No.613995

太守一刀と猫耳軍師 第10話

黒天さん

前回に引き続き拠点……

今回は詠と月です。あと司馬懿登場です。

今回投稿が遅くなったのはだいたい司馬懿のせい

2013-08-30 16:42:01 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:11244   閲覧ユーザー数:8174

翌日、昨日はたまたま仕事が少なくて街に出ることはできたけど、この日も仕事が山のようだった。

 

汜水関や虎牢関での活躍を聞いて陣営傘下に入りたいといってくる街が多く、その対応におわれている事もある。

 

傘下の陣営が多ければ当然のように仕事は増える。

 

その数は幽州全域にもなっている。ちらほらと幽州の外の街もそう言ってくるし。

 

「流石に朝から働き詰めってのは疲れるなぁ、大分慣れてきつつあるけど」

 

俺は作業机に積まれた書簡の山と戦っていた。最近は桂花と朱里のお陰で読み書きには苦労しなくなったけどこの量には気圧される。

 

肩を回したり首を捻ったりして小休止を入れていると、とんとんと、控えめにドアがノックされる。

 

「開いてるよ」

 

このノックの仕方は多分愛紗や桂花ではないと思うけど、不意打ちだったらイヤなので仕事してるフリをしつつ、書簡に視線を落とす。

 

「……あの、お疲れ様です。お茶を……もってきました」

 

部屋に入ってきたのは月。その顔を見るだけでなんだか癒やされた気分になる。

 

ちなみに月の服はメイド服、詠もここには居ないがメイド服を着せている。

 

そして服を選んだ時に思った事。パンストってこの時代じゃオーパーツなんじゃ……。

 

嬉しいからいいんだけど。この世界では衣服系にはツッコミを入れてはいけないのかもしれない。

 

「ありがとう、月は気が利くなぁ……。入ってきていいよ」

 

さりげなく、真名で呼んでいるが、普段董卓と呼ぶわけにもいかないので真名で呼ばせてもらっている。

 

月自身もイヤでは無さそうだし。

 

書簡の山を床に降ろしてスペースを開けてと……。

 

月が机の上に茶器を置いて、お茶を注いでくれる。

 

こうしてたまにお茶を持ってきてくれるようになったのは、街に帰って来てから数日後からの事。

 

このぐらいの時間になると今日はお茶持ってきてくれるんだろうかと期待する俺がいたり。

 

「……どうぞ」

 

「そういえば詠は?」

 

「詠ちゃんは、桂花さんと……」

 

「ん、あー。そっちの仕事中か」

 

納得。詠も優秀な軍師だから遊ばせとくのはもったいない。ってことで、手が開いてる時に桂花や朱里の手伝いをしてもらうことにしている。

 

「……あの、詠ちゃんも一緒のほうがよかったですか?」

 

「そうだなぁ、詠とはあんまりまだ話しができてないし、たまには話したいとおもってね」

 

「呼んできましょうか……?」

 

「いや、多分もうすぐ来るとおもうからいいよ」

 

詠と桂花はキャラがかぶってるせいか、くだらない事でよくモメるらしい。

 

重要な事ではモメないらしいので、逆にあるいみ仲がいいのかもしれないが。

噂をしているとすごい勢いで扉が開いて、詠と桂花が現れる。そのうち扉が壊れるぞ……。

 

あぁ、やっぱりモメたか……。

 

「北郷!」「ちょっとあんた!」

 

……。桂花が俺を呼ぶ時にいまだに苗字呼びなのがちょっとさみしいなぁ。じゃなくて

 

「はいはい、取り敢えず落ち着いて一から話して」

 

2人をどうにかなだめて話しを聞いてみるとやっぱりくだらない理由だった。

 

どうにも些細な所で意見が合わずに衝突したらしい。

 

「なんでこの些細な事で喧嘩になるかな、二人共。この前もだったよね」

 

「うぅ……」

 

「取り敢えず、その仕事は俺が預かっとく。仕事仕事で疲れてるからってのもあるだろうし、4人でちょっと休憩しないか?

 

丁度月がお茶持ってきてくれてた所だし、お菓子もあるし」

 

この菓子というのは昨日買った菓子のこと。本当は明日の3人会議用に買ってきたんだけど、朱里も桃が好きだし。

 

「それはご主人様としての命令なわけ? ボクは桂花とお茶なんかしたくないんだけど」

 

「イヤなら1人で仕事に戻ればいいんじゃないかしら? 私はありがたくいただいていくけど」

 

「桂花」「詠ちゃん」

 

月と2人揃ってため息。この2人、なんでこんなに相性悪いんだろう。近親憎悪かなぁ……。

「詠ちゃん! だめだよ、そんな言い方。それに、ご主人様が折角気を使ってくれたのに……」

 

「桂花ももうちょっと仲良くしようっていう気はないの?」

 

「私はあるわよ。詠に歩み寄る気が無いのがいけないのよ」

 

「なっ、あんたよくそんなことが言えるわね!」

 

しばしにらみ合い。ふん、とお互いそっぽを向く。

 

「いいから、取り敢えず座るように」

 

詠と桂花を並んで座らせて、その対面に俺と月が座る。目を合わせたらまた衝突しそうな気がするし、この2人。

 

当然、詠の正面が月、桂花の正面が俺だ。

 

俺は買ってきた菓子を切り分けて、その間に月がお茶を入れてくれる。

 

「変わったお菓子ね」

 

見たことがない様子の詠はそれがどういうものだか探るような目つき。対して桂花は嬉しそうな顔

 

桂花も好きだもんなぁ、これ……。詠の機嫌もこれで治ってくれると嬉しいんだけど。

 

「ん、おいしい。これ、あそこのお店の新作よね?」

 

「ほんと、おいしい。どういうお菓子なのこれ」

 

「そうそう、昨日街に出た時買ってきたんだよ。どういう、って言われても困るけど、焼き菓子だよ。月、お茶もういっぱいもらってもいいかな?」

 

「あ、はい……」

 

「月は座ってていいわ、私がいれてあげる」

 

と、今度は桂花がお茶を入れてくれる。そういえば、月にお茶の入れ方教えたりしてたんだっけ。

 

うーむ、桂花と月は仲良しなんだよなぁ。

 

……、あれ、ってことはひょっとして、詠が桂花を気に入らないのは自分と似たようなのが月の傍によく居るからなのか?

 

桂花に月を取られちゃうような気がして嫉妬してるとか……。

 

じゃあ、桂花が詠を気に入らないのはなんでだ?

「桂花もお茶いれるのうまいよなぁ」

 

「桂花さんは私の先生ですから……」

 

今、桂花が一瞬詠の方に視線を向けて、勝ち誇ったような笑みを浮かべたような気がするのは気のせいだろうか……。

 

考えながらお茶をすする。うん、いつもながら桂花の入れたお茶もおいしい。

 

「……もういっぱい」

 

「3人会議の時もそうだけど、あなたはお茶好きよね」

 

若干呆れたような顔をしながら、桂花が次のお茶を入れようとすると。

 

「待った、今度はボクがいれるよ!」

 

これは、桂花と張り合うつもりだな……。まぁ口には出さないけど。

 

「あなたお茶いれられたのね」

 

詠はそういう桂花のことをひと睨みしてから、土瓶を持ち上げた。

 

というか、まださっき桂花が新しくいれたのが残ってるからいれるもクソも無いと思うのだが。

 

なんか、詠の手が震えてる気がする。ていうか硬直してる?

 

「何を硬直してるんだ……?」

 

「な、なんでもないわよ……ゆっくり、ゆっくり……」

 

「もしかして、湯のみにお茶を注ぐくらいのこともやったことないのかしら?」

 

「うるさいな……あっ!?」

 

桂花のほうを睨んだ拍子に土瓶が湯のみにあたって、俺の頭に裏返しにかぶさる形で飛んできた。

 

逆にどうやったらこんな器用なことをできるのか知りたい。

 

「ごっ、ご主人様!? 大丈夫ですか!」

 

「く、くく……もうだめ……」

 

俺を心配してくれる月に、腹を抱えて笑う桂花。呆然とした表情の詠。

 

混沌としてるなぁ……。

「い、今のはほんのちょっとした手違いよ、気にしたら負けよ」

 

「どんな手違いがあったらこんな事になるんだ……、曲芸みたいじゃないか」

 

「詠ちゃん、ご主人様にちゃんと謝らないとだめだよ」

 

「あ、う……、うぅ、こ、今回はボクが悪かったわ」

 

「怪我したわけでもないし別に気にしてないけどさ。詠はこういう細かい仕事はむいてないのかな」

 

「そ、そうよ! ボクはいつも大局を見据えて動いてるんだから、こんな些細な事を気にしたりしないんだからね」

 

「軍師がそんな大雑把じゃだめだとおもうわよ」

 

あ、桂花が復活した。

 

「桂花もあんまり詠をいじめないように」

 

4人で楽しく?会話を楽しみながらしっかりと休憩し、俺達は仕事に戻っていった。

 

結局、桂花がなんで詠と対立するんだろう、っていう謎はとけなかったが。

 

────────────────────

 

今日も今日とて仕事三昧、肩は凝るし眠いし。

 

「やっぱりそろそろ警邏の人員を増やさないとだめかぁ……。治安の悪い区域があるっていう話しも増えてきたし

 

とはいってもあんまり人員を割けないからなぁ」

 

愛紗に任せとくか、この案件は。

 

「さて、次は……と」

 

文官の一次試験の結果か。結構推薦で来る人も多いんだけど、推薦されたわりにお粗末だったりする人が多い面もありだしで、

 

言うなれば入社試験をやることにした、原則として例外なく。問題は桂花と朱里に作ってもらったんだよな。

 

こんなのはさっと流し見すればいいだけなのでお茶でも飲みながら……。

 

ドアがノックされたので開いてるよーなんていいながら。

 

「ぶっ!」

 

「ちょっ! 何やってるのよ汚い!」

 

思い切りお茶吹いた、どうにか横を向いて何も無い方向に吹いたけど。丁度入ってきた桂花に怒られたけど、それどころではない。

 

司馬懿仲達……。確か魏の軍師だったか? 孔明と何度もやりあったライバル的な存在だったと記憶してるが……。

 

なんでその名前がウチ文官試験の名簿にあるんだよ。

 

そういえば反董卓連合での戦いのあと、遠方からわざわざ士官したいって来る人がいるけど、ひょっとしてそうなのか……?

 

「桂花、この名簿の人って今何やってるの?」

 

「まだ一次試験が終わったとこだから、合格した人は二次試験まで待機中ってとこかしら」

 

「ちょっと気になる子がいるんだけど」

 

「けだもの、変態」

 

「違うから! そういうんじゃないから!」

 

「あなたの『知ってる人』なのかしら」

 

「うん、知ってる。多分桂花や朱里と同じぐらいの実力者じゃないかなーって踏んでるんだけど」

 

「そう言われても、自分の目で確かめないとなんとも言えないわよ。

 

もし本当にそれだけの実力があるなら、二次試験なんてのんきな事いってないで早く仕事をしてもらいたいものだけど……。」

 

「じゃあそうしよう、早くに仕事してもらえるならそれだけ桂花や朱里の負担が減る事になるしね」

 

「でも原則例外無しに試験させるんでしょ? 素通しさせたら他に示しがつかないわよ」

 

「原則と、つけたからには必要な時は例外を許容できるってことだよ。この司馬懿仲達、試験の成績は相当良かったんでしょ?」

 

「ええ、試験の成績は一番良かったわよ」

 

それなら、と、筆を走らせてさらさらと文字を書き桂花に紙を渡す。

 

「なになに……、一次試験成績上位者に、軍師:諸葛亮孔明、荀彧文若との面談による直接試験の機会を与える。まだ私の仕事増やす気?」

 

「そこは時間の先行投資とおもって」

 

「はぁ……、まぁいいわよ。これだけ曖昧な書き方をしておけば、やるのは気になった人が居る時だけでいいし。で、その直接試験はいつやるのよ」

 

「んー、今日言って明日っていうんじゃ相手も困るだろうし、明後日かその次か、できるだけ早くってことで相手に打診してみて」

 

「面談なら試験問題を作る必要も無いし……。政治や軍事について論議してみろってことでしょ?

 

それならいつでもできるから、そうね、司馬懿にそう伝えとくわ」

 

そんなわけで試験は3日後に行われ、朝から晩まで休憩を挟んで丸一日続いた。

 

聞くまでもなかったけど試験は見事に合格したらしい。

 

「はじめまして。性は司馬、名は懿、字は仲達、真名は紫青(シセイ)ともうします、この度は特別にお引き立て頂いたと聞いてご挨拶に参りました」

 

と、試験の翌日に桂花につれられて早速司馬懿が俺の所に挨拶にきた。

 

第一印象は落ち着いた上品な子。背は朱里と同じぐらいかやや高いぐらいか。

 

黒い腰までの髪に紫色の瞳、それに合わせたかのような薄めの紫を基調にした服。

 

そういえば司馬家っていえば名家だっけ? どれぐらいの時代からそうだったかは忘れたけど。

 

紫ってたしか、高貴とか上品って意味があったと思うし。

 

同じ名家でも袁紹と違ってイヤミな感じがぜんぜんないなぁ……。

 

「固くならないでいいよ、それが素ならそれでもいいけど。俺は北郷一刀。一応ここの太守をやってるよ。よろしくね、司馬懿さん」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

深々と礼をする。どことなーく表情が硬い気がするなぁ……。やっぱり緊張してるのだろうか。

 

その日のうちに朱里と桂花に聞いた所、司馬懿の実力なら朱里、桂花に続く重要ポストにおいても大丈夫だろうとのこと

 

ただ、ここのやり方に慣れてもらわないといけないから当面朱里と桂花の補佐、という形で仕事をしてもらう事になった。

 

「ちょっと、なんで私の時はいきなり呼び捨てだったのに司馬懿はさん付けなのよ」

 

司馬懿をつれてきた桂花が食ってかかってきた、いや確かにそうですけど、そこ怒るとこ!?

 

「え、いやー……、字面というか口に出した感じで何となくさん付けしなきゃいけないきがして」

 

「あ、あの、真名で呼んでいただいて構いませんよ」

 

「え、いいの?」

 

「汜水関や虎牢関での戦いぶりを聞いてわざわざここまできましたから、ご主人様を認めたからこそここまで来たということですので」

 

「えーっと、じゃあよろしく、紫青」

 

意外とクセの無い子みたいで正直安心した。俺の知ってる軍師系の子ってクセのある子ばっかりだし。

 

蓋を開けたらびっくり、なんてことにならなきゃいいなぁ……。などと思うのであった。

 

 

あとがき

 

どうも、黒天です。今回更新が遅くなったのはだいたい司馬懿の(真名が決まらなかった)せいです。

 

朱里が朱=赤=暖色系 なので 司馬懿は寒色系の色をつけた名前にしたかったんですが中々いいのがない。

 

っていうんで悩みまくって時間がかかってしまいました。シンプルに紫青(シセイ)とは名づけましたが、後々変更する可能性がアリマス。

 

この後どういうふうに物語に絡んでくるかはまだ謎。ただのマスコットになるかもしれないし、重要ポジになるかもしれない。

 

詠と桂花の対立問題ですが、まぁ詠の分は一刀の予想通り、月と仲良しで自分によく似た桂花が気に入らない。

 

桂花はといえば、詠が一刀付きの侍女になってる=自分とよく似たのが一緒にいる機会が多い→無意識に嫉妬

 

って感じで書いてるつもりです。

 

多分実際は桂花さんと一緒のことが多いとおもいますが、仕事上。

 

さて、今回も最後まで呼んでいただいてありがとうございました!

 

追記:次回酒酔い桂花さん予定。世にも珍しい普通に素直な桂花が出てくる……かも


 
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