No.654733

Need For Speed TOHO Most Wanted 第9話 不幸の番犬

華「人の迷惑も顧みず、ストリートレースという暴走行為を平気でやってて恥ずかしくないのですか!!」

勇「恥ずかしくないからレースやってるんだよ!!」


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2014-01-14 22:02:27 投稿 / 全2ページ    総閲覧数:593   閲覧ユーザー数:591

 あれから私はいい調子で勝ち進み、ナンバー14の「ダークネス(ルーミア)」を撃破し、波に乗っていた。

「魔理沙、こっちだ」

 この日も勇儀とパルスィに呼ばれ、次のランカーの情報を受け取りにいつもの和食料理屋を訪れた。

「順調だね。この調子でガンガン進んで早くミスとの勝負が見たいもんだ」

「そうパパッとうまくいくもんでもないぜ勇儀。今回のダークネス戦、えらい目にあったんだぜ」

 ダークネス本人は大した実力はなかったが、元警察官という過去がある関係か、彼女と警察はかなりの因縁があったらしく、データベースを見ても追跡ユニットの破壊台数は全ブラックリスト中トップだった。バトル中にも警察が介入してしまい、彼女を捕まえようと躍起になっていた向こうはかなりの大隊で押しかけ、想定外の大事になってしまったのだ。どうにかこうにかバトルしながらも追跡を振り切り、勝利をおさめた。おかげでしばらくはバウンティを気にする必要はなさそうだが、あんな目に遭うのは二度とゴメンだ。

「んで?次のランカーはいったいどいつなんだ?」

 早々と本題を切り出す私に、パルスィは黒谷ヤマメが送ってくれた資料をテーブルに広げる。

「次のランカーはコイツよ。犬走椛、周りからは『ガルム』って呼ばれてるわ」

「ガルム?なんだそのどこぞの鬼神様みたいな呼び名は」

 翼の端を青く塗装した鋼鉄の鷲に乗った傭兵が頭に浮かぶ。そういえばつい最近どっかの国のTV番組が特集ドキュメンタリーをやってたっけな。

「こいつは半永久的にナンバー13の座にいるわ。ミスがお前のクルマで勝ち上がっていって一時的に順位を落とした時もすぐにダークネスを抜いて順位を戻したの。半永久的に13の座にいるから、『不幸の番犬』とも呼ばれてるわ」

「なるほど、それで『ガルム』か」

 ガルムと聞くと例の鬼神様を思い浮かべる人も多いが、元々は北欧神話に出てくる冥界につながる館の番犬だという話を聞いたことがあるので、不幸の象徴である13という数字と合わせて意味を成してるんだろう。

 ヤマメが撮ったという写真を見ると、白髪のショートカットに山伏みたいな小さな帽子をかぶっていて、左右対称に跳ね上がった髪の毛が獣耳っぽく見える女が写っていた。

「今までの二人と違って、こいつはちょっとキレるわよ。ミスと一緒にいるのをよく見かけるらしいし、こいつの連れがもう少し上の順位にいる。こいつ自身の順位が低いからって甘く見ない方がいいわ。一応ミス以外の挑戦者はかなり長い間負かしてきてるみたい」

 クルマの写真を見ると、白ベースに赤いボディバイナルが貼られたワイドボディのRX-8。大型のインタークーラーがバンパー奥に見えるのを見ると、どうやらターボチューンのようだ。

「それからなんだけど」

「?」

「こいつを倒すと、一気に行動範囲が広くなるわ。彼女まではローズウッドでまとまってるんだけど、この先になると海岸地域をテリトリーにしている奴も出てくるから、あっちの方にもどこかにセーフハウスを置いとくと便利かもね」

「なるほどね・・・」

 そのあたりはアリスに任せるとしよう。現在彼女には、私に賭けてるということを条件に、セーフハウスの用意や警察の情報の提供をしてもらっている。まぁここまでしてもらっているし、見返りはある程度必要だろう。

「ん?」

 突然私の携帯電話が鳴った。電話のようだが、ディスプレイに表示されているのは見覚えのない番号だった。

「モシモシ?」

『御機嫌よう』

 相手の第一声に私の額に青筋が浮かんだ。

「・・・何の用だ」

『また懲りずに戻って来たようね。私が恋しかったのかしら?』

 耳障りな笑い声が電話越しに聞こえる。

『ああそうだ、貴方から頂いたクルマだけど、中々の物ね。気に入ったわ。どうかしら?私の専属のエンジニアにでもならないかと思ってね』

「論外だ」

 相手に依頼を速攻で蹴っ飛ばす。誰がこんな奴のエンジニアになんかなるか。

『まぁ、今度は痛い目に遭わないよう、大人しくしてる事ね。それじゃ』

 言いたいことだけ言ってミスは電話を切った。私は舌を打って携帯を無造作にテーブルに放り投げた。

「・・・ミスか」

 勇儀が聞いてきた。声は冷静のようだが瞳孔が開いている。

「ああ。フザけた奴だぜ。いいように八百長働いて今度はエンジニアのお誘いだ。バカバカしいぜまったく」

 どこまでも人をバカにしたやつだ。完膚なきまでに叩きのめしたい気分だぜ。

「まぁ、何にしてもまずは目の前の敵から叩いてかないと行き着くところには行き着かないわ。ピッチ上げていきましょうか」

「だね。人もクルマもこれだけの逸材なんだ。こんなとこで手間取ってる暇はないよ」

「分かってるぜ」

 ガルムのデータを受け取り、私達は店を後にした。

「すげぇーっ!?ケツ振ってる!」

 コーナー出口にいたギャラリーが騒ぐ。余裕のファンサービスで出口の縁石を掠め、次のコーナーへ向けて加速する。

「あんな重たいベンツの車体をあそこまで自由に振り回してんだもんなー、もはや神業だよ」

「噂じゃあのベンツ、元々ベイビューの方で一番取ってたやつらしいぜ」

「あの稲妻か!?こっちに来てたのか・・・。こりゃしばらくは退屈しない日々が続きそうだな」

 休む間もない私の進撃に、次第に周りの噂も大きくなっていた。

 

「ナイスラン、魔理沙」

 レースを終え、セーフハウスに戻った私にアリスがサイダーを差し入れに持ってきた。

「ああ、サンキュ。イイ匂いだろ?」

 アリスは手にした札束を満足げに数えている。今日も大儲けだったようだ。

「ええ。たまにはあなたも嗅いでみたら?」

 持っていた金を少し私に分けてくれた。

「なんだ、気前いいじゃんか。明日雪でも振るんじゃないか?」

「失礼ね。この前勇儀からミスが挑発の電話を寄越したって聞いて少し気を利かせただけよ」

 あの一件に、アリスも相当気が立っているようだった。

「?またか・・・」

 また見知らぬ番号から電話がかかってきた。今私の携帯にはミスの番号は『バカお嬢』の名前で登録してあるのであいつではないようだ。

「誰だ?」

『私です。ガルムです』

 電話の主は意外な人物だった。そういえばパルスィがこの女はミスの連れだというようなこと言ってたな。そのルートで番号を入手したんだろう。

「なんだ?」

『単刀直入に言います。私は貴女やほかの連中のことはどうでもいい。ですが私の邪魔だけはしないようにという忠告です。ここは私のテリトリーですので。私が消えろと言って消えればそれでいいんですよ』

 こっちを威圧するような感じはしない。まるでクレーマーを対処するような営業マンの口調だった。

「忠告を無視したら?」

『あなたを完膚なきまでに叩き潰すまでです。それでは』

 一方的にしゃべられ、電話を切られた。

「またミスから電話?」

 振り向いた先には呆れ顔のアリス。

「いや、例の番犬様からだぜ。ここは私のシマだから邪魔だけはすんな、とさ。ま、忠告なんて聞く気もないけどな」

 とりあえず今の番号を「駄犬」の名前で登録しておく。

「あと二勝か。さっさと片付けて、躾の悪いワン公は黙らせようぜ」

「そうね。また情報が入ったらこっちも連絡するわ」

 私はアリスと別れ、次のバトル会場へ足を運ぶ。

 


 
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