No.549676

命-MIKOTO-13話-新たな来客

初音軍さん

基本シリアスが薄いほんわかコメディを目指してるのですが、見てる方はどう見えてるんでしょうね~。そんなわけで今回は新しいキャラ追加です。どんなキャラなのかは見てからの~っていうことで。また癖のあるキャラですが楽しんでもらえればいいなとかなんとか(´∀`*)

2013-02-28 18:01:56 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:372   閲覧ユーザー数:357

 

 休日にちょっと家の周りを見ていたら、物置を発見した。かなり死角の方に

設置してあったから全然気づかなかった。

 

「うわっ、すごい埃」

 

 開けた瞬間に目の前で舞う埃を手で払いながら外の光を頼りに中を眺めていく。

狭い物置場所だから暗いのは当然として、どれくらい放置していたのか。

溜まった湿気がカビ臭く感じる。

 

 その中で一際目を引くものがあった。一見ただのボロボロの箱なんだけど

気になって蓋を開いてしまう。

 

 中には片手で掴めるくらいの手鏡が大事に閉まってあり、見ていると頭が

ぼ~っとしてきて、ほぼ無意識の状態で手にとってしまった。

 

「何だろうこれ・・・」

 

 妙な感覚に背筋が寒くなり、元の場所に戻そうと考えた直後。

目の前がぐにゃっと曲がって意識がみるみると遠くなっていくではないか。

まるで気絶する直後の感覚が長く続くみたいで気持ち悪くなってきた。

そこで、私の意識が一度途切れたのだった。

 

 

「ん・・・」

「お目覚め?」

 

 何だか体全体がふわふわして宙に浮いているような感覚に一番近いだろうか。

そして、聞き覚えの無い声が聞こえて徐々に目蓋を開けていくと。

やはり見たことのない人物が私の顔を覗き込んで微笑んでいる。

 

 例えるなら天国にいるようなそんな雰囲気だった。相手しか見えなくて

まわりは全体的に白くぼやけていた。

 

「誰ですか・・・?」

「それには答えられないわね」

 

 そう返されても微笑みは崩さず女神のようにしている女性。

変に近いからどうなってるのだろうと思ったら私は自分の頭がやや高い位置に

置いてあることに気づき。

 又、その感触が柔らかいことから膝枕されてるのだとようやく把握できた。

なぜ、知らない女性が私に膝枕をしているのだろう。

 

 いや、夢など得てして不思議なことばかりしか見ないのだけど。

これは夢にしてはえらくリアルに感じて仕方がない。

でもそれだとまるで私は死んでしまったようで、そんな考えには至りたくないから

別の理由を考えようとする。

 

 しかし私が考える前に彼女が意味があるのかないのか、よくわからない質問を

投げかけられる。それも耳に入るのではなく、頭の中で直接聞かれてるような

違和感を覚えた。

 

 そんな質問に私は笑顔で「はい」と答える。ぼーっとしながらも頭の中には

萌黄のイメージが簡単にできたから、そんな私をみて相手は何故か自分のことのように

笑みを浮かべた。

 

「あの、貴女は・・・」

 

 何を問いかけようとしたのか忘れるほど、再びぐにゃりと視界が歪み始め

私の意識は薄らいでいく中、相手の声がうっすらとだけ聞こえてきたのだ。

何が言いたかったのか、前後が完全に聞き取れないけど一部だけは

はっきりと頭に響いていた。

 

 よろしくね、と・・・。

 

 

 

「命ちゃん大丈夫?」

「ん・・・萌黄・・・?」

 

 目を覚ますと目の前には萌黄が心配そうに私の顔を覗き込んできた。

さっきの夢のように膝枕をしてもらってる状況ということを少ししてから気づいた。

 

「あ、すみません、萌黄。今起きますから」

「いいよ、このままでも。それにしてもびっくりしたよ、物置あった場所で

倒れてるから何事かと思った」

 

 心底心配したと言いたそうに深い溜息をついた。ホッとした様子がよくわかる。

私もずっとこのままでいたいという気持ちがあったけど、それからまもなくして

起こった出来事でその状況を維持することができなくなった。

 

 ドンドン!

 

 壁を叩く音、いやそれよりも激しいガラスを叩く音が聞こえる。

隣の家とかではなく、ちょうど二階のベランダにあたる場所から響いてくるではないか。

私と萌黄は慌てて音がする方へ走っていくと、無心にガラスを叩く少女の姿があった。

 

 金髪でピンクが多めのひらひらした服を纏いながら子供が必死そうな顔をして

叩いてるそんな印象。長い髪は後ろに大きなリボンでまとめて縛ってあった。

 

 ガラスが割れるとまずいと萌黄が怒りながらその子供へと近づいてベランダへと続く

戸を開ける。

 

「ちょっと、あんたどこから来たの」

「さぁ?」

「さぁって・・・」

 

 自信なさそうに降りる場所を間違えたとかこんなはずではなかったと呟いていた少女。

しかし私の方を見て笑みを浮かべると、私のことを知ってるかのように抱きついてきた。

 

「お姉ちゃん!」

「え!?」

「え、命ちゃんって妹いたの!?」

 

 最初のえ!は私の言葉で次に重なるように萌黄の言葉が私にかけられる。

私は急すぎて何が起こってるのかわからないで頭の中で混乱していた。

初対面のはずの少女だけど、どこかで会ったような気がしなくもない。

 

 それはどこだろうと混乱している頭の中で整理をしていると。そうだ、と思いつく。

あれは夢の中で私を見ていた女性に近い雰囲気があった。

 でも、あの人は子供じゃなかったし。夢のことを持ち出すのはおかしいことだと思い

口に出せずにいた。

 するとそれを察したのか萌黄はしかめっ面をしながら子供にメッ!と叱るように言う。

 

「嘘を言っちゃダメでしょ~。そこにいるお姉ちゃんが困ってるじゃない」

「あなたみたいな子供に叱られるのって不思議・・・」

「私は大人よ!!」

 

 同じくらいか少し上くらいに思ったのか少女が萌黄に聞こえるか聞こえないかの

大きさで呟くがバッチリ聞こえたようだった。

 

 怒り心頭の萌黄は地団駄を踏みながらムキーという言葉を発しているではないか。

そういえばマナカちゃんが相手の時もこんなことがあった気がする。

 

「それにね、そういうことにしておけば。私をここに置きやすくなるというものだよ」

「はー、はー・・・。なんであんたみたいなのをここに住まわせなきゃいけないの。

まずは迷子として交番に届けるのが定番でしょうよ」

 

 萌黄がもっともなことを言うと少女は人差し指を左右に揺らしながら。

「違うんだな~」と意味深なことを言っていた。そして・・・。

 

「私はこの辺の子供じゃない。もしかしたらこの世界の子でもないかもしれない」

「はいはい、中二病中二病」

 

 聞く耳持たないとばかりに萌黄が興奮しながら少女の肩に手を置いて部屋から…

家から追い出そうと考えていたと思われる萌黄が部屋を出てから少し経って

二人で戻ってくると、これまで怒っていたのが嘘のように爽やかな表情に

なっていた。

 

「まぁ、時間も時間だし。一日はうちに置いていてもいいんじゃないかなって。

そういう話になっちゃった」

「ど、どうしたんです・・・。萌黄・・・?」

 

 気持ちを転換させるにも時間が無さすぎて逆に怖い。正体が掴めないあの少女が

萌黄に何かしたのだろうか?

 

 怪訝な眼差しを少女に向けると、私の視線に気づいた少女は慌てる素振りも見せずに

手を頬に当てて余裕の笑みを浮かべていた。

 

 その時、私はマナカちゃんや萌黄の力を感じた瞬間が、今味わってる間隔に似ている

ことに気づいた。

 

「そんな怖い顔しないでよ~。私はただ平和的に昂ぶってた気持ちを抑えただけよ?」

「貴女は一体・・・」

 

「忘れちゃった? お姉さんが見ていた世界でよろしくって言ったはずだけど」

「え・・・?」

 

 言った本人なのか、それにしては私の中で微かに残る印象はこんな子供の姿では

なかったはずだけれど。それともよろしくって言った人の子供だろうか。

 

 いや、どっちにしろ夢の中の出来事だし普通に考えるとおかしなことばかりだ。

だけど、少女は私が見ていた夢のことをはっきりと当てるし、その場にいたような

口ぶりだ。

 

 その会話についていけないのか萌黄は終始頭に「?」を浮かべた表情をしている。

まぁそれは当然だとは思う。どこか分からない場所で交わしていた話の内容なのだから。

今考えるとあれも夢なのかどうかさえ怪しく感じるわけなのだけど。

 

 でも相手から発せられる笑顔はとてもじゃないけど怪しげな部分は見受けられない。

純粋に友好的に近づいてる気がする。

 

「まぁまぁ、今日の所は泊めてよ。それともこんな小さな子を夜中に放り出すつもり?」

「そんなことしませんよ。萌黄次第ですけど・・・お部屋空いてましたっけ?」

「あ、うん。弟のとこがあったかな。そこ使っていいよ」

 

 弟の燈馬君の部屋は今は不在ですっかり寂しくなっているのだけど、当人が

帰ってきたらどうするつもりだろう。だけど家主の萌黄が言ってるのだから

そこは尊重することにした。

 

「はぁ・・・お腹空いた~」

「何か作りますね」

 

 私が気づいた時間が遅かったからか、階段を下りる時に良い匂いがしてきた。

手作りの料理の匂いじゃなくて、インスタントな何かの匂いである。

 

 それにつられて少女は目を輝かせながら匂いがするリビングへと走っていく。

後に続いて私と萌黄も慌てて降りていく。

 

「あ、あんた誰よ!?」

 

 それはいきなり見たこともない同年代くらいの外見の少女を見たマナカちゃんが

驚く声であった。私が追いつくと同じように驚く表情をしている瞳魅さんの姿があった。

 

「これは何!?」

 

 マナカちゃんの言葉を無視して匂いの元であるカップラーメンに視線が集中する。

見たことも食べたこともないとばかりに好奇心をむき出しにしているのがわかる。

 

 警戒しているマナカちゃんの前に出て瞳魅さんが自分の分だと思われる

カップラーメンを少女の前に出した。

 

「食べる?」

「いいの? ありがとう、お姉さん~!」

 

 暖かい湯気が匂いと一緒に立ち上り、目を瞑ってくんくんと嗅ぐと少女は近くにあった

割り箸を持って恐る恐る麺を持ち上げると口に運んでいく。

 

「美味い!」

 

 どうやら啜るという行為を知らないようでモムモムと麺を加えて噛みながら

ズルズルと引きずるように食べている。

 

「こうやって啜るともっと美味しく感じるよ」

 

 瞳魅さんは面白そうにジェスチャーでラーメンを音を立てて啜るのを演じると

少女は真似をするように音を立てて麺を啜ると、これまでにないくらい幸せそうな

顔をして天井を見上げていた。

 

 3人がそれぞれ満喫や警戒をしている変な空気を醸し出している中、私は萌黄に

気になったことを聞いてみた。

 

「あれだけ躍起になって追い出そうとしていたのに、どういう気持ちの変化が

あったんですか?」

「ん、何か呟いてるから言い分を聞き出そうとしたら不思議なメロディーが

私の中に入ってきて、興奮していたのがみるみる内に落ち着いていく感じかな。

まぁ、簡単に言うと歌ってたんだけど。何だろうね、あれは聞いてみないと

何とも言えないなぁ」

 

 聞いていてもよくはわからなかったけれど、どうやら彼女の歌で怒りが落ち着く

鎮静作用があるようだ。どっちにしろ普通の人間にはできないことだということは

私にも萌黄も気づいていたようだ。

 

 そんな私達に様子に気づいた少女は空になったカップ容器をテーブルに置いて

瞳魅さんとマナカちゃんにごちそうさまと言って、私達の元へ来て微かに聞こえる

音量で呟くように言う。

 

「そんなに警戒しなくてもいいよ。洗脳とかじゃないんだし、私の力は人の感情の

濃い薄いを調整するくらいだし」

 

 迷子届けを出しても無駄だよって、最後に付け足した後。階段を昇っていき、

途中で振り返ると一言だけ残してそのまま2階へと向かっていった。

 

「ラーメンっていうのね、美味しかったわ。人間界も良い物があるものね」

 

 そう聞こえたのは多分私だけだったかもしれない。

萌黄は部屋を知らないだろうと、同じように階段を駆けていてそれ所じゃなかったし。

他の二人もリビングに残って夜ごはんを食べていたから聞こえていないだろう。

 

 不思議な力を持つ者の所には不思議な人間が集まるものである。

そう、つくづく私は感じるのであった。

 

 ふと、気を失う前に押入れに手鏡があったのを思い出し、そこからあの不思議な

夢のような世界に誘われたのかもしれないと。

 寝る前にようやく気づいたわけなのだ。その話を萌黄にすると笑うわけでもなく、

私の言葉を素直に信じてくれたのが意外だった。

 

「命ちゃんがそう思うならそうなんだよ」

「変だと思いませんか?」

 

「んー、不思議だとは思うけど。そもそも家の家系が普通じゃないから

そういうことも割りと受け入れられやすいんだよね」

「そういうものですかね・・・」

 

「あぁ、でも信じるのと住むのを許すのは違うからね!命ちゃんが嫌だったら

どんなことがあってもあの子を追い出すつもりだから」

「いえ、多分・・・。彼女の迷子届けを出しても無駄な気がしてきました」

 

「そうだろうけど、一応聞きにはいくけどね。迷子や行方不明の子が出ていないかどうか。

その前には彼女にちゃんと名前聞いておかないとね」

 

 私のベッドに入って真剣な表情をして萌黄はそう言っていた。

確かに不思議な力を持ってるからといっても、その辺の確認は大事だ。

ちゃんと帰る所があったとしたら、ここに住まわせてると誘拐になりかねないから。

 

 萌黄はその辺もちゃんと考えているんだなと。小さい体で子供っぽいところはあるけど

しっかりしているその姿に改めて惚れてしまう私なのだった。

 

 

「わたし、みゅーずね。みゅーずちゃんって呼んでいいよ!」

 

 名前を聞く段階でいきなり躓きそうになる。

 

「いや、それ本名じゃないでしょ。ちゃんと名前教えてよ」

 

 萌黄がツッコミを入れると彼女は顔を横に振って本当だよって返した。

マナカちゃんはイライラしていて、瞳魅さんが好奇心旺盛な表情をしていて。

萌黄は焦って、私は不安が募っている。そんなばらばらの感情が行き交っていた。

 

 後は萌黄に任せて二人を送り出すと私の後ろににマナカちゃんと瞳魅さんが

歩いてきたから私は二人に聞いてみた。

 

「どう思います?」

「あの子のこと?面白くていいんじゃない」

「あの子の目をずっと見たけど全然裏が見えない。こんなこと初めてだよ」

 

 前者は瞳魅さんの言葉で早くも一緒に暮らせる時のことを妄想して楽しんでいて

後者のマナカちゃんはイラつきから不思議な気持ちに切り替わっていた。

二人の様子からは拒絶や反対の空気は感じられない。

 

 そんなことを言う私でさえも、この不思議な縁はこのまま断ち切れないだろうと

直感で感じ取っていた気がした。

 

 案の定、くたくたになって帰ってきた萌黄と当然とばかりにドヤ顔をしていた

みゅ~ずちゃんが私達の前に姿を現した。

 

「周りに聞いて回ったけど、この子見たこともないし。行方不明の届出もないって。

この付近では預かる場所もないから、近所の人たちも面白おかしく私のとこで

住ませればって言うんだよ~~」

「だから言ったのに、時間の無駄だったね~」

 

 後者の言葉である、みゅ~ずちゃんは悪気のない鋭い言葉を萌黄に返していた。

矢印が背中から胸に突き刺さったようなものが見え、しばらく萌黄はぴくりとも動く

ことはなかった。どうやら本気で堪えたらしい。

 

 こうして不思議な住人がまた一人増えて賑やかになる摩宮家なのでした。

そしてその住人の好物はラーメンということも頭の隅に入れておいて日記を

書いていると部屋の外でマナカちゃんとみゅ~ずちゃんの声が聞こえてきた。

 

「本当の名前はなんなの。それって神様っぽい名前じゃん。中二病なの?」

「ちゅうにびょうって何?」

 

 質問を質問で返されて、尚且つ返す言葉が見つからないマナカちゃん。

想像するだけで手の平の上で転がされてるのが目に見えて微笑ましいと思えた。

 

 普通の家族じゃないけど、家族ってこういうものなのかなって。

記憶の中のお父さんに一言報告することにした。

 

 私の夢が叶いつつあるよって。小さい時の夢だった一家団欒の光景。

それが今目の前にあるのが嬉しくて仕方なかった。

 

 いつしか家中が静かになったことに気づいた私もベッドに潜って寝ることにした。

目を瞑って眠りに就くと、今度はこの前みたいな変な夢は見ることはなかった。

 


 
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