No.547119

フレームアームズ外伝 輝鎚戦記 第1話

迂回回路さん

コトブキヤのキット、フレームアームズの輝鎚・甲を色々いじっているうちに妄想が広がってしまったので、テストを兼ねて投稿させて頂きます。

2013-02-21 19:54:59 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:1240   閲覧ユーザー数:1209

-明朝 敵補給基地に侵攻し これを破壊せよ-

 

それが彼に与えられた命令だった。

命令自体は特に問題はない。ある一点を除いては。

命令書にはある一点が付け加えられていた。“単機で”と。

 

わざわざ単機で行え、というからには何か理由があるのだろうか。

ただ上層部に疎まれていたからこのような命令が来たのか?

馬鹿な、そんな幼稚な理由でこのような命令が来るはずがない。

なら、あの補給基地に何かあるのか・・・

 

「まもなく作戦領域に入ります」

 

輸送機のパイロットからの通信で、彼の思考は現実に戻る。

彼が今いるのは輸送機内の格納庫。その中に積まれている機体の操縦席だ。

 

「了解。ここで降ろしてくれ」

「目標までまだ結構な距離がありますが?」

「構わない。ここまででいい」

「・・・了解しました」

 

輸送機の後方ハッチが開き、空に射出される。

操縦席から見える景色が格納庫の壁から空色に変わる。

彼は一呼吸して機体のパラシュートを広げる。

視界を上げると、輸送機が反転して基地に戻るところがカメラモニターの端に見えた。

充分な高度まで降下すると、彼は機体からパラシュートを切り離した。

そして着地の寸前、衝撃を和らげるため一瞬だけショックブースターを稼働させた。

辺り一面に砂煙が舞い上がる。

砂煙が晴れるのと同時に周りの景色をカメラモニターで確認する。

見えるのは果てしなく広がる砂漠と地平線だ。目標である敵補給基地もまだ見えない。

彼は各センサースイッチを入れていく。そして最後にAIのスイッチを入れた。

 

「オハヨウゴザイマス ゴ機嫌 イカガデショウカ」

「ご機嫌は悪いが、体調は問題なしだ」

「ソレハナニヨリデス 機体 オヨビ 武装 ノチェックヲオコナイマス シバラクオマチクダサイ」

 

(この作戦用にと上層部から渡された機体だが、なにか異常があったら困る。

 まあ今さら異常が見つかっても引き返すこともできないけどな・・・

 しかしなぜコイツなんだ?

 本来なら拠点防衛用に使われる機体だぞ?)

 

そう、彼が乗っているのは四八式一型輝鎚・甲だった。

だが、拠点防衛用に使われている機体とは姿かたちこそは同じだが、様々な改良が施されていた。

その中でも顕著なのが外部装甲である。装甲板には砂状金属(サンドメタル)がコーティングされてた。

本来ならば、砂状金属は機体胸部にある小型コンテナから散布され、頭部の磁界発生器で制御し、膜状に展開して光学兵器を拡散減衰させるものだ。

だが、欠点として発動まで時間がかかることと、展開時に自機を含む周辺に電磁波障害を発生させてしまうことが指摘されていた。

その欠点を補う方法として、研究開発部が試行錯誤した結果、装甲に砂状金属を予めコーティングされていた。

研究開発部からの報告では、本来の使用に比べれば効果は落ちるものの充分な効果が期待できる。

また、電磁波障害については若干自機に影響は残るが、周辺に発生させてしまうことは少ないとの事だった。

そして、副産物として高いステルス性を持つようになったという。

 

(ステルス、ね・・・本当に信用できるのか?

 頭頂部パーツにはコーティングされてないと聞いたぞ)

 

このコーティング処理により磁界発生器は不要になったが、輝鎚の特徴である大きく伸びた角はそのままだった。

磁界発生器の代わりに、広範囲レーダーと高性能AIが頭部に搭載されたのだった。

そのレーダーとAIへの影響を防ぐために、頭頂部への砂状金属のコーティングは行われていない。

 

(前に日本出身のやつに聞かされたが・・・

 なんだっけか・・・

 大昔にどこぞの琵琶法師が幽霊に見つからないように偉いお坊さんに全身にお経を書いてもらったらしい。

 しかし坊さんが耳にお経を書き忘れてしまったために幽霊に耳を斬り落とされたとか・・・)

 

「・・・の名前、なんて言ったか・・・みみな」

「ミミナシホウイチ デス」

 

どうやら途中から考えていたことが口に出ていたらしい。

AIの返しには答えず、彼はチェック作業が終わるのを待つ。

 

AIは機体のチェックを終わらせると、武装のチェックを行なっていく。

 

この輝鎚には、標準装備の百二式機関砲「火引(ひびき)」と九五式多連防盾「巌土(いわと)」の他に4つの装備が追加されていた。

一つは背中から伸びるフレキシブルアーム。

そして、フレキシブルアームの先に接続された重〇一式超長距離狙撃砲「物干竿(ものほしざお)」。

もう一つは左腕のサブアームに接続されている二六式超大型鎖鋸「雷切(らいきり)」。

あと一つは巌土に接続された自動バイポッドである。

 

 

どれも研究開発部から試験的に基地に送られてきたものだったが、性能および威力は保証済みだという。

フレキシブルアームと自動バイポッドは人間が操作する必要はなく、AIが全て操作を賄ってくれるそうだ。

 

(叢雲は弾数10発のみ。

 雷切はサブアームのみでの運用は重量的に推奨できない。

 使い所が難しいな・・・)

 

彼の頭の中で、どのように武器を扱っていくかシミュレートしていく。

 

「機体 武装 トモニイジョウナシ 予定時刻マデマモナクデス」

「よし目標へ向かう」

 

彼は操縦桿を握ると、目標である敵補給基地に向かって輝鎚を駆っていった。

 


 
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