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魔法幽霊ソウルフル田中 ~魔法少年? 初めから死んでます。~ ジェットストリームアタック×100な15話

日常回投下です。
田中はテンションが高ぶると生きてる人にもチラリと見えるようになります。

フェイト登場まであと7話、遅すぎる(泣)

2012-07-21 21:17:48 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:1147   閲覧ユーザー数:1114

午前10時、レイジングハートさん脅威の性能に恐れをなした俺は、海鳴にある商店街へと赴いていた。

ここは士郎さんが経営する翠屋もあったりして、俺も頻繁に通っている場所だ。

 

 

 

守護霊生活は諦めて、今回は俺が一人の時何をしているかをお送りします。

 

「さて、今日はどうかな……」

 

道行く人々の上に浮かんでた俺は、地面スレスレまで降下、そのまま低空飛行を開始する。

歩いてる人たちをすり抜けながら道路の隅っこを中心に辺りを見回す。

 

 

 

「……? 寒気が?」

 

「へっくしゅん!」

 

「大丈夫? アリサちゃん」

 

俺にぶつかった人達が幽霊独特の寒気を感じてますが、害はないんですみません……。

 

 

「おっ、あったあった」

 

丹念に見回すと、目的物を発見した。

俺は道に植えてある街路樹の影に落ちてたソレをポルターガイストで浮かべる。

 

 

「海鳴でもやる人はいるんだよなぁ。ゴミのポイ捨て」

 

そう、俺がやってるのは『ゴミ拾い』だ。

なのはちゃんの守護霊として、俺はよく周りを警戒してることが多いのだが、度々ゴミを見つけるんでついでにやってるのである。

 

「えーと、アルミ缶だから。そこだっ」

 

浮かべたジュースの空き缶を、近くにあった自販機横のゴミ箱へシュート。

ガコンッ! と引っかかることなく捨てることに成功する。

 

 

「うん、コントロールは抜群だな、こないだのカラス共と戦った経験も活きてるみたいだ」

 

街をキレイにするついでにポルターガイストの練習も出来る。

なかなか素晴らしい活動である。

 

 

 

「す、すずかぁ……。今、空き缶が独りでに……!?」

 

「? 気のせいじゃないかな?」

 

 

さーて、どんどんボランティア活動しますか。

 

 

 

「おっ、今度は空き缶3個か。よーし連続で……!」

 

ガカカコンッ!

 

「うっし、成功」

 

 

「すずか、すずか! こ、こ、今度は3つ同時よ……! 絶対何かいるわよ……!?」

 

「こんなお昼に幽霊なんていないと思うんだけど……。きっと誰かが投げただけで、怖がりすぎだよアリサちゃん」

 

 

 

 

「むむっ! タバコの火が消えてないままだ! えーと、『血文字消火』アンド『ダストシュート』」

 

ジュッ

 

「すずかっ! ち、血が!?」

 

 

ポイッ

 

「えっ、血!? ……って何もないんだけど」

 

 

「さ、さっきまであったのよ! すぐゴミ箱に捨てられたけど……」

 

 

「アリサちゃん、疲れてる?」

 

「私はいたって健康よっ!」

 

 

 

 

「なにっ! ボロボロの雑誌発見! ………………ってただの情報誌かいっ! 『焼・却・処・分』!!!」

 

シュボッ!

 

 

 

「で、で、でたあ!? ひっ……人魂よ!?」

 

「アリサちゃん、今日はお家に帰って休んだ方が……」

 

「私はいつも通りだってばぁーっ! 信じなさいようわーん!」

 

「ア、アリサちゃーん!?」

 

 

そんな感じで俺は商店街中のゴミを集めました。

街をキレイにするって、気持ちいいね!

 

 

「さーて、ゴミ拾いも終わった事だし何をしようかな?」

 

午後1時、幽霊なんで昼食もとらずに俺は街中をふよふよ浮いていた。

ぶっちゃけ、ゴミ拾い以外は特に決まった事をしていないしなぁ……。

 

なのはちゃんが用事がある日は大抵はやてちゃんがいる図書館に行くんだけど、最近はやてちゃん図書館にいないんだよなぁ、今度家まで行ってみよう。

 

 

 

「うぇぇん! ひぐっ、ぼぐの風船ー!」

 

唐突に街に響き渡る泣き声。

俺は何事かと顔を向けるとそこには貰った風船を思わず手放してしまった男の子が。

 

 

「あーあ……、残念だったね。新しいのを貰いにいこっか?」

 

「やだー! あの風船がいいー!」

 

お母さんが男の子を慰めるが、余程飛んでいった風船を気に入ってたのか駄々をこねている。

 

 

 

「よし! まかせろっ!」

 

これを見逃す俺じゃあない、すぐさま高速飛行で上空にある緑色の風船へ向かっていく。

 

「見えたっ! ポルターガイストで捕まえてっ」

 

しかし、俺の行動も無駄となる。

 

 

バサバサバサッ!

と、黒い翼が目の前の風船を奪っていったのだ。

 

「なっ! お前はまさか!」

 

俺は驚愕に目を見開き、見覚えのあるソイツを凝視する。

 

 

 

「ニンゲン、ナクシモノハ、コレカ?」

 

「わー! ありがとう! 『カラス』さん!」

 

「カラスがしゃ、喋った……?」

 

 

猛禽類かと思うほどの体躯、そして右目のキズ、黒光りするそいつはかつてジュエルシードを巡って戦った。

 

 

 

「カラスリーダー……!」

 

「オレノナハ、『ティー』。『テラウマレノティーサン』トナカマハ、ヨブ。マタアッタナ、ユウレイ」

 

 

「まさか、カラスが『人助け』してるなんてなぁ……」

 

「ソレハ、コッチノセリフダ。ユウレイガ『ヒトダスケ』トハナ……」

 

 

俺とティーはお互いに似た感想を呟きながら街を飛んでいた。

一時は一触即発の雰囲気となったが、「辺りの人達に迷惑をかけたくないから場所を移そう」と同時に発言したために移動していたのだ。

 

そして、何してたのか尋ねたらお互いに同じことをしてることが判明、現在に至るというわけ。

 

 

「しかしまあ、人助けしてカラスに何のメリットがあるんだ?」

 

気になったので聞いてみる。

 

 

「『カラスゼンタイノイメージアップ』ダ、ワルサバカリスルト、クジョサレル。コノキズカラ、マナンダコトダ。キサマハ?」

 

「俺は『幽霊としてのイメージ力アップ』と純粋にやりたいから。……目的まで似たようなことやってるよな、俺達」

 

 

 

まさかカラスとシンパシーを感じるとは、生前じゃあ考えもしなかっただろうな。

ま、こうしてお互いに話が通じたおかげで今後争うことなんて無さそうだからいいけど。

 

 

「あ、そうだ。忠告しとくけど前に俺が持ってた宝石。アレはホントに危険な物だから触るなよ」

 

「アア、シッテイル。『ウミナリノアバレリュウ』ニモ、チュウコクサレタ」

 

「その二つ名カラスにまで浸透してんの!?」

 

花子さんが前もって伝えてくれた感謝よりも、昔の花子さんがどんな感じだったのかが非常に気になってしょうがない。

 

 

 

「マア、オレガヤンチャシテイタコロ、ヨクタタキノメサレタカラナ……ン?」

 

むかしを懐かしんでいたティーだったが、地上に何かあったらしく下に意識を向けている。

俺もつられて地上を見ると……。

 

 

 

「はあ……はあ……」

 

「あのおじいさん、あんなに重い荷物持って……」

 

70代ぐらいのおじいさんが、買い物の帰りなのか重いビニール袋を持って歩道橋を渡っていた。

体も衰えてるのだろう肩で息をして明らかに階段を登るのが辛そうである。

 

 

「ゴロウタイガ、ムチャヲスル……シカタナイ」

 

「まあ待てよ、お前一人じゃあんなに重そうな荷物持てないだろ。ここは俺に任せてもらおう」

 

おじいさんを手伝おうとするティーを押し留め、俺が近づいてゆく。

こういうのは得意なのだ。

 

 

 

「ポルターガイスト(補助)」

 

「ん……? 急に荷物が軽くなったような」

 

 

ポルターガイストで袋の中身だけ若干浮かべることにより、重さを俺が負担する。

荷物が軽くなったことに戸惑うおじいさんだったが、何はともあれ助かったのでそのまま家まで軽い足取りで帰路についた。

 

 

「どーよ、実にスムーズな手際だろ?」

 

ここぞとばかりにドヤ顔を決める俺、ティーは自分の出番を取られたのが悔しいらしい。

 

「グヌヌ……。ヤルナ、キサマ」

 

「まあ、自動販売機を持ち上げた事あるし、朝飯前だな。……って、あり?」

 

 

偉そうにふんぞり返ってると、視界の端に違和感を捉えた。

人々が行き交う道路に、一人小さな女の子が立ち止まっているのだ。

 

「ぐすっ……おかーさーん……」

 

 

 

「見るからに迷子になっちゃってるなあの子。しかし人だかりが多いから探すのは骨が折れそう……」

 

「フッ、ナラバオレニ、マカセテモラオウ」

 

 

ティーはそう言って、女の子の方へ飛んでゆき、その頭に着陸した。

 

 

「きゃっ! な、なに?」

 

「ニンゲン、ナマエハ、ナントイウ?」

 

突然頭が重くなったからびっくりする女の子に間髪を入れず質問するティー。

女の子は考える間もなく、素直に答えてしまう。

 

 

 

「え……えと、『はなおか るい』……」

 

「ソウカ、『ルイ』ダナ……」

 

ティーは名前を聞き、クチバシを天に向けると。

 

 

 

 

「『ウミナリカラスレンゴウ』!!! ゼンイン、シュウゴウッ!!!」

 

 

バサバサバサバサバサバサッ!!!

 

 

 

「ラジャー!」「ナンカヨウデスカー!」「リーダー!」「オレ、サンジョウ!」「ヨバレテ!」「トビデテ!」「ジャジャジャジャーン!」「ヒャッハー!」「マタセタナ!」「ゴハンデスカー!」「ナニナニー!」

 

 

上空に集まるカラス達、その数100はこえていた。

女の子を中心に、空が漆黒にそまる。

 

「ひゃあああっ!?」

 

 

「オマエタチ! 『ヒトサガシ』ダ! 『ルイ』ノハハオヤヲ、ソッコクミツケヨ!!!」

 

「「「「「リョウカイ! ティーサン!!!」」」」」

 

 

カラス達は街中に散り散りとなって一斉に『るいちゃんのお母さん』に呼びかけ始めた。

 

 

 

「ピンポンパンポーン!」「オキャクサマニ」「マイゴノオシラセデス!」「『ルイチャン』ノオカアサマ!」「スーパーノマエデ」「『ルイチャン』ガオマチニナッテオリマス!」「カラスレンゴウノチュウシンブガ」「メジルシデス!」「ピンポンパンポーン!」

 

 

「げ、芸が細けえぇええぇ!!?」

 

カラス達の半分程が、『るいちゃん』を中心に上空を竜巻状に飛び回って、もう半分が辺りの人達にアナウンス方式で伝えている。

一糸乱れぬその統率力はもはや芸術の域だった。

 

結果、るいちゃんのお母さんは3分と待たず迎えに来てくれました。

海鳴のカラスはどんな教育うけてるんだ!?

 

 

 

 

 

 

 

「ドウダユウレイ、ワレワレノ、トウソツリョクハ」

 

「くっ……。見事としか言いようがない」

 

 

ティー率いる『カラス連合』の凄まじさに、俺はただただ感心するしかなかった。

というか、カラスに負ける俺って……。

 

 

 

 

いや! ここで負けを認めたら幽霊としての沽券に関わる!!

半分意地になった俺は、ティーに向かって指を突きつける。

 

「だが、まだだ! 俺はもっと海鳴の役に立つ! お前達よりもな!」

 

すると、ティーは「オモシロイ……」と不敵に笑う。

俺達は初めてお互いを『ライバル』として認めあっていた。

 

 

「イイダロウ……。ナラバ、ツギニジケンガオキタラ、ドチラガサキニ、カイケツデキルカ、ショウブダ」

 

「! 望むところだ……」

 

「マア、ワレワレノショウリハ、ミエテイル」

 

「言ってろ、俺だって加減はしないぞ……!」

 

 

 

ティーは後ろに大量の仲間を、俺は両手に人魂を作り出し、ひたすらに事件を待つ。

どれぐらいの時間がたったか分からない、だが事件は確実に起きた。

 

 

 

 

「銀行強盗だーーーー!!!」

 

「お前ら全員道をあけろォ! 撃つぞっ!」

 

 

 

 

 

「ゼンイン、カカレエェエエエェエッ!!!」

 

 

「リョウカイ!」「アイアイサー!」「ゴヨウダー!「テンチュウ!」「マテールパーン!」「デアエデアエーイ!」「オトナシク!」「オナワニツケー!」

 

「顔面直撃人魂ダブルシュートオォォォォ!!!」

 

 

 

「ぎ、ぎゃああああああああああああああああああっ!!?」

 

 

 

のちに、犯人はこう語る。

 

 

『俺だってわけわかんないっすよ!? 銀行出たとたん、滅茶苦茶な数のカラスと両手に火の玉持った学生服の男が襲いかかってきて! 本当なんです刑事さん! いや学生服の男は一瞬しか見えなかったっすけど! 信じてくださいってばぁ!』

 

ちなみに男は火傷こそ負わなかったが、見事なアフロになったそうな。

 

 

「くっそー、引き分けか~」

 

 

午後3時、見事銀行強盗逮捕を成功させたが、結局カラス達と共闘(集団リンチ)してしまったため引き分けに終わってしまった。

 

 

ティーはこれから用事があるらしく「マタ、ショウブヲシヨウ、『タナカ』」といってカラス達を引き連れ飛んでった。

……次こそは勝つ。

 

 

現在、俺は明日暴走体が出現する近く、つまりサッカーグラウンドの下見に来ていた。

 

いや、単にやることがないだけなんだが……。

まあこうして現場にくると、絶対に海鳴の平和を守ろうという気力は湧いてくる。

無駄じゃあないはずだ。

 

この世界に来てもう何年も経つ、未だに生きてる人達と知り合った事はないけど。

 

それでもこの世界のみんなは、守りたい。

 

 

「幽霊だからって、死んでるからって、何も出来ないわけじゃあないんだ」

 

 

例え、自分自身の手で原作ブレイクできなくとも、今は都市伝説の人達にすがることとなっても。

 

 

例え誰にも、気づいてもらえなくても。

俺が全部、助けてあげたい。

 

 

 

……なーんて、カッコつけてる時だった。

 

 

 

「た、た、田中あぁっ! 大変だよ!」

 

「花子さん!?」

 

声は頭上から、花子さんが未だかつて見たことない慌てた様子で文字通り飛んで来た。

どういうことだ? 花子さんは今日は知り合いに手伝いを頼みに行ってくれてたんじゃ……?

 

 

「アンタも手伝ってくれ! アタイとしたことが間の悪い時に『アイツ』を呼んじまったんだよ!」

 

「ちょ、花子さん落ち着いて! 『アイツ』って誰なんですか?」

 

あんまりにも慌ててるから俺が落ち着けと言うほどである。

一体、何があったのだろうか。

花子さん「そ、そうだね、悪かったよ」と深呼吸をする。

 

 

「いいかい田中、落ち着いて聞くんだよ」

 

「はい」

 

 

 

「この海鳴に『都市伝説』がもう一人来てくれた。けれど、そいつの機嫌が何故か滅茶苦茶悪いんだ、生きてる人間に危害を加えるぐらいに。だから田中、今すぐそいつを探して説得してほしいんだよ! アタイも探してるけど見つからないんだ!」

 

「え……ええぇえぇぇっ!!?」

 

 

 

俺は飛び回る、海鳴の街を。

 

まさか、こんなことになるなんて思いもしなかった。

 

いや、考えるべきだったのだ。

 

『都市伝説』が、全てが協力的な人達ばかりでないということに。

 

彼らは『都市伝説』人々を恐怖に陥れるモノなのだから、当たり前だったのだ。

 

 

 

「ッ!?」

 

ゾクリ、と背筋に寒気が走る。

 

 

この感触は、足売りさんと初めて会ったとき、いやそれ以上の『死の予感』!

まるで断頭台に乗せられたかのような圧倒的すぎる殺意に、息が詰まる。

 

 

『アイツはアタイ並みに有名な奴だからね! 気をつけるんだよ!』思わず花子さんの警告が頭に浮かぶ。

 

 

逃げ出したい気持ちを抑えつけ、急降下して地面へ降り立つと。

 

 

 

 

『いた』。

 

 

 

「あ……あなたは……」

 

声が、上手く出せない。

しかし、それだけで目のまえの存在は言いたいことは伝わったようだった。

 

 

 

 

 

「初めまして、あたし『メリーさん』。今ゴミ捨て場にいるけど、アナタは誰?」

 

 

最悪だ。

『トイレの花子さん』に並ぶ程の都市伝説『メリーさん』が相手だなんて。

 


 
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