No.663088

九番目の熾天使・外伝~マーセナリーズ・クリード~

okakaさん

第十一話です
関係ないけど世間はチョコレート一色ですが、そんな中自分はうまい棒かじってます。

2014-02-14 07:48:25 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:745   閲覧ユーザー数:699

第十一話

 

 

【アナトリアの傭兵】――――――かつては伝説とまで呼ばれた腕利きのレイヴンであった。が、国家解体戦争において重傷を負い、その後アナトリアコロニーによって保護される。

その後、決して高くないとはいえAMS適正を有していることが判明し、ネクスト戦力それ自体を商品とすることで、アナトリアを立て直すというエミール・グスタフの計画に則り、リンクスになり戦場を駆け巡った男。

一節によると、その戦果はオリジナルを凌駕する程のものであったという。――――――――――――

 

 

「・・・3日も海底に沈んでたのに無事なのか?」

 

 

【彼】の元へと移動する途中、フィオナの話を聞き、疑問に思った岡島は自分の記憶を頼りにそう返した。自分が目撃した戦闘では確かに誰も撃墜された機体から脱出する様子はなかった。なので岡島は全員が死亡、もしくは瀕死状態であると思っていたのだ。しかし、その疑問にフィオナは少し笑いながら返す。

 

 

「ええ、彼は無事よ。まぁ、当然ね。だって【彼は機体に搭乗していなかったんだから】・・・」

 

「乗ってない?ネクストはパイロットのリンクスがいないと起動しないはずじゃあ・・・!【遠隔操作】か!」

 

「あら、正解よ、察しが良いわね」

 

 

一発で回答を導き出した岡島にフィオナは少し感心しながら種明かしをした。

 

 

「確かに普通ネクストはリンクスを搭乗させないと起動しないわ。例外は無人化されたAI制御のネクストだけ。でも、ネクスト用AIはそこまでうまく機能しないの。解りやすく言うなら・・・ええと・・・」

 

「センスが無い?」

 

 

「そうね、それが的確な答えかしら。でもそれじゃあラインアークは守れない。だから私達は【遠隔操作】という結論に至ったのよ。私の父はネクストの制御技術に関する技術者だったの、その研究成果の中に遠隔化技術があったのは幸運だったわ。後はプロフェッサーに聞いたほうが詳しく教えてくれるわよ?」

 

 

フィオナの話を聞いていた岡島は彼女の言葉に疑問を覚える。そう、今の話し方ではまるで――――――

 

 

「まるで最初から遠隔操作していたみたいだな」

 

 

岡島の言葉にフィオナは少しだけ顔を俯かせ、まるで懺悔でもするかのように答えた。

 

 

「ええ、彼はもう、【ネクストに乗れない体】だったの・・・」

 

 

 

ネクストは操縦者に適性が無いと操れず、仮に操縦が可能であっても適性が低い者は強い精神負荷による凄まじい苦痛を伴う。それは適正の高くなかった【彼】も例外ではなかった。

心身を犠牲にすることで、AMS適性が低いにもかかわらず優れた戦闘能力を発揮していたツケは非常に大きく、【彼】はもう長くなく、自ら動くことさえままならない状態だという。それを聞いた岡島はそれでも【彼】にまた戦ってもらうことしかできなかった彼女たちの苦悩の一端を垣間見た気がした。

でも、いやだからこそ、岡島の話は渡りに船だったのだろう。文字通り【他に選択肢が無い】状況だったのだから。

 

 

「あー・・・まぁ・・・その・・・気休めにもならんが・・・今度は俺がいる。もう、【彼】一人に負担をかけたりしなくていいんだ、【彼】に残りの余生をゆっくり過ごしてもらえるように俺達で頑張ればいい・・・それに確証はないが・・・もしかしたら・・・」

 

「もしかしたら?」

 

「・・・いや、やめておくよ。まだ先が見えない状態で言うべきことじゃない」

 

 

 

言いよどんだ岡島に首を傾げたフィオナだが、すぐに前を向き直すと奥の扉を指さした。

 

 

「ここよ、ここに彼はいる。起きていれば会話もできるはずよ」

 

 

そう言うとフィオナはポケットからカードキーを取り出しスロットに通した。ピピッという小さな電子音がロックの解除を知らせ扉が開く。ここに【アナトリアの傭兵】がいるのだ。

岡島は少しだけ襟元を正しフィオナに続いて部屋に入っていった。――――――

 

 

 

 

 

 

――――――そこには椅子型の機械に繋がれ、こちらを見る一人のやせ細った男性がいた。その鷹の如き鋭い眼光に岡島は畏怖と尊敬の念を感じた。この男はまだ戦うことを諦めていない。

たとえ自らがどんなに傷つこうと信念を貫き通す。やせ細った体に漲る覇気がそう告げていた。

そんな瞳に見つめられた岡島は敬意を払い、自ら頭を下げ、名乗った。

 

 

 

「初めまして、自分は岡島一城といいます。お会いできて光栄です。【アナトリアの傭兵】殿」

 

 

 

【彼】は近くのモニターを一瞥し、岡島にそこを見るよう促した。岡島はそこに視線を向ける。するとそこに【彼】の言葉が映し出された。

 

 

 

『やぁ、初めまして、岡島くん。ここに来るまでのことはフィオナからのメールで確認してるよ。私の事は【レイヴン】でいい。ここの皆はそう呼ぶんだ。私もレイヴン時代の負傷が原因で自分の名前を忘れてしまってね・・・さて・・・早速だが君に頼みがあるんだ、なに、簡単だよ。あの機体を―――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――ホワイト・グリントを沈めてやってくれないか?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――ちょうど同じ頃、ラインアーク近海海上にて――――――――

 

 

「あああああああああっ!心配だぁぁぁぁぁぁっ!義兄さん達無事でいてくれてよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

 

一人の女性と思われる人物がまとめた黒い長髪を振り乱してタンカーの上で悶えている。それを見たもう一人の女性は少し呆れながらも優しく返す。

 

 

「はいはい、大丈夫よぉ~だってとっても強いんでしょ?それにカラードからリンクスも雇ったらしいし、何かあってもきっと生き延びるわよ」

 

「そうだと良いんだけど・・・ああでも心配なのに変わりはない。物資の輸送を優先してタンカーで来たから企業の奴らが先に来てるなんてことも・・・」

 

 

その女性らしき人物の言葉にもう一人の女性は双眼鏡を覗きながら返事を返した。

 

 

「・・・その予想は当たってるみたいね、企業連のAFがいくつか見えるわ・・・どうやら何か探してるみたいねぇ・・・」

 

「!姉者!私あいつらちょっとぶっ飛ばしてくる!」

 

 

そう行って格納庫へ向かおうとした女性と思われる人物の襟をもう一人の女性が掴んだ。

 

 

「ちょっと待ちなさい」

 

「ぐぇっ!・・・何をするんだ姉者!」

 

「いいから落ち着きなさい。あのAF・・・見たところまだ目的の物を見つけてないみたい、それに私達だけならともかく、この物資を守りながら AFを複数相手するのは得策とは言えないわ。それにもしAFの中にラインアークの残党が捕まってたらどうするの?もう少し様子を見て、それから行動しましょう。きっと無事よ?ね?―――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――アン娘ちゃん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

第十一話です。ついに【彼】との邂逅です。彼の設定などについてはいろいろと考えた結果、死期が近いのでは?と私のフロム脳が告げたので・・・ご了承くださいますとありがたいです。(主にリンクスが短命であること、AMS適正、Gによる負荷、そして何よりコジマ汚染が原因だと思ってます)

次回は、ついに姿を見せた【彼】の言葉の真意、それに対する岡島の回答が主軸になっていきます。・・・アン娘さん姉妹には申し訳ないと思いますが今しばらくお待ちください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 
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