No.532654

真・金姫†無双 #10

一郎太さん

#9にも王冠がついていた!

……何者かの陰謀に違いない!

という訳で、この世の悪を倒す旅に出かけてきます。

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2013-01-16 21:10:46 投稿 / 全11ページ    総閲覧数:11080   閲覧ユーザー数:7789

 

 

 

#10

 

 

「うーん……」

 

さて、困った。竹の板に向けていた筆を鼻と口の間に挟みながら、俺は唸る。

 

「どうしたんですか、ますたぁ?」

 

声が掛けられた。亞莎はいま店の前を掃除している為、必然的に雛里となる。

 

「いや…なぁ……?」

「んょ?」

 

とてとてと寄ってきた雛里を抱き上げつつ、板をパタンと閉じる。見せても読めないし。

 

「何かお悩みですか?もしかしたら、その、私にも力になれるかもしれませんし……」

 

ふむ、やはり察しはいい。俺の行動が暗に、雛里は頼りにならないと言っているように感じたのだろう。表情が暗くなる。というか、頼る頼らない以前の問題でなぁ。

 

「それ以前、って?」

「あぁ。もう10話なのに、まったく話が進まないのもどうかと思って」

「……」

 

おっと、茫然としちゃった。だから言ったろ?それ以前の問題だ、って。

むにむにと雛里の頬で遊んでいれば、段々と瞳に涙が……んん!?

 

「ふ、ふぇぇ、役に立てなくてごめんなさぁあい!!」

「ますたぁ!また雛里ちゃんを泣かせたんですか!?」

「いや、そういう訳じゃ――――」

 

亞莎も姉役が板についてきた。飛び込みざま、箒を掲げて俺に睨みを利かせてくる。若干過保護なきらいもあるが……。

 

という訳で、今回もまったり行こうと思います。

 

 

 

 

 

 

「おや、お久しぶりですね、孫策様」

「えぇ、ここのところ、ずっと立て込んでてね」

 

いつものように仕入れ――その間、亞莎と雛里は家で勉強をしていた――をし、いつものように店先で開店準備を進めている時の事だった。やって来たのは孫策ちゃん。何やら相談事らしい。

 

「本日はご予約で?いつものようにカウンターでいいですか?」

「あぁ、今日は違うわ。ちょっと借りたい物があってね?」

「借りたい物、ですか?」

「えぇ、お金は払うわよ?」

「いきなりですね。そいつはちょっと――」

「……」

 

最近は少しばかり仕入れの状況が悪く、また客足が遠のいていて売上も下がっている。商売になるならば何でも手を出したいと思っていたが、雪蓮ちゃんの無言の視線に、俺は何かを感じ取った。

 

「……中で話しましょうか。大事な商談です」

「えぇ、流石は北郷ね」

 

ガラリと引き戸を開けて、孫策ちゃんを中に招き入れる。

 

「あれ、雪蓮様、いらっしゃいませ」

「あわわ、雪蓮しゃまっ!?」

 

亞莎は慣れたものだが、雛里はいまだに緊張するらしい。まぁ、街のトップだから仕方がないのかもしれない。……いや、雛里の反応が普通なのか?

 

「さて、茶にします?それとも昼からお酒?」

「茶でいいわ、ありがと」

 

おや、珍しい。これはホントに、真面目な話のようだ。

 

 

 

 

 

 

「――――さて、本当の目的は一体何だい、雪蓮ちゃん」

「やっぱり察しがいいわね。少しばかり言い出しにくい事なんだけれど、さ」

 

真名については、何度も通われるうちに祭ねーさんの時のように勝負をするようになり、その結果預けてもらえる事になった。流石に、勝負ごとに金を請求する事はしなくなったが。

 

茶を人数分準備して、亞莎と雛里は住居スペースにさがらせる。俺は残りの茶をカウンターに置き、ひとつ席を空けて孫策ちゃんと並んで座った。

 

「その前に聞きたいんだけれど……最近、どう?」

「どう、とは?」

「店の調子よ。儲かってる?」

 

これはまた恐ろしい事を聞くもんだ。

 

「……金貸しならやらないよ?」

「違うわよ。最近、調子悪いんじゃない?」

 

なんだよ、分かってんのかよ。

 

「……まぁね。仕入れもよくないし、売り上げも前より下がってる。でも、それが?」

「その原因、わかってるんでしょ?」

 

……そっちも分かってたか。

 

「そりゃ、居酒屋だ。商人の話だって、よく聞くさ……黄巾党、だろ」

「えぇ」

 

そう、黄巾党である。古代中国で後漢が滅びるきっかけとなった、大陸の安寧を脅かした賊の集団。雪蓮ちゃん達が頑張ってる為、長沙周辺ではそれほどの被害は出ていない。それでも、あくまで『それほど』だ。市場に並ぶ品物がその外側から来る事も考えれば、その影響は大きい。

 

「商談をするんなら、まずは外堀から埋めていくんだが……俺と雪蓮ちゃんの中だ。まどろっこしい事はなしにしようぜ。俺に何を求めている?」

 

核心に至るまでの過程も好きではあるが、今回はそれを楽しむ状況じゃない。雪蓮ちゃんの眼が言っている。

 

「察しが良くて助かるわ。簡潔に言う。手伝って欲しい。貴方を借りたいの」

「……」

「いまウチで武将を張れるのは、私と祭だけなの。兵の練度には自信があるけれど、それをまとめ、率いていけるような存在が、圧倒的に不足しているのよ」

「部隊長じゃ駄目なのか?」

「今言った、『まとめる』という部分なら問題ないわ。でも、率いて敵を倒せるか、って言うと、そうでもない。それが将軍と部隊長の違いよ」

「俺は素人だぜ?」

 

戦なんざ、経験した事ない。現代社会のぬるま湯に浸かってた、ただの金儲け好きな学生だ。

 

「でも強い」

 

言い切られた。

 

「……」

「それも、私や祭に並ぶくらいに」

「買い被り過ぎだ。本気を出されたら、手も足も出ない」

「私はそうは思わない」

 

おいおい、どこまで俺を高く見てるんだか……っと、軽く流すこともさせてくれない。真っ直ぐ俺の眼を見てくる。ここら辺りの振る舞いや威厳は、やはり王族という訳なのか。

 

「……悪い」

「……えっ?」

 

厨房の方で、蒸籠がカタカタ鳴っている。視線を向ければ、湯気が濛々と立ち昇っていた。

 

「……ちょっと、亞莎たちにおやつを渡してきてもいいか?」

「点心?」

「あぁ、餡饅だ。食べるか?」

「ん、欲しい」

「待っててくれ」

 

断りを入れて席を立ち、調理場に行く。蓋を開ければ、いい塩梅に蒸し上がっていた。

 

 

 

 

 

 

「――お待たせ」

「いーえ。美味しかったわ」

「お粗末さん」

 

亞莎と雛里におやつの餡饅を届け、少しだけ話をして階下に降りる。雪蓮ちゃんは餡饅を食べ終えたところだった。

 

「ひとつ聞きたいんだが」

「答えられる事なら答えるわよ?」

 

茶をひと口啜って唇を湿らせ、俺は問いを発する。

 

「ん……なぜ、この時期なんだ?」

「え?」

「まだ奴らの活動は、雪蓮ちゃん達で抑えられない程じゃない。確かに度重なる賊討伐は精神的に堪えるものもあるだろう。だが、部隊長から将軍へと昇格させられそうな人材を育てる時間は、まだある。何故、今なんだ?」

 

俺の問いに、雪蓮ちゃんはまさに苦虫を噛み潰したかのような顔で答える。

 

「黄巾党を抜きにして……私達がどういう状況にあるか、知ってるでしょ?」

 

知っている。孫堅さんの死後、袁術に領地を乗っ取られ、今は客将として妹さん達とも離れ離れになっている。だが、いずれは――――。

 

「正解」

「散々愚痴ってたじゃん」

「まぁね。でも他の客が帰った後なんだから、愚痴くらい言わせてよ。他所じゃ言えないんだから」

「それも俺の仕事さ。……それで?」

「問題は、その『客将』って部分なの」

 

袁術の客将。『客』と言えば聞こえはいいが、言ってしまえば部下だ。それも、街ごと人質に取られた……あぁ、そういう事か。

 

「なるほど。袁術からの命令が増えてるわけね」

「やっぱり、一刀は凄いわね」

「店ではますたぁと呼びな」

「ふふっ、まだ開店してないじゃない」

「そういや、そうだな」

 

そう言って、軽く笑い合う。どんな時でも笑顔は大事だぜ?

 

 

 

 

 

 

「一刀も言った通り、袁術から、アイツの領地に出て来た賊の討伐も命じられちゃってるの。私の領内だけなら私と祭、規模によっては穏でもいいんだけど、南陽の方まで出るのは、かなり厳しい」

「袁術の噂も聞こえてくるよ。相当にヤバい政治をしてるんだって?」

「あれを政治と呼べるなら、子どもの我が侭はみんな政治になっちゃうわ」

「そんなに酷いのか……」

 

実際に南陽の街の様子は見た事ないが、噂以上に暴政を敷いているようだ。雪蓮ちゃんの感情面も含んだ感想かもしれないが。

 

「袁術軍は、確かに多勢。でも、賊に向けられる回数も規模も、大したことないの。正直、よくもつ、というのが私や冥琳の率直な印象ね……話が逸れたわ」

「それで、俺に軍を率いて欲しい、ってか。……質問を重ねたいんだが」

「えぇ、どうぞ?」

 

彼女たちの状況はよくわかった。だが、いくつか聞かなければならない事もある。

 

「雪蓮ちゃんは、俺に『手伝って欲しい』って言ってたよな。って事は、黄巾党との戦いが落ち着けば、また店に戻れると解釈しても?」

「かまわない」

「そうか。じゃ、次。これが一番の問題なんだが……俺みたいな一般人が、いきなり軍で指揮をする事に問題は?」

「……へ?」

「ん?」

 

俺の質問に、これまでの真面目な雰囲気が嘘だったかのように、雪蓮ちゃんはキョトンとした顔をし、これまた真面目な雰囲気を吹き飛ばすかのように、次いで笑い出した。

 

「あっはははははは!何おかしな事言ってるのよ、一刀!」

「え?……えっ?」

 

それほど変な事を言ったのだろうか。雪蓮ちゃんはケタケタと楽しそうに大笑いし、お腹を押さえている。なんかムカつくな。

 

「ひーっ、お腹痛かった。あぁっ、ごめんごめん!謝るからそんな顔しないで?」

「別に怒っちゃいねーよ。それより、さっきのはどういう意味だ?」

「貴方ね、自分がどれだけ有名人で人気者か知らないの?」

「はぁ?俺がぁ!?」

 

そんな目立った事をした記憶はない。有名になるとしても、店の方だろ。

 

「お店もそうだけど、貴方もよ。考えてごらんなさい。ここには街の住人だけじゃなく、兵もくれば、私や祭のような武将も来る。貴方は、酔っ払いの相手とはいえ、軍の長たちと対等に話す事が出来て、武でも引き分けてる。噂が広まらない訳がないわ」

「マジか……」

「大マジよ。というか、ある意味私達よりも人気者かしら。男なのに、私たちと張り合えるんだもの」

「闘んなきゃよかった……」

 

思わず頭を抱えてしまう。そんなつもりはなかったんだよー。たまには身体を動かしたいと思って、そんで最初の方はお金を払ってくれてたから、俺も楽しかったんだよー。

 

 

 

 

 

 

「――で、どうかしら?」

 

説明は終えたと、雪蓮ちゃんは聞いてくる。どう、って言われてもなぁ。

 

「もちろん、無料とは言わない。その間、武将と同じだけの給金は支払うし、亞莎や雛里の生活費も出してあげる。貴方が自分でも言ったように、貴方は徴兵に応えている訳ではない一般人。でも、相当の実力者。それだけの事はさせてもらうわ」

 

確かに、黄巾の乱が落ち着かなければ、店なんて出してもどんどんと売上が下がっていくばかりだ。だが、俺は知っている。いずれ勅命が下り、諸侯の合同軍が首謀者である張角を討ち取る事を。つまりは、待っていればこの状況も落ち着くのだ。

 

……歴史を知ってるってのも駄目だな。動きが縛られる。

 

でも。

 

「悪いが、断らせてもらうよ」

「理由を聞かせてもらっても?」

「…俺が、商売人だからだ」

 

そう、俺は商売人だ。戦なんて出来るようなタマじゃない。

 

「嘘ね」

「嘘じゃない」

「嘘よ。店長のとぉくは嘘ばっか」

「ひでぇ言われようだ……」

 

そんな風に思われていたのか。

 

「……なんてね。冗談よ。でも、その理由は、本当の理由じゃない」

「どうしてそう思う?」

「亞莎と雛里」

「……」

「あの娘たちでしょ?」

 

否定は、出来ない。

 

「なんていうかなー……」

「ふふっ、聞くわよ?」

 

畜生、こんな時だけ大人のおねーさんの笑みをしやがって。

 

「あら、いつも聞いてもらってるんだから、そのお返しよ。ほら、お姉さんに言ってごらんなさい。うりうり」

「だーっ!言うっ!言うから抱き着くな撫でるな頬擦りするな!」

「ケチー」

「仮にも王族だろ、アンタは。もっと節操を持ちなさい」

「『仮』じゃないわよ。本物だもん。で、どうなの?」

 

ったく、もっと自分の見た目とスタイルを自覚しろよ。あー、柔らかくて気持ちよかった。

 

「ま、雪蓮ちゃんの言う通りだ」

「あ、やっぱり?」

「茶化すな。止めるぞ」

 

俺は、観念して話し出す。そのくらいを話してもいいかなというくらいには、雪蓮ちゃんとは仲良くなれてると思うから。

 

 

 

 

 

 

仕方なしに、俺は言葉を続ける。

 

「亞莎と雛里の境遇は、前に教えたと思う」

「えぇ。保護者と借金取り役やってるんでしょ?」

「まぁ、間違いではないな。亞莎に関しては、武将がどういうものか知る為にも、参加させてもいいと思うんだ。むしろ、俺が行くと聞いたら自分も行きたいと言い出しかねない」

「じゃぁ、雛里は軍師?」

「あぁ、頭がいいのは雪蓮ちゃんだって知ってるだろ?」

 

こないだも、冥琳ちゃんや穏ちゃんと対等に話してたし。

 

「頭がいいなんてもんじゃないわよ。少なくとも、私なんかじゃ相手にならないわ」

「俺だってそうさ。雛里も、あの実力なら文官としてもやっていけるだろう」

「文官?軍師じゃなくて?」

「雛里は軍師になりたい、って言ってるんだけどな」

「……そこに何かあるみたいね」

 

やっぱり、雪蓮ちゃんは鋭い。

 

「ほら、私の勘って当たるし」

「違いない。ま、そうだな。ずっと2人と過ごしてきてさ、思うんだよ。優し過ぎる、って」

「……」

「あぁ、そうさ。あの2人は弱虫で、泣き虫で、臆病で……それ以上に、凄く優しい娘たちなんだ」

「それは…えぇ、わかるかも……」

「そんな娘たちにさ、俺は人を殺させたり、殺す指示を出させたりするのか、って自問しちまうんだ。あの娘たちに、人を殺せるのかって思っちまうんだ」

 

そう、それこそが、俺を動かさない理由だった。

 

「優しいのね」

「あぁ、あの娘たちは優しいんだよ……」

「違うわ、一刀もよ」

「何処が優しい。ただ、あの娘たちに辛い想いをして欲しくないと言う俺の我が侭で、俺はあの娘たちを縛っているんだよ」

 

なんでこんな事言ってるんだろうな……って、それもわかってる。否定して欲しいからだ。こんな計算高い自分も、それに気づいている自分も嫌になって仕方がない。

 

「我が侭なんかじゃないわ」

「言ってくれると思ったよ。俺のどこが――」

「ねっ、貴女たちも、そう思うでしょ?」

「――えっ?」

 

同意を求める今の声は、俺に向けられたものじゃない。雪蓮ちゃんに釣られて視線を動かせば、奥につながる敷居から、妹2人が顔を覗かせていた。なんとも悲しそうな表情で。

 

 

 

 

 

 

「うわぁああん、一刀さぁああん!」

「ふぇぇええええんっ!!」

「うぉわっ!?」

 

その2人が、涙をポロポロと零しながら抱き着いてきた。

 

「一刀さんは優し過ぎですっ、うぇぇええん!」

「わた、私、知りませんでした、ぇっく、そんなにわた、わたひっ、たちの事、想っててくれた、なんてぇ!ふぇぇえええええん!」

「あらあら、健気な妹ちゃん達ね。蓮華やシャオを思い出すわ……性格はだいぶ違うけど」

 

なに呑気な事言ってんだ、このねーちゃんは。他人事だと思いやがって。コラ、遠い目をするな。

 

「私っ、が、頑張り、ますっ!もっと、もっと強くなりますぅ!」

「私もでしゅ!だから、そんなっ、ひっく、悲しい事、言わないでぇ!」

「……」

「ほら、貴方が今するべき事なんて、ひとつしか無いでしょ、お兄ちゃん?」

「……恨むぞ、雪蓮」

 

分かってる……あぁ、分かってるよ。

 

「あら、初めて『ちゃん』ってつけられなかったわ」

「ちくしょう……あー、ほらほら、泣かないの。お得意さんの前だぞ」

「ひっく、えぐ、はいぃ…ぅぇぇええん」

「お兄ちゃぁあああん!」

「よしよし」

 

俺は雪蓮に恨みがましい視線を送りながら、妹達の頭を撫でるのだった。

 

 

 

 

 

 

「落ち着いたか?」

「はぃ…」

「ぅん…」

 

亞莎たちをしばらく膝に乗せてあやしていると、ようやく落ち着きを見せる。というか雛里ん、呼称と口調が変わってるぞ。……可愛いからいいや。

 

「というかニヤニヤしてんじゃねぇ」

「ふふっ、いいもの見せて貰ったわ」

「人情劇じゃねーぞ、ったく」

 

雪蓮は雪蓮で微笑ましいと言わんばかりにニヤついてやがる。

 

「あの、一刀さん……」

「ん?」

 

そんな彼女を睨み付けていれば、胸元から亞莎が見上げてきた。どうした。

 

「一刀さんは、前に言ってくれました。私がなりたい自分になれ、って」

「……言ってたな」

「何かしたい事があるなら、全力で応援してくれる、て……」

 

あぁ、そうだな。

 

「だから、応援して欲しいんです」

「……」

「軍で戦って、私が何に成りたいのか分かるかもしれないし、分からないかもしれません。でも、それでも、何かを掴めると思うんです。だから……」

「あのあの、お兄ちゃん!私もですっ!」

「雛里……」

 

今度は雛里か。

 

「お兄ちゃんの優しさは、凄い嬉しいです。でも……私が勉強してきた事は、いま使わないといけないんです。借金は、ちゃんとお給金が貰えるようになったら払います。だから、私も……」

「一刀さん……」

 

2人にじっと見つめられる。潤んだ瞳が、これまた庇護欲を……そうではなく。

 

「雪蓮」

「なぁに?」

「さっきの返答だが、撤回する」

「あら、どうするのかしら?」

 

決ってるだろう?

 

「さっきの話、受けるよ。条件付きでな」

「言ってみて」

「俺を武将として使うなら、副官には亞莎をつけてくれ」

「認めるわ。むしろ、さっきの話を聞いたら、これが1番いいんじゃない?亞莎にとっても」

「はやっ?」

「で、どんな小さな討伐隊でもいい。雛里を軍師として、冥琳ちゃんか穏ちゃんにつけてやって欲しい」

「それも認める。なるほどね、貴方の考えは理解したわ」

「いい考えだろ?」

「えぇ」

「「?」」

 

まぁ、兎にも角にも、だ。

俺は雪蓮に向けて、雪蓮は俺に向けて、手を伸ばす。

 

「商談成立だな」

「よろしくね?」

 

がっちりと握手を交わす。さて、今夜は休業前セールだな。

 

 

 

 

 

 

「あぁ、雪蓮」

「なぁに?」

「俺が店を閉める前に、ツケは払っとけよ。倍にするぞ」

「げっ……」

 

そんな、とある昼下がり。

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

 

まったりじゃないじゃん!全然まったりじゃないじゃん!

 

 

まぁ、話が急展開になるのはいつもの事。

 

 

という訳で#10でした。

 

 

序章『一刀くん、商人になる』編は、ひとまず今回で終わり。

 

 

次回から、『戦う商売人』編に行きたいと思います。

 

 

前書きにもある通り、一郎太は旅に出るので、しばし暇を。

 

 

ではまた次回。

 

 

バイバイ。

 

 

 


 
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