No.177275

改訂版 真・恋姫†無双 終わらぬループの果てに 第6話

ささっとさん

大陸最強の呂布を打ち倒し、見事に劉備軍を退けた一刀達。
張三姉妹の活躍もあって旧袁紹領の併合も無事終わり、華北一帯は完全に魏の手中に収まった。
そんな彼らは次の相手となる涼州の騎馬連合。
これまでとは違う戦い方を仕掛けてくる相手に対し、一刀達は恐れる事無く向かっていった。

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2010-10-09 16:14:20 投稿 / 全4ページ    総閲覧数:31651   閲覧ユーザー数:24294

 

 

旧袁紹領の併合を終え、名実ともに華北一帯を手中に収めた華琳。

 

張三姉妹の加入は遅かったものの星や恋といったこれまでにはいなかった味方の存在があり、

過去のループ世界の同時期と比較しても決して見劣りはしないだろう。

 

大陸の覇権をめぐる争いもいよいよ終盤に差し掛かり、戦いもより一層の激しさを増していく。

 

既に30回以上もこの乱世を繰り返してきた俺だが、

実を言うと最後まで生き延びて次の世界へ行った回数はその半分にも満たなかった。

 

剣術を極め、体術を極め、氣の扱い方を極めてもなお、死ぬ時は本当にあっさりと死んでしまうんだから。

 

 

「……ッ! ……さん! お兄さん!」

 

「………ん? え? あ、風?」

 

 

ふと誰かの呼びかけが聞こえて我に帰る。

 

声のした方を向くと、風が俺をジト目で睨んでいた。

 

どうやらかなり前から俺に呼び掛けていたらしく、無視されてご立腹のようだ。

 

 

「ごめん、ちょっと考え事しててさ。それで、何かな?」

 

「別に大したことではありませんよー。

 お兄さんはどうぞ、風よりも大切な考え事の続きを存分になさってください」

 

 

頬を膨らましながら、プイッとそっぽを向いてしまう風。

 

そんな仕草は非常に愛らしいんだけど、早く機嫌を直して貰わないと。

 

 

「……本当に悪かった。ゴメンよ、風」

 

「本当に悪いと思ってます?」

 

「もちろんだよ」

 

「それじゃあ、誠意を見せてください」

 

「誠意?」

 

「はい。お兄さんにとって、風が一番大切だという事を証明していただきたいのです」

 

 

ただ謝れって事じゃないみたいだけど、どうすればいいんだ?

 

 

「証明って、何をすればいいの?」

 

「簡単ですよー。今から華琳様と星ちゃんと人和ちゃん達の所へ風と一緒に行き、

 それぞれの見ている目の前で風と濃厚な口づけを交わしていただければ……」

 

「いや、そんな事したら俺死ぬから!?」

 

 

いきなり何を言い出すんだこの不思議少女!?

 

ここ最近の星は色んな意味で容赦がなくなってきてるし、

華琳も華琳で俺の女性関係に関してあり得ない程敏感になっている。

 

人和達3人は別としても、星と華琳の前でそんな事やったら確実に斬られるだろ!

 

あ、ちなみに今回は最初から張三姉妹に同行してもらってる。

 

 

「大丈夫です。

 お兄さんが本気を出せば星ちゃんや華琳様なんて相手にもならないでしょう?

 武器を持ち出して襲いかかってきたら、正当防衛という建前にかこつけて亡き者に……」

 

「いやいやいや、その対応は一番ダメだろ!?」

 

 

またまた何を言い出すんだこの不思議少女!?

 

仮にも自分の仕えてる主君と生死を共にしてきた親友だろうが!

 

それを平然とした笑顔のままで亡き者にするとか言うんじゃない!

 

 

「うふふっ、冗談に決まってるじゃないですか。

 先程無視された仕返しに、ちょっとお兄さん困らせてみただけです」

 

「………いや、さすがに限度ってものがあるだろう」

 

 

悪びれた様子もないままそう言う風だが、俺からすれば心臓に悪過ぎる。

 

て言うか、本当の本当に冗談なんだろうな?

 

さっきの風の感じからして、どう聞いても本気で言ってるようにしか見えなかったけど。

 

 

「おっと、そう言えばお兄さんに言わなければならに事があったんでした」

 

「え? ああ、そう言えばなんか用事があるんだったな。で、なんだ?」

 

「涼州連合と思しき一隊が奇襲を仕掛けてきたので直ちに応戦してください、だそうです」

 

「そうか、わかっ……え?」

 

 

はい? 奇襲って………敵の奇襲ッ!?

 

 

「そ、そういう事は早く教えてくれっ!!!」

 

「うふふっ、頑張って下さいねー」

 

 

たくっ、余裕持ち過ぎだっての!!!

 

俺はすかさず乗っている馬を走らせ、奇襲部隊迎撃の戦闘に加わった。

 

その際、華琳以下武将全員から怒られたのは言うまでもないだろう。

 

 

 

 

真・恋姫†無双 終わらぬループの果てに

 

第6話

 

 

一度目の世界と同じような流れで大陸の情勢が推移していった場合に発生する涼州遠征。

 

黄巾党や反董卓連合の時とは異なった内容の戦いとなるためかなりの苦戦を強いられるものの、

事前準備を怠らずにキチンと対応すれば基本的には勝ち戦である。

 

だが、この出来事には一つだけ無視できない不確定要素が絡んでいた。

 

 

(敵の攻撃の激しさから考えると、どうやら今回は当たりみたいだな)

 

 

張三姉妹による慰安ライブが終わり、会場を出た俺は天幕へ戻って一人考える。

 

これまでに現れた涼州連合の部隊との戦いから得た一つの確信。

 

今回の涼州連合の指揮を執っているのは馬超ではない。

 

 

「これで三回目か、馬騰と戦うのは」

 

 

錦馬超として名高い馬 孟起の実の母にして、涼州の豪族達を束ねる立場にある馬家の当主。

 

大抵の場合は病気が原因で戦場に立つ事はないのだが、

ごく稀に体調不良をおして全軍の指揮を執る場合があった。

 

たったそれだけの違いで涼州連合の強さは何倍にも跳ね上がる。

 

また彼女自身の強さも相当なものであり、総合的に見れば間違いなく大陸で一、二を争う英傑だ。

 

華琳が関羽以上に彼女を欲しがるのも無理はない。

 

 

(けど、俺だって同じ相手に3度も負けるつもりはないぞ)

 

 

俺は過去に2回ほど馬騰指揮の涼州連合と戦っているが、情けないことに2度とも敗北していた。

 

一度目の敗北は8回目の世界、二度目の敗北は14回目の世界。

 

それから今に至るまで俺自身かなり成長したのは勿論だが、今回はさらに強力な味方がいる。

 

仮に馬騰があの作戦を用いてきたとしても、十分に対処しきれるはずだ。

 

今度こそ、絶対に勝ってみせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『全軍、と…「とっつげきぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!」…っ!?』

 

 

もはやお約束とも言える地和の号令で幕を開けた涼州連合との決戦。

 

やはりというか、戦い前の舌戦に出てきたのは馬超ではなく馬騰だった。

 

馬騰の指揮で動く涼州のは兵達は非常に手強く、

道中に溜まった疲労も手伝ってかなりの苦戦を強いられてしまう。

 

とは言え涼州側は真桜率いる工兵隊の工作によって騎兵最大の長所である機動力が封じられており、

被害は大きかったが時間が経つにつれて形勢は俺達の方へ傾いていった。

 

大将の馬騰や馬岱らは既に城へと撤退しており、現時点で残っているのは馬超の部隊のみ。

 

野戦での勝利はもはや揺るぎようがなく、全員の意識は次の攻城戦へと移っていた。

 

しかし華琳が本隊へ進軍の指示を出した直後、この状況が一気にひっくり返る事となる。

 

 

「華琳様、敵の伏兵です! 側面から馬岱が奇襲を!」

 

「なんですって!? 城に撤退したのではなかったの!?」

 

 

城に撤退したという報告が来ていたはずの馬岱が兵を連れてまさかの奇襲。

 

いないはずの相手が突然現れた事への動揺は大きく、全体にかなりの混乱が生じてしまう。

 

 

「馬岱の相手は俺の隊でやる。華琳はその間に軍を立て直してくれ!」

 

 

敵の数から言ってこのまま切り崩されはしないだろうが、

この後の事を考えると立て直しは早い方が良い。

 

 

「…っと、流石に行動が早いな」

 

 

こちらが迎撃に出たと知るや否や、即座に後退していく馬岱達。

 

まぁ、この奇襲の目的はあくまでもこちらの統率を乱すことだからな。

 

少数で無茶な深追いはしないか。

 

 

「もっとも、黙って逃がすつもりなんてないけどね」

 

 

歩兵がメインの俺の隊では、普通に追いかけても馬岱達には追いつけない。

 

よって味方の集団から離れたのを見計らい、俺は例の如く剣に氣を込める。

 

そして前方を走る馬岱の一団目掛けて一振り。

 

放たれた斬撃は複数の敵を巻き込みながら地面に着弾し、轟音と共に大地を抉った。

 

 

「よし、今だ!」

 

「「「「「おおおおおおッ!!!!!」」」」」

 

 

馬岱達の動きが止まった隙に距離を詰め、そのまま突撃を仕掛ける。

 

騎兵相手と言えど、接近して取り囲んでしまえばどうという事はない。

 

 

「ん? あれは……」

 

 

周辺の敵を倒しながら進んでいると、一兵卒のそれとは違う鎧を纏った人物を発見。

 

何処となく馬超や馬岱に似た風貌の彼女は、間違いなく馬岱本人だ。

 

 

「君が馬岱だな。随分な真似してくれるじゃないか」

 

「えっ……その変な服、も、もしかして、貴方が一騎打ちで呂布を倒したっていう天の御遣い?」

 

 

俺の声が聞こえたらしい馬岱はこちらの方を向き、

そして俺の正体を悟ると若干の怯えを見せながら言葉を返してきた。

 

 

「ああ、北郷 一刀だ」

 

「……姉様の方にいなかったから一応覚悟はしてたけど、まさかホントに出くわすなんて」

 

 

俺の顔をちら見しながら何やらボソボソと呟いている馬岱。

 

恋に勝ったという事で俺の知名度が上がったのは間違いなさそうだが、

それにしてもこの反応は怯えられ過ぎではなかろうか。

 

もしかして、また根も葉もない出鱈目な噂が流れてるんじゃないだろうな。

 

 

「ううっ……けど、おば様の邪魔だけはさせないから!」

 

「おば様の邪魔?」

 

「あっ、べ、別になんでもないよ! 今のは気にしなくていいから!」

 

 

動揺して墓穴を掘った馬岱が必死に取り繕おうとしているが、俺は言われるまでもなく既に知っていた。

 

戦場に残って春蘭達相手に奮闘している馬超はもちろん、この馬岱の奇襲も単なる布石でしかない。

 

本命は馬岱の奇襲によってこちらが浮足立った瞬間を狙った、馬騰による特攻なのだから。

 

 

「まぁ、なんでもいいさ。

 仮に今君達の陣営の誰かが本隊を攻撃したとしても、何の問題もない。

 それが例え馬騰であろうと、間違いなく返り討ちに出来るからね」

 

「っ!?……ふん、おば様を甘く見て、痛い目見ても知らないから!」

 

 

俺のわざとらしい言葉で察したのか、僅かに怒りを滲ませた表情で槍を構える馬岱。

 

けど、馬騰を甘く見るつもりなんてこれっぽっちもない。

 

当たり前だ。

 

2度も負けた相手を侮れるはずがないだろう。

 

ふと過去にあった馬騰との戦いを思い返す。

 

一度目の敗北の時、俺は直接馬騰と戦う事はなかった。

 

今回のように奇襲をかけてきた馬岱の相手をしている間に華琳がやられてしまったからである。

 

秋蘭、季衣、流琉、凪、沙和らが華琳の傍にいたにも関わらず……だ。

 

そして実際に馬騰の凄さを味わったのが2度目の敗北の時。

 

一度目の敗北の経験を活かし、俺は馬岱の相手にはいかず本陣に残っていた。

 

この時の俺は春蘭や霞らに敵わないまでも、それなりの勝負が出来るくらいの腕前だった。

 

そんな俺がほとんど何もできないうちに斬り殺されてしまったのだから堪らない。

 

 

(もっとも、あの時は完全に空気に呑まれてたからな)

 

 

純粋な強さは勿論だが、それ以上に馬騰の気迫が凄まじかった。

 

燃え尽きる寸前の蝋燭が見せる最後のゆらめきとでも言えばいいのだろうか。

 

病に冒され、残り僅かとなった生命の全てを賭けた最後の特攻。

 

普通なら病気の所為で満足に動くことすらできないはずなのに、一体どうなっているのやら。

 

少なくともあの当時の俺じゃあ、どう足掻いても勝ち目なんてなかっただろう。

 

 

(やっぱり、今回は俺が残った方が良かったか……いや、大丈夫だ)

 

 

馬騰の強さが身に染みて解っているからこそ、知らないうちに弱気になっていた。

 

例え俺がいなくても、あの2人が華琳の傍にいる以上は絶対に負けない。

 

だからこそ俺は馬岱の追撃に出たのだ。

 

確実に馬岱を捕えるために………

 

 

「隙ありッ!!!」

 

「っ!?」

 

 

反射的に剣を上段に構え、目前に迫った槍を受け止める。

 

いかんいかん、敵を前にしていながらつい考え事に没頭してしまった。

 

馬騰の事はあの2人に任せておけばいい。

 

今の俺の最優先事項は、馬岱の相手をする事だ。

 

 

「不意打ちとは随分だね」

 

「ふんっ! 油断してる方が悪いんだから!」

 

 

ふふっ、違いないな。

 

それじゃあ、ここから先は一切油断なしだ。

 

さっさと終わらせて華琳達の所へ戻らせて貰うぞ!!!

 

 

 

 

馬岱との戦いにあっさり勝利した俺が本隊に合流した時、こちらの決着も既についていた。

 

奇襲によって統率が乱れた後、俺と入れ替わるようにして馬騰が本隊に攻撃を仕掛けたらしい。

 

その勢いはまさに烈火の如き激しさであり、

秋蘭以下名のある武将達が総出で掛かっても止められなかったようだ。

 

しかし馬騰が華琳の所まであと一歩と迫った時、彼女の前に2人の人物が立ちはだかる。

 

それが今回の世界で初めて味方になった星と恋だった。

 

結局馬騰はそのまま星と一騎打ちになり、健闘しつつも敗北し絶命。

 

とは言え星も無傷という訳ではなく、左腕に決して浅くない傷を受けていた。

 

これまでのどの世界よりも強くなっているはずの星を相手にこれとは、やっぱり馬騰はとんでもない。

 

これで病気じゃなかったら、本当に恋クラスなんじゃないのか?

 

まぁそれは一先ず置いておくとして、馬騰の死を切っ掛けにして涼州連合は降伏。

 

屈強な涼州の豪族達もさすがに戦意を喪失したらしい。

 

諸地域における細々とした抵抗はあるだろうが、これで涼州の地は華琳の手中に収まった。

 

ただ、全部が全部こちらの思い通りになった訳ではない。

 

 

(今回も馬超は行方知れずか)

 

 

春蘭と霞の相手として最後まで戦場に残っていた馬超とその残存兵達だが、

馬騰討ち死の報が広がったどさくさにまぎれて姿を消していた。

 

確認はしていないが、おそらく劉備配下の者の手引きによってそちらへ逃れたと思われる。

 

もっとも、馬超についてはそれほど大きな問題ではない。

 

彼女がこのタイミングで蜀へ流れるのは承知の上だし、有能と言っても所詮は一武将。

 

劉備軍の騎馬隊の練度が上がりはするだろうが、ハッキリ言ってその程度である。

 

そう言う意味ではむしろ馬超よりも馬岱ほうが問題だった。

 

というのも彼女、実は劉備軍による南蛮制圧の鍵を握っているのである。

 

詳しい理由は不明だが、

馬岱が劉備軍に席を置いているか否かによって南蛮制圧の結果がかなり違ってくるのだ。

 

そして今回、俺が馬岱を捕縛しているので彼女が劉備の所に行くことはない。

 

ふふふっ、精々苦労するがいいさ。

 

 

「……ッ! ……さん! お兄さん!」

 

「………ん? え? あ、風?」

 

 

ふと誰かの呼びかけが聞こえて我に帰る。

 

声のした方を向くと、風が俺をジト目で睨んでいた。

 

どうやらかなり前から俺に呼び掛けていたらしく、無視されてご立腹……あれ、なんかデジャブ?

 

 

「……はぁ、お兄さんは全く反省していないようですねー」

 

「い、いや、スマン。その、ちょっと考え事をな?」

 

「ふーん、またしても考え事ですか。

 そう言えば前の時も、結局お兄さんがなにを考えていたのか聞きませんでしたね。

 目の前にいる風を完全無視してまで考えなければならない事って、一体どんな内容なのですかー?」

 

「そ、それは………」

 

 

マズイ、今回は本気で怒っている。

 

このままではマジで華琳や星達の目の前でキスを強要されてしまう。

 

けど、正直に(勿論ループの事は省くが)馬騰や劉備の事を考えていたと話しても意味がない。

 

だって真面目な場だったらともかく、今の風なら絶対、

 

 

『へぇ……お兄さんは目の前に風がいるにもかかわらず他の女の事を考えていたんですか。

 ふふっ、そうですか……ふふふふふっ』

 

 

とか言って黒いオーラを放ち始めるに違いないからだ。

 

しかし下手な嘘をついても見破られるし、何か風の機嫌を良くする話題は……あっ!

 

 

「……はぁ、仕方ないな」

 

 

ここで起死回生となる切り札の存在を思い出した俺は、

勿体ぶる素振りを見せながら私物の入った袋に手を伸ばす。

 

そしてその中から一つの小箱を取りだし、それを風に見せる。

 

 

「なんですか、これ…は………・」

 

 

怪訝な顔つきで小箱を凝視する風。

 

しかし俺が小箱を開けた瞬間、彼女の顔は驚きに染まった。

 

 

「この指輪をいつ渡そうかって、ずっと考えてたんだよ」

 

 

風の視線を釘づけにしている物……それはシンプルな作りの指輪だった。

 

俺は驚きで固まっている風の手を取ると、その小さな右手の薬指に指輪をはめる。

 

うん、イメージしてた通り良く似合っている。

 

 

「………え? あっ、え?」

 

 

見苦しい言い訳を聞かされるどころか、思いがけないプレゼントを得ることになった風。

 

さすがの彼女もこれは完全に予想外の出来事だったらしく、ただただ戸惑うばかり。

 

よし、ここで一気にたたみ掛けておこう。

 

 

「本当はもっと雰囲気のある場面で渡したかったんだけど、

 それを気にし過ぎて肝心の風に嫌われたら意味がないからな。

 そう言う意味では申し訳ないけど、受け取ってくれるかい?」

 

「そ、それは勿論喜んで受け取らせていただく所存ではあるのですけれども、あの、お兄さん?

  これはその、一体、どういう意味での贈り物なんでしょうか?」

 

「どういう意味って、まぁ、あれだよ。

 たまにはこういう贈り物をしながら気持ちを伝えるのも良いかと思ってね」

 

 

そう言って風の耳元に口を寄せ、甘く囁くようにその言葉を口にする。

 

 

「……愛してるよ、風」

 

「っ!」

 

 

次の瞬間、頭から煙を噴き出してもおかしくないくらい真っ赤になる風。

 

動揺して思考が鈍っている所へこの不意打ちオーバーキル。

 

さすがの彼女でも耐えられなかったようだ。

 

 

「ところで風、俺に何か用事があって来たんだろ? 一体どうしたんだ?」

 

「………え? あ、べ、別に大した用事ではありませんので気にしなくてください!

 でも風は唐突に急用を思い出しましたのでこれで失礼させていただきます!!」

 

 

恥ずかしさによって完全に平静を失い、逃げるようこの場から走り去ってしまう風。

 

そんな滅多に見れない姿を脳にしっかりと焼きつけつつ、俺はホッと胸をなでおろす。

 

涼州遠征の起きる少し前に街で購入したあの指輪。

 

本当は遠征から戻った後で渡す予定だったので部屋に置いてくるはずだったんだけど、

何となく持ってた方が良いような気がしたのでここまで持ってきてしまったのだ。

 

やっぱり長年培ってきた勘って奴は大事だよな、うん。

 

 

「しかし、勢いとはいえあんな渡し方をする羽目になるなんて………」

 

 

あの時は生命の危機に瀕していたから気にならなかったけど、今は滅茶苦茶恥ずかしい。

 

てか、あれだけの事をやらかしておいて意識するなという方が無理だ。

 

きっと今鏡を見たら、俺の顔もさっきの風に負けないくらい真っ赤になっているだろう。

 

 

「あ~、やばい……当分の間、風の顔まともに見れないかも」

 

 

帰りの道中はなるべく風と顔を合わせないようにしておこう。

 

風もきっと俺と同じような状態だろうから、文句は言わないはずだ。

 

ん? そう言えば風の奴、結局何の用事だったんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったく、お兄さんったら………ふふっ」

 

「戻ったわね、風。それじゃあ軍議を…あら、一刀は?」

 

「贈り物だけでも充分嬉しいのに、あんな言葉まで………うふふっ」

 

「風、一刀はどうしたの?」

 

「うふふふふっ……え? あ、なんですか、華琳様?」

 

「なんですか、じゃないでしょう。

 貴女が一刀を呼びに行くと言ったから任せたのに、どうして一刀が来ていないのかしら?」

 

「……あ~、申し訳ありません。

 ちょっと予期せぬ出来事が起こってしまった所為で、お兄さんにお知らせするのを忘れていました~」

 

「忘れていましたって、貴女ね………あら? 風、貴女そんな指輪つけてたかしら?」

 

「あ、この指輪ですか? うふふっ、実はですね~………」

 

 

 

 

あとがき

 

 

今回は区切りどころが難しかったので、文章量的にもかなり半端な感じになってしまいました。

 

どうも、ささっとです。

 

些か駆け足気味でしたが、涼州遠征終了です。

 

というか涼州遠征よりも風との絡みがメインな話だったような気がしないでもない。

 

まぁ、この小説の目的は風を筆頭とした恋姫キャラのイチャラブ話を皆様にお届けする事なので、

別に大した問題じゃないですよね?

 

 

原作ではキャラグラもなかった馬騰さんですが、当小説においては恋に次ぐチートキャラ扱い。

 

その割に台詞が一言もなかった気もしますが、その辺は原作基準(出番的な意味で)という事で。

 

また蜀ルートにおける南蛮攻略の鍵を握る?馬岱も流れを左右する割と重要なポジションに置きました。

 

こちらも本人の活躍は皆無ですけどね。

 

なんか色々な意味で馬家涙目ですけど、特に反省も後悔もしていない。

 

馬超だけは後に見せ場があるので、それで勘弁して下さい。

 

 

そして次回は………まぁ、どんな内容なのか説明するまでもないですね。

 

ここ最近すっかり影が薄くなっている華琳様にも、そろそろ本気を出していただくとしましょう。

 

 

たくさんのコメント・応援メッセージありがとうございました。

 

次回もよろしくお願いいたします。

 

 


 
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