No.454921

エージェント佐天さん とある少女の恋煩い連続黒コゲ事件5

水曜更新。
先週までガタガタでした。UBW書くのに手一杯でそらおと以外で更新を。
佐天さん第5話。VS類人猿。そしてクライマックスへの序曲。


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2012-07-17 23:56:44 投稿 / 全5ページ    総閲覧数:2887   閲覧ユーザー数:2780

 

エージェント佐天さん とある少女の恋煩い連続黒コゲ事件5

 

 

登場人物紹介2

 

\ウイハル~ン/:

 初春飾利が空気と化した姿。ぶっちゃけると赤座あかりやタダクニと同類の存在になっている。存在はするものの認識されない。ダミーチェック(視覚障害)レベル5クラスであるが、誰も認識してくれないのでそもそも彼女のレベルが測定されることはない。ある意味では人の存在を超えたレベル6に最も近い存在。

 なお、彼女は佐天さん以外の誰にも覚えられていない空気としてこれから過ごすことになるが、そのこと自体が後に大きな意味を持っていく。

 頑張れウイハル~ン。それなりに。

 

重福省帆:

 初春に代わりレギュラーメンバーになる予定の少女。かつて佐天さんの眉毛を太マジックで書くという暴挙を働いたが、彼女の言葉で更正。以降佐天さんに熱い好意を抱く。

 交際していた男に振られるというレールガン随一の恋愛経験を誇り、かつ佐天さんを好きでいるという美味しいポジションからレギュラー入りが決まった。このシリーズの展開上、重福の存在が上条当麻にとって最大に厄介な存在となることは言うまでもない。美琴に対してもある特別な感情を抱いていくことになる。

 

 

 

 

13.類人猿

 

 上条さんの発案で、私は常盤台の制服を着て類人猿を誘き寄せるおとり捜査を敢行することになった。

 けれどなかなか姿を現さない。なので私はストーカーの気を惹く為に上条さんと腕を組んでカップルのフリをして街を歩いた。

 通行人達の注目を集めることには成功したのだけど、それでも類人猿は姿を現さない。

そこで私達は最後の手段として喫茶店を生中継中のテレビカメラの前で熱烈カップルぶりをアピールしてみせた。

 これで類人猿を誘き寄せる為の撒き餌は全て出し尽くした。

 後は類人猿との対決あるのみっ!!

 “ですのっ!”、白井さん、初春。あなた達の仇はこのスーパーエージェント佐天さんが必ず取ってあげるんだからねっ!

 そして御坂さん。今日こそ私があなたを類人猿の恐怖から解放してあげますからねっ!

 

 

「さて、準備は全て整いましたね」

 テレビ中継中の喫茶店を出て上条さんと腕を組み密着して歩きながら密談を交わす。

「ああ。さすがにテレビ中継で学園都市中に俺達の映像が流れりゃ黙ってはいられないだろう。類人猿は必ず仕掛けて来るに違いない」

 上条さんは力強く頷いた。

「じゃあ、そろそろ場所を移動しますか?」

「そうだな。類人猿をそげぶしても周りに被害が出ない場所に移らないとな」

 類人猿は今どこにいるのか分からない。けれど、きっと私達のことを見張っているに違いないと確信しながらゆっくりと歩いていく。

 決戦の地へと。

 

 それから時間をたっぷり掛けて歩きながら決戦の地、上条さんの家の近くの割と公園へとやって来た。

「さて……類人猿はっと……」

 公園の中では4人の高校生ぐらいの男の人達が自販機前で腕組みしながら立っているのが見えた。他に人の姿は見えない。

 さて、類人猿はどこから仕掛けて来るのだろうか?

 けれど、私の警戒とは異なる反応を上条さんはみせた。

「まさか……アイツらが類人猿だったとはな……っ」

 上条さんは4人の男の人を真剣な表情で凝視しながら額から汗を流している。

「えええっ? あの男の人達が類人猿なんですかっ!?」

 男の人達には聞こえないように口を押さえながら驚きの声を上げる。

 私には上条さんが何故そう考えたのか分からない。

 けれど上条さんの真剣な表情は嘘を言っているようには見えなかった。なのでここは上条さんの言葉を信じて類人であるという4人の男の人をよく観察することにする。

 

 一番右端にいる男の人は、身長は上条さんと同じぐらいでボブカットっぽい短髪の白髪が特徴。如何にもヤバい道歩いてきましたって感じの鋭くて逝っちゃってる瞳をしている。近付いたら妊娠させられるかヒューマンミューティレーションされそうな生理的恐怖を感じる。

 その隣にいる人は金髪にサングラス、そしてアロハシャツというどこぞの組の若い衆という外見をしている。しかもアロハシャツを素肌にサラシを巻いた状態で着ている。その剥き出しの胸板はやたらマッチョでどう好意的に見ても武闘派組員にしか見えない。

 この2人だけ見ていると、類人猿というのはヤの付く職業の組の名前に思えてならない。

けれどその隣にいる2人を見るとまた印象が変わってくる。

 金髪アロハなお兄さんの隣は、上条さんと同じ制服姿で背が高く髪が青くてニコニコな笑みを浮かべいる。何か全身から凄くマニアな感じを受ける女子中学生的には生理的にちょっと無理な人だった。絶対この人、空から可愛い女の子が降ってきて自分のことを好きになってくれるとか考えているに違いない。

 そして一番左にいる赤い髪の西洋人らしいタバコを咥えた人は……とにかく凄くデカい。青髪のお兄さんも大きいけれど、それに輪を掛けて大きい。本気で2mぐらいありそう。でも、デカくて目立つ割にストーキングとか素でしそうな怪しい雰囲気を纏っている。黒いマント羽織って街中歩いているってコスプレマニアなの?

 

「確かに誰1人……まともに見える人がいませんね」

 男の人達を見ていると私まで冷や汗が止まらなくなる。

「問題なのはアイツらの外見じゃねえよ」

 上条さんの声がいつになく引き締まっている。

「アイツらの本当の問題は……」

 ゴクリと息を飲みながら上条さんの顔を見る。

「アイツらの本当の問題は、中身、いや、設定にあるんだっ!」

「へっ?」

 上条さんは大声で叫ぶ。けれど、私には彼が何を言っているのか分からない。

 そして、分からないまま事態だけは進展していく。

 そう。怪しい男の人達が私達にゆっくりと、だけど威圧的に近付いてきたのだ。

 

「まさか……お前達がストーカーだったとはな。そうじゃねえかとは最初から99%疑っていたが……ガッカリだぜっ!」

 上条さんは舌打ちしながら目の前に立つ4人の男の人達を軽蔑の眼差しで見ている。やはり上条さんはこの4人が類人猿であると確信を抱いている。

 対する4人の反応もまた上条さんを侮蔑の瞳で見るものだった。

「おいおい、カミやん。いきなりストーカー呼ばわりとは酷いんじゃないかにゃー? 俺達、親友だろう? クラスの三バカ(デルタフォース)だろうがにゃー」

 金髪アロハな人が1歩前に出て両手を大きく広げながら残念ですと表現してみせる。

「俺はともかく女の子を追い回して苦しめるような奴なんか親友じゃねえよ」

「それを言われるとちょっと痛いんだぜぇ。何たって俺は正真正銘の紳士だからにゃー」

 金髪アロハな人は私を見ながら苦虫を噛み潰すように顔をしかめた。

 そんな金髪アロハな人に代わって1歩前に出たのが白髪の人だった。

「木ィィィィィ原ァァァァァァクゥゥゥゥゥゥゥンッ!!(怒り)」

 白髪の人はとても激しく怒っている。少女を1万人ぐらい殺しちゃいそうなぐらいにヤバい瞳をしている。だけど……。

「………………………っ」

 白髪の人は言語中枢をやられてしまっているのか、とにかくコミュニケーションを取れそうになかった。だから上条さんも特に返答しなかった。

 そして白髪の人に代わって前に出たのが青髪の人。

「けどな~、上やんがどうしてもって頼むから貸したげた僕の宝物でもあるん常盤台の制服。妄想プレイで楽しむのかなと思ってみれば……まさかリアル彼女に着させて往来コスチュームプレイをお楽しみやったとは。それはちょっとないんちゃうかな?」

 青髪の人はニコニコしながらその内実から激しい嫉妬の炎を吹き出させている。

「いやっ、佐天さんは俺の彼女じゃ……痛っ!?」

 まだ彼らが類人猿であるという決定的な証拠を掴む前にネタ晴らししようとする上条さんの脇をつねって止める。

「……今、真相を話したらストーキングの件もしらばっくれるかも知れませんよ」

「……そうだな」

 耳打ちして上条さんに相手と話を合わせる様に了承させる。

「そうなんですよぉ~♪ 彼ったら、私の中学の制服にもう飽きちゃったとかで~常盤台の制服を是非着てくれって何度もお願いされちゃってぇ~♪」

 腕を強く組んで顔を肩に擦り寄らせて熱愛ぶりをアピール。

「そうなんだよぉ~。俺の彼女の常盤台制服バージョンがどうしても見たくなっちゃってさ。あははは…なっはっはっはっは」

 乾いたヤケになった笑いを発する上条さん。

 熱愛ぶりをアピールする私達を見て4人の男達は更なる怒りの炎を背中から吹き上げさせた。

 

「つまり、上やんはその子と熱烈交際中。二次元よりも妄想よりも三次元を選んだと? 僕らを置いて1人だけリア充の道を突き進むっちゅうと? 大人の階段登ってしまうと? いや、その熱愛ぶり。既に大人の階段を登りきってしまったちゅうことやと」

 青髪の人は血の涙を流しながら悲しんでいる。

「ま、まあ。そういうこと……に、なるのかな?」

 目を逸らしながら上条さんは答えた。三流大根役者もいい所の演技。でも、私以外に女の子がいないからか嘘だとバレていない。男って何でこんなに鈍感なのだか。

「カミやんはこの子と付き合っている。まったく、あんなに積極的なアピールを続けたのに姫神も吹寄も報われないだにゃー(伏線)」

「俺が佐天さんと付き合うのと姫神や吹寄がどう関係あるってんだ?」

 上条さんはまるで分からないとばかりに大きく首を捻った。

「ほんとっ、姫神も吹寄も報われないだにゃー」

 金髪アロハさんは右手を顔に押しつけながら大きく溜め息を吐いた。

 つまりそれって姫神さんと吹寄さんっていう高校生のお姉さんは上条さんに惚れている話になる。そして上条さんは例の鈍さを発揮してお姉さん達の想いに気付いていないと。

 なるほど。姫神さんと吹寄さんとやらは上条さんへの復讐に燃えてその内に私達の前に登場して来るかも知れない(伏線)。名前を深く胸に刻み付けておこう。

「じゃあ君はその子と本当に付き合っているんだな? つまり、イン■■■■(注:文字化け発生中につきご迷惑をお掛けしています)とは何でもないんだな?」

 赤い大きな人が上条さんを見下ろしながら凄んだ。急な雑音が混じり込んで来たのでよく聞こえなかったけど、また女の人の名前が出て来た気がする。さすがは無自覚天然結婚詐欺師上条さん。

「俺はイン■■■■(注:文字化け中。ソーリー)の保護者みたいなもんだってずっと言ってんだろ。お前が気にするような関係じゃ元々ねえっての!」

 ムキになって反論する上条さん。

 どうやら上条当麻被害者の会にはイン何とかさんという人も含まれているらしい。本当に何人の女の子を勘違いさせて泣かせば気が済むのだろう、このお兄さんは。

 

「あれっ? でも、上やん。この子でない常盤台の女の子とも親しくしてたようなぁ? 髪の短い髪飾りのよく似合う可愛い子と熱烈に抱き合ってたよーな記憶がばっちり残ってるんですけど?」

「えっ?」

 青髪の人の言葉に私は体がビクッと硬直した。

 常盤台に通う髪の短い髪飾りのよく似合う可愛い女の子ってもしかして……。

「そうそう。突然カミやんに抱きついて来た茶髪掛かった可愛い女の子も悪い男に騙されていたことになると。可哀想だにゃー」

 間違いない。青髪の人と金髪アロハな人が言っている常盤台の女の子って御坂さんのことだ。

「だからあっ! アイツとは何でもないってもう何十回も説明しただろうがっ!」

 上条さんは更に大きな声を上げて否定する。

「そんなこと言われてもだにゃー」

「僕達、現に置き去りにされて、上やんとあの子はデートに出かけた訳やしなあ」

「木ィィィィィ原ァァァァァァクゥゥゥゥゥゥゥンッ♪(同意)」

 金髪と青髪の人は顔を見合わせて頷き合い、白髪の人も頷いてみせた(?)。

 やっぱり、間違いない。上条さんと御坂さんは知り合いなのだ。

 詰め寄りながら上条さんに仮説を確かめる。

「もしかして上条さんは、御坂美琴さんをご存知ですか?」

 上条さんは目をパチクリとさせながら

「ああ、知ってるよ。あのビリビリ中学生の本名、確か御坂美琴だった筈だ」

 割合と簡単に頷いてみせた。

「つまり、上条さんは御坂さんと知り合いな訳ですね?」

「知り合いつーか……会う度に怒られて呆れられてばっかりだからなあ。嫌われているって言うか……でも、嫌われていても知り合いってことには変わりないよなあ」

 上条さんは首を大きく捻りながら御坂さんとの関係を説明するのに苦心している。

 確かに男性に興味がなさそうで潔癖性な御坂さんは天然結婚詐欺師な上条さんを快く思わないに違いない(断言)。

だって御坂さんゲコタとかメルヘンなのが好きだし、可愛いものが大好きだから男の子の場合も幼くて見た目も中身も可愛い半ズボンな子以外は興味がないに違いない(断言)。

 でも、今の私にとっては上条さんと御坂さんが知り合いであるという事実が一番重要だった。

「……やっぱり、類人猿と上条さんを追い掛けていた“女の子”は繋がっているんだ」

 以前立てた仮説を再度思い出す。

 つまり、上条さんを追い掛けていた“女の子”こそが白井さん達を攻撃した真犯人“類人猿”であるということを。

 後はこの目の前の男の人達が“女の子”であるかどうか確かめるだけだ。

 

「俺はカミやんとあの常盤台の短髪の女の子が上手く行くことを影ながらずっと見守っていたのに残念だにゃー」

「僕も上やんとあの子は上手く行く思うて影から優しく見守ろうって決めてたんやけどなあ」

「木ィィィィィ原ァァァァァァクゥゥゥゥゥゥゥンッ♪(相槌)」

「影から見守るプロである僕も、君とあの子の仲は良かったことを断言しよう」

 4人は自ら御坂さんを『影から見守る=ストーカー』であることを認めた。

「お前ら一体……どこに目を付けると俺とビリビリの仲が良いように見えるんだ? 眼科行って来い」

 上条さんは呆れた声を出した。今回の件に限って言えば、天然結婚詐欺師の上条さんの言葉の方が正しいと思う。幼い男の子にしか興味がない御坂さんが高校生の上条さんに惚れるとは思えないのだから。

 

「それからお前ら、その足元に置いてある紙袋は何なんだ?」

 上条さんは4人の足元に置かれている白い紙袋をジッと眺めた。

「知らないのか、カミやん? 今日は学園都市統括理事会主催“男の娘コンテスト”の開催日なんだにゃー」

 金髪アロハな人はメイド服を取り出しながら誇らしげな顔を見せた。

「このコンテストで優勝すれば、女子小学生・中学生に大人気のグッズを山ほどくれるんやと。これで僕も、女子中学生にモテモテや~。上やんにも負けへんで」

 青髪の人はセーラー服を取り出しながら楽しそうに笑った。あの図体で優勝する気らしい。

「木ィィィィィ原ァァァァァァクゥゥゥゥゥゥゥンッ♪(喜び)」

 白髪の人は水色に白い水玉が可愛いワンピースを取り出しながら鼻息を荒くしている。逝っちゃってる見た目に反して可愛い系が好きなのだろうか?

「イン■■■■(文字化け継続中)。僕は君に勝利を捧げるっ!」

 赤い髪の大きな人が白い修道服を取り出しながら勝利を誓う。いや、身長2mの人が“男の娘”コンテストに出ても勝ち目はないと思う……。

「お前らみたいな男臭さの塊が本気で勝てると思っているのか?」

 上条さんの指摘はもっともだ。

 けれど、今フォーカスを当てないといけないのはそこじゃない。

 そう。この人達が平然と女装できるという点。言い換えれば堂々と“女の子”になれるという点こそが重要なのだ。

 御坂さんのストーカーで尚且つ“女の子”。

 やはり、この4人が白井さん達を遠い世界へと旅立たせた類人猿だったのだ。

「上条さん。私も確信しました。この4人が類人猿で間違いありませんっ!」

 答えは、得たっ!

 

 

 

14.パートナー……戦友

 

「そうか。やっぱりコイツらが類人猿だったのか。畜生っ!」

 上条さんは私の言葉に確証を得たのか両手拳を力強く握り締めている。

 その顔は怒りと悔しさに満ちている。親しい友人達らしいこの男の人達が犯人だと知って複雑なようだ。

「だが俺は佐天さんとその周りの世界を守ると誓った。たとえ、自分とその周りの世界を壊すことになろうともな」

 上条さんは悲愴な覚悟を秘めた表情で右拳を顔の前へと上げていく。

「おっ。カミやん、俺らとやる気かにゃー? まあ、俺たちも男の娘コンテストに参加しようとしていた所をあの映像を見せられて頭に来ていたから丁度良いんだがにゃー」

 金髪アロハな人が指をパキパキ鳴らしながらニヤッと笑ってみせる。

「まあ、そういう訳で僕らは上やんを最初からボコボコにするつもりやったんで構わへんのやけど。上やんはいいんか? 4対1やで?」

 青髪の人が両手をわしゃわしゃと動かしながら怪しげな拳法の構えを取る。

「しかもこちら側には魔術のスペシャリストも能力のスペシャリストも知識のスペシャリストもいる。君に勝ち目はないと思うが?」

 赤い髪の人が何か呪文のようなものが書かれた紙をチラ付かせながら偉ぶっている。魔術って何のことだかよく分からないけれど、どうやら強敵揃いということだけは分かる。

「木ィィィィィ原ァァァァァァクゥゥゥゥゥゥゥンッ♪(余裕)」

 白髪の人の背中から禍々しい黒い翼が生えて今にも飛翔しそうな勢い。凄く強そうだ。

「それがどうした? こちとら勝ちが予め見えてるような勝負なんか1度も受けたことねえんだよっ!!」

 上条さんは圧倒的な戦力差を前にしても一切怯まなかった。その瞳は闘志に満ち満ちている。

「1対4が何だってんだっ! そんなことで勝てると思ってんなら、まずはそのふざけた幻想をぶち殺すっ!」

 上条さんは拳を前に突き出しながら叫んだ。

 

 上条さんは本気で1対4の不利なバトルを行う気らしい。レベル0が高位能力者や正体不明の魔術師達相手に戦いを挑む。

 その勇気は素直に賞賛に値する。だけど……。

 

「上条さんもふざけた幻想に囚われてしまっていますね」

 横に立ち直しながら静かに彼の過ちを述べる。

「そしてそのふざけた幻想は確かにぶち殺すに値します」

 横目で上条さんをキッと睨み付ける。

「俺が、どんな幻想に駆られているってんだ?」

 上条さんはむっとした表情を私に向けた。だから私は彼の過ちを指摘する。凛とした声でハッキリと。

「1対4って何ですか? 私もいるんだから2対4でしょうが。私の存在を忘れてもらっては困りますよ」

 上条さんはとても驚いた表情を見せた。

「けど、佐天さんは女の子なんだし、レベル0なんだろ? 戦わせるのはちょっと……」

「上条さんだってレベル0じゃないですか。それに、私はさっき類人猿を1度追い払うことに成功したと言いましたよね。舐めないで下さい」

「けど、俺のレベル0は凄く特殊なレベル0で……」

 上条さんは私を戦わせるのに抵抗を感じている。

「友達を苦しめたストーカーに怒りを感じているのは私も同じです。その私の戦いを邪魔するというのなら、まずは上条さんからぶち殺させてもらいますよ」

 ゲーセンのパンチングマシンで御坂さんを上回る数値を出した拳を上条さんへと向ける。

ここで引いたら……天国の初春達、そして今も苦しんでいる御坂さんに顔向け出来ない。友達だって胸を張って言えなくなる。

だから……絶対に引けないっ!!

「…………佐天さんはレベル0の徒手空拳タイプ。なるほど、俺の最も苦手のタイプだ。コイツらより佐天さんを倒す方が厄介そうだな」

 長い沈黙の果てに上条さんは私の瞳を見ながら大きく息を吐き出した。

「ならさ……俺の戦いを手伝ってくれるか?」

 上条さんは遂に折れた。けれど、彼の出した答えはまだ私を満足させない。

「それもまだ不正解。デリカシーに欠けた回答ですね」

 私は首を横に振る。

「私達はパートナー、戦友なんですから……一緒に戦おうが正解ですよ」

 上条さんの左手を両手で力強く握り締める。私の想いが伝わるように強く強く。

「そう、だったな。俺達は共に類人猿を捕まえる志を持つパートナー……戦友だもんな」

 上条さんは私に笑ってみせた。

「俺と一緒に戦ってくれ」

 上条さんが私の両手の上に更に右手を重ねてきた。

「勿論。喜んで」

 私は上条さんに向かって力強く頷いてみせた。

 

「カミやんの奴、俺らとの決戦の直前だって言うのに、また彼女とイチャついているんだにゃー。同じ人類として許せん男なんだにゃー」

「僕らとの戦いは彼女との愛を深める為のイベントの1つに過ぎないと。さすがは上やん。僕らとは住んでいる世界が違う。けどな、それが腹立つんや~~っ!」

「木ィィィィィ原ァァァァァァクゥゥゥゥゥゥゥンッ!!!(怒り)」

「ヤレヤレ。僕達も舐められたもんだね。その傲慢、万死に値するよっ!!」

 4人の男の人達は私達のやり取りを見て怒り心頭状態。いつ戦端が開かれてもおかしくない一触即発の雰囲気。

 

「で、上条さんはあれだけ勢い込んで喧嘩売ったんですから、あの4人に勝つ秘策とか当然あるんですよね?」

 以前の戦いで使った電気伝導率0のゴム手袋を両手に嵌めた状態で上条さんに問う。

「秘策なんてねぇよ。出たとこ勝負だっ!」

 上条さんは勇ましく言い返してきた。

 その割と無鉄砲な所、御坂さんとそっくりだと思った。戦術は無茶苦茶なんだけど、信念と自分の力で最後は勝利をもぎ取ってしまうあの年上の友達に。

 だからこの人と一緒にいると劣勢な状況でも安心していられるのかも知れない。

 勿論、今回の戦いに関して私は負けるつもりなんか微塵もないんだけど。

「そういう佐天さんこそ、アイツらを圧倒出来るような秘策かなんかあるのか?」

「秘策ならありますよ」

「やっぱり秘策なんかな……いいっ? 秘策、あるのっ!?」

 上条さんは驚いた表情をみせた。

「ええ、勿論ありますよ」

 きっぱりと断言する。

「どんな凄い力を持っていようと所詮相手は中高生の思春期男子。しかも常盤台の制服に釣られて誘い出されるような桃色男子。倒すなんて大して難しくもありませんよ」

「えっ? そうなの?」

 上条さんがとても驚いた表情をまた見せた。

「ただの桃色妄想大好きな青春男が厨二的な力を付けただけなら……対処法なんて幾らでもあります。現役JCを舐めてもらっちゃ困りますよ」

「えっと、それって……」

 上条さんは冷や汗を垂らしながら私を仰け反って見ている。

「上条さんは目を瞑って耳を塞ぎ、ゆっくり10まで数えて下さい。そして10まで数え終わったら目を開けて4人を全力で攻撃して下さい」

 上条さんに秘策の概要を耳打ちして伝える。

「えっと、その、戦闘中に目を瞑っているのは危険なんで……上条さんも目を開けていてもよろしいでしょうか?」

「まあ、上条さんが年収700万以上稼いで私をお嫁に貰ってくれると確約してくれるならそれも構わないですけどね」

 フフフと色っぽく笑ってみせる。

「いや、上条さんのお馬鹿な頭ではその年収は……いや、それ以前にそんな簡単にお嫁に貰うなんて単語を使ったらお父さんは泣きますよっ!」

「じゃあ、パートナーを信じて下さい。私が言えるのはそれだけです」

 上条さんの目をジッと覗き込む。

「…………分かったよ。佐天さんの作戦を信じる」

 上条さんは大きく溜め息を吐き出しながら折れた。

「じゃあ俺は目を瞑って耳を塞ぎながら10数えるから……佐天さんはあの4人の隙を作ってくれ」

「了解っ♪」

 元気良く返事をする。

 上条さんは大きく息を吸い込むと両手を耳に当てて目を瞑り、ゆっくりと数をかぞえ始めた。

「じゃあ、行くからな。ゼロ…………い~~~ち」

 上条さんの声を確認しながら4人の男の人達、即ち類人猿へと振り返る。

「さあ、お兄さん達。このスーパーエージェント佐天さんがお相手して差し上げますよ」

 不敵な笑みを浮かべながら戦いの意思を告げる。

 いよいよ、私の戦いが始まった。

 

 

 

15.そげぶ

 

 私は類人猿と判明した4人に対して宣戦布告を果たす。それに対する反応は──

「そんなこと言われても俺らは紳士だから、普通の中学生の女の子と戦うのはちょっと困るんだにゃー」

 金髪アロハな人をはじめ戦いを渋っている。

「木ィィィィィ原ァァァァァァクゥゥゥゥゥゥゥンッ!!!(やる気)」

 ただ1人、白髪の人だけはやる気十分だ。あの人は戦うのが女子中学生でも躊躇はないらしい。

 でも、所詮はこの人も思春期の男の子には変わらない。女装用の水玉ワンピースを見る限り、成熟していない女の子に興味があるのは間違いなさそうだし。

 さあ、佐天さんの一世一代の大立ち回りをご覧あれ。

「ねえねえ、お兄さん達。この常盤台の制服ってすっごく可愛いって思いませんか?」

 4人の前でクルッと1回転してみせて可愛い動作をアピール。スカートを微妙に捲くれ上がらせるのも忘れない。つま先で綺麗に回り長い髪を風に靡かせながら笑顔でフィニッシュ。

初春相手に全力で鍛えた女子中学生の可愛いアクション攻撃を受けてみよ。

「こっ、これがっ、これが常盤台の制服の力なんかっ!? 上やんはこんな核兵器級に威力のある代物をベッピンの彼女はんに渡して楽しんでたっちゅうわけなんか!?」

 青髪の人がガクガクと全身を震わせながら驚愕している。

「木ィィィィィ原ァァァァァァクゥゥゥゥゥゥゥンッ!!!(攻撃態勢)」

「「「待てっ!」」」

 私への攻撃態勢に入ろうとする白髪の人を3人が身を挺して止める。

「相手は可愛さを攻撃力にする女子中学生。しかも常盤台制服バージョン。今までの敵とは段違いの実力を持っている。慎重に行くんだにゃー」

「そうそう。慌てても良いことはあらへんって」

「まずは敵の戦力を見定めるのが戦闘の基本だろうが」

 3人は私をガン見している。

「木ィィィィィ原ァァァァァァクゥゥゥゥゥゥゥン(攻撃中止)」

 白髪の人も行動を止めた。これで4人の動きは止まった。

 よしっ。次の攻撃フェーズに移行しよう。

 

「お兄さん達ってよく見れば格好良いですよね♪ 素敵ですよ。ウフッ♪」

 初春相手に鍛えまくったスマイルを4人にプレゼント。

「「「ズキュ~~ンっ!?」」」

 どうやらあまり女の子に縁がなかったらしい3人は激しく動揺している。

 そして──

「木ィィィィィ原ァァァァァァクゥゥゥゥゥゥゥン…………(ポッ)」

 私は見逃さなかった。一瞬、白髪の人の目が丸くなって頬が赤く染まったのを。

 よしっ。掛かった。

 私の可愛いポーズ攻撃はモテないボーイズのみんなに効いているよ。やったよ、天国の初春。

 大空に浮かんで私を見守ってくれている初春がニッコリ笑った気がした。

 それに力を得て更なる攻撃を加えることにする。

 

「ねえねえ、お兄さん達~。この制服ってとっても可愛いと思うんですけど……スカートがちょっと短過ぎると思いませんか?」

 スカートの裾を摘んで僅かに持ち上げてみせる。

4人は無言のまま私のスカートの裾の動きを追っている。

「ろ~~~く、し~~~~」

 上条さんのカウントも段々と終盤に差し掛かってきた。

 なら、そろそろ勝負を決めよう。

 上条さんがその力を存分に発揮できる土台作りをするのが私の役割だ。

「このスカート、丈が短すぎてもうちょっとでも裾を引っ張り上げちゃうと……見えちゃうんですよね~♪」

 4人の瞳が最大限に大きく見開かれた。

「私が彼氏である上条さんに目を瞑ってもらっている理由って何だと思いますか?」

 ウフフフと艶っぽく笑う。

「お兄さん達にサービスする為なんですよ~♪」

「「「サービスっ!?!?」」」

「木ィィィィィ原ァァァァァァクゥゥゥゥゥゥゥン♪(愉悦)」

 4人が私をガン見しているのを確認しながらゆっくりとスカートの裾を上へ引き上げていく。

 そして──

 

 

 防御力アップ用に穿いていた御坂さんとお揃いのクリーム色の短パンを見せた。

 

 

「「「「なっ!?」」」」

「もしかしてパンツでも見られるとでも思っていましたか? お兄さん達のエッチィ♪」

 笑顔でニッコリと事実を告げる。

 次の瞬間、4人の表情が激しく歪んだ。

 そして、聞こえる筈のない音が私の耳に届いたのだった。

 即ち、心がまっ二つに折れる音が。

「そ、そこまで誘っておいて短パンはないんだにゃ~~~っ!」

「酷い……男子高校生の純情をこんな残酷な形で弄ぶなんて酷すぎるで~~っ!」

「木ィィィィィ原ァァァァァァクゥゥゥゥゥゥゥン……(血涙)」

「イン■■■■(文字化けが修正できず申し訳ありません)。これは僕に対する罰なんだね。そうなんだね……」

 パーソナル・リアリティーとか信念といった物が真っ二つに破壊されている。でも、ここで終わりにしちゃいけない。

 ここで攻撃の手を緩めたら、上条さんに逆上して襲い掛かって来る可能性もまだ考えられる。

 心を割るんじゃなくて……きちんと砕かないと。

「は~~~~ち、きゅ~~~~」

 大きく息を吸い込んで、4人の男達にとどめの一言を浴びせる。

 心の中でごめんなさいと両親と目の前の男達に詫びながら……。

 

「私のパンツを好きに見て良いのは……これまでも、そしてこれからも彼氏である上条さんだけなんですよ。てへっ♪」

 

 初春相手に鍛え匠の域に達した舌出しを見せてフィニッシュを飾った。

「「「「………………っ」」」」

 そして一瞬の沈黙の後、精巧なガラス細工が床に思い切り叩きつけられたような、そんな悲しい破壊音が聞こえた。

「カミやんに遠くに置いていかれたにゃー……ブツブツ」

「上やんは僕らを置いて1人だけ大人になってもうた……ブツブツ」

「僕、こんななりだけどまだ14歳なんだよ。この国の青少年保護条例は一体どうなっているんだ……ブツブツ」

「木ィィィィィ原ァァァァァァクゥゥゥゥゥゥゥン……(魂抜け)」

 4人の男達は完全に戦意を喪失した。というか、魂が抜けて抜け殻と化している。チェリーボーイズに私のアダルティー攻撃は刺激が強過ぎたようだ。

 

 ……隙を作る以上のことをしてしまった気がする。世間体とか清純派イメージとか何か大事なものと引き換えにしながら。

 でも、チャンスはチャンスだった。

 

「じゅ~~~~う!」

 上条さんが10まで数え終えた。

 私は耳を塞ぎ終えた上条さんに向かって大声で叫んだ。

「上条さんっ! 約束通り隙は作りましたっ。今です。やっちゃって下さいっ!」

 目を開いた上条さんは鋭い戦士の瞳をしていた。

「おおっ! 後は任せろ…………って、えええええええええぇっ!?」

 けれど上条さんの目は一転して丸くなった。4人の男達が体育座りで蹲って血涙を流しながら呆然としている姿に驚いたのだ。

「ほんの少しだけ隙を作り出した今がチャンスです。存分にやっちゃって下さいっ!!」

 大声で上条さんを後押しする。

 多分今の4人なら幼稚園児でも楽に勝てる。けれど、それはそれ。

 最後はやっぱり正義のヒーローに締めてもらわないとっ!

 

「そうだな。お前らが泣かせた女の子達の心の痛みをその体で分かりやがれぇ~~っ!!」

 上条さんは表情を引き締め直すと男達に向かって全力で殴り掛かっていく。主人公気質のとても高い順応性をお持ちなのは間違いなかった。

「お前たちのそのふざけた幻想をぶち殺してやるっ!!」

 上条さんが大きく拳を振り上げ、彼の言う所のそげぶショーが始まりを告げたのだった。

 

「まずはお前っ! 中学生でメイドやっている義理の妹がいるなんて人として許されない境遇なんだよ。そげぶパ~~ンチッ!!」

「男子寮で血の繋がりもない可愛いシスターと同居しているカミやんに言われたく……ぐっはぁあああああぁっ!?」

「次にお前っ! 俺が認める青髪は古今東西ただ1人、綾波レイだけだ。貴様の髪は彼女を侮辱しているんだよ。そげぶパ~~ンチッ!!」

「僕なんかムッチャ個人的な好き嫌いを理由に一方的に殴られているよう……あべしぃいいいいいいいぃっ!?」

「次っ! 血の繋がらない可愛い幼女と無防備な美人女教師に慕われながら同居だなんてテメエは一体どんなレベル6を目指すつもりなんだよ。そげぶパ~~ンチッ!!」

「木ィィィィィ原ァァァァァァクゥゥゥゥゥゥゥン……(気絶)」

「最後っ! テメェ、その2mの図体で14歳とかあり得ねえだろうがっ! ずっと年上だと思ってたぞ。ていうか、ガキがタバコ堂々と吸ってんじゃねえ。イギリスからお叱りの声が来て外交問題になったらどうするつもりだ。そげぶパ~~ンチッ!!」

「ちなみに現在イギリスでは18歳から喫煙可能だよ。僕は決して未成年の喫煙を勧めている訳ではないか……うわらばぁあああああああぁっ!?」

 

 上条さんは4人の男達を容赦なく殴り飛ばした。

 4人は白目を剥いて気絶している。完全K.O.だ。

「そげぶはなあ……愛なんだよっ!」

 上条さんはよく分からないキメ台詞で戦いを締め括った。

 これでようやく戦いは終わった。御坂さんを苦しめ、白井さん達を襲った類人猿との戦いに幕が下りたのだ。

「やったよ……初春。初春のおかげで、勝利できたよ」

 大空の初春が笑顔で迎えてくれている。

 そんな気がした。

 

 

 

 

16.雨のち泊り

 

 類人猿との死闘は私達の勝利に終わった。

 4人の男の人達はアンチスキルに引っ張られていった。

『なるほどじゃん。つまりコイツらはストーカーで傷害犯でレベルアッパー事件の真の黒幕で第三次世界大戦の真の主導者で未来の宇宙から来た超能力者の悪の組織の一員だと。でも、コイツらまだガキじゃん。情状酌量を汲んでもらうように掛け合ってみるじゃん』

 とても話のよく分かる人が彼らを保護してくれた。きっと彼らも真人間になって社会に復帰してくれることだろう。きっと23世紀ぐらいには。

 こうして犯人捕縛という形でエージェント佐天さんは仕事をやり遂げたのだった。

 

「事件は解決したのに……何か悲しい気分が取り巻いて離れねえなあ」

 暗雲が立ち込め始めた空を見上げながら上条さんが大きく溜め息を吐いた。

 あの類人猿の4人は上条さんの知り合いだった。幾ら凶悪犯とはいえ、友達を自分の手で捕まえることになった上条さんの悲しみは私も察することが出来る。

 そんな彼を慰めるのもパートナーである私の役目だろう。

「上条さんは頑張って結果を出しましたよ」

 彼が友人を殴り飛ばした右手をそっと上から握る。

「上条さんのおかげで私の友達はストーキングの恐怖から解放されたんです。友達が救われたのは……間違いなく上条さんのお手柄ですよ」

 負の面ではなく正の面を強調する。

 それが上条さんの為に私ができる励まし。

「その上条さんが落ち込んでいたんじゃ……友達も困ってしまいますよ」

 上条さんの手をギュッと握り締める。

「そうだな。俺達はストーキングの被害に遭って苦しんでいるその子の為に戦った。そしてその子を救うことができた。それを誇るべきだよな」

 上条さんは私の顔を見ながら小さく笑った。

「そうです。上条さんはヒーローを貫いたんです。それはとても尊いことなんですよ」

 私も上条さんを見ながら小さく笑って返した。

「佐天さん。ありがとうな。おかげで少し元気出た」

「事件捜査の協力をお願いして解決までしてもらったのは私の方です。だから、私こそ上条さんにありがとうですよ」

 お互いにジッと見つめ合う。

「佐天さん……っ」

「上条さん……っ」

 “友情”を確かめ合うしばしの時。

 

「…………何、あのラブラブな雰囲気? …………公共の場でキスする気なの?」

 

 物陰から何か呟きのようなものが聞こえた。

「今、何か聞こえませんでした?」

「いや、特に何も聞こえなかったけど」

 周囲に人影がないか首を回して探す。

「あれっ? 雨?」

 探している内に水滴が顔に掛かった。それも2滴、3滴と連続で。特に考えるまでもなく雨だった。しかも……大雨。

「今日雨なんて予報ありましたっけっ?」

「天気予報なんてチェックしてなかったが……こりゃあすげー雨だあっ」

 降り始めてほんの30秒ほどで全身びしょ濡れになってしまう。

「こんな雨宿りする場所もない所にいるタイミングで振られるなんてもう最悪~~っ」

 髪なんかもうプールに入った後のようにグチョグチョ。制服も川にでも飛び込んだみたいにビチョビチョ。気持ち悪さはゲージを振り切っている。

 体の濡れ具合がひどくて雨宿りがどうとか言っていられるレベルを凌駕してしまった。

「この近くに俺の家があるんだ。服はそこで乾かしてくれっ」

「分かりました」

 上条さんに手を取られながら2人で駆け出していく。近所にあるという上条さんが住む男子学生寮を目指して走る。

 

 

 上条さんの住む男子学生寮には間もなく到着した。

寮は10階建てぐらいの随分と大きな建築物だった。けれど以前上条さんが言っていた通りとても殺風景で無個性な白いビルディングで個人的にはあんまり住みたいとは思わない寮だった。

男子寮と言っていたけれど、女の子が入って大丈夫なのかな?

そんな疑問がふと過ぎった。

「悪いんだけど7階まで階段で行くぞ。女の子の姿がエレベーター内のカメラに映らないようにするのがここの裏の掟ってやつなんだ」

「分かりました」

 上条さんに従って裏階段を上がっていく。多感なお年頃の少年達が住む場所だけあって色々な裏ルールがあるようだ。

 逆に言えば……女の子がここを訪れることも裏約束が定まるぐらいには頻繁にあるということ。さすがは高校生男子寮という所か。

「きっと上条さんの部屋も毎日のようにいろんな女の子が出たり入ったりしてるんでしょうねえ」

「何だそりゃ?」

 天然ジゴロの結婚詐欺師さんのお部屋がどんな風になっているのかちょっとだけ楽しみだった。

 

 7階のとある部屋の前に到着する。表札を見ると『上条』と書かれていた。

「ここが俺の部屋な。狭くて汚い所だけど遠慮せずに上がってくれ」

 上条さんは鍵を開けながら私に中に入るように薦める。

「でも普通、こういう場合には女の子に見られてはまずいエッチな本とか脱ぎ散らかした洋服を慌てて整理してから女の子を部屋に上げるのがお約束なんじゃないですか?」

「そんな本はないからっ! 洋服を脱ぎ散らかしてもいないしっ!」

「ふ~ん。なるほど~」

 やはり上条さんの部屋には普段から女の気配がある。それをこのやり取りで察する。

「じゃあ、安心して上がらせてもらいますね~♪」

「上条さんは女子中学生に酷い誤解を受けていますよ……不幸だ」

 室内へと足を踏み入れる。

 

「これはまた……普段から綺麗にしているんですね」

 玄関から中へと入って一目見た感想。それは独り暮らしの男性の部屋にしてはとても綺麗に整頓されているという驚きだった。

「そうでしょう、そうでしょう。上条さんはこう見えても綺麗好きなんですよ」

 隣の上条さんは自信たっぷりに頷いてみせている。

 上条さんは自分の綺麗好きを誇っているようだけど、私の観点はちょっと違う。やっぱり普段から女の子の目を気にして部屋を綺麗にしているんじゃないか。そんな風に思ってしまうのだ。

「私、男の人の部屋に入ったのって初めてなんですけど……この綺麗さは私の部屋以上ですよ」

 驚きを声にしながら室内を見回す。女の子の影がないかとチェックを入れながら。

「はっはっは。上条さんは普段みんなにガサツな人間に見られがちですが、本当はマメで綺麗好きな好青年なんですよ」

 私の真の目的に気付いていない上条さんは誉められて上機嫌だ。おかげで捜査がし易い。

 洗面所の方をチラ見した所で早くも証拠を1つ発見。

 コップに入った歯ブラシを2本視界に捉えた。更に色違いの赤と青のタオルが2枚並んで掛けられている。

 台所を通過する際にはお茶碗とお皿が2個ずつ乾かされているのも発見してしまった。

 

 ……もしかして、上条さんって女の人と同棲中なんじゃ?

 

 少なくとも上条さんには食器や日用生活品を一揃え準備するだけの女の子が存在する。一緒に暮らしているのか分からないけれど、それに近い存在がいる。

「やっぱり彼女持ちなんだ」

 何故彼女の存在を隠そうとしているのかはよく分からない。けれど、上条さんには彼女がいることだけは確かだった。

「まあおかげで余計な勘違いはしなくて済むから気楽で良いけれど」

 彼女がいるのなら私に手を出すような真似は上条さんもして来ないだろう。幾ら天然ジゴロの結婚詐欺師とはいえ上条さんが複数の女に手を出すとは思えない。そんな勇気はこの人にはないだろう。

 初めて上がった男の人の部屋で若干緊張していたのだけど、その緊張もほぐれた。軽くなった心でいよいよ室内へと足を運び入れる。

 

「室内も綺麗にしてるんですねえ」

 よく掃除が行き届いた6、7畳ほどの室内を見回しながら感想を述べる。

 最低限の家具しか置かれていないその部屋は男子高校生が主であることをほとんど匂わせなかった。ゲームはおろか漫画さえ置いてない。

 無味無臭というかこだわりがまるでないというか。そして、台所や洗面所を見た時に感じられた女の人の痕跡もこの部屋では感じられない。

 着替えやら化粧品やら何らかの痕跡があっても良い筈なのだけど。上条さんの恋人はいつも同じ服を着て化粧も肌の手入れもしないのだろうか?

 謎は深まる一方。

 だから、直接尋ねてみることにする。

「上条さんって、女の人と同棲しているんじゃないんですか?」

 上条さんの顔をじっと見る。

「へっ?」

 上条さんが目を丸くする。そして──

「なっ。なっ、なぁああああああああぁっ!?!?!?」

 思い切り取り乱してくれた。見ているこちらが驚いてしまうぐらいに激しく。

「どどどどどど同棲って、一体何を根拠にぃいいいいいぃっ!?」

「歯ブラシもタオルも食器も2人分並んでいるじゃないですか。これ以上の証拠はないと思いますけど?」

 私が冷静に指摘すると上条さんの顔は真っ青になった。

「ちっ、違うんだぁああああああぁっ!! アイツは同棲相手なんかじゃない。ただの居候。行き倒れになっていたアイツを保護しているだけなんだぁあああああぁっ!!」

「つまり、一緒に住んでいる女の子はいると」

「あっ……」

 上条さんが口を開いたまま固まった。語るに落ちるとはこのことだろう。

「でも別に私は上条さんに将来結婚を約束した女の子がいても関係ありませんよ。私達は友達なんですから」

 むしろ問題なのは上条さんの彼女さんが今日のあのテレビ番組を見てしまっていたらどうしようという点だった。

 人の亭主に手を出した不埒者として血の惨劇を迎えてしまうのではないかと内心怖い(伏線)。

「だ~~か~~ら~~っ! アイツとはそんな関係じゃないってのっ! 手だってろくに握ってもいないただの居候だっての~~っ!!」

 上条さんの絶叫が室内に響きわたった。

 

 上条さんは同居しているという少女との関係を必死に弁明しようとした。

 けれど、少女の名前もどんな身分の子なのかも明かそうとしないので話は要領を得ない。

 分かったことは同居人は外国人の少女であるらしいこと。学園都市の非正規滞在者であること。今日は上条さんの担任の女の先生の所に泊まりに行っていることだけは分かった。

「このぐらいの説明で……勘弁しては貰えないでしょうか?」

 上条さんは見事な土下座をして果たした。

「上条さんが外国人の女の子を部屋に囲っている鬼畜さんだってことはよく理解しましたからご安心下さい♪」

「俺の説明が全然通じてない……不幸だ」

 床に頭を突っ伏したまま上条さんは悲しんでいる。

 きっと彼の言う通り、その外国人の女の子とは何でもないのだろう。少なくとも上条さんの頭の中では。

相手の女の子がどう思っているのか分からないけれど。いや、一緒に住んでいるぐらいなのだから答えは聞かなくても分かるけれど。何でこの人はこんなに鈍いのだか……。

「まあまあ、今日のテレビでも上条さんのリア充ぶりは十二分にみんなに知れ渡ったんですから今更もう怖いものなんてありませ……クチュン」

 喋っている途中でくしゃみが出た。

 雨に降られて体が濡れっ放しだったのを忘れていた。

「話の途中で悪いですが……シャワーを貸して貰えませんか?」

「あっ、ああ……」

 上条さんは額から冷や汗を垂らした。

 

 

 自分の家とは勝手が違うのでちょっとやりにくさを感じながら熱い湯を頭から浴びる。

「考えてみると……今日はすっごい体験の連続なのよねえ……」

 御坂さんを救う為とはいえ、上条さんと腕を組んで街中に歩き、テレビカメラの前にも姿を晒した。

 御坂さんを救う為とはいえ、類人猿の4人に私達の仲を誤解させるような言動を繰り返した。

 事件の後処理をしている間に雨に降られて、生まれて初めて男の人の部屋に上がることになり、その部屋でシャワーまで浴びている。

 事件を解決したことで御坂さんには喜ばれるだろうけど、上条さんと同居している女の子の今後の反応が怖い。

「まっ。その時はその時、か」

 類人猿事件は解決できたのだし、きっとこの後も何とか切り抜けていける。

 考え事はそこまでにして後はお湯の暖かさに目を閉じて身を委ねた。

 

 

 浴室から出るとグレーのスウェットが足元に置かれていた。昨日私が上条さんに貸した服だった。

 パンツもブラもずぶ濡れでとても着けられる状態ではないので素肌に直接着る。

 それから予め上条さんに聞いておいた手順に従って洗濯機を回すことにした。

常盤台の制服はネットに入れた状態で普通に洗ってしまって良いのか分からない。けど、持ち主はあの青髪の人だし別に縮んだり傷んでも良いかなと思って一緒に放り込む。

 回り始めた洗濯機をこれ以上見ていても仕方ないので上条さんの待つ部屋へと戻る。

 

「シャワーどうもありがとうございました♪」

 湯気を立たせている日本茶を飲みながら寛いでいる上条さんに声を掛ける。

「ああっ」

 上条さんはまったりモードを継続中。さすがは女の子と同居しているだけあってこの手のシチュエーションには慣れているようだ。

 でも、それは女の子として佐天さんのプライドが許さない。少しは湯上り美少女に慌てて貰わないと♪

「パンツもブラもずぶ濡れだったんで気持ち悪くて着けませんでした。だから今の私はノーパンノーブラなんですよ♪」

「ぶふぅ~~っ!?!?」

 上条さんは思い切り吹いた。ちょっと愉悦♪

「グっと来ましたか~? 佐天さんに欲情しちゃいました? もしかして私、このまま襲われちゃいますか~?」

「そんなことしないっての! 上条さんは紳士だと何度も言っているでしょうが!」

 上条さんは咳き込みながらムキになって反論した。彼が自分のことを紳士だと何度も念を押して語ってきた理由が分かった気がした。

 女の子と同居しているような状況にあるからこそ、小心者の結婚詐欺師さんは強く自制を意識しているのだ。

「どうやら同居人の女の子にいかがわしいことはしていないみたいですね」

「やっと信じてくれたか。はぁ」

 上条さんは大きく息を吐き出した。

 

 上条さんをいじめるのはもう止めて外を見る。

 降り始めた時よりも更に激しい雨がベランダまで吹き込んでいた。しばらく止みそうもない。

「雨宿りさせてもらっているお礼に今晩は私が料理を担当しますね」

 昨日は見せられなかった佐天さんの料理スキルをご覧に入れようと思う。

「料理作ってくれるのは嬉しいけど……うちの冷蔵庫、ほとんど何も入ってないぞ」

 冷蔵庫と食品棚を開けてみながらチェックしてみる。

 冷蔵庫の中身は……麦茶、に見せかけた麺つゆ。使いかけの長芋。マヨネーズ。青ねぎが少々。それと梅干。

 棚の方は……パスタ。かつおぶし。乾燥ワカメ。他には幾つかの調味料のみ。

 確かにろくなものがない。

 同居している女の子は料理をしないのだろうか?

「なっ。さすがにこれじゃあ料理なんて大層なものは……」

「フッ。エージェント佐天さんを舐めないで下さいよ。パスタがあるだけ上等。晩ご飯ぐらい、この材料で十分ですっ!」

 宣言してみせる。

 この材料を使って如何に最善の料理を作り上げるか脳内で組み立てる。

 主食になるのはパスタしかないのだから、後はどんなパスタを作るか。その話になる。

 麺つゆ、梅干、長芋、乾燥ワカメ、マヨネーズ……それらを組み合わせて出来るものと言えば。

「和風パスタを作りますからちょっと待っていて下さいね」

 料理行程を思い浮かべながら上条さんにほほ笑みかける。

「え~と、俺は何をすれば?」

「すぐ出来ますから部屋で待っていてください」

 と、ここまで喋った所でまた悪戯心が巻き起こる。

「それとも私にどうしても裸エプロンで料理して欲しいなら、そこでずっと見ていても構いませんよ♪」

 ニヤッと笑ってみせる。

「もうセクハラは勘弁してくださいっ!」

 上条さんは肩を落としながら出ていった。

 

 パスタを茹でながら、同時に長いもと青ねぎを細かく切っていく。梅干は種を取って叩いておく。麺つゆはそのままだとサラサラ過ぎるのでマヨネーズを少し加えて粘り気を出させる。ついでにワカメをパスタを茹でる湯で少し煮ておく。

 パスタが茹で上がったら水を切って、準備していた材料と和える。お皿に盛り付けてからかつおぶしをちょっと乗せて料理は完成。

「佐天さん特製和風パスタの完成っ!」

 有り合わせの材料で作ったので豪盛な料理でないことは確か。でも、味は悪くない筈。

 私と上条さんの同居人の女の子のどっちが料理上手なのかなあなんてどうでも良いことを考えながら2枚のお皿を持って部屋へと戻っていった。

 

 

 夕食が終わってから2時間程が過ぎた。

 私の作ったパスタは上条さんに思いの外好評だった。

『さすがはエージェント佐天さんだな。こんな美味いパスタ食べたのは初めてだよ』

 そしてどうやら上条さんと同居している女の子は料理をしないらしいことも分かった。

『上条さんにも佐天さんぐらいの料理技術があれば日々の食事がもう少し楽しくなるんですがね。アイツは暴食だから何食べても同じ感想だし、食べ専だから何一つ作ってくれないし。はぁ~~』

 食生活に関して言えば上条さんはかなり不遇らしい。だからちょっとした提案をしてみた。

『御坂さんにお願いして今度食事作って貰ったらどうですか? 御坂さんは常盤台のお嬢様だけあって、料理もすっごく上手なんですよ』

 でも、その提案に対する上条さんの答えは哀愁漂うものだった。

『いや、俺はビリビリに嫌われているのに料理作ってくれなんて頼んだら……良くてビンタで普通で黒こげ、悪けりゃ原子分解だぜ』

『まあ確かに、好きでもない男性に料理作ってくれなんて真顔で言われたら気持ち悪い限りですよね。私なら速攻でアンチスキル呼びますね』

『俺……ビリビリにそこまで嫌われるようなことはしてないと思いたいんだがなあ……はぁ~~~~』

 上条さんは深く落ち込んだ。

 人間の出来た御坂さんが上条さんの言葉通りに彼を嫌っているのなら、それは無自覚ジゴロ結婚詐欺師な面が原因に違いない(断定)。

 けれど、女の子を勘違いさせる格好良さがこの人の魅力である以上、御坂さんと上条さんは相性が悪いのはある種の必然とも言える。

『じゃあ上条さんは料理上手で同居人の女の子のことも認めてくれる可愛い彼女を作ってくださいね』

『そんな子いれば苦労しないっての。佐天さんぐらいしか候補がいないよ』

『エージェント佐天さんは1食700円でご飯を作る依頼を引き受けますよ♪』

『金取って飯を作る彼女がどこにいるんだよ?』

 そんなこんなのやり取りをしつつ夕食は終了した。

 

 で、そろそろ時刻は午後9時を迎える訳なのだけど……。

「雨、いっこうに止みませんねえ……」

 窓の外はダムの放流中かと思うぐらいに大量の雨が天から注がれている。

「天気予報に拠ると……雨が止むのは明日の夜明け辺りらしい」

「つまり、今日中には止まないと」

 上条さんの説明を聞いてドッと疲れが押し寄せてきた。

 行儀悪いかなあと思ったけれど、押し寄せるダルさには逆らえず床に寝転がる。

「じゃあ私、今夜はここに泊まっていきますから」

 今後の行動指針を部屋主に述べる。

「えぇえええええええええええええぇっ!?」

 部屋主から大きな驚き声が聞こえて来た。

「大丈夫。取って食いはしませんから。私、無害な草食系の女の子ですから」

 寝転がったまま顔を見ずに答える。

「いやっ、そうじゃなくてっ!?!?」

「それじゃあ上条さんが私を襲いますか?」

「上条さんは紳士だからそんな真似は絶対にしませんっ!!」

「じゃあ、何の問題もありませんよ……」

 段々と意識が薄らいでいく。

 朝の御坂さんからの呼び出しに始まる今日1日はあまりにもハードなものだった。女子中学生の体力の限界を余裕で超えてしまっていた。もう動けない。

「この雨じゃあどうせ帰れないんです。明け方に雨が止んだタイミングで出て行くのが吉ってもんですよ……」

 段々会話しているのも辛くなって来た。

「けど、何もないにしても男の部屋で2人きりで過ごすのは倫理的な問題が……」

「男子寮で外国人の女の子と同居している人に倫理を説かれても説得力を感じません……」

 本当にもう限界。

「誰の所にでも泊まったりする訳じゃありませんよ。上条さんは私が信頼するパートナー、大切な戦友だから……」

 もう自分が何を言っているのか分からない。

「戦友、か……いいな、その響き」

「お休みなさい……っ」

 一言挨拶を述べるのが精一杯だった。

 私はその言葉を最後に、深い眠りの世界へと落ちていった。

 

 

 私は類人猿を捕まえて御坂さんを救えたことに満足感を得ながら眠りに就いた。

 でも、まだ事件は全てが解決した訳ではなかった。

 私と上条さんがいるこの部屋をずっと見ている瞳があることに私は気付いていなかった。

 まだ、事件は続いていたのだ。

 

 

 とある少女の恋煩い連続黒コゲ事件 完結編につづく

 

 

 


 
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