No.702942

IS〈インフィニット・ストラトス〉〜G-soul〜

二周年特別番外編! IS学園アニマルパニック!? 前編

2014-07-22 22:01:54 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:1733   閲覧ユーザー数:1670

「ふんふふふ〜ん♫」

 

この世界の何処か。外からは不可視の空間に、不思議の国のアリスのような衣装を着た一人の天才がいた。

 

その天才の名は、篠ノ之束。

 

ISを発明した彼女は全世界から追われる立場にあるが、それに不満を抱くことはない。

 

今はクラウン・リーパーと同盟のような関係になっている束。しかし常に行動を共にするようなこともなく、呼ばれれば顔を出す程度である。

 

故に、束はこうして自身の秘密研究室『吾輩は猫である』の中で作業に打ち込んでいるのだ。

 

「『あれ』の完成度も74%ってところだねぇ。後は…例のプログラムを積んで調整か」

 

巨大な投影型キーボードの上で指を踊らせながら束はひとりごちる。

 

「あの…束さま」

 

「ん? どしたのくーちゃん?」

 

愛しの娘の声に笑顔で振り返った。

 

「や、夜食をお持ちしました」

 

束曰く『自分の娘』。腰まで流れる銀髪を後ろで太い三つ編みにした少女、クロエ・クロニクルが遠慮がちに差し出した皿。

 

その皿には某人気マンガの第五部に登場する暗殺チームのリーダーのスタンドのようなものがいっぱいに盛られて蠢いていた。

 

「うん! 美味しそうな肉じゃがだねっ!」

 

「いえ、グラタンです…」

 

クロエは消え入りそうな声で申し訳なさそうに言った。

 

「おお! お母さんの大好物だよ〜! ううん! くーちゃんが作ってくれたものならなんでも大好物だね!」

 

しかし、束は嫌な顔一つしないでクロエから暗黒物質が盛られた皿を受け取る。

 

「ああ…!」

 

クロエは束とは対照的に顔を手で覆って膝をついてしまう。

 

「せっかく束さまに新しい身体をいただいたのに、こちらは未だにこの有様なんて…! お許しください……!」

 

「全然大丈夫だよぉ〜! それじゃあいただきま━━━━」

 

 

ガチャンッ!!

 

 

「え?」

 

束が暗黒物質にめがけたスプーンは空振りした。皿の底を溶かして、暗黒物質が足元に落ちたのだ。

 

「い、活きがいいね。お母さんもびっくりだ」

 

「もっ、もも、申し訳ありません! すぐに捕まえきゃっ!?」

 

 

ビタンッ!!

 

 

クロエは暗黒物質を踏んづけて前のめりに倒れた。

 

「くーちゃん!?」

 

「いたた……」

 

「くーちゃん、大丈夫?」

 

「は、はい…なんとか。それよりあれは?」

 

「ん? おや? 消えた?」

 

暗黒物質は目を離した一瞬で消えてしまった。

 

見てみれば、外の景色が見える小窓が割れていた。

 

「あそこから逃げ出したのかなぁ…」

 

「……うぅ」

 

じわ…と目尻に涙を溜めるクロエに束はオロオロする。

 

「だ、大丈夫大丈夫! くーちゃんはなんにも悪くないよ!」

 

「束さま……!」

 

「あっ! そうだ! 面白いものがあるよ!」

 

束はパンと手を打った。

 

「なんとね、この魔法のお薬を使うと……あり?」

 

ポケットを漁ろうとした束ははたと動きを止める。手応えが無いのだ。

 

「あり? ありり? ありりり?」

 

なんとアリスの服の一部、ポケット部分が破れていた。

 

「束さま…服が」

 

そこで束は目を見開く。

 

「まっ、まさか今のが? しかもあれを持っていった!? そんな!?」

 

「な、何を出すおつもりだったんですか?」

 

「いやぁ…その……」

 

「…?」

 

束の珍しく気まずそうな声にクロエは頭に疑問符を浮かべた。

 

 

「う……うーん………」

 

夏から秋へと季節が変わり始めたある日。目を覚ますと、何かに抱き着かれている感覚を最初に感じた。

 

(またか………)

 

短くため息をついて、視線を向ける。

 

「すー……すー……」

 

案の定、ラウラが俺を抱き枕にして眠っていた。去年の夏からよくあることなんだけど、これにも若干の進歩がある。それはラウラが全裸で来ることがないことだ。

 

今は黒いネコのパジャマを着て、スヤスヤと寝息を立てている。

 

「ラウラ、起きろ。ラウラってば」

 

「ん………んぅ…朝か……」

 

ラウラは身体を起こして、眠たそうに目をこすった。

 

「ラウラ、やっぱりベッドに忍び込んで来るのはいろいろとマズいと思うんだ」

 

「何を水臭い。夫婦というのはそういうものであろう?」

 

「だからぁ…って、このやり取り何回目だよ………ん?」

 

ラウラの姿に、どこか違和感を感じた。

 

「どうかしたか?」

 

「いや………んん? ラウラ、頭打ったのか?」

 

「い、いきなり何を言い出す」

 

「だって、妙に頭が膨らんでるぞ?」

 

ラウラが着ている黒ネコのパジャマは、頭まですっぽり覆うタイプのものだ。でも、フード部分がやけに不自然な盛り上がりがある。しかも二つも。

 

「む…?」

 

「ちょっといいか?」

 

フードを下ろしてみた。すると………

 

ウサギのような長い耳が押さえつけられていたのか、ピコンと勢い良く立ち上がった。

 

「………は?」

 

「な、なんだ? 私の頭に何かついているのか?」

 

思考が追いつかない。なんだこのぶっ飛び展開は!?

 

「なにこれ……」

 

人差し指でなぞるように触ってみる。

 

「ひゃうんっ!」

 

ラウラがびっくりしたのか声を出した。

 

「え? 感覚あんの? カチューシャとかじゃないのか?」

 

スリスリサワサワスリスリサワサワ…

 

「だっ、だから何が! ひうっ!? やっ、やめっ! ひんっ!? く、くすぐったいぞぉ!」

 

「全然取れる気配がない……」

 

 

スリスリサワサワスリスリサワサワ…

 

 

「ひっ! ひゃっ! やめっ…! やめろっ!!」

 

 

ドンッ! ゴンッ!

 

 

「ぐはっ!?」

 

ラウラに押されて、ベッドから転げ落ちた俺は頭を強打した。

 

「い…痛え……夢じゃないのか…!」

 

ラウラの耳に生えてるウサ耳。カチューシャでもなく、おまけに感覚がある。さらに夢じゃないと来た。

 

「どうしたのだ…? い、いきなり、何をした?」

 

「ら、ラウラ…落ち着いて聞け」

 

起き上がって、ラウラに話しかける。

 

「今から、そこの洗面台の鏡で、自分の姿を見てこい」

 

「どういうことだ?」

 

ラウラはきょとんとして、俺が何を言ってるのかわからないって感じだ。

 

「いいから。早く!」

 

「わっ! な、なんだというのだ!?」

 

ラウラをベッドから降ろして、背中を押して洗面台に連れ込む。

 

「ほら、見てみろ」

 

「一体なん………はっ!?」

 

ラウラは鏡に映った自分の頭に、目を丸くした。

 

「な、ななな、なななななんだこれは!?」

 

自分の頭のウサ耳を触って、引っ張って、いろんな角度から凝視するラウラ。やっぱり信じられないよう━━━━

 

「………ああっ!?」

 

俺は思わず悲鳴のような声を出してしまった。

 

「こ、今度はなんだ!?」

 

ラウラも声を荒げてくる。

 

「ら、ら、ラウラ……背中の下の方………」

 

「背中の下? 背中の下に何か━━━━」

 

背中に手を回してまさぐったラウラは、ビシィッ!! って身体を凍らせた。

 

「ま……まさか………そんな…嫁…シャワー室………借りるぞ」

 

「あ、ああ…」

 

呆然としたままシャワー室に入って、一分もしないうちにラウラはシャワー室から出て来た。

 

「どうだった? いや、結果は多分俺の予想してる通りだと……」

 

「あった……尻尾まで………あった」

 

「やっぱりか……!」

 

ウサ耳&ウサ尻尾ですか……!!

 

 

ドンドンドンドンッ!!

 

 

ドアを何度もノックする音が聞こえた。

 

「え、瑛斗瑛斗瑛斗っ! 開けて! 開けてよっ!!」

 

「瑛斗…! 早く……! 大変!!」

 

声からして、シャルと簪だとわかった。二人ともかなり慌ててる。

 

「シャル! 簪! どうしたん……………だ……ああ……!?」

 

ドアを開けて、あんぐりしてしまった。

 

「「なんか、生えちゃった!!」」

 

二人とも、頭にもふもふした動物の耳が生えていた。

 

 

「……状況を整理するとだ。朝目が覚めたら俺と瑛斗以外の女子みんなに、何かしらの動物の耳と尻尾が生えていた……自分でも何言ってんのかわかんないな」

 

「わかんないのはこっちよ!」

 

鈴が立ち上がりながら一夏に吠えた。

 

「なんで朝起きたらこんな耳と尻尾が生えてんのよ!?」

 

「鈴さんの言う通りですわ。全く理解が出来ません」

 

セシリアも鈴に同調するように頷く。すると揺れた頭に呼応して頭からピンと生えたケモ耳が揺れた。

 

「びっくりしたよね。梢ちゃん」

 

「…うん。こんなことが、起こるなんて」

 

蘭と戸宮ちゃんもこの状況に唖然としている。

 

「でも、可愛いっすよね」

 

フォルテ先輩が自分の頭に生えたケモ耳を指先で触りながら素直な感想を言った。

 

「私のは猫っすかね? 尻尾もそんな感じのやつっすし」

 

「せ、先輩のん気ですね…」

 

先輩の動じなさには感服するな。

 

「ちなみに先輩のその耳と尻尾、アメリカン・ショートヘアですね。一般的な銀色の毛色の」

 

「そうなんすか?」

 

「はい。この図鑑から見るとそうですね」

 

「瑛斗図鑑持ってきたんだ」

 

「みんながどんな動物の耳と尻尾を生やしたのか知っといても損はないだろ? 今さっき調べたけど鈴はパンダでセシリアはネザーランドドワーフだ」

 

「へぇ〜! 僕は僕は?」

 

「えっと、シャルのは……」

 

ペラペラと図鑑のページを捲り、シャルの耳と一致するものを見つけた。

 

「あった。スコティッシュフォールド。猫だな」

 

「見せて見せて…わぁ、可愛い!」

 

「耳が真ん中から折れてるのが特徴だ」

 

「え、瑛斗…その……私、は?」

 

簪に袖を引かれて、図鑑のページを更に進める。

 

「簪か? 簪は…うーんと……お、これだ。柴犬」

 

「柴犬……? すごく日本ぽい…」

 

ちょっとがっかりしたのか、簪は眉を下げる。

 

「まあまあ。俺は柴犬好きだぞ?」

 

「ほっ、本当?」

 

「ああ。本当だよ。可愛いじゃん」

 

「うん……そっか…うん…!」

 

ポッと顔を赤くした簪は尻尾をパタパタと振った。そう言えば、犬は嬉しいと尻尾振るんだっけ。

 

「瑛斗、わ、私は何なのだ?」

 

「私にも教えて教えて!」

 

箒とマドカも自分のが気になるみたいだ。

 

「箒はな……えーと、ふむふむ………キツネで、マドカは…リスか」

 

「き、キツネか。一夏、キツネだそうだ」

 

「お兄ちゃん、私リスだって」

 

「そ、そうか。よかったな」

 

二人揃って一夏に報告してた。

 

「瑛斗さん、梢ちゃんはどうですか? ちっちゃい耳に、長い尻尾ですけど」

 

後ろから戸宮ちゃんの肩に両手を乗せた蘭が尋ねてきた。

 

「………………」

 

戸宮ちゃんいたっていつも通りな気がする。フォルテ先輩とはまた違う冷静さだな。

 

「戸宮ちゃんはっと……これかな。カワウソだ」

 

「…カワウソ?」

 

「絶滅危惧種の動物でな。今じゃかなり数が減ってる動物だぜ?」

 

「…なるほど。つまり…レアもの」

 

戸宮ちゃんの目に僅かに輝きが出た。

 

「よかったね梢ちゃん」

 

「蘭はあれだぞ。イノシシ」

 

「えっ!?」

 

「ぷっ…! あははは! イノシシって。蘭にはお似合いじゃない」

 

「いや、イノシシって言っても子どものウリ坊ってやつで━━━━」

 

「な、なんですってぇ!?」

 

俺が言い終えるのを待たないで蘭は鈴に食ってかかった。

 

「今のちょっと聞き捨てなりませんよ!」

 

「何よ? 本当のことじゃない?」

 

「鈴さんこそ何ですかパンダって! 鈴さんからパンダの耳と尻尾生えたって意外性のかけらも無いじゃないですか!」

 

「きぃー! ちょっと気にしてたのに! アンタ本当に可愛くないわねっ!」

 

また二人が口喧嘩を始める。こんな時でもよくやるなぁ。

 

「それにしても、お姉ちゃん達遅いなぁ…」

 

椅子に座っていたマドカが垂れた尻尾をゆっくり揺らしながらつぶやく。

 

「確かに、私達専用機持ちを放送で生徒会室に呼び出してから少し時間が経つが……」

 

「お姉ちゃんも…来てない……」

 

簪が視線を向けると、ちょうどドアが開いた。

 

「おう、お前達揃ってるな」

 

「千冬姉。山田先生と楯無さんも」

 

生徒会室に入ってきたのはケモ耳を生やした織斑先生と山田先生、楯無さんの三人だった。

 

「千冬姉達まで…まあこの流れじゃ当然っちゃ当然か」

 

「えっと……織斑先生のは…オオカミですね」

 

「…あまり見るな」

 

織斑先生は恥ずかしそうに視線をそらす。

 

「そうですか? 私は可愛いと━━━━」

 

「山田先生?」

 

「な、なんでもありませんっ!」

 

山田先生が顔面蒼白になってプルプルしだす。

 

「山田先生は牛、しかもホルスタインか……ん? そう言えばあいつら…スコール先生と巻紙先生は?」

 

あいつらも確か宿直で昨日から学園に残ってたはずだ。

 

「彼女達なら、あっち」

 

ロシアンブルーの耳と尻尾を生やした楯無さんが生徒会室の外を示す。

 

「そこまでは一緒だったんだけどね」

 

「?」

 

生徒会室から顔を出すと手前の曲がり角にスコールが見えた。スコールはヒョウか。いかにもって感じだ。

 

「どうしたのよ? 急に行きたくないなんて」

 

「やっ、やっぱり嫌だ! あいつにだけはっ! あのガキだけにはこんな姿見せられないっ!!」

 

姿は見えないけどオータムの声も聞こえる。

 

(何してんだ?)

 

そう思った直後、スコールが俺に気づいた。

 

「……もう彼気づいてるわよ?」

 

「なっ!?」

 

オータムが顔を出す。頭から長く垂れた耳を生やしていた。

 

「……あいつ、ロップイヤーか」

 

「ロップ、イヤー…?」

 

「耳が垂れているのが特徴のウサギだよ。ほらこれ」

 

みんなに図鑑に掲載されてるロップイヤーの写真を見せる。

 

「おお、可愛いっすね」

 

「あ! アタシこれこの前テレビ番組の動物特集で見たわ。小さくて可愛かったのよ」

 

「僕も見たよ! ね? ラウラ」

 

「うむ。愛らしい姿をしていたぞ」

 

「可愛いだろ? それが、あいつだ」

 

俺はオータムを指差してみんなの視線を誘導した。

 

「あ…ああ……うわあああああ!」

 

集中した視線にオータムは顔を真っ赤にして、奇声を発しながら何処かへ行ってしまった。恥ずかしかったんだろう………ざまぁ。

 

「困った子ねぇ。織斑先生、すみませんが、後は頼みます」

 

スコールもオータムを追いかけて行ってしまった。

 

「…ゴホン。では、本題に入るぞ」

 

織斑先生の咳払いで会議が始まる。

 

「全員わかっていると思うが、学園は今異常な状態にある。まだ直接的な…いや、直接的な被害はあるがそういうものはまだ見受けられん」

 

「ISの稼働には問題は無いことも検証済みですから、学園の防御力の低下もありません」

 

「くっ…!」

 

「? どうした桐野」

 

「や…す、すいません。あまりにもシュールなので…!」

 

真剣な顔にその耳と尻尾のミスマッチに、笑いが堪えられなかったぜ…

 

「真面目に聞け」

 

ゴッ!

 

「だっ!?」

 

織斑先生の容赦の無い拳骨が俺の頭を襲った。

 

「…でも、どうしてこんなことになっちゃったのかな? 誰がこんなことしたんだろう?」

 

マドカが全員の疑問を代表して口にする。

 

「はぁ…」

 

織斑先生は、心底参ったといった感じでため息を吐いた

 

「こんな仰々しくバカバカしいことをするのは、あいつしかいないだろう?」

 

「あいつ…? あっ」

 

察した。

 

「博士か!」

 

「束さんだよな」

 

「姉さんだな…」

 

「篠ノ之博士ですわね」

 

「篠ノ之博士よね」

 

「篠ノ之博士だね」

 

「篠ノ之博士か」

 

「篠ノ之博士…」

 

「篠ノ之束博士だよね」

 

「篠ノ之博士っすね」

 

「篠ノ之博士みたいですね」

 

「…篠ノ之博士なら、あり得る」

 

満場一致で、あの人の顔が浮かび上がった。

 

「なんで束さんが? っていうのはこの際考えなくていいと思う」

 

一夏の言葉に全員頷く。あの人の行動原理は俺たちの理解を超えているからしょうがない。

 

「問題は、この状態からどうなるか……ですね。みなさん体調が悪いとかはありませんか?」

 

山田先生にみんなが首を横に振る。どうやらこれ以上の身体的な異常はないみたいだな。

 

「元凶が束だとしても、あいつとは連絡がつかん。様子を見るしかないだろう。幸か不幸か、他の生徒達はさして危機感を抱いていないようだしな」

 

「た、確かに。ここに来るまでに何人か見たけど、別段困ってる感じでもなかったな……」

 

「どっちかって言うと、ちょっと楽しそうだったわ」

 

「しかしこのままというわけにもいくまい。この状況に陥る前に何があったのか調べた方がよさそうだな」

 

「何か起こったとすれば…昨日の夜から今日未明ですね」

 

ラウラが思案して、織斑先生に報告する。

 

「よし、私と山田先生はそちらを探ってみる。桐野」

 

おや? ご指名だ。

 

「は、はい?」

 

「お前は生徒達がどんな動物の影響を受けているか調べておけ」

 

「構いませんが…まさか全員ですか?」

 

「出来るならそうしてくれ。生徒の名簿は渡す。なんなら、そこの小娘どもも連れて行け」

 

「では私が行きます!」

 

ラウラが織斑先生の後一秒にも満たない早さで名乗り出た。

 

「ぼっ、僕も行きますっ!」

 

「わ、私も…!」

 

シャルと簪も後に続いてくる。どうやら二人もやりたいようだ。

 

「じゃあ四人で行くか」

 

「よし、では頼むぞ。他の者も何かあったら報告するように」

 

緊急会議は織斑先生のその言葉にみんなが納得したところでひとまず終了となった。

 

 

「……………………」

 

「どうだいくーちゃん? 面白いでしょ?」

 

ケモ耳と尻尾を生やした少女達がIS学園の廊下や教室、寮の部屋にいるのが映し出された投影型の大型ディスプレイの画面を見つめてポカーンとするクロエに対し、腰に手を当てえっへんと威張る束。

 

映っている映像はIS学園の現在の状況である。束が学園に設置されている監視カメラの一部をハッキングして映像を送らせているのだ。

 

「束さま、これは?」

 

「ふっふーん、すごいでしょ? その名も『束さん特製ケモ耳ケモ尻尾が生えちゃう薬』だよ!」

 

「は、はぁ」

 

ど直球な名前にクロエは半眼を作るしかない。薬を落としたと言った時の束の気まずそうな顔は完全に消えていた。

 

「本当はー、くーちゃんのウサ耳姿を今一度拝見するために作ったんだけどねー」

 

「え!?」

 

「くーちゃんのあの激萌えぷりちぃな姿をまた見たかったのになぁ」

 

「………っ! あ、あれは…!」

 

クロエは頬が羞恥に赤らめ、ワンピースのスカートをぎゅっと握る。

 

「残念だよぉ。薬は落としたので全部だからまた作らないと。実に残念」

 

「諦めるという選択肢は━━━━」

 

「無いよっ!」

 

「食い気味の即答ですか……」

 

クロエはがっくりとうなだれ、肩を落とす。

 

「でもでもぉ」

 

「まだ、何か?」

 

「変だよねぇ。こんなに多種多様な動物のパターンが現れるなんて」

 

「…………………」

 

もしや自分の作ったグラタンが原因なのでは…? とクロエは思ったが申し訳なさと気恥ずかしさにその言葉を飲み込んで、代わりの言葉を紡ぐ。

 

「…それで、その薬の効果はいつまで続くのですか? まさかずっとこのままでは…」

 

「そこんところはだいじょうぶいぶい! あの薬は半日もすれば効果が消えて元通りになるから!」

 

「なるほど。…………半日?」

 

「くーちゃん?」

 

「……束さま」

 

「んー?」

 

「今確認しましたが、もう半日以上経っています」

 

「……………えっ?」

 

 

「と、いうわけで、こうしてみんなを調べてるんだ」

 

「そうなんだ」

 

織斑先生に命じれたミッションを順調にこなした俺達は一年生と三年生の調査を終わらせて、今こうしている二年生の調査も佳境に入っていた。

 

「残ってるのは谷本さんとのほほんさんだけなんだ」

 

名簿のチェックを担当していたシャルがのほほんさんのルームメイトの谷本癒子さんに告げる。

 

「私ね、自分で調べてみたんだけど、私のやつはプレーリードッグじゃないかなーって思ってたのよ」

 

「瑛斗、どうだ?」

 

「ちょっと待ってな………お、谷本さん正解! プレーリードッグだ」

 

「えへへ! やったぁ!」

 

「それじゃあ…本音も……」

 

「あ…」

 

すると谷本さんは何かを思い出した。

 

「どうかしたのか?」

 

「それがね…言い忘れてたんだけど、のほほんさんには尻尾も耳も、それっぽいのが無いの」

 

「無い?」

 

「私もおかしいと思っててね。見てあげて」

 

部屋の中にお邪魔すると、着ぐるみみたいなパジャマ姿でベッドにうつ伏せになっているのほほんさんを見つけた。

 

「今朝からずっとあんな感じで、ご飯も食べてないの」

 

「具合が悪いのか?」

 

「ううん。昨日まではそんな感じしてなかったよ」

 

「うーむ…簪、何か話しかけてやれ」

 

「う、うん…」

 

簪がしゃがんでのほほんさんと目線を合わせる。

 

「本音。本音は、耳も尻尾も無いの…?」

 

「んぅ〜、わ〜か〜ん〜な〜い〜」

 

「や、やけにゆっくり話すね、のほほんさん」

 

シャルの言う通り、いつも以上にスローな喋り方だ。

 

「………ごめんね」

 

簪はのほほんさんの髪を右手で少し上げて、左手でのほほんさんの頭を控えめにまさぐる。

 

「…あっ。あった」

 

「どれだどれだ?」

 

「ここ……ちっちゃいのが、付いてる…」

 

確かに髪の中に埋れてしまうくらいの大きさのケモ耳があった。

 

「瑛斗、これは何の動物だ?」

 

「ちょっと待ってな。えーっと…これは…………あ」

 

「わかったの?」

 

「ああ。ナマケモノだ」

 

「ナマケモノか…」

 

「むぅ〜…失礼だよ〜……私は怠け者じゃないよぉ〜」

 

のほほんさんは両腕を少しだけ上げて反論。そしてまた腕をベッドに沈めた。

 

「いや、動物の方のナマケモノな。すごいんだぞナマケモノは。泳ぎが超得意で、洪水でもへっちゃらなんだぞ」

 

「へぇ〜…でもね〜…なんだかすご〜く眠たいのです〜……おやすみ〜………」

 

そのまま、のほほんさんはスヤスヤと眠りこけ始めてしまった。

 

「…結論からすれば、いつも通りって感じだね」

 

「こうなると、多分起こしても起きない……」

 

「ナマケモノは一日の大半は木の上でじっとしてるからな」

 

「のほほんさんも休みの日は基本こんな感じだし、みんなと同じように耳と尻尾もあるみたいだし、心配はなさそうだね」

 

そんなこんなで全生徒の調査が終わった時には、昼過ぎになっていた。

 

「よーし、後はこれを先生に報告に行くだけだな」

 

「みんないろんな種類の動物の耳と尻尾が生えてたね」

 

「キリンやサイなどもいるとはな」

 

「ちょっとした動物園……」

 

「でも不思議だね。瑛斗と一夏には何にもないなんて」

 

「俺としては、変に俺と一夏に生えなくてよかったと思うぞ。じゃ、ちょっと休憩してから行くか。みんなも入れよ」

 

丁度自分の部屋まで戻って来てた俺達は扉の鍵を開けて中に入る。

 

「む?」

 

「どうしたラウラ?」

 

「…人の気配がするぞ」

 

「え? 鍵かけてたし、部屋の中には誰も………」

 

言いかけて、止めた。いたからだ。人が。

 

「すぅ……すぅ………」

 

もっと言うと、楯無さんが。

 

「楯無さん!?」

 

なんで楯無さんが俺の部屋のベッドで寝てるんだ!?

 

「ん……」

 

俺の声に気づいたのか、楯無さんは目を覚ました。

 

「瑛斗くん…? 簪ちゃん達も? あれ……? 私、寝ちゃってた?」

 

「ど、どうしたんです楯無さん? 俺の部屋で昼寝なんかして…」

 

楯無さんは身体を起こして目をこすった。

 

「部屋に忍び込んで瑛斗くんを驚かせようとしてたんだけど……待ってる間に陽の光が気持ち良くて、つい…」

 

確かにカーテンが開いていて、陽の光が部屋に差し込んでいた。結構前からスタンばってたみたいだな。

 

「疲れてたんですかね……まあいいや。歩き回って喉渇いちまった。麦茶飲も。みんなはどうだ?」

 

「僕ももらおうかな」

 

「私は平気だ」

 

「私も…大丈夫」

 

シャルと俺の分の麦茶を用意しようと冷蔵庫から麦茶が入ったボトルを取り出す。

 

「じゃあ俺とシャルだけだな?」

 

シャルの分をコップに注いで、今度は俺の分を……

 

「……おっと」

 

手元が狂って麦茶はコップの外に。

 

「ありゃりゃ、やっちまった」

 

麦茶で床が濡れちゃったぜ。

 

「瑛斗、大丈夫?」

 

シャルがティッシュ箱を持ってきてくれた。

 

「あ、悪いな。助かる」

 

ティッシュ箱を置いてから何枚かティッシュを取って、零れた麦茶を拭き取る。

 

「瑛斗くんは濡れてない?」

 

楯無さんも俺のそばに来て様子を伺う。

 

「ええ。何とか」

 

「そう。よかっ…………」

 

「楯無さん?」

 

急に楯無さんが言葉を止めた。

 

「…………………」

 

 

シュ…

 

 

そしておもむろに箱からティッシュを一枚抜き取った。

 

「…………………」

 

 

シュ…

 

 

また一枚取った。

 

「お姉ちゃん…?」

 

「な、何これ…!? 楽しい…!?」

 

楯無さんは自分でもわけがわからないみたいで、戸惑いの声をあげる。

 

「ただティッシュを出してるだけなのに、何でこんなに楽しいの!?」

 

 

シュシュシュシュシュシュシュシュ!

 

 

だけどティッシュを抜き取る手は止まらない!

 

「た、楯無さん!? どうしたんですか!?」

 

「え、瑛斗くん助けて! やめられないし止められないー!」

 

「助けてったってどうしたら!? ティッシュか!? そのティッシュを取り上げればいいんですか!?」

 

「なんでもいいから、は、早く!」

 

「わかりましたっ!」

 

ティッシュ箱を楯無さんから取ろうとしたけど、楯無さんは手を離してくれない!

 

「ちょっ!? なんで離してくれないんですか!?」

 

「ごっ、ごめん! でもっ、なんだか手離したくない自分がいるの!」

 

「何わけのわからないこと言ってんです! 簪! シャルとラウラも手伝ってくれ!」

 

「えっ……う、うん!」

 

「いくよラウラ!」

 

「了解だ!」

 

簪達が俺の背中を引っ張って加勢する。

 

「どりゃぁぁぁぁ!」

 

「あぁっ!?」

 

 

スポーン!

 

 

四対一じゃ流石の楯無さんも無理みたいで、ティッシュ箱を無事奪還出来た。

 

「はあ…はあ………大丈夫…もう落ち着いたわ…」

 

「何だったんですか今の…」

 

「わからないわ…ただ、自分が自分じゃなくなったみたいな、そんな感じがしたわ」

 

「ちょっと疲れが溜まり過ぎてるんじゃないですか?」

 

「そうなのかしら…」

 

不思議そうに首を傾げる楯無さん。

 

「…………………」

 

簪がさっき楯無さんから取り上げた時に転がったティッシュ箱を拾って持ってきた。

 

「瑛斗…はい」

 

「え? あ、ああ。ありがとう」

 

ティッシュ箱を簪から受け取って、元の場所に戻す。

 

「ね、ねぇ……」

 

簪は両手の指と指を絡めてもじもじしだした。

 

「ん?」

 

「頭…撫でて、欲しい……」

 

「え? あ、頭を? なんでそんないきなり?」

 

「お、お願い………ダメ?」

 

上目遣いでそう言われると、断れないな……

 

「こ、こうか?」

 

 

ナデナデ

 

 

「……♫」

 

簪は嬉しそうに尻尾をパタパタ振った。

 

「…………はっ」

 

突然簪は顔を上げた。

 

「ど、どうした?」

 

「い、今、私っ、何してたの?」

 

「何って…お前が頭撫でてって言うから」

 

「私…そんなこと、言って…?」

 

「簪? お前も疲れてるんじゃないか?」

 

「ううん…大丈夫。そんなことない」

 

「そうか? 何かあったら言えよ? ただでさえこんなわけのわからん状況なんだし」

 

「うん…ありがとう……」

 

「ご、ごほん。瑛斗、麦茶。僕も喉渇いちゃった」

 

「あ、ああ、ごめんごめん」

 

「もう…簪ちゃんと楯無さんばっかり……」

 

何か小声でポソポソ言ってから、シャルは麦茶の注がれたコップの水面を、舌を出してぺろぺろと舐めた。

 

「………シャル?」

 

「ん? 何?」

 

「ずいぶんと…変わった飲み方だな?」

 

「飲み方?」

 

「いや、舌で舐めるとは…」

 

「え……あ、えっ!? 僕何でこんなことを!?」

 

「シャルロット、わざとではないのか?」

 

「全然無意識だよ!?」

 

ラウラに答えてからシャルは一気に飲み干した。

 

「どうしたんだ? 楯無さんといい簪といいお前といい」

 

「わからないわね…」

 

「謎……」

 

「僕…何だか怖くなってきちゃった」

 

三人とも少し怯えが見える。

 

「ラウラは今のところ特に変わったことは起きてないな?」

 

「そうだな。今のところはない」

 

「とりあえず俺先生達に報告してくるよ。みんなも部屋に戻って休んでた方がいい」

 

「はーい」

 

「うん…わかった」

 

「そうさせてもらうよ」

 

「シャルロットの面倒は私が見よう」

 

四人とも俺の言葉に素直に従ってくれた。

 

「じゃあ、何かあったら呼べよ?」

 

この後、俺は激しい後悔に襲われることになる。

 

ここでもう少しみんなのことを気にかけていればよかった、と。

 

 

瑛「インフィニット・ストラトス〜G-soul〜ラジオ!」

 

一「略して!」

 

瑛&一「「ラジオISG!」」

 

瑛「読者のみなさんこんばどやぁー!」

 

一「こんばどやぁ」

 

瑛「まーた大変なことになったなぁ」

 

一「女子達や千冬姉達にあんなことが起きるなんてな」

 

瑛「オータムがロップイヤーの耳を生やすなんて思わなかったぜ。ふふふ…本当はあの場で笑い転げたかったんだけどよ、そんなことしたらあいつ絶対ブチ切れたぞきっと」

 

一「でも俺達の前からいなくなる時半分涙目だったよな」

 

瑛「さて、オータム弄りもほどほどに今日の質問に行くか。カイザムさんからの質問! 一夏に質問です!! 昼食の後に午後の授業で眠くなった時は、どうやって眠気に負けず授業を受けてますか?(笑)」

 

一「か、(笑)?」

 

瑛「(笑)。でもあるよなー。昼食い終わってからの授業の眠気。あれマジ半端ない」

 

一「日向とかだと余計にな」

 

瑛「そういう時どうすんの? てかどうしてんのお前」

 

一「うーん…腹一杯になると眠くなるからな、あんまり昼は多く食べないでおくと眠くならないぞ」

 

瑛「なるほどなぁ。後さ、退屈な授業でも眠くなったりするよな」

 

一「あるある。俺も中学の頃弾と一緒に船を漕いでた」

 

瑛「でも織斑先生の授業じゃ眠れないな」

 

一「それは死だろ。死を意味してるだろ」

 

瑛「俺まだ見たことないぜ。織斑先生の授業で寝てるやつ」

 

一「俺もだよ」

 

瑛「あっ、フォルテ先輩ならあるかも。今度聞いてみよ」

 

一「お前…フォルテ先輩見下し過ぎじゃないか?」

 

瑛「でも可能性感じるだろ?」

 

一「……………確かに」

 

瑛「はっはっは! じゃ次の質問だ。カイザムさんからの質問! 箒に質問です!! 一夏と再会する前の6年間の間に他に一目惚れした男子はいま━━━━」

 

箒「うわぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 

ドゴーンッ!!

 

 

瑛「すかぶっ!?」

 

一「瑛斗っ!?」

 

箒「なっ、ななななな何を聞いているのだお前はっ!」

 

一「箒!? なんで今紅椿で瑛斗をどついたんだ!?」

 

箒「あぁっ!? し、しまった!?」

 

一「見ろよ、瑛斗が床に頭から突っ込んで、○神家の一族みたいになっちゃってるぞ」

 

箒「す、すまん……今引き抜く」ズボッ

 

瑛「あ、あうぅ……」

 

一「それと気づくの遅れたけど、こっちでもキツネの耳生えちゃってるんだな」

 

箒「うむ…そうなのだ……」

 

瑛「……うう〜ん…はっ、俺は一体何をしてたんだ?」

 

箒「瑛斗、気がついたか」

 

瑛「何で俺はお前に片足掴まれて宙吊りにされてるの?」

 

一「箒がお前にタックルをかましてな」

 

箒「うう……………」

 

瑛「ま、まあいいや。とりあえず下ろして」

 

箒「わ、わかった」

 

瑛「それでさ、質問の━━━━」

 

箒「い、言うなっ! 質問の内容はわかっている!」

 

瑛「質問のお便りを取るなよ…どんな質問来てんのさ」

 

箒「おおお教えられるかっ!」

 

瑛&一「「ええ…」」

 

箒「質問には答えるっ! 小声でなっ! お、お前達は聞くんじゃないぞ!」

 

一「ダメなのか?」

 

瑛「何でさ」

 

箒「聞くなったら聞くな! 耳を塞いでいろぉっ!」

 

瑛「わ、わかったわかった」スッ

 

一「わかったから刀を構えるな。これでいいだろ?」スッ

 

箒「う、うむ。では………………い、いるわけが、ないだろう。私はずっと……ずっと一夏だけだ。私にはあいつしかいない。あいつ以外に一目惚れなど、考えられん………………………………………終わったぞ」クイクイ

 

一「ん? 終わったか」

 

瑛「案外早かったな」

 

箒「ま、まあ…な。も、もういいだろ? 私はこれで失礼する」

 

瑛「えっ、行っちゃうのか?」

 

一「エンディングまでいればいいじゃないか」

 

箒「す、すまん。その、気恥ずかしさで、な……さ、さらばだっ!」

 

瑛「あっちょっと! ……本当に行っちゃったよ」

 

一「気恥ずかしさがどうとか言ってたけど…キツネの耳と尻尾が恥ずかしいのか?」

 

瑛「オータムと同じってわけか。ラジオだから気にすることもないのに」

 

一「俺達に見られるのが恥ずかしかったんじゃないか?」

 

瑛「そうなんかなぁ……そうなんだろうな。よし、それじゃあ次の質問だ。カイザムさんから。セシリアに質問です!! 英国に関する質問なのですが、イギリスにあるカレーはナンのカレーとライスのカレーが有りますが、セシリアはどちらのカレーが好きでしょうか? セシリアへの質問か。というわけで、今日二人目のゲスト!」

 

セ「ごきげんよう。セシリア・オルコットですわ」

 

瑛「これはアレだな。どっち派? ってやつだな」

 

セ「そうですわね。わたくしはどちらも食べたことがありますが、どちらかと言えばライスの方が好きですわ」

 

瑛「俺もナンの方も好きだけど、ライスだな。一夏は?」

 

一「…………………」

 

セ「一夏さん?」

 

一「へっ!? あ、ああ。そうだな。俺もご飯だな」

 

瑛「どうした?」

 

一「いっ、いや…セシリアとカレーの二単語にちょっとな……」

 

瑛「ちょっと?」

 

セ「そうですわ! 一夏さん!」

 

一「な、なんだ?」

 

セ「以前一夏さんにわたくしが作った英国式のカレーを食べていただいたのですが、新しい調理法を思いついたので、またわたくしのカレーを食べてくださいませんか?」

 

瑛「…そういうことかぁ………!」

 

セ「瑛斗さん?」

 

瑛「いっ、いや? 何でもないぞ。うん、なぁ一夏?」

 

一「そそそうだな。カレーだったっけ? ああ。食べる食べる。瑛斗も食いたいってさ」

 

瑛「おまっ!?」

 

セ「まあ! わかりましたわ。瑛斗さんの分もご用させていただきます」

 

瑛「お……おぉ。よろしく。一夏………!」

 

一「さ、さー! 次の質問いこうか! 次で最後だぞ?」

 

瑛「くぅ…! カイザムさんから、クラリッサに質問です!! クラリッサは日本文化愛好家だと思いますが、クラリッサの家族や身内も日本文化愛好家なのでしょうか?」

 

一「クラリッサさんへの質問か。でもさ、例によって例のごとくいないぞ?」

 

ラ「問題無い。クラリッサには事前にスタッフが質問して返答をもらっている」

 

一「わあ!? ら、ラウラか。びっくりした…」

 

瑛「うちのスタッフは本当に優秀だなぁ。それで、クラリッサさんなんて?」

 

ラ「うむ。日本文化は自分から入っていって、家族からの理解も得られているそうだ」

 

瑛「ほお」

 

ラ「クラリッサ曰く、『布教の賜物』だそうだ」

 

セ「布教…? 宗教のような何かですの?」

 

ラ「私の知る限りではそうではないと思うが…どうなのだ一夏?」

 

一「えっ? 俺?」

 

瑛「考えてみればここで日本文化に一番詳しいであろうやつがお前しかいないんだ」

 

一「お、俺もそんなに詳しいわけじゃないぞ。……やっぱ箒にもいてもらったほうがよかったな」

 

瑛「引き止めるべきだったな。おっと、もう時間みたいだ。それじゃあエンディング!」

 

流れ始める本家ISのエンディング

 

瑛「今日はそこの女の子達に歌ってもらったぞ」

 

一「あの二人か」

 

瑛「なんでもあの子達は魔法少女らしいぞ」

 

セ「魔法少女?」

 

瑛「俺もよくわかんないんだけど、そうらしい」

 

ラ「なんだそれは。曖昧だな」

 

瑛「なんかすまん…そろそろ時間だな。それじゃあ!」

 

一&セ&ラ「「「みなさん!」」」

 

瑛&一&セ&ラ「「「「さようならー!」」」」

 

???「いきなり歌うことになるなんて、びっくりしたね」

 

???「うん…」

 

???『お二人ともぉ、お楽しみのところもうしわけないんですがぁ…』

 

???「どうしたの?」

 

???『彼女がまた、騒ぎを起こしているようでして』

 

???『同じ顔なのをいいことにやりたい放題しています』

 

???「えぇーっ!? い、行かなきゃ!」

 

???『合点です!』

 

???「私達も…」

 

???『了解しました』

 

一「なんか、急に不思議な格好になって飛んでいっちゃったぞ?」

 

セ「ISでは…なさそうですわね」

 

ラ「あの少女二人の近くに、わけのわからない羽とリボンの生えた物体が浮いていたが…瑛斗、あれは何なのだ?」

 

瑛「…よくわかんないけど、魔法少女ってああいうもんじゃない?」

 

 

後書き

 

あまりの暑さに八月は生きていけるかどうか不安を感じております…!

 

さてというわけで二周年企画の番外編が始まりました! 前後編の二本立てでございます!

 

ケモ耳!

 

もふもふ!

 

もふもふ is 神!

 

しかしケモ耳ケモ尻尾が生えた女子達は少し様子が変ですね。どうしちゃったんでしょうか。

 

次回は番外編の後編! 夜のIS学園で、ケモ耳ケモ尻尾を生やした女子達にさらなる異変が…!

 

次回もお楽しみに!

 

動物…夜行性……うっ、頭が。


 
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