱れた足音からは疲労が窺えた。

 

一刀に先回りされているとは、露ほどにおもっていないだろう。

 

少年は忙しげに背後を振り返ると、微かな安堵の表情を浮かべ、膝に手をついた。

 

一刀「ご苦労だな」

 

隠れていた横合いの路地から姿を現す。

 

少年「ひっ!?!?」

 

一刀「特区に逃げるってのは悪くない考えだ…………女から盗んだ金を出せ」

 

少年「金? 何の事だ?」

 

恍けた顔をしているが、その手は腰に伸びている。刃物でも隠しているのだろう。

 

この手の子供は半端な大人より質が悪い。寧ろ、子供であることを武器に殺し、金品・食料を奪っている奴もいるくらいだ。

 

かつて……一刀がそうだったように……。

 

一刀「腰もものなら、後ろに落としたぞ」

 

少年「えっ?」

 

少年が表情を変えたその一瞬、

 

──ドスッ──

 

少年「ぎゃっ」

 

横っ面を蹴り飛ばす。うつ伏せに倒れた少年の腰から、小さな刀を取り上げる。

 

少年「く………クソ野郎が」

 

一刀「………チッ………」

 

一刀は少年の髪を掴み上げ、無理矢理に顔を起こした。

 

一刀「もう一度だけ、言おうか? 盗んだ金を出せ」

 

少年「何のこt…………ぐっ」

 

──ドカッ────ドスッ──

 

言い終わる前に、ガキの頭を地面に叩きつけた。

 

少年「お、俺が盗ったんだ………手前なんかにやるかよっ! クソ野郎が」

 

飛ばしてきた唾をかわす。

 

──ドカッ────ドスッ────ドスッ──

 

もう数回、顔を地面に叩きつけると、口と鼻から流血し始めた……。

 

一刀「ガキのくせに中々、気が強いじゃねえか………だか、よく聞けクソガキ。お前が盗んだ金、あれは≪組織≫への上納金だ」

 

少年「……え? え? そんな………」

 

ようやく事態が飲み込めたのだろう……少年の身体が震えだす。

 

一刀「金はどこだ?」

 

少年「は、はいっ、はいっ。懐に入ってます」

 

懐を探ると、ずしっと重い革袋が出てきた。

 

少年「何でも………何でも、しますから………助けてくださいっ!」

 

少年は懇願しながら俺に手を伸ばす。

 

血と涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら、少年は一刀に泣きつく。

 

一刀「さぁな」

 

少年「うっ………ぐすっ………これから、ボク、どうなるんですか?」

 

一刀「お前の命なんかに興味はない」

 

少年「じゃ、じゃあ…」

 

少年は一刀の言葉に聞き、至福の笑みを浮かべるが……

 

一刀「だが………盗んだツケは払ってもらう」

 

──ドカッ────ザシュッ────ポトッ─────

 

────スュルルウゥゥゥゥゥゥゥ────

 

一刀は少年の耳を削ぎ落とす。

 

≪組織≫の上納金に手を出すとどういう事になるか、解ってもらわないとな……

 

少年「ぎゃあああああああああああああああああああああ」

 

先程まで怯えていた少年は急に音量あげて叫び出す。

 

少年「いだい、いだい、痛い、ひっ、ひぁあ、いだい、遺体、いdい────」

 

一刀「俺でなく組織の制裁なら、ガキは腕一本程度は覚悟しなければならないところだ。運が良かったなクソガキ」

 

少年「…う……………あ、はい……………」

 

………さすが、特区まで逃げ込んでくるだけの事はある。痛みで悲鳴を上げるのは別に、耳を削がれてもなお、気絶せずに受け答えが出来るとは………

 

一刀「失せろ」

 

流血のひどい耳を抑えながらよろよろと壁を軸に立ち上がる少年。

 

俺に正対したまま、一歩二歩と後ずらりする。そして一刀を睨み付けた跡、歩幅の小さな足で暗闇に消えて行った。

 

一刀「さて、帰るか」

 

日が当たる所まで来たら、既に太陽は赤く染まり夕方だった。

 

夕暮れに染まる裏路地を抜ける。

 

そして、美花のいる酒場へ足を運ぶ。

 

 

酒場の前に辿り着くと、木製の扉を開ける。酒精のむっとした匂いと共に、喧噪が流れて出してきた。

 

美花「いらっしゃいませ」

 

店内の椅子に腰を下ろすと、美花が愛嬌のある笑顔で寄って来た。

 

他の客は雇いの女に任せ、こちら専属の態勢だ。

 

美花「お疲れさまです、一刀様。ご迷惑をお掛けして、申し訳ありませんでした」

 

一刀「なに、思ったより楽に終わった」

 

美花「なら良かったです。助かりました」

 

一刀は差し出された酒を遠慮なく呷る。身体の中を火酒の熱い感覚が落ちていく。

 

一刀「味が変わったか?」

 

美花「お分りですか? 最近、質の良いのが仕入れられなくなってしまいまして……」

 

一刀「なるほどな……」

 

──ガチャ──

 

少年から取り返した革袋を机の上に置く。

 

一刀「これで合ってるか?」

 

美花「はい、ありがとうございます。今月納めるお金、全部入っていましたので」

 

一刀「これで仕事は終わりだな。美花、酒をくr……」

 

 

〈♪チリンチリン♪〉

 

 

入り口に付いていた鈴が鳴り、扉が開いた。喧噪が瞬時に静まる。

 

入ってきたのは李儒。

 

≪牢獄≫で最大の力を持つ≪組織≫の頭だ。

 

店にいた組織の人間はおろか、一般の客までもが目礼で敬意を表す。

 

李儒「続けてくれ」

 

止まったような時が動き出したかのように、店内に熱気が戻った。

 

一刀「よう」

 

李儒「今日は大変だったな」

 

一刀「問題ない」

 

軽く頷いて、李儒は一刀の右隣に座る。

 

一刀「娼婦を強姦した男はどうなった?」

 

李儒「ん? 死んだが。何か聞きたい事でもあったのか?」

 

一刀「いや、別に無い」

 

李儒「つまらない奴だったな。指も2、3本で音を上げやがった。掃除する部下の方の身にもなってほしいものだな」

 

一刀「災難だったな」

 

李儒「美花もしっかりしろ。金をすられるようなタマじゃないだろ」

 

美花「はい。今後気を付けます」

 

美花がおどけた仕草でお辞儀する。

 

美花「李儒さんはいつものでいいんですか? 一刀様はおかわりですか?」

 

一刀達が目で頷くと、美花は酒の用意を始める。

 

李儒「これは強姦男の報酬だ」

 

そう言って、李儒は机の上に金の入った紙包を置いた。

 

一刀「これで取引完了だな」

 

紙包を懐に収める。中身は確認しなくてもいい。李儒が報酬の多寡で一刀を失望させたことは無いからだ。

 

美花「はい、お待ちどおさま」

 

美花が一刀達の前に陶杯を二つ置いた。それぞれに杯を取る。

 

 

〈♪チリンチリン♪〉

 

 

美花「お疲れさま、胡花」

 

胡花「ん」

 

疲れた様な返事をして、胡花は当然の様に一刀の左隣に座った。

 

一刀「お前……あれからどうしてたんだ?」

 

胡花「娼館で女の子と話してました。薬物中毒みたいで、とにかく暴れて大変でした」

 

胡花が白い腕をカウンターに出す。そこかしこに赤い引っ掻き傷があった。

 

胡花「李儒、自分のシマの娼婦の躾くらい、ちゃんとしてほしいです」

 

李儒「すまんな」

 

 

 

〈♪チリンチリン♪〉

 

 

 

今日は酒場は盛況だな。

 

先程、一刀が強姦男を引き渡した李傕が酒場に入って来た。

 

李傕「李儒様、お楽しみのところすいません」

 

李儒「どうした?」

 

李傕「ちょっと、お耳を」

 

李儒の耳元で李傕は何事かを呟く。

 

李儒「…………わかった。一刀、少ししたら娼館まで来てくれ」

 

一刀「あぁ」

 

李儒が席を立ち硬貨を数十枚、机の上に置く。

 

李儒「みんなに景気をつけてやってくれ」

 

美花「わかりました」

 

李儒「行くぞ」

 

李傕「はい」

 

 

〈♪チリンチリン♪〉

 

 

二人が店を出て行く。

 

美花「さぁ、一刀様もこれを飲んで頑張ってください」

 

一刀「あぁ」

 

陶杯を一気に空ける。

 

一刀「行ってくる」

 

美花「お気をつけて」

 

胡花「いってらっしゃい」

 

二人の声を背に俺は店を出た。

 

 

 

〈♪チリンチリン♪〉

 

 

 

 

 

一刀は酒場を出た後、夜道を酔い覚ましのついでに歩き……目的地である娼館の2階に辿り着いた。

 

その部屋は豪華な椅子に壁には絵が飾られており、まさしく権力の部屋とでも言うべき場所である。

 

李儒「荷物の中抜きは御法度だ。関係した奴は全員殺せ。始末の仕方はお前に任せる」

 

李傕「はい、わかりました」

 

李傕は慇懃に頭を下げてから、こちらを見た。

 

李傕「これは一刀さん」

 

一刀「邪魔するぞ」

 

李傕「では、私はこれで」

 

一刀に軽く目礼すると、部屋を出て行った。

 

一刀「誰か抜いたのか?」

 

李儒「あぁ、どうも自殺志願者が多くて困る。ばれないとでも思ってんのかね」

 

目で着席を促され、一刀は遠慮なく腰を下ろす。

 

李儒「で、早速だが、頼みたいことがある」

 

目で先を促す。

 

李儒「今夜、ここに来るはずの馬車がまだ到着していない。様子を見てきてほしいんだ」

 

一刀「部下が腐るほどいるだろう。なぜ俺に頼む」

 

李儒「積み荷だよ。娼婦にする女たちなんだが、ほとんどは貴族達や都で調達した」

 

一刀「ほう」

 

都で買われた女は娼婦として人気がある。相当稼げるだろう。

 

李儒「御得意筋の注文でね。金もずいぶん使ったし危ない橋も渡った。だから、今夜の取引は一部の人間にしか知らせていない」

 

言葉を切った李儒が、酒を飲み干す。

 

李儒「単純な事故ならいいが……都の≪宦官≫が絡んでいると面倒だ」

 

一刀「あいつら宦官は、娼婦の横取りまでやってるのか?」

 

李儒「≪組織≫の邪魔になる事なら、なんでもだ」

 

一刀「なるほどね……未来への布石ってわけか」

 

李儒「だから、お前に頼む」

 

奴等が絡んでいるとすれば面白い。

 

一刀「わかった。馬車が通る道筋を教えてくれ」

 

李儒「助かる」

 

李儒が机の引き出しから地図を取り出す。

 

李儒「いつもすまんな」

 

一刀「いや………俺は行くぞ」

 

李儒「あぁ……兄弟」

 

一刀は娼館の李儒の部屋を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

王族、貴族、農民の誰もが眉をひそめる牢獄。ここから先は牢獄の最奥……≪特区≫

 

殺しは勿論……強盗、強姦など何が起こっても全く不思議ではない。

 

一刀「………懐かしい…………」

 

空気の淀みと悪臭に閉口しつつ、李儒に教えられた経路を辿っていく。通行人は居ない。

 

だが、路地の暗がりや窓の隙間からは、猛禽類のような視線が投げかけらている。

 

一刀や荒い仕事に慣れていないのならば、気づかないかもしれない。

 

久しぶりに味わう肌がピリピリするような感覚に、ふと昔を思い出す。

 

……生きる為に……毎日のようにこんな路地を歩いた。

 

……食料を持っている人間を見つける為、溝の中に二昼夜ほどいたこともある。

 

……体中を得体の知れない蟲が這い回っても、ひたすら得物を探し続けた。

 

 

 

と、昔に思い出に浸ってる時───

 

 

 

僅かにだが、湿り気を帯びた打撃音がした。

 

人間が殴打される音──

 

というよりは、馬車に踏みつぶされた時の音に近い。

 

一刀「……こっちか?」

 

一刀は音のする方へ足を運ぶ。

 

幾分か走ると、そこには荷台が赤く染まった馬車が転がっていた……。

 

馬が弓傷を負っているが、生命に異常はない。だが、荷台に乗っている女たち……そして護衛の男も殺されている……。

 

一刀「………………………」

 

明らかにおかしい………なぜならば、死体の血液が凝固し終えていたのだから………。

 

これは今、さっき殺されたのでは無いことくらい、ガキにでもわかる……。

 

牢獄に運ばれる前に馬車の搭乗者は殺され、わざとここへ、運ばれて来た?

 

一刀「……………まったく……………李儒になんて報告するか……………」

 

取り敢えず、一刀は手掛かりがないかと死体を漁り、李儒のいる娼館へ向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

娼館の2階に行くと李儒は外出していたので、一刀は四半刻ほど酒を飲みながら待っていた。

 

しばらくして、李儒が現れた。

 

李儒「さて、世間話は今は無しだ。状況を聞こう」

 

自室に入るなり、世話しなく焦っている。

 

一刀「あぁ」

 

一刀は事の顛末をざっと報告する。

 

目を閉じた李儒からは怒りが伝わって来た。

 

女たちと部下であった護衛の男が殺されているのだ、無理もない。

 

一刀「………状況はこんなところだ」

 

李儒「………」

 

李儒は口も目も開かない。だが、数秒の間を置き口を開く。

 

李儒「状況はわかった」

 

一刀「組織との繋がりを勘ぐられそうな物は回収しておいた」

 

李儒の部下であった護衛の男から取ってきた遺留品を渡す。

 

そこそこの誂えの刀が一振り。そして組織の紋章が掘られた小さなプレート。

 

李儒を慕う者は、これを肌身離さず持っている。

 

一刀「悪いが、死体までは俺一人じゃどうにもならない」

 

李儒「あぁ、こちらで処理する」

 

李儒は沈鬱な視線を刀に落とした。

 

李儒「李傕!」

 

即座にドアが開き、李傕が入って来る。

 

李儒「こいつには女とガキがいたな」

 

李傕「娘が2人です」

 

李儒「この刀を届けてやれ。あと、身の振り方を考えられるだけの金も」

 

李傕「わかりました」

 

李傕が部屋を出て行く。

 

一刀「被害状況から見て、牢獄で殺されてはいない。牢獄に馬車が入る前に殺されている事から……≪外≫の仕業だ」

 

李儒「あぁ……やつら≪宦官≫の仕業だ。やつらぁ、俺達に喧嘩を吹っ掛けようとしているってわけか……」

 

一刀「なんにせよ、情報が必要だ……」

 

李儒「あぁ、そうだな。………だから、一刀。≪外≫を見て来て欲しい」

 

一刀「≪外≫って…………、俺に行けって言うのか?」

 

李儒「そうだ。……これはお前だから頼むんだ………一刀」

 

一刀「……………はぁ………」

 

一刀はため息を漏らす。

 

一刀「………金は弾んでくれるんだろうな」

 

李儒「もちろんだ。旅費に前払いの金をくれてやる」

 

一刀「…………わかった。牢獄の外を見て来る」

 

李儒「よろしく頼むぞ」

 

一刀「あぁ………」

 

席を立ち、一刀は部屋を出ようとするが、扉の前で立ち止る。

 

 

 

一刀「一つだけ言っておくが……最終的な目的を見失うなよ─────李儒─────」

 

 

 

そう言いきり、一刀は李儒の部屋をあとにした………。

 

一刀が出て行った部屋には静寂のみが残り、李儒は酒を飲みながら一言だけ呟いた。

 

 

 

 

 

李儒「あぁ……すでに国の滅びは始まっている。俺らが立ち上がるのはもうすぐだ」

 

 

 

 

 

 

 

●人物紹介

 

北郷一刀 字は無 真名は無 伏犧(過去) 

 

牢獄に住む男。北郷一刀としての過去は後ほど……

 

 

 

李傕 字は稚然

 

後漢帝国の特別禁止区域……牢獄で李儒の下で働く優秀な人物

礼儀は正しいが、牢獄の中の人物なので手や足がちょくちょく出る。

 

 

 

姜維 字は伯約 真名は胡花

 

牢獄に住んでいる少女。五胡の血を引いている為村人から疎まれ牢獄に身を無理やり落とされた女の子、一刀の事は信頼しており、美花とは親友の様な関係。医者の才能がある。大切なことはいつも忘れてしまう性格

 

 

 

孫乾 字は公祐 真名は美花

 

かつて盗賊に捕まっているところを助けられ、以降は一刀のお付き兼酒場で店主を務めるようになった。一刀を支えることを生き甲斐として、家事全般は全て熟す。そのためか、一刀のためなら人を殺しても、強姦されても良いと考えている。

 

 

 

李儒 字は文優

 

一刀とガキの頃からの付き合いがある唯一の人物。一刀の過去を知り、理解している。今でも仕事を依頼したり、気軽に話をしたりするなどの仲である。牢獄で最大の組織を組んでおり、その頭である。

 

 

 

○○○後書き○○○

 

皆さん、hirowiです。

 

読んでくださってありがとうございます。

 

 

次回から恋姫の世界に入るのかな………?

まぁ、反応を

 

 

 

 

今回はとあるゲームを参考にさせて頂きました。

なんのゲームかは当ててみてください。

 

 

 

 

 

※注意事項

 

※これは私の初投稿作品です。

 

※私の国語力ほぼ0(中学生レベル)です。

 

※誤字や脱字や変な言い回しがあると思いますが、ご了承ください。

 

※ちなみに、三国志の知識は今のところ無印恋姫+真・恋姫無双しかありません。

 

※三国志演義とかは読んでいません。

 

 

 

♪もし、これから読んで下さる皆様へお願い♪

 

誤字やこれからのストーリーの流れ。言葉の言い回しなどなど……

なんでもいいので忠告・アドバイスお願いします。

 

むしろ、あった方が勉強になるのでよろしくお願いします

 

 

 

 

 

これからよろしくお願いします。(*>▽<*)ゞ

 

 
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