No.551992

フェイタルルーラー 第三話・冷徹王の謀略

創作神話を元にした、ダークファンタジー小説です。14754字。
あらすじ・国境を越えたエレナスとセレスを待ち受けていたのは、レニレウス王の策略だった。
二人は海岸で見知らぬ少女に出会う。
第二話http://www.tinami.com/view/547505
第四話http://www.tinami.com/view/557313

2013-03-06 20:54:27 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:361   閲覧ユーザー数:361

一 ・ 冷徹王の謀略

 

 薄暗い執務室で、一人の男が数枚の書簡を読んでいた。

 

 時折薪がはぜる以外、紙をめくる音が微かにするだけだ。

 一通り読み終えると彼は書簡を暖炉にくべ、呼び鈴で侍従を呼びつけた。

 影のようにゆっくりと現れた侍従はうやうやしく一礼をし、王の命令を待った。

 

「ネリアとアレリアに不穏な動きがあるようだ。『草』に内情を探らせろ」

「かしこまりました。我が君」

 

 侍従がそのまま退出しようとすると王は呼び止め、さらに一言付け加える。

 

「ユーグレオル将軍を呼んで来い。ダルダンの件だと言えば分かるはずだ」

 

 程なく将軍が到着すると、王は人払いをさせた。

 彼は執務机に肘をつき、さほど歳の変わらない将軍へ鋭い眼光を放った。

 

「聞いたか? ネリアの若造がアレリアへ発ったようだ」

「先程報告を受けました。婚礼の準備でしょうか。それにしても時期が早すぎますな」

 

 三十代半ばの将軍は思案しながら室内を歩き回った。

 

「そう急くな。好機と言いたいところだが、ゴズ鉱山北側をダルダン軍らしき連中が占拠したとの報告もある」

「この時期にですか。ネリア、アレリアの動きといいダルダン軍の様子といい、妙に符合している」

「釣られて出兵した背後をダルダンに突かれたら洒落にもならん。少し様子を見るべきだな」

 

 王の言葉に将軍は頷いた。

 

「しかしながら我が君。ダルダンに送り込んだ間者からの連絡が途絶えております。しばらくは諜報網も使えないかと」

「そこは問題無い」

 

 将軍の言葉に王はにやりと笑う。

 

「ちょうどいい連中を見つけたのだ。そやつらにやらせよう。ついでに神器を奪えるかもしれないオマケ付きだ」

 

 王の含み笑いに将軍は意を汲んだ。

 

「それと教団の件ですが……。こちらも今のところ連絡がありません。収穫があり次第御報告申し上げます」

 

 敬礼をして執務室を後にする将軍を王は見送った。

 窓の外を見ればすでに日は昇り始めている。

 

「全てを見通す王器に加え、神器が手に入れば我が国はダルダンをも凌駕する神の力を手に出来る。この大陸を統一し、真の平和とやらを構築して見せよう」

 

 王の呟きは薪のはぜる音に掻き消されたが、その凍えた微笑は絶える事がなかった。

 

 

 

 西アドナ大陸東にある海の玄関、レニレウス王国は古くから奴隷貿易で栄えた国だ。

 

 大陸各地で子供を集め、それでも足りなければ東アドナ大陸まで渡って親の無い子供を攫った。

 悪逆非道ではあるが、そうして得た利益で交易路を整備し、それはのちに帝国の大陸公路と呼ばれる街道の礎となった。

 

 無事国境を越えレニレウス王国に入ったエレナスとセレスは、国境から一番近い街を目指した。

 密猟団が獲物を持って逃げたのなら、どこかで肉や毛皮を売りさばいている可能性があるからだ。

 

 交易のために整備された街道は歩きやすく、子供の足でも歩き続けるのは容易ではあった。

 馬車や牛車が行き交う中、二人は黙々と街へ向かった。

 

 過ごしやすい並木が途切れ砂地が見えてくると、潮の香りが辺りを包んだ。

 セレスは海を知らないのか、嬉しそうに声を上げると一目散に走り出していく。

 

 大人びていてもやはり子供なのだと思い、エレナスは路傍の石に腰を下ろし、そのまま待つ事にした。

 波打ち際で遊ぶセレスを眺めていると、ここが異国である事すら忘れる。

 

 青く穏やかな海は太陽光を反射してきらきらと輝き、ただ海鳥の鳴き声だけが届いてくる。

 

「こんな所で何をしているの」

 

 聞きなれない女性の声にエレナスは驚いて立ち上がった。

 そこにいたのは、彼より少し年上の少女だった。長い髪を束ね、機動性を重視した服装をしているが、姉のように男装をしているわけではない。

 何よりもエレナスを驚かせたのは、彼女が精霊人である事を一切隠そうとしていない様子だった。

 

「君は……。精霊人が何故こんな所にいる」

 

 エレナスはオウム返しのように少女へ質問を返した。彼の疑問も当然ではあった。今や精霊人はその個体数を大幅に減らしている上に、隠れるようにして生きている者がほとんどだ。

 その姿を偽らず人間の中で暮らしているのだろうか。そうであれば半分人間として生きているようなものだ。

 

 精霊人の誇りはどうしたのかと問いただしたくなったが、人にはそれぞれ事情があり、感傷だけで生きていけるほど世界は甘く無かった。

 

「何か言いたそうね。でもそれはこちらも同じよ。隠れてこそこそ生きているあなたには、精霊人としての誇りはないのかしら」

 

 呑み込んだ言葉を返され、エレナスは少女を睨み付けた。

 彼女はその場で身じろぎもせず、ただエレナスを見つめ続ける。

 

「ひとつだけ教えておいてあげる。この付近にいるのは危険よ。ここはかつて奴隷海岸と呼ばれた業の深い土地なの。地元の人間は誰も寄り付かない。土地勘の無い者には危険な場所よ」

「……どう危険だと言うんだ?」

 

 エレナスの問いには答えず、すぐに分かるわとだけ呟いて、少女はその場を立ち去った。

 後に残されたエレナスは何も分からないまま、呆然とその姿を見送った。

二 ・ 奴隷商人

 

 少女の言葉に不安を抱いたエレナスは、引っ張るようにセレスを海岸から連れ出した。

 

 思えばレニレウス王国の事は何も知らない。経済活動が活発で、大陸の交易や相場を一手に担っている程度の知識しか彼は持ち合わせていなかった。

 この国の王がどんな人物であるかなど、微塵も知らなかったのだ。

 

 海岸沿いの舗装路を抜けると、小さな村が見えて来た。

 国境から一番近く、陽も傾き始めていたために彼らはこの村で宿を取る事にした。

 村へ入ると幾人もの村人が二人をじろじろ見回したが、臆する事なく歩を進める。

 

 傍目には兄弟程度にしか見えないはずだ。

 エレナスはフードを目深に被っているために、精霊人である事は誰にも窺い知れない。

 

 異国で隙を見せれば、それが危険へと直結する。

 セレスや彼を心配しているであろう父親のためにも、出来るだけの安全は確保したかったのだ。

 

 村はずれに寂れた宿を見つけ、彼らは二階の部屋を借りた。エレナスは逃亡しやすいように一階を借りたかったのだが、セレスはどうしても二階にして欲しいと言い張った。

 二階の奥に位置する部屋へ荷物を運び、彼らは注意深く室内を点検し、窓を開けた。

 

 時は黄昏に近いが、まだ没したわけではない。

 一刻も早く密猟者を追跡したかった二人は、市場へと向かった。毛皮や角はいざ知らず、肉が腐敗を始めたら商品にならないからだ。

 

 小さな村だけあって、異質な旅人の噂はすでに知れ渡っていた。

 そこかしこでひそひそとした囁きや、射るような目線が二人へ飛んで来る。

 

 遠巻きにこちらを見ている人々には目もくれず、彼らは一番大きな肉屋へと入った。

 日よけのテントは完全に日光を遮断し、内部をひときわ涼やかにしている。

 

 薄暗い店内で営業をしている店主に、エレナスは声を掛けた。

 小太りの中年男が振り向き、愛想笑いを投げかけてくる。

 

「いらっしゃい。何をお求めで」

 

 にやつきながら揉み手をしてくる様は悪印象しかなかったが、エレナスは真意を悟られないよう店主に相談を持ちかけた。

 

「宴会用にいい鹿肉を探している。新鮮なものを何頭分か用意出来ないか?」

 

 突然無理難題をふっかけるフードの少年に、店主は怪訝な表情をした。

 明らかに村の者でも無く、顔を隠した旅人が大量の肉を買い求めるのは異様だ。

 

 実際隣村からの使いかも知れないが、肉はそう易々と手に入るものでは無い。そこに不自然さを感じ、店主は笑顔を作りながらも探るようにエレナスを見た。

 

「申し訳ないけど、鹿肉は無いんだ。新鮮なウサギ肉ならいくつか用意できるよ」

 

 鋭い店主の眼光にエレナスは確信した。この男は嘘をついている。ウサギ肉が大量に用意出来るとなれば、密猟者が全て売り払ったと考えるのが妥当だろう。

 臭みがあり食用に適さないキツネはさておき、密猟者がこの村を経由して行った事実だけは突き止められたと言える。

 

「ウサギは煮込み料理にしか使えないからな。鹿肉が無いなら仕方ない。他を当たるよ」

 

 エレナスはセレスに合図を送り、市場を後にした。

 誰にも分からないよう背後を確認したが、尾行されている形跡は無い。

 

「多分密猟団はこの村で肉だけ売り払って行ったんだ。そのまま売り捌くか塩漬けに加工しないと、とても次の街までもたない」

 

 ぼそぼそと呟くエレナスの言葉を、セレスは黙って聞いていた。

 程なく宿へ到着し、出された夕食もそこそこに二人は部屋へと閉じ篭った。

 

 夜明けと共に村を出るつもりでエレナスは早々に床についたが、セレスは荷物から何かを取り出し室内をきょろきょろと見渡している。

 

「何してるんだセレス。早く寝ないとあいつらに追いつけなくなるぞ」

「うん、分かってるよ」

 

 そう返事だけして、セレスは廊下へと出て行った。しばらくして戻って来たが、その手には何も握られてはいなかった。

 

「それじゃあ、おやすみ!」

 

 元気に自分のベッドへ飛び上がり、セレスはそのまま眠りについた。

 その様子にエレナスはため息をついたが、彼も疲れからかすぐにまどろみ始める。

 

 どのくらい時間が経っただろうか。

 ベッドのすぐ横にある気配でエレナスは目が覚めた。顔を向けるとそこにはセレスが立っている。

 

「どうしたセレス」

 

 そう言いかけると、セレスは静かにするよう合図を送った。

 静まり返る夜半の沈黙の中、廊下から誰かの足音が聞こえる。

 

「お客さんが来たみたいだよ」

 

 セレスは囁くように小声でそう言った。

 物音を立てないよう表に近い窓下へ滑り込むと、そっと外の様子を窺った。

 

 そこには幾人もの男たちが宿を囲むように立っている。

 それぞれが戸口や裏口、階下の窓を塞ぐようにしているのだ。

 

「やっぱり二階にしておいて正解だったなあ」

 

 どことなく嬉しそうにセレスは呟いた。

 確かに二階であるためか、裏窓のすぐ下には誰も配備されていない。子供では逃げ切れないと高を括っているのだろう。

 

「どうして奴らが来るのが分かったんだ? それにあの程度の足音では普通勘付かない」

「念には念を入れろっていうのが、おじい様の口癖なんだよ。誰かが階段を昇ったら分かるように、さっき糸を張って来たんだ。端をぼくの指に結んでおいたから、誰かがひっかかればすぐに分かる」

 

 セレスの並外れた感覚と機転にエレナスは驚いた。

 わざわざ二階の一番奥に部屋を取ったのも、敵意ある者を罠にはめるためだったのだ。

 

「驚いたな。奴らは何者なんだろう。密猟団がまだこの村にいるとは思えない」

「あいつらじゃないだろうね。まあ誰だか分からないけど、ぼくらは逃げるだけさ」

 

 そう呟きながらセレスは自分の荷物を取った。手探りでごそごそと取り出したのは、どこかで見た簡素な縄梯子だ。

 

「落とし穴の横に落ちてたから失敬して来ちゃった。これで窓から逃げよう」

 

 音を立てないよう慎重に窓を開けると、セレスは縄梯子の金具を窓枠へ引っ掛けた。

 体重をかけて強度を確認し、二人は屋外へと逃れる。

 

 慎重に縄梯子を降りながら侵入者たちの様子を見ると、二人にまだ気付いていないのか動く気配は無い。

 建物の裏手には誰もおらず、その先にはとうとうと川が流れている。

 

「川を渡るしかないな」

 

 出入り口を封鎖されている今、彼らにはそれしか手が無かった。

 包囲している連中が何者か分からない状態では、おいそれと捕まるわけにはいかない。

 

 濡れるのを気に留めず、二人は川へと入った。

 膝下まで及ぶ流れに足を取られる中、彼らは転倒を避けながら川を進んだ。

 中ほどまで来た時、包囲していた男の一人が気付き怒鳴り声を上げた。

 

 振り返れば川岸には十人近い男たちがいた。

 それぞれが手に武器や縄などを持ち、怒声を上げている。

 

「早く行こう。捕まったら面倒だ」

 

 苔でぬめる川底は歩みを遅らせ、速い流れが転倒を誘う。

 ここで転べば体の小さいセレスは流されてしまうかもしれない。

 

 二人は必死に川を渡った。ようやく対岸へと辿り着き、崩れるように膝をつく。

 男たちは相変わらず罵声を飛ばしているものの、こちらへ渡って来る気配は無い。

 

 その様子をエレナスは訝しがったが、今はこの村から逃げるだけで精一杯だった。

 うずくまるセレスを立たせ、その場を後にしようとしたその時。

 

 熟れた果実のような甘い匂いが、ふわりと辺りに立ち込めた。

 よく知るその香りに、エレナスは咄嗟に鼻と口を塞いだ。

 

 頭がくらくらし、立っていられなくなったエレナスは再び膝をついた。セレスはすでに香りを吸い込んでしまったのか、その場に倒れこんでいる。

 

 朦朧とする意識を必死に覚醒させ、エレナスはこの術を放った者を探した。

 薄ぼんやりとしたもやの中にその姿を認めたが、彼にはすでに抵抗する力すら失われていた。

 

「まだがんばっているの? やはり純血種の精霊人には符術が効きにくいわね」

 

 海岸で聞いたあの声がエレナスの耳へと飛び込んで来る。

 

「君は……どうして……。こんな事を」

 

 ようやく言葉を搾り出したエレナスに、少女は愛らしい笑みを見せる。

 

「どうしてって、これが仕事だもの。たった二人で異国を旅しようなんて危険よ。あたしたちのような奴隷商人に捕まって売り飛ばされるわ」

 

 少女の囁きはすでにエレナスには届かなかった。

 術に抗いきれず、彼は深い眠りへと落ちていく。

 

 昏倒した二人を見つめ柔らかく微笑むと、少女は対岸の男たちを呼び寄せた。

三 ・ 駆け引き

 

 エレナスが目覚めた時には、すでに彼の体はどこかへと運ばれている最中だった。

 

 武装馬車の内部なのだろうか。手には鉄製の枷がはめ込まれ、セレスも同じような姿で床に転がされている。

 窓も無い木箱のような馬車内では時間の感覚すら掴めず、またどこを走っているのかすら見当もつかない。

 脱出を試みようにも、ひとつしかない扉には頑丈な鍵がかかっている。

 

 先程の術がまだ効いているのか、セレスは昏々と眠り続けた。

 子供の体で強力な術を食らえばひとたまりもない。術に耐性のあるエレナスですら、意識を失う程だったのだ。

 

 逃げるにしてもセレスが目覚めてからでないと、身動きが取れなかった。

 

 不意に馬車が停止し、御者側の小窓が開いた。

 そこからちらりと見える顔は、あの少女だ。エレナスは彼女に問いただそうと小窓へと詰め寄った。

 

「あら、もう目が覚めたの」

 

 驚く様子も無く、少女はエレナスを見た。

 彼女の背後にある太陽が逆光となり、青みがかった銀髪を更に引き立たせている。

 

「今すぐ解放しろ! 俺にはやらなければならない事があるんだ!」

「それは出来ないわ。あなたとそこの坊やに用があるんだもの」

 

 エレナスの言葉を一蹴し少女は微笑んだ。

 

「あなたたちは運がいいのよ。普通ならセリに掛けられて、どこの者とも知れない輩に買われていくんだから。今回あなたたちを買って下さるのは、とても身分の高い方なの。感謝なさい」

 

 再び馬車が動き出し、少女は小窓を閉めようとした。

 エレナスはなおも食い下がり、彼女に質問をぶつける。

 

「俺たちをどこへ連れて行くつもりだ!」

 

 枷をされたまま暴れるエレナスに顔をしかめ、少女は機嫌悪そうに呟く。

 

「馬車の中で暴れないでよ。王都エレンディアに向かっているだけだし、もうすぐ到着するわ。ところであなた。その坊やとは兄弟ではないようだけど、どんな関係なの?」

「そんな事あんたに関係ないだろう。あの子の父親から預かってるだけだ」

 

 急に質問を返され、エレナスはふと口をつぐんだ。思えばセレスの事は何も知らない。軍属の父を持ち、王の狩猟場を管理している少年。彼についてエレナスが知っているのはその程度だった。

 

「……本当に知らないようね。その坊やがネリア王家の子だと言ったら、あなたどうするの?」

「セレスが王族だと言うのか? そんな話誰が信じると思っているんだ」

「そうね。信じるも信じないもあなた次第だからどうでもいいわ。でも奴隷商人から指名付きで買い上げる以上、あなたたちにそれだけの価値があるって事を忘れないでね」

 

 それだけ言うと少女は笑って小窓を閉じた。

 馬車はからからと乾いた音を立てて走り続け、腰を下ろしたエレナスも、いつしかまどろんでいった。

 

 

 

 馬車が止まる振動でエレナスは目を覚ました。

 外から何やら話し声が聞こえてくるが、内容までは聞き取れない。

 

 外套の中を確かめると、エレナスの剣は奪われずにそこにあった。

 枷をされている今は抜く事すら出来ないが、隠し通せばいずれは役に立つ時が来るだろう。

 

 辺りを見回すと床で昏々と眠り続けるセレスが目に入った。

 頬を軽く叩くと彼はうっすらと目を開けたが、意識は未だ朦朧としているようだった。

 

「起きろセレス。面倒な事になってる」

 

 いつの間にか外の話し声は止み、足音が扉へと近付いて来ていた。

 重い錠前を乱暴にはずす音が聞こえ、エレナスは振り向いた。

 

 馬車の扉が軋みながらゆっくりと開かれ、黄昏に近い陽光が木製の馬車内に差し込む。

 そこには少女の他に兵士と見られる男が数人いた。

 意識のはっきりしないセレスを連れて逃げるのは不可能だ。

 

「降ろしなさい。主の所へ連れて行く」

 

 少女の命令に従い、兵士たちは二人を馬車内から引きずり出した。

 抵抗などする余地も無く、エレナスとセレスは兵士に連れられ歩き始める。

 

 巨大な城門を過ぎ内部へ入ると、石造りの壮麗なホールを抜け大理石の階段を昇った。

 アラバスターの主柱は遥か天井をつき、円形のドームにはそれぞれ星が描かれている。

 

 三階まで昇ったところで絨毯が敷かれている廊下を進んだ。

 建築物に見識が無いエレナスですら、この城の主は只者では無い事を悟った。これ程の城を有する貴族など、そうはいないだろう。

 

 廊下の突き当たりまで来ると、左手に巨大な観音扉が見えた。左右にそれぞれ衛兵が立ち、ゆっくりと扉を押し開ける。

 

 薄暗い謁見の間に入ると、ほのかな明かりが灯された。

 これだけ大きな城であれば大きなランプを用意出来るものを、この城主は意図的に薄暗くしているのだ。

 

「お連れしました」

 

 玉座の主に向かって少女は跪いた。

 エレナスとセレスも無理やり跪かされ、手枷が重い音を立てて反響した。

 微かに灯火が揺らぎ、彼女の主が立ち上がったのが分かる。

 

「ご苦労だったノア。もう下がってよい。次の任務は追って申し付ける」

 

 ノアと呼ばれた少女はかしこまり、礼を返すとそのまま謁見の間を退出した。

 顔すら見せない謎の男に、エレナスは不信感を募らせた。

 

「訳あって身分は明かせないが、了承頂きたい」

 

 上品な声色の中に冷厳な響きを載せ、男はエレナスへ言った。

 声質からは四十歳前後と感じられる。

 

「ノアからの報告によれば、君たちはネリア王国からこの国へと入り、海岸周辺を探索していたとか。あの近辺はとても危険でね。今でも奴隷狩りが横行している土地柄だ」

 

 その言葉にエレナスは白々しい男だと思った。そもそも奴隷商人であるノアに奴隷狩りをさせ、買い上げるという名目でこの城へと連れて来ているのだ。

 薄暗い中雰囲気で悟ったのか、男はなおも続けた。

 

「勿論君たちを買い上げたのは私だ。だがそうでもしないと、君たちの身に危険が及ぶと思ってね。特にそこの少年はネリアの王族。無碍には出来ないのだよ」

 

 王族という言葉にセレスははっとし、エレナスを見た。だがすでに事実に気付いていたエレナスは驚く事も無く、セレスに大丈夫だと合図を送る。

 この貴族は一体何を考えているのか。助けておいて貸しでも作りたいのだろうか。セレスが王族ならその価値も甚大だろう。ともすれば人質にすら出来るのだ。

 

「奴隷商人を配下にするなど、レニレウス王国の貴族も大したものだな。あんたたちは東の大陸からも子供を攫って、売りさばいてるそうじゃないか」

 

 エレナスは皮肉を込めて男を睨み付けた。

 何としてでもセレスを逃がさなくてはならない。家出同然に飛び出した彼を、父親は心配しているだろう。

 会話の真意を悟ったのか、男は急に笑い出した。

 

「君は面白いな。私は別に君たちをどうこうしようと思っている訳では無いし、恩を売るつもりも無い。このまま城を出て好きな所へ行っても構わない」

 

 男の言葉を信じがたく、エレナスはなおも睨み続けた。

 

「あんたは何も望んでいないと言うのか? そんな言葉は到底信じられない」

「信じるか信じないかは君次第だよ」

 

 どこかで聞いた言葉を男は呟いた。

 

「必要な物資や情報があればいくらでも与えよう。そうだな。信じられないと言うなら条件をひとつだけ出そうか。即刻この国から立ち去る。これでどうかね」

 

 出された条件にエレナスは戸惑った。

 姉と密猟者を捜し出さなければならないのに、すぐに出国するのは呑める条件ではない。

 

「人を捜しているんだ。すぐには発てない。三日間の猶予が欲しい」

「よかろう。では三日間の滞在を許可しよう。必要なものを言いたまえ」

 

 男はエレナスの条件を受け入れた。

 エレナスは熟考し、言葉を口にした。

 

「では、現レニレウス王即位の記念銀貨についての情報を」

 

 その言葉に男は一瞬黙り込んだが、すぐに口を開いた。

 

「では私が知りうる限りの話をしよう」

 

 男は兵士に命じ、エレナスとセレスの手枷を解かせた。同時に人払いをし、兵士たちを扉の外へと追いやる。

 その様子にエレナスは驚き、まじまじと男を見やった。

 

「あんた貴族にしては肝が据わってるな。俺がもしここで剣を抜いたらどうするつもりなんだ」

 

 エレナスの言葉に男は小さく笑った。それは全ての算段を読み尽くした結果なのか。

 

「君はそんな事はするまい。この暗がりでその剣を抜いてしまったら、神器がここにあると気付かせてしまうのだからね」

 

 男の冷たい微笑が、エレナスには見えた気がした。

四 ・ 黒い火種

 

 ネリア王フラスニエルがアレリアの王都へ到着したのは、日をまたいだ明け方だった。

 少数の護衛だけを連れ、また病み上がりのシェイローエを馬車に乗せての道中は、平坦なものではなかったのだ。

 

 出立時刻が遅れたのはそれだけでは無い。

 王は自らが城を空けた場合の権限を、全てセトラ将軍へと委譲した。

 武官最高位の将軍なら誰も異存は無いと思っての事だったが、一人だけこれに異を唱える者がいた。

 

 大臣のクルゴスだ。

 フラスニエル王の三代前から王家に仕える重臣であり、内政の全てを取り仕切る彼から見れば、王の裏切りのように思えたのだろう。

 セトラ将軍の亡き妻は先王の妹であり、フラスニエル王にとっては一族とも言える。その事実がクルゴスを更に激高させた。

 

 将軍に権限を委譲するだけならともかく、クルゴスが気に入らないのはそれだけではなかった。

 王が見も知らぬ女を術師として随伴させた事実が、彼の中にわだかまりを抱かせる決定打となった。

 

 これまでどれだけ身を粉にして尽くして来たのか。それを思わぬ形で返されるとは思っていなかったのだ。

 

 留守を任されるでもなく、随行させてももらえず、クルゴスの不満はどす黒い渦のように胸中を駆け巡った。

 窓辺で王の出立を見送りながら、クルゴスは独り黒い火種を抱え始めた。

 

 

 

 明け方のアレリア城はどんよりと暗く、王都も静まり返っていた。

 まるで廃都のような有様に、フラスニエルは動揺した。

 

 城門に辿り着くとまず使者が馬車から降り立ち、衛兵へ到着を告げる。

 しばらくの後、門が軋みながら開き始めた。

 

 二頭の先触れがまず入り、その後を王の馬車、次いで侍従たちの馬車が進む。しんがりを将軍の部下たちが務め、全員が入城すると門は再び音を立てて閉じた。

 城内では女王の弟である大公が迎えに出て来ていた。

 大公の表情は憔悴しきっており、ネリア王が直接出向いて来た安堵と共に、女王の容態に対する不安で翳っている。

 

 王と従者たちはすぐさま女王の寝室へと通された。

 寝台の天蓋から垂れ下がる薄布の向こうに、やつれた表情の女王が見える。昏々と眠り続けているのか、女王は身じろぎひとつなくただ寝台に横たわっていた。

 

「王冠を奪われた夜から、ずっとあの状態なのです」

 

 大公は苦渋を滲ませ、ぽつりと語る。

 昨年成人したばかりの若き大公は王冠と女王の不在に加え、慣れない政務で疲れ果てているようだった。

 内務を取り仕切る宰相がいても、最終的な判断は全て女王が担っていたためだ。

 

 王冠を奪われ、国政自体が機能停止するなど誰も考えていなかったのだろう。

 

「大公殿下。私が来たからには必ずや女王陛下とアレリアのために尽力致しましょう。術に詳しい者と、一族に連なる薬師を随伴して参りましたゆえ、女王陛下へのお目通りを許可願います」

 

 フラスニエルの言葉に頷きながら、大公はふらふらと女王の傍へ寄った。シェイローエとリザルだけをその場に置き、フラスニエルは残りの家臣を廊下で待機させた。

 

「当方でも医師に診せましたが、まるで原因が掴めないのです。このまま目を覚まさなかったらと思うと……」

 

 大公の要請に従い、初めにリザルが女王を診た。呼吸、脈拍共に正常で、気付け薬を用いても目を覚ます気配は無い。

 自らの手には負えないと悟り、リザルはかぶりを振った。

 

 リザルに替わりシェイローエが診立てを始め、許可を得て女王の肌を見た。

 フラスニエルとリザルは部屋の隅で待機していたが、女王を診るシェイローエの表情がさっと青ざめたのを見逃さなかった。

 

 二人の診察が終わり、女王付きの医師と看護師を残して四人は寝室を出た。

 大公は三人を饗応の間へと通し、茶と菓子を振舞った。

 

「女王は……姉の様子はどうでしたか」

 

 思わしくない事を承知で、大公はシェイローエとリザルに訊いた。二人は顔を見合わせ、表情を曇らせる。

 

「我々の力が及ばず……。大公殿下には何と申し上げればよいか……」

 

 リザルは俯き顔を上げようとしなかった。自分の無力さを思い知らされるのは、これが初めてでは無い。

 それだけに、彼は誰よりもやり切れない思いで一杯だったのだ。

 

「いいえ。意識は戻らないにせよ、命を落としたわけではありません。万が一にも可能性があるならば、それでよいのです」

 

 自らに言い聞かせるかのように、大公はひとりごちた。

 女王の意識が戻らない以上、彼が名代として執政を担わなければならない。

 五百余年もの間、王冠の能力に頼り切って来た彼らアレリア王族は、本来持ち合わせているはずの危機管理能力が恐ろしいまでに退化していた。

 

 何が正しく、何が誤っているのか。それすら自身で判断出来ない王は、国を滅亡へと導く。

 

「王冠無き今、アレリア王国の未来を見据えて対策を講じましょう。……二人はしばらく席をはずして欲しい」

 

 フラスニエルの言葉に応じ、リザルはシェイローエを促し廊下へと出た。

 幾度と無くアレリア城へ足を運んだ事のあるリザルは、彼女を開放されたテラスへと連れて行った。

 

 そこには庭師たちが丹精を込めて育てたバラやエリカなどが咲き誇っている。

 

「綺麗な庭ですね」

 

 勧められるままベンチに腰掛け、シェイローエは微笑んだ。

 その瞳は花を愛でているようにも見えるが、心はここには無いのだろうとリザルは思った。

 

 肩口辺りで切られた髪は柔らかく風にそよぎ、物悲しさを語っている。

 泥で汚れた衣服は替え、今は女官の衣装を身に纏っているが、その美しさは例えようも無い。

 

 大した取調べもせず、成り行きでアレリアまで連れて来てしまったが、これでよかったのだろうか。

 王の命なのだからリザル自身が口出しをする問題ではないが、狩猟場での一件は忘れる事が出来なかったのだ。

 

 口をつぐんだまま何も話さず立ち尽くすリザルに、シェイローエは語りかけた。

 

「あの男のために、あなた方や女王陛下を巻き込んでしまい、本当に……申し訳なく思っています。傷が塞がり次第、お許しが出るならネリアを発とうと思っています。弟を捜さなければなりませんので」

 

 シェイローエの言葉に、リザルはふと小屋で会った少年を思い出した。

 彼女とはまるで似ていないが、あの少年が弟だったのかもしれない。

 

「精霊人の少年なら、昨日城を発つ前に見た。十三歳くらいで、青白く光を放つ不思議な剣を持っていた」

「……それは恐らくわたしの弟でしょう。あの剣を軽々しく抜いてはいけないとあれほど言ったのに」

 

 驚き言葉を失うシェイローエをリザルは見た。

 悲哀のような、苦悩のようなその表情に、彼女が何か使命を背負っているのだろうとふと思った。

 

「あの剣は何かいわくでもあるのか? 今まで様々な剣を見てきたが、あれほど美しい業物は見たことが無い」

 

 リザルの問いに、シェイローエは一瞬口をつぐんだ。

 だがすぐに真剣なまなざしでリザルを見上げ、ゆっくりと語り出した。

五 ・ 神器

 

 全ては、一人の男がシェイローエを訪ねて来たところから始まった。

 

 人のために創られた王器とは別に、神々は自らのために神器を創り上げたと言う。

 それは杯や鍵などの日用品から、剣やナイフなどの武器まで多岐に渡った。

 

 神々の数だけ神器は存在するのかもしれないが、長い刻の中で失われたものも多く、誰もがおとぎ話としか認識していなかった。

 

 存在すらあやふやな神器を、その男――マルファスは捜して欲しいとシェイローエに言った。

 結局彼女が発見したのは一振りの剣だけで、それ以上はいくら捜しても見つける事が出来なかった。

 

「わたしが弟と初めて会った日、あの子は自分の身長ほどもある長剣を抱えて泣いていました。身寄りも無いのをかわいそうに思い連れ帰ったのですが、まさかその剣が神器だとは思いもしませんでしたが」

 

 懐かしい記憶を探るように、シェイローエは呟いた。

 

「神器を捜す旅の中、わたしの他にも神器を求める者たちがいる事を知ったのです。それが『至高教団』と呼ばれる新興教団と、二人の王でした」

「二人の王……。まさか、その一人はレニレウス王では」

 

 普通なら信じがたい内容であるにも関わらず、リザルはシェイローエの話に引き込まれていった。

 

「その通りです。建国の昔から、レニレウス王家では神器の存在を知っていたようですね。かの国は国境の大部分をダルダン王国と接しているために、互いの脅威が甚大だったせいかもしれません」

 

 シェイローエはふと空を見上げた。

 

「レニレウス王国の諜報能力に対抗するため、ダルダン王国も情報収集能力を高めた。その結果が軍事国家と呼ばれる所以なのでしょう」

「ではもう一人の王はダルダン王……」

 

 リザルの言葉にシェイローエは静かに頷いた。

 

「恐らく神器の情報を、レニレウス王国から仕入れたのだろうと思います。四王国はそれぞれが存在する事によって均衡を保ち、それが大陸の安定に寄与している。どこか一国でも崩れてしまえば、乱世の呼び水となります」

「だが神器とやらを手に入れたところで、そこまで勢力図が一変するとは思えない」

「ひとつやふたつなら、そうかもしれません。ですがアレリアの王冠や、レニレウスの銀盤を見れば一目瞭然です」

 

 確かに王器を見ても、王冠や銀盤は飛び抜けた能力を有している。

 王冠は対峙した相手の思考を読み、銀盤は遠く離れた場所をつぶさに監視出来ると言う。

 噂では、銀盤は近い未来まで見通せるとの話すらあるが、それを確かめるすべは無い。

 

 今や穀物や水、塩などの相場は全てレニレウス王国が握っている状態になっている。

 銀盤が未来を見通せるならば相場の値動きを察知し、利益を上げる事も可能だろう。

 

「神器は用途によってそれぞれ役割が異なります。もし彼らが神器を集め始めていたとしたら……。大陸の均衡が崩れる日が来るかもしれません」

 

 間近で神器の剣を見たリザルは黙り込んだ。

 アレリアの王冠が奪われ、すでに四王国の均衡は崩れ始めている。

 

 今フラスニエルと大公は、その後の話をしているに違いない。

 王冠が奪われたと気付かれてしまえば、レニレウス王が何か仕掛けて来る可能性も否定出来ないからだ。

 

 大陸の命運を決定する局面に彼らは立っていた。

 

 不意に背後から声を掛けられそちらを見ると、廊下からフラスニエルがリザルを呼んでいるのが見えた。

 大公との協議が終わったのだろう。深刻な表情で王は俯いている。

 

 リザルがシェイローエを伴い廊下まで戻ると、フラスニエルは二人を促し三階にある城の一室へと入った。

 この客室は大公がネリアの行啓を歓迎し、用意したものだ。

 

 広めの部屋には数人で会議が出来る程の卓があり、三人はそれぞれの席に着いた。

 しばらく無言だったフラスニエルは意を決したように口を開く。

 

「大公殿下と協議した結果、ネリアとアレリアで軍事同盟を締結する運びとなりました」

 

 リザルには予想がついていたのか、彼は驚かずにただ王の話を聞いている。

 

「女王陛下は病にて療養中、代わりに大公殿下が執政を担当なされる。王冠は贋物を作製し、宝物庫へ安置するそうです」

「宝物庫へ安置……。贋物と見破られないよう人目に晒さないという事か」

「むやみに王冠を晒しても、紛い物と看破されるのは非常にまずいのです。怪しまれないよう、式典などには大公殿下ご自身が戴冠されるとの事」

 

 変わらず苦悩の表情をしているフラスニエルに、シェイローエは茶の用意を申し出、一度部屋を下がった。

 二人だけになったところで、リザルは婚礼の話を口にした。

 

「女王陛下のご容態では、来月の婚礼式典も難しいだろうな」

「……婚礼の話は延期という形ではありますが、実質白紙となりました。それよりも今はレニレウスとダルダンからの侵攻をやり過ごさなければなりません」

 

 フラスニエルは立ち上がり、奥の執務机から一枚の地図を手にした。

 それを卓へ広げたところでシェイローエが戻り、茶が配される。

 

「アレリアは東をネリアに守られ、南北をそれぞれ山脈と断崖に囲まれています。レニレウスの海軍をもってしても西からの侵攻は難しい」

「レニレウスが西から攻めようとしても、時間が掛かりすぎるからな。もたもたしていると、レニレウス自体がダルダンからの攻撃に晒されかねない」

「そうです。それならまだ森に囲まれたネリア側から攻める方が楽でしょう。自ら交易路を整備したのも、侵攻を見越しての事」

 

 茶を飲むのも忘れてリザルは地図を見つめた。

 

「まさにネリアはアレリアを護る盾、か……。護るには容易いが、束になられるのが一番きついな」

「レニレウスとダルダンは資源を巡っての対立が激しいですから、早々同盟締結などないとは思いますが……。敵の敵はなんとやら、ですね」

 

 結末など予想もつかない議論にため息をつき、フラスニエルは立ち上がった。

 

「こうなった以上、明日アレリアを発つ事にしましょう。早く戻って将軍と相談し、備えなければならない」

 

 王の言葉に二人は頷いた。

 室内にはただ沈黙が続き、彼らの未来を暗示しているかのようだった。


 
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