No.166098

改訂版 真・恋姫†無双 終わらぬループの果てに 第5話

ささっとさん

圧倒的不利な状況を覆し、見事劉備の軍勢を追い払った一刀達。
そして訪れたのは僅かながらの平穏の時間。
そんな日々の中でも相変わらず忙しく過ごす一刀のもとへ、
大陸の頂点を目指す彼女達の歌が届けられる。

2010-08-16 17:34:31 投稿 / 全8ページ    総閲覧数:36102   閲覧ユーザー数:26649

※ 今回の話には、作者の独自解釈が含まれている部分が存在します。 

   あとがきにも記しておりますが、

   この解釈はあくまでもこの小説内でのみ適応される事柄である事を予めご了承ください。 ※

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事実無根の言い掛かりをつけられ、俺は絶体絶命の窮地に追い込まれてしまった。

 

いくらなんでもこんな理由で凹られては堪らないので、細心の注意を払いながら3人を説得。

 

そして3人が僅かながら落ち着いたところを見計らい、彼女達を伴って呂布のいる牢屋へと向かった。

 

 

「…かずと」

 

 

既に気配で察していたのか、特に驚いた様子もなく俺達と対面した呂布。

 

そこで俺は約束云々の事についての説明を彼女に求めた。

 

 

「…一騎打ちで負けたら、勝った人のモノになる。約束」

 

「いや、だからそれじゃあ全然解からないから」

 

 

どうやら呂布は天然の不思議ちゃんらしい。

 

それでも頑張って話を進め、どうにか真相を聞きだす事が出来た。

 

なんでも彼女が子供の頃、同じ村に住んでいた同い年くらいの少年から勝負を挑まれた。

 

その際少年から『負けた奴は勝った奴のモノにならないといけない』と言われ、

彼女は深く考えずにその条件の下で少年と戦い勝利。

 

そしてこれ以降、

彼女の中で『1対1の勝負で負けたら勝った人のモノになる』という約束事が出来たらしい。

 

要約するとこんな感じで……って、冷静にまとめてる場合じゃないだろ。

 

 

「「「「………………」」」」

 

 

不思議ちゃん恐るべしと言うべきか、はたまた純粋無垢にも程があるだろうと言うべきか。

 

意味不明な約束云々の真実もとい、

それを真に受けて今まで信じ続けていた呂布の性格は俺達の理解を遥かに超えていた。

 

俺もそうだが、後ろにいる風達も何と言っていいのかよく解らない表情で立ち尽くしている。

 

 

「?」

 

 

俺達の態度を不思議に思ったのか、小首をかしげる呂布。

 

そんな仕草は非常に可愛らしいんだけど、まぁ、俺の無実が証明されて良かった……で、いいのかな?

 

ちなみに幼少時代の呂布に勝負を仕掛けて負けた少年のその後だが、

 

 

「いらないって言ったら、泣きながらどっか行った」

 

 

という一言が全てを物語っていた。

 

きっとその少年は子供心に呂布の事が好きだったんだろうなぁ。

 

うん、合掌。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、結局お兄さんは呂布さんをどうなさるおつもりなんですかー?」

 

「………え?」

 

 

 

 

真・恋姫†無双 終わらぬループの果てに

 

第5話

 

 

予想外の危機に見舞われたものの、劉備との一件は完全にケリがついた。

 

とは言え戦闘で犠牲になった兵はかなりの人数に上っており、

軍の再編はもちろん新兵の募集をかけて早急な人員確保に努めなければならない。

 

旧袁紹領の完全併合も未だに難航しており、だからこそ余計に実に頭の痛い問題となっていた。

 

呂布がこっちに降ってくれた事がせめてもの救いかな………俺は救われなかったけど。

 

 

「こういう時はあの3人がいてくれるとスムーズにいくんだけどなぁ」

 

 

俺の個人的な不幸はともかく、こうした事態で力を発揮するのが張三姉妹の歌だ。

 

娯楽の少ないこの時代において、彼女達の影響力は相当なものがある。

 

実際過去の世界でも、彼女達目当てで軍に入った者や領地へ移り住んで来た者が大勢いた。

 

若い男の層を中心に農民や商人、果ては権力者など身分は様々。

 

また武力とは違った意味合いで反乱鎮圧などに力を発揮していたし、

彼女達の存在が国の発展に大きく貢献していたと言っても決して過言ではないのだ。

 

そう言えば軍備だけじゃなく、商業とかソッチ方面も最近停滞気味だったっけな。

 

 

「3人とも、どうしてるかな」

 

 

彼女達の消息は不明だが、きっと何処かで元気に過ごしている事だろう。

 

もっとも太平要術の書がないから、普通の旅芸人としてだろうけどね。

 

そういう意味じゃあ、3人に申し訳ない事しちゃったかな。

 

 

「……ふぅ。昼ごはんでも食いに行くか」

 

 

この場にいない3人の事をいくら言っても仕方がない。

 

ちょうど仕事も一区切りしたところだし、腹の虫の要望に応えるとしよう。

 

 

「今日は街に出てみるか」

 

 

ここ最近デスクワークが多くて城に籠りっ放しだったので、気分転換も兼ねて街へと繰り出す。

 

洛陽の街は相変わらず活気に満ち溢れていた。

 

 

「さて、何を食べよう」

 

 

飲食店が立ち並ぶ区画にやってきた俺は、歩きながら周囲を見渡して昼食のメニューを考える。

 

屋台で色んなのをつまむのもいいけど、今日はガッツリ食べたい気分だ。

 

とすると、凪に教えてもらったお勧めの店にでも行ってみるか。

 

 

「いらっしゃいませ~、美味しい肉まんはいかがですか~」

 

「……ん?」

 

 

そうして歩き出そうとした瞬間、ふと何処かの屋台の売り子さんの声が耳に飛び込んできた。

 

この喧騒の中一切の雑音に紛れる事無く、心地良さすら感じさせながら聞こえてきたその声。

 

思わず足を止めて周囲を見回し、声の出所を探してしまう。

 

しかし何処かで聞いた事のあるような声だけど………

 

 

「……あっ」

 

 

そして声の出所と思わしき場所にいたのは、

ご都合主義にも程があるだろとツッコミたくなるような人物だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか、こんな所で天和と出くわすとはなぁ」

 

 

大量の肉まんが入った袋を左手に抱え、

右手に持った肉まんにかぶりつきながら先程の出会いを振り返る。

 

屋台の店先で売り子をしていたのは張3姉妹の長女、天和だった。

 

この世界では初対面となるためあまり馴れ馴れしく話は出来なかったが、

天和の声の良さを話題にして多少の世間話に興じた。

 

その結果彼女達についてわかった事が3つ。

 

一つ目は彼女達が旅芸人として大陸を回っている事。

 

二つ目は旅の資金を稼ぐため、数日前からここの屋台でアルバイトしている事。

 

ちなみに地和と人和は別の場所でアルバイトに励んでいるらしい。

 

そして三つ目は今夜、

最近この近くに出来た芝居小屋で舞台(単独ではなく複数いる参加者の中の一組らしい)をやる事だ。

 

 

「思いがけない巡り合わせだけど、どうしよう」

 

 

過去に何度も3人の世話役を任されてきた経験があるので、

太平要術の書がなくとも彼女達を現代風アイドルに仕立てるのは可能だ。

 

(太平要術の書は華琳があの3人組から回収した後、危険だという理由で既に処分していた)

 

そしてアイドルとなった彼女達を広告塔として活用すれば、

現在の魏が抱えている人員不足などの諸問題を解決する糸口になるだろう。

 

しかし、この世界における3人は未だ一介の旅芸人に過ぎない。

 

 

「華琳に掛け合ったとしても、多分説得しきれないだろうな」

 

 

そもそも歌い手を広告塔として使うというような発想自体、この時代には存在していない。

 

にもかかわらず華琳が3人を重用したのは、黄巾の乱という無視できない実例があったからこそなのだ。

 

しかるに誰もが認めるような実績がなく、と言うかそもそも彼女達でなければならないという必然性がない。

 

また言葉だけの説明では効果を理解しにくい上、どの程度の成果が期待できるのかも予測し難い。

 

おまけにかかる費用だけはばかにならず、失敗すれば当たり前だが大損確定。

 

こんな状態で華琳に相談を持ちかけたところで、とてもじゃないが良い返事は貰えないだろう。

 

 

「まぁ、言うだけ言ってみるか」

 

 

怒られるかもしれないけど、何とか頑張ってみよう。

 

腹ごしらえが済んだら、いざ華琳の所へ突撃だ。

 

あっ、その前に芝居小屋行って席を予約しとくか。

 

 

 

 

結論から言うと、華琳への説得は呆気ないほど簡単に成功した。

 

 

『華琳、実は…(おおざっぱに説明中)…・と言う事を考えているんだけど、やってみてもいいかな?』

 

『構わないわよ。ただし、やるからにはきちんと成果を上げなさい』

 

『……え? あ、うん』

 

 

不明瞭な部分への追及や質問などは一切なく、即断で了承されてしまった。

 

もちろん傍にいた桂花や秋蘭からはもっと細かく検討するべきとの意見が出されたが、

華琳はこれまた即断で却下。

 

逆にその場で桂花や秋蘭に対し、この一件に関して最大限の協力をするよう命令した。

 

俺個人としては非常にありがたいんだけど、なんだかなぁ。

 

 

「おっと、ここだここだ」

 

 

なにはともあれ、華琳からお墨付きをもらった事に違いはない。

 

その日の夜、俺は張三姉妹の舞台が行われる芝居小屋へと足を運んだ。

 

 

「お待ちしておりました、北郷将軍」

 

 

店に入ると、すぐにここの支配人が数名の取り巻きを連れて挨拶にやって来る。

 

予約しに来た時に一度顔を合わせてるから、対応が早い早い。

 

本当はこういう堅苦しいのって嫌いなんだけど、今回は一応仕事も兼ねてるからな。

 

俺も立場を忘れないようにしながら無難に対応する。

 

 

「こちらが御席となります。どうぞ、ごゆるりとお楽しみくださいませ」

 

「ああ、ありがとう」

 

 

支配人直々に案内されたのは建物の二階、ステージを真正面から見下ろすVIP用の観覧席だった。

 

予約した際に確認したところ、彼女達は今日の舞台でトリを務めるらしい。

 

俺は座り心地の良い椅子に身体を沈め、ステージをぼんやりと眺めながら張三姉妹の出番を待つ。

 

 

「お、いよいよか」

 

 

やがて彼女達を除く全ての組がその演目を終え、ついにその時がやって来た。

 

ステージに出てきた3人は観客席に向けて一礼し、

それぞれが手に持った楽器を奏でながら歌い始める。

 

 

「……ほぉ」

 

 

久しぶりとなる3人の歌声を耳にした俺は、自然とそんな感嘆の声をもらしていた。

 

太平要術の書が手に入らず、それでいて夢を諦めなかったからこその結果なんだろう。

 

楽器の演奏や歌の内容こそこの時代ではありふれたものだが、

歌い手としての純粋な技量で言えば過去のループの同時期と比較しても群を抜いていた。

 

やがて歌は終わり、彼女達は登場した時と同じく一礼して舞台袖へと下がっていく。

 

そんな彼女達を送り出すのは観客達の拍手。

 

今日の舞台を最初から見ていた訳じゃないけど、少なくとも俺が来てからでは一番大きな拍手だった。

 

 

「………………よし」

 

「今宵の舞台はいかがでしたでしょうか、北郷将軍」

 

「ええ、とても素晴らしいものでしたよ。ところで少し頼みたい事があるのですが、構いませんか?」

 

「ははっ、私どもに出来る事でしたらなんなりと」

 

 

俺は支配人に頼みごとをし、静かに席を立った。

 

 

 

 

~ 人和side ~

 

 

舞台を終えた私達のもとにやって来た芝居小屋の責任者。

 

その男が口にしたのは、思いも寄らない言葉だった。

 

 

「今夜の舞台をご覧になられた北郷将軍が、お前達に話があるそうだ」

 

 

北郷将軍……先の戦いにおいて大陸最強の呂布を一騎打ちで倒したという天の御遣い。

 

また武芸だけでなく様々な分野に通じ、この地を治める曹操様の躍進に大きく貢献したともされている。

 

そんな人が私達のような一介の旅芸人に話?

 

まさか……いえ、確か北郷将軍には懇意の女性がいるという噂があった。

 

それにあの曹操様がそんな下世話な事をするような者を側近として置いておくはずがない。

 

 

「……天和姉さん、地和姉さん、すぐに行きましょう」

 

 

どんな用件にしろ、会う前に断れるような話じゃない。

 

けど、話はそれで終わりではなかった。

 

 

「3人で行く必要はない。北郷将軍がお呼びなのはお前だけだ」

 

 

そう言って、北郷将軍に呼ばれたのは私一人である事を知らされた。

 

天和姉さんでも地和姉さんでもなく、私?

 

ただでさえ呼ばれた理由が解らないというのに、ますます北郷将軍の考えが解らなくなってしまう。

 

けど、とにかく行かないと。

 

私は姉さん達と別れ、一人北郷将軍の待っている場所へと向かう。

 

着いたのは都でも一、二を争うほどの超高級飯店だった。

 

……もうちょっと、良い服着てくれば良かったかな。

 

 

「張梁様でいらっしゃいますね? どうぞこちらへ」

 

 

慣れない雰囲気に戸惑いながら店の中に入った私は給仕の女性に連れられ、

この店でも特に格の高い客しか利用できないであろう部屋へと案内される。

 

そこで私を待っていたのは、申し訳なさそうな顔をした一人の男性だった。

 

 

「初めまして、張梁さん。北郷 一刀です。いきなり呼び出したりしてゴメンね」

 

「……いえ、お気にならなさらないでください」

 

 

いきなり下手に出られるなんて思わなかったけど、本当にこの人が天の御遣い…北郷将軍なの?

 

失礼だけど、とても大陸最強の武人だとは思えない。

 

だって想像してたよりもずっと穏やかで、凄く優しそうな人だったから。

 

 

「とりあえず、座って。料理もすぐに来るからさ」

 

「あっ、はい。失礼します」

 

 

北郷将軍に促されるまま、私は椅子に腰を下ろす。

 

と、ちょうど頃合いを見計らったかのように料理が運ばれて来た。

 

今まで見たこともないような豪華料理の数々。

 

もし天和姉さんと地和姉さんがいたら、北郷将軍の事を無視して食事に没頭しそう。

 

そう言う意味でも、ここに来たのが私一人で良かった。

 

もしかして、北郷将軍もそれを見越していたりして?

 

 

「あの、北郷将軍。一体どのようなご用件で私をお呼びになられたのでしょうか?」

 

「ん? ああ、そう言えば詳しい内容は芝居小屋の支配人にも話してなかったっけな。

 今日ここへ呼んだ理由は一つ、君達3姉妹と契約したいと思ったからだよ」

 

「契約……ですか?」

 

「うん、契約。せっかくの料理が冷めちゃうともったいないから、食べながら話そうか」

 

「あっ、はい」

 

 

運ばれてきた料理に舌鼓を打ちながら、私は北郷将軍の話を聞いた。

 

けれど話が進んでいくうちに、私は食事する事も忘れてただただ茫然としてしまう。

 

私達への資金援助や曹操様の領内における様々な優遇措置を与える代わりに、

広告塔として人集めの役を担ったり兵士や領民のための慰安活動をして欲しい。

 

北郷将軍の話を要約するとこんな内容だった。

 

 

「…とまぁ、こんな感じ。それで、どうかな?」

 

「………え、あっ……その………どう、と言われましても……」

 

 

まるで世間話の延長のような気軽さで話す北郷将軍だが、私には何の返事も出来なかった。

 

確かに私達はこれまでずっと芸を磨き続けてきたし、相応の実力もついたと自負している。

 

だからこそ、この提案が完全に私達の分を超えていることが理解できた。

 

今の私達がどう頑張ったところで、北郷将軍が期待しているであろう成果は絶対に出ない。

 

もしそんな事が出来るのなら、私達はとっくに大陸一の旅芸人になっていたはずだから。

 

けど、これは私達にとって千載一遇の機会でもある。

 

今のままの生活を続けていても、大陸一になるのという夢を叶えるのは不可能だ。

 

それは私だけじゃなく、天和姉さんや地和姉さんも薄々気づいている。

 

ならいっそ、この提案に乗って自分達の全てを賭けるべきなのではないだろうか。

 

 

「………………」

 

「別に今ここで結論を出して欲しいと言ってる訳じゃないよ。

 いきなりこんな話をされても混乱するだけだからね。

 それにこれは君達3人に関わる事だから、そもそも君一人じゃ決断できないだろ?」

 

「……それなら、どうして私だけを呼んだんですか」

 

「確かに君だけじゃなく、他の2人も呼んで3人一緒の時に話した方が早かっただろうね。

 けれどこの話は君達だけじゃなく、俺達…この国にとっても重要な事なんだ。

 だからこそ、その場の勢いだけで返事をして欲しくなかったんだよ」

 

 

………確かに天和姉さんや地和姉さんなら、深く考えずに即答しそうね。

 

それくらい思い切りの良い方がいい場合もあるけど。

 

 

「私から姉さん達に話して、3人だけで話し合えと?」

 

「そういうこと。

 ちなみにこれは強制じゃないから、君達が無理だというのなら辞退してもらって構わない。

 それと、この話を断ったからといって君達の不利になるような事は絶対にしないと誓うよ」

 

 

初対面の時に感じた優しげな雰囲気はそのままに、真剣な眼差しでこちらを見つめている北郷将軍。

 

 

「もし君達がこの提案を受けてくれるのなら、明日の朝城へ来て欲しい。

 華琳…曹操にも会ってもらわないといけないからさ。

 まぁ、たった一晩でこんな話の結論を出せっていうのは申し訳ないけどね」

 

「いえ、大丈夫です。今夜中に姉さん達と話をして結論を出します」

 

 

私は北郷将軍に簡単な会釈をし、席を立つ。

 

失礼に当たるかもしれないけれど、北郷将軍ならきっと気になさらないだろう。

 

一刻も早く姉さん達の所へ戻って話をしないと。

 

 

「あっ、せっかくだからお姉さん達へのお土産に料理を持って帰ってあげなよ。

 店に頼んで包んでもらうからさ」

 

「………ありがとうございます」

 

 

 

 

~ 人和side ~

 

 

翌日の朝、私は姉さん達と共に城へとやって来た。

 

話し合いの結果、私達は北郷将軍の提案を受ける事にしたのである。

 

 

「やぁ、おはよう。来てくれて嬉しいよ」

 

 

城門の前にいたのは見張りと思われる数名の兵士と北郷将軍。

 

どうやら私達が提案を受けるって事が解ってたみたい。

 

しかし私が挨拶をしようと口を開きかけた時、いきなり天和姉さんが大声で叫んだ。

 

 

「あ~! 昨日のお昼に肉まんを買ってくれた人だ!」

 

「て、天和姉さん!」

 

「あれ、覚えててくれたんだ。 肉まん、凄く美味しかったよ」

 

 

いきなり無礼に当たるであろう天和姉さんの発言だったが、

北郷将軍は特に気にした様子もなく普通に応対する。

 

昨日お会いした時も思ったけれど、国の要職に就いているとは思えないほど気安い人だ。

 

権力を笠に着て威張り散らすような人と比べたら遥かにマシだけど。

 

 

「それじゃあ行こうか。華琳…曹操達も待ってるからね」

 

 

それから私達は北郷将軍に連れられて城へと入り、そのまま曹操様のおられる謁見の間へと案内される。

 

中央の王座に腰掛けられている曹操様を始め、曹操様の側近と思わしき人達が立ち並んでいた。

 

 

「華琳、この3人が昨日話した計画の要となる張三姉妹だよ」

 

「お目にかかれて光栄です、曹操様。私の名は張梁、真名を人和と申します」

 

 

北郷将軍の言葉に続いて曹操様へ名を名乗り、深々と頭を下げた。

 

さすがに空気を呼んだのか、姉さん達も余計な発言はせず私の行動に倣って頭を下げる。

 

その後曹操様から直接お言葉を頂き、私達は北郷将軍と共に部屋から退出。

 

その際北郷将軍が曹操様を含めた3名の女性からかなりきつめに睨まれていたように見えたけど、

気にしない方が良さそうね。

 

 

「顔合わせも終わった事だし、早速これからの活動について話し合いをしようか」

 

 

少し引きつった表情の北郷将軍に従い、私達は城内のとある一室に移動。

 

そこでこれからについての相談をする事になったんだけど………

 

 

「とりあえず、一ヶ月後に君達の初舞台を計画してるから。

 まずはそれを成功させるために全力で取り組んでいこう」

 

「「「………え?」」」

 

 

あまりに突拍子もない北郷将軍の発言に対し、私達3人の声が綺麗に揃った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから一カ月間、私達は北郷将軍もとい一刀さん指導の下で厳しい稽古を積んだ。

 

武官としても文官としても重要な立場にいるはずの一刀さんだが、

可能な限り時間を作って私達の稽古を見てくれていた。

 

それにしても、一刀さんは本当に凄い。

 

これまで大陸中を回ってきた私達ですら知らなかった、全く新しい音楽性の曲と歌詞。

 

それらを最大限にひきたてるための舞台演出や小道具。

 

さらに何よりも驚かされたのは、地和姉さんの妖術を舞台に利用するという発想だった。

 

存在自体が忌み嫌われている妖術を大勢の人の前で堂々と使うなんて、

例え思いついたとしても絶対にやろうなんて思わない。

 

それは実際に妖術を使うことになる地和姉さんが一番感じていた事で、

一刀さんのお願いでなければ絶対に了承しなかったはずだ。

 

 

「3人とも、今日までよく頑張った。

 後はこれからの舞台でやって来た事を全部出し切るだけだ!」

 

 

そして今日、私達はいよいよ舞台本番の日を迎える。

 

城の兵士を動員してこの日のためだけに作られた巨大な特設会場。

 

時間をかけてビラ配りなどの宣伝を行った成果が出たのか、お客さんも満員御礼。

 

一刀さん命名『数え☆役満☆しすたーず』にとって、これ以上の初舞台はないだろう。

 

 

「………」

 

 

そんな恵まれ過ぎた状況にもかかわらず、私は心の底から喜べなかった。

 

それは今回の舞台を開くために掛かった費用の事があったからだ。

 

 

『まずは君達3人の事を知って貰わないといけないからね。多少の赤字は覚悟の上だよ』

 

 

舞台の総責任者である一刀さんはそんな風に言って笑っていたけど、経理を手伝った私には解る。

 

今回の舞台は多少の赤字なんてものじゃ到底済まない、完全な採算度外視。

 

満員のお客さん達からの入場料やその他会場限定商品などの売り上げを合わせたとしても、

最高で掛けた費用の半額程しか回収できない計算だった。

 

おそらく華琳様や他の重臣の方々からも、決して少なくない小言を貰っているはず。

 

ううん、小言だけで済むような問題じゃない。

 

 

『まぁ、損して得取れってやつだな。

 君達が有名になれば今回の舞台の赤字分なんてすぐに取り戻せるようになるんだから、大丈夫さ。

 3人は余計な事なんて気にしないで、初舞台を全力で楽しんでくれればいいよ』

 

 

それでも一刀さんはこれだけのものを私達のために用意してくれた。

 

まず大丈夫だとは思うけど、それでも絶対に成功する保証なんてない。

 

なのに一刀さんは、たった一か月前に会ったばかりの私達を当然のように信じてくれている。

 

それなら私達にできる事はたった一つしかない。

 

一刀さんの期待に応えるためにも、今夜の舞台を絶対に成功させてみせる。

 

 

「さぁ、いよいよ舞台の始まりだ。天和、地和、人和、3人とも全力で歌って来い!」

 

「任せといて、一刀」

 

「一刀、ちゃんと舞台袖から見てなさいよね!」

 

「最高の舞台にしてみせるわ、一刀さん」

 

 

一刀さんの最後の激励にそれぞれ言葉を返し、三人同時に幕の上がったステージへと躍り出る。

 

 

「「「会場のみんな! 今日は私達の舞台を見に来てくれてありがとう!!」」」

 

 

それが、私達にとって一生忘れられないであろう舞台の始まりだった。

 

 

 

 

『数え☆役満☆しすたーず』の初舞台から数か月。

 

利益よりも知名度の向上を優先させた舞台運営と多少無茶とも思える公演スケジュールをこなした結果、

彼女達3人は早くも国中の人間に知られるトップアイドルへと成り上がった。

 

おかげで広告塔としての価値も跳ね上がり、もはやこの国にとってなくてはならない存在だ。

 

彼女達の協力で旧袁紹領の抵抗は驚くほどスムーズに収束。

 

また軍の兵士など不足していた人員の確保は言うに及ばず、

これまでのループ世界と同じく国の発展に大きく貢献してくれていた。

 

おまけに初舞台からの金銭収支もようやく黒字化できたし、もはや言う事なしという状態だった。

 

そんな彼女達は只今洛陽の都にて休養中。

 

強行スケジュールによって溜まった疲労を抜き、次回からの公演に備えて英気を養ってもらっている。

 

 

「ねぇねぇ、一刀! この服似合うかな~?」

 

「一刀! ちぃの方も見てよ。これ、どう?」

 

「ああ、二人ともよく似合ってるよ」

 

 

で、本日休暇の予定だった俺は3人の相手をしているという訳だ。

 

しかし、買い物に来てる女の子のパワーは凄まじい。

 

 

「一刀さんが一緒で嬉しいのは解るけど、天和姉さんも地和姉さんも少しはしゃぎ過ぎよ。

 ただでさえ当日の急な誘いで迷惑をかけてるんだから」

 

 

いつもよりテンションの高い天和と地和の2人を人和がたしなめる。

 

けどね、人和。

 

今日の3人の中で一番浮かれてる君には言われたくないと思うよ?

 

 

「えー? 今日一刀を誘おうって言い出したの、人和ちゃんでしょ」

 

「て言うか人和! 私達に無断でなに一刀の腕に抱きついてるのよ!!!」

 

「あ~、人和ちゃんずるい~!!!」

 

 

2人が服選びに夢中になっている間にこっそり俺にしがみついてきていた人和。

 

その事実に気づいた2人が抗議の声を上げるも、人和はあっさりと受け流す。

 

 

「別に一刀さんは姉さん達の物じゃないんだから、いちいち断る必要なんてないわ。

 それに私達の方から招待した以上、私達が一刀さんをもてなすのは当然でしょう?」

 

「なにがもてなしよ! ただ単に人和が一刀に抱きつきたいだけでしょ!」

 

「…そうとも言うわね」

 

「開き直った!?」

 

 

………最近つくづく思うんだけど、人和の性格が今までと随分違う気がする。

 

出会った時の立場や境遇の違いが影響してるのかもしれないけど、

これほど積極果敢な人和は正直言って驚きだ。

 

 

「うふふ、それならお姉ちゃんもおもてなししなきゃね~」

 

「あっ! 天和姉さんずるい!!!」

 

 

人和と言い争っている地和を出し抜き、天和が空いている左腕にしがみついてくる。

 

彼女のたわわに育った二つの乳房に包まれた俺の左腕に伝わる感触は、まさに至福の一言。

 

さすがは真桜と双璧を成す魏の巨乳代表。

 

 

「ぐぬぬ~……こうなったら、えい!」

 

「うおっ!?」

 

 

姉と妹に対して出遅れ、痺れを切らしたのか地和が正面から抱きついてくる。

 

両腕を2人に拘束されている俺は思わず彼女の勢いに負けて倒れそうになるが、

咄嗟に踏ん張って何とか持ちこたえた。

 

が、両手を使えない俺は地和の行動を止められない。

 

 

「ふん、一刀の腕なんて天和姉さんと人和ちゃんにくれてやるわ。

 そ・の・代・わ・り♪ ちぃは一刀の唇を貰っちゃうもんね~」

 

「それは聞き捨てならんな」

 

「何やら騒がしいと思って来てみれば、随分と愉快な状況になっていますね~」

 

「「「「!!!」」」」

 

 

そんな俺の代わりに地和の暴走を止めたのは、

戦でもないのに無駄な殺気を滾らせている星と風の2人だった。

 

………いや、ちょっと待て。

 

この状況で風と星の2人が登場だと?

 

 

「で、貴女方はいつまで私達の目の前でお兄さんにしがみついているつもりですか~?」

 

「色恋沙汰は個人の自由なれど、少しは身の程を弁えた方が良いのではないか?」

 

 

凄まじい威圧感で俺を含めた4人を圧倒する風と星。

 

しかし微かに震えながらも天和と地和は俺から離れようとせず、

また人和は右腕にしがみついたまま毅然とした態度で2人に言い返した。

 

 

「……お二人が一刀さんと懇意の間柄にある事は承知しています。

 それに私達はあくまでも一般人であり、国の要職に就いている一刀さんやお二人とは身分も違います。

 ですが先程趙雲様が仰られたように、色恋沙汰は個人の自由。

 別にお二人と一刀さんが夫婦の契りを交わされている訳でもないのですから、遠慮は無用かと」

 

「れ、人和?」

 

 

今の2人に向かってなんて発言を……

 

 

「そ、そうよ! まだ一刀と知り合ってからそんなに経ってないけど、それでもちぃ達は本気なんだからね!」

 

「簡単に諦められるほど、軽い気持ちじゃないんです!」

 

「天和? 地和?」

 

 

ちょ、そんな火に油を注ぐような真似したら……

 

 

「………へぇ」

 

「………ほぅ」

 

 

ぎゃあーーーーー!!! やっぱり怒り爆発………あれ? して、ない?

 

相変わらずの迫力だけど、なんか圧力の質が変わった?

 

 

「未だ尊敬や憧れの部分が強いのはそうですが、本気の面があることもまた事実のようですねー」

 

「そもそも全ての権利を握っているのは主様。

 そして相応の想いを抱き主様と共に生きたいというのならば、私から言う事は何もないな」

 

「「「……え?」」」

 

「ふふっ。つまり、これからよろしくということですよー」

 

「ああ、そういう事だな」

 

 

そこで威圧は完全に消え、穏やかな笑みを3人に向ける風と星。

 

なんか色々と急展開だったけど、とりあえず一件落着………か?

 

 

「けどお兄さん?

 側室を増やすのは構いませんけど、最初に言った通りちゃんと本妻の風を一番に愛してくださいね。

 ちなみに星ちゃんは時期が早かったというだけで所詮側室ですから、これまで通りでいいですよ」

 

「………私の処遇に関して風が発言する権利はないと思うが?」

 

「本妻と側室1号、どちらが上かなんて誰でも解る事じゃないですか。

 あっ、ついでに言っておきますと人和ちゃんが2号、天和さんが3号、地和ちゃんが4号ですので。

 まぁ側室に権限の優劣なんてありませんから、風にだけ気を使ってくれれば大丈夫ですよ。

 具体的に言えば星ちゃんに対しては気を使う必要なんてありませんからねー」

 

「………この辺りで立場というものを一度ハッキリさせておいた方が良さそうだな、風よ」

 

「既に解りきっている事を何度も持ち出さないでください。

 まったく、これだから戦い一辺倒の脳筋は困ります」

 

「………………もはや語る言葉なし」

 

 

落着してねーーーーーー! むしろさっきまでよりも悪化してるぅーーーーー!?

 

てか星! 本気の殺気を出しながら得物を構えるな! マジで洒落にならんだろうが!!!

 

 

「きゃあー、お兄さーん、星ちゃんが怖いですー、助けてくださーい」

 

「似合わない台詞を棒読みで言いながら俺の後ろに隠れるんじゃない!

 自分が煽った結果なんだから、最後まで自分で責任取れ!」

 

「主様どいてください、ソイツコロセナイ」

 

「感情の消えたカタカナ言葉は禁止だ!!!」

 

「……あくまで庇いだてするというのならば仕方ありません。

 こうなれば死なば諸共。主様、あの世で幸せになりましょう」

 

「うわっ!? 本気で斬りかかって来るな! このっ!!!」

 

 

その後、内なるリミッターの外れた星とガチバトルを繰り広げた俺は何とか勝利。

 

しかし戦いの舞台となった服屋を壊滅させた事を華琳に知られてしまい、

その経緯も相まって破壊神と化した彼女から大目玉をくらってしまうのだった。

 

畜生、今回はホント踏んだり蹴ったりだったぜ。

 

俺悪くないのに……なぁ?

 

 

 

 

~ 一刀君ガチバトルの裏側 ~

 

 

「そう言えば、あの、程昱様?」

 

「風で結構ですよー。それでなんですか、人和ちゃん?」

 

「趙雲様が1号で私達3人が2号から4号という事でしたけど、華琳様はどうなのですか?」

 

「華琳様はお兄さんとそういう関係にはなっていませんよ~」

 

「え? けど、華琳様は……」

 

「先日の劉備軍との戦い以来、お兄さんの事を男性として強く意識しているのは間違いないですね。

 けれどその想いを素直に打ち明けられず、今までの関係をずるずると引き摺っているんです」

 

「それはやはり、王としての立場があるからですか?」

 

「いえ、単に華琳様がヘタレなだけですよー」

 

「へ、ヘタレ!?」

 

「まぁ、常に人の上に立つ者としての生き方をされてきただろう華琳様です。

 純粋な気持ちで誰かに甘えた事なんて当然無いでしょうし、

 立場を無視した完全な個人として誰かと接した経験も皆無と言っていいはずです。

 だからこそ王としてではなく、一人の女として抱いた想いに戸惑っておられるのでしょう」

 

「………」

 

「けれど、それはあくまでも華琳様御自身が望まれた生き方をした結果そうなっただけ。

 言わば華琳様の自業自得です

 と言いますか、そもそも華琳様の生き方や性格自体どうでもよい事なのです。

 そんな個人的事情まで考慮して考えなければならない義務なんて、誰にもありませんからね。

 肝心なのはお兄さんへの想いを素直に受け入れようとしないという一点のみ。

 そして華琳様はその肝心な部分をハッキリさせていない。

 これをヘタレと言わないのならば、一体どのような呼び名で呼べばいいのですか?」

 

「それは……少し、極論過ぎるのでは?」

 

「確かに極論ではありますけど、同時に事実でもあります。

 だからこそ先程、人和ちゃん達は風と星ちゃんの前であのような言葉が言えたのでしょう?」

 

「!」

 

「人和ちゃん達と対峙した時、風も星ちゃんも本気でした。

 特に星ちゃんはこの大陸において五指に入るほどの武人です。

 そんな星ちゃんの本気の殺気を受けながら、あれだけの事を言うのは並大抵の事ではありません。

 それこそお兄さんに対する強い想いと、それを抱き続ける確固たる覚悟があったからこそ出来たのです」

 

「………」

 

「うふふっ、なんだか無駄に話が長くなってしまいましたね。

 それに論点もずれてしまいました。

 まぁ、それほどに難しく考える事でもありませんよ。

 華琳様はお兄さんに好意を抱いているものの、そこから一歩先へ踏み込めないでいるヘタレ。

 華琳様についてはこのくらいの認識で良いと思いますよー」

 

「そ、そうですか」

 

「……今こうして話した内容も所詮は風の個人的な考えでしかありません。

 ですから風はこの考え方が絶対に正しいなんて言えませんし、言うつもりもないです。

 本当は全然見当違いの事を言っているだけなのかもしれませんからねー。

 けれどこれだけはハッキリしています。

 同じ男性を想う者として、今の華琳様を対等な女として認める事は絶対に出来ません。

 仮に己の覚悟を決めぬままお兄さんの方から手を出すように仕向けたりしたら、

 風は女としての華琳様を見限り全力でその暴挙を阻止するでしょう。

 人和ちゃんも、それは忘れないでくださいねー」

 

「………はい(色々な意味で凄いわね、風様って)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…くしゅん!」

 

「華琳様? お加減でも悪いのですか?」

 

「いえ、大丈夫よ。誰かが私の噂でもしていたのでしょう」

 

 

 

 

あとがき+独自解釈の説明

 

 

どうも、お久しぶりのささっとです。

 

少々強引すぎるような気もするけど、深く考えて読むような話でもないし別にいいよね?

 

と言う訳で恋の処遇&三姉妹メインなお話でした。

 

実は改訂版を書くにあたっての大きな理由の一つが、彼女達張三姉妹の存在でした。

 

と言うのも改訂前の段階だと、彼女達の出番が全然なかったのです。

 

投稿していた部分もそうですが、以後のプロットでも完全に忘れ去られていた状態だったんです。

 

まぁ、私が忘れていただけなんですけどね。

 

そんなわけでその鬱憤を晴らすべく、初回から大暴走していただきました。

 

 

 

そして今回の最後のページに関する事ですが、

これは作者が真恋姫魏ルートをプレイした際に感じた疑問を織り交ぜた独自解釈になっております。

 

(ストーリー上の設定だと言われればそれまでなので、その系統のツッコミは受け付けません)

 

史実で言うところの官渡の戦いが起きる直前、華琳は麗羽の事を、

 

『大きな宝箱と小さな宝箱があれば、間違いなく大きな宝箱を選ぶ奴』

 

と称しています。

 

そしてそれに関連した一刀の問いに対して自身は、

 

『両方開けさせて、中の良いところを全て手に入れる』

 

と言い放っています。

 

この返答は華琳の性格を表す上で実に的を得ていると言えるのですが、

だからこそ彼女が終始王としての立場を優先させ、

女としての自分を蔑ろにしていた事が疑問に思えてくるのです。

 

確かに大陸の王となるなんて大それた願いを叶えようと思ったら、

それ以外の全てを犠牲にして臨むくらいの覚悟が必要でしょう。

 

しかし真恋姫の華琳の性格からすればむしろ、

 

『王としての幸せと女としての幸せくらい両立してみせる』

 

と、呉侵攻の際の舌戦で言われた内容を地でいく方が自然に思えます。

 

一刀君に対しても終盤は本気で惚れていましたから尚更です。

 

にもかかわらず華琳がそうしなかったのは、

今回風が人和に言ったような一面が華琳にあったからではないとか考えた次第です。

 

ただし冒頭でも注意書きした通り、これはあくまでも作者の独自解釈です。

 

この解釈が原作においても絶対正しいなどと言うつもりは微塵もなく、

あくまでもこの小説内でのみ適応される事柄となっています。

 

重ねて申し上げますが、その点をご理解していただくようお願いいたします。

 

あっ、それと恋については完全に捏造ですんで(笑)

 

 

たくさんのコメント・応援メッセージありがとうございました。

 

次回もよろしくお願いいたします。

 

 

追伸:萌将伝やりました。いや、悪くはなかったんですけどね。過剰な期待はよくないですね。

 

 


 
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