No.641311

Need For Speed TOHO Most Wanted  第三話 挑戦

 三話になります。ブラックリストランカーや、その使用車両については追って別で投稿します。

  本作品は上海アリス劇団様・東方projectとエレクトロニック・アーツ様・Need For Speed Most Wantedの二次創作作品です。
 原作ブレイク、キャラ崩壊、独自解釈設定を多く含みます。物語そのものや、二次設定の使用、キャラクターの人選等不快感を覚える方は閲覧をお控えください。
 また、この物語はフィクションです。劇中のカーアクション等は非常に危険です。実際のクルマを運転するときは法規上の交通ルール・モラル面の交通マナーを守り、安全運転を心がけましょう。

2013-11-30 15:10:59 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:755   閲覧ユーザー数:755

 それから数日。サクヤとのバトルも効いてるのか、しばらくレースで勝ち続けて街でも噂になってきたころ。

 

 この日も私はいつものようにレースの場所へ集まる。最初の接触以来、まだミスとのコンタクトはない。

「あれ?おい!そこのあんた!」

 私の隣から声が聞こえた。反射的にそちらを向くと、C6型のコルベットに乗った女が窓から顔を出していた。

「そう、BMのあんただよ!あんた、昔ベイビューで走ってなかったかい?」

 金髪のロングヘアに少し目つきの悪い顔つき。なんだか昔の「姐御」みたいな感じの女だ。

「?ああ、確かに走ってたけど、なんでそれを?」

 すると姐御肌の女は嬉しそうに笑い、

「ああやっぱりそうかい!あたしも昔走ってたからね、ベイビューは。あんたの噂はよく聞いてたよ。あんた、「力の勇儀」って聞いたことないかい?」

 その名には心当たりがあった。こっちと違い女性ドライバーが少ないベイビューでは腕利きの女がいればすぐに噂になる。「力の勇儀」という二つ名も、何度か向こうで耳にしているし、実際にバトルを見ていたこともあった。当時はマスタングに乗っていた記憶があるが。

 直接の面識はなかったが、機会があれば一度走ってみたいと思っていたやつだ。

「どうだい、あたしと一戦交えないかい?」

「面白そうだ。受けて立ってやるよ」

「よーし決まりだ」

 M3のナビにコースマップが表示される。3周の周回レースだ。

 私と勇儀、他二台のクルマがスタートへ並ぶ。スターターが真ん中に立ち、高々と手を上げる。

 勢いよくスターターの手が振り下ろされ、レースがスタートする。

「!?」

 同時、一台のクルマの前輪が持ち上がった。勇儀のコルベットだ。スタートダッシュでウィリーって、どんだけのパワーだよ・・・!

 100メートルほど前輪を持ち上げたコルベットは最初のコーナー手前で持ち上げたフロントを落とし、強引にパワードリフトに持ち込む。

(さすが「力の勇儀」と呼ばれるだけはあるな・・・!)

 レースは勇儀先頭、私が二位、それに他二台が続く形勢となる。

「くっそ・・・!」

 ハイウェイ区間になるとパワーの差は顕著だ。コルベットとM3の差はじわじわと開いていく。おそらく800から900馬力・・・、いやそれ以上は出ているだろう。

「・・・?」

 ここで、私は前を走る勇儀のコルベットに違和感を感じる。

(コルベットのタイヤ、やけに太くないか?)

 リアバンパー下から除くリアタイヤは、普通じゃ考えられないような太さだった。あのレベルのサイズはおそらくドラッグスリックタイヤだ。

(となると、タイヤの寿命は圧倒的に短いはずだ。二周目の後半あたりが勝負どころか・・・。それまでこのバケモノコルベットについて行けるかがカギになるな)

 

 ハイウェイを下りた時点ではすでにコルベットの差はかなり広がってしまっていた。タイトコーナーのターンインからコーナーリングではある程度詰められるが、トラクションのバケモノのようなドラッグスリックでもホイルスピンを起こして左右にマシンを振るほどのパワーでねじ伏せられ、あっさり立ち上がりでその差を奪い返されてしまう。

 二周目。順位は変わらず、私と勇儀の差は7秒ほど。これ以上のマージンを与えるのはマズい。勇儀のタイヤがタレ始める時間との勝負だ。

 圧倒的なパワーを使いハイウェイ区間でさらに勇儀は私との差を広げる。ここからが勝負の市街地区間だ。

(来るか・・・?)

 そう思った直後。コーナー立ち上がりで勇儀の挙動が乱れた。やはりここでタイヤの性能低下が顕著になってきた。こちらのタイヤはまだ余力がある。ここが正念場だ。

 圧倒的パワーを持て余したコルベットとM3の差は次第に縮まっていく。三周目に入る頃には二台の差は2秒ほどにまで縮まっていた。

 

 最後の周。勇儀のタイヤはハイウェイ区間もまともに踏めないくらいに消耗していた。一般車を避けるために少しでも乱暴なハンドル操作をすれば簡単に挙動が乱れてしまう。おかげで自慢のパワーも影を潜め、私との差を広げられない。

 市街地に入る。二つもコーナーを抜ければもうコルベットのテールは目の前で尻を振って待っている。

 直後、何も知らない一般車が横道から顔を出した。私と勇儀は同時に急ブレーキ、左右に分かれて一般車を避ける。しかしタイヤが完全に終わってしまっている勇儀は乱れた挙動を立て直せず、その場でスピンしてしまった。これで決まりだ。

 スピンした勇儀は何とかクルマを立て直し、360°ターンで再スタート。しかしコルベットのノーズが前を向いたときにはすでに私のM3は遥か彼方だった。

 発煙筒が焚かれたフィニッシュラインを越え、レースは私の勝利に終わる。勇儀は痛恨のスピンで二位。それでも後方の二台に抜かれなかったのは流石と言えよう。

 

「やっぱやるなあんた。恐れ入ったよ」

「いや、あんたこそ。二周目のハイウェイであれ以上差が広がってたら危なかったぜ」

 レースを終え、賞金を受け取った後、私は勇儀と交友を深めていた。

「やっぱこのタイヤじゃ駄目だねぇ、ベイビューじゃこれでずっと通ってたんだけどさ」

「圧倒的に寿命が短すぎんだよ。あっちで乗ってたマスタングより相当パワーあるだろ、そのクルマ。少しは持続性ってもんを覚えた方がいいぜ、あんた」

 爆発的なあの速さは確かに凄まじかったが、あんな短時間で終わってしまうのはあまりに短すぎる。

「そーさね・・・、こいつのトラクションには慣れちまったんで、今からポンと変えれるもんじゃないけど・・・。あのレースのザマじゃ変えざるを得ないかもね」

 そういって立ち上がり、私に手を差し出す勇儀。

「なかなか楽しい勝負だったよ。同じベイビュー出身同士、仲良くやっていこうじゃないか」

 やはりこっちの人間と違い、ベイビューの人間は情が厚くて気分がいい。私は勇儀のその手を握り返す。

「ああ、また一緒に走ろうぜ。ここは居心地がいいとは言えないしな、あんたのような人間は安らぎにもなるぜ」

「そう行ってもらえるとあたしも嬉しいね。よかったら連絡先を交換しないかい?ここではあたしの方が先輩だし、いろいろ教えられることもあるからね」

「ああ、助かるぜ。ちょっと待っててくれ・・・」

 私は携帯を取り出し、勇儀と番号とアドレスを交換する。

「よし、オッケーだぜ。じゃあ私は別のバトルへ行くぜ」

「ああ、また困ったことがあったら連絡してくれ。またな」

 勇儀は豪快に二回のドーナツターンを披露し、私に手を振って去って行った。

 

「さーって、私も次の会場に向かうか」

 と、私がM3のドアに手をかけた直後、豪快なタイヤのスキール音とともに、見覚えのあるフォードGTがドリフトしながら私の横に停車した。

「御機嫌よう」

 やはり乗っていたのはミス。ついに動いたようだ。

「何の用だ?」

「随分と派手に暴れ回っているようね。でも、私達からすれば、貴女のやっていることは只のお遊びに過ぎないわ。私達ブラックリストランカーは、互いにクルマを賭けてバトルを行うのよ」

「!」

 これも事前に調べてあったことだ。ブラックリストランカーとのバトルでは、賭け金ではなく自分のクルマを賭けて走り、勝った方が相手のクルマを貰える・・・。まさに勝てば天国、負ければ地獄だ。

「貴女にその度胸があるのかしら?私と勝負したいと言うならこの地図の印の場所に来なさい。軽く捻り潰してあげるわ」

 ミスは窓を閉め、有り余るV8の咆哮とタイヤの焦げた臭いを残して走り去っていく。

 私は渡された地図を開く。

「ハイウェイの脇のスタジアム入口に二日後午後2時・・・。あそこだな」

 彼女とのバトルの日程と場所を確認し、私は次のバトル会場へ向かった。

 


 
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