No.135986

改訂版 真・恋姫†無双 終わらぬループの果てに プロローグ

ささっとさん

覇王の歩む物語を見届け、天の御遣いとしての役目を終えた一刀。
彼は愛する少女に別れの言葉を告げてこの世界から消えた。
しかし、次に彼が目を覚ましたのはなんと初めてこの世界に降り立ったあの場所だった。
終わったはずの物語が今、再び始まるのだった……

2010-04-12 12:51:20 投稿 / 全7ページ    総閲覧数:72245   閲覧ユーザー数:51924

 

この世界で自分がしてきた事に悔いはない。

 

 

『さよなら……誇り高き王……』

 

 

だけど納得しているのかと聞かれれば、勿論納得なんかしていない。

 

 

『さよなら……寂しがり屋の女の子』

 

 

ずっとこの世界に、彼女の傍にいたい……そう願う事は我侭なんだろうか。

 

 

『さよなら……愛していたよ、華琳――――――』

 

 

その言葉を最後に、俺の意識は闇の中へと沈んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次に目を覚ました時、その眼前に広がっていたのは何処までも続く荒野。

 

 

「おう兄ちゃん。珍しいモン持ってるじゃねぇか」

 

 

そして俺の目の前に立っていたのは、この世界で初めて出会った3人の人間。

 

 

「………え?」

 

 

俺にとって、2度目の乱世が始まった瞬間だった。

 

 

真・恋姫†無双 終わらぬループの果てに

 

 

プロローグ

 

 

一体何がどうなったのか、意識を取り戻したばかりの俺には理解出来なかった。

 

けれどそんな疑問なんてすぐ気にならなくなった。

 

もう二度と会えないと諦めた彼女達と、また会う事が出来たんだから。

 

それから俺は再び華琳の下に身を寄せ、彼女の覇道を叶えるために奔走した。

 

現代知識と乱世を生き抜いた経験を生かし、1度目よりも遥かに上手く立ち回った2度目の世界。

 

あの占い師から一字一句同じ台詞を言われた時は不覚にも取り乱してしまったが、

その後はさらに覚悟と決意を持って力を尽くした。

 

そして時は流れ、再び華琳が大陸を統べる王となったその日。

 

俺は彼女と2人であの場所にいた。

 

だけど、そこで待っていたのは1度目とは全く違う別れの瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………いかないで、一刀」

 

 

一度目の別れの時、彼女は最後まで俺の方を見なかった。

 

 

「ずっと私の傍に……いてくれるって、言ったじゃない……」

 

 

一度目の別れの時、彼女は最後まで毅然とした態度を崩さなかった。

 

 

「お願い、だから……私を一人にしないで………かずとぉ……」

 

最後の最後まで覇王たらんとした彼女の姿は何処にもない。

 

ただ、俺との別れを前に泣きじゃくる寂しがり屋の女の子がそこにいたのだ。

 

 

「……ゴメン、華琳」

 

 

そんな彼女に対し、俺は優しく抱きしめて謝罪の言葉をかけるくらいしか出来なかった。

 

改めて思い知らされる。

 

『天の御遣い』なんて大層な呼び名で呼ばれていながら、たった一人の女の子の笑顔さえ守れない。

 

自分はなんて無力なんだろう、と。

 

 

「あやまら、ないで、よぉ……おねがいだから、かずと……」

 

華琳の言葉が俺の胸を奥に突き刺さる。

 

俺だってずっと華琳の傍にいたい。

 

でも、俺にはどうすることも出来ないんだ、華琳。

 

「かずと、からだが……ッ!」

 

ゆっくりと俺の身体が薄れていく。

 

驚きながらも消え逝く俺を必死に繋ぎ止めようとする華琳。

 

しかしその手は空を切るばかり。

 

もう華琳は、そして俺は互いに触れ合うことすら出来ない。

 

 

「………さよなら……誇り高き王」

 

「まって、いかないで、かずと!!!」

 

そして身を引き裂かれるような思いで紡ぐ別れの言葉。

 

           

「……さよなら……寂しがり屋の女の子」

 

「いやよ、そんなのいや、ぜったいにいや!!!」

 

一度目の別れよりも遥かに辛い。

 

「さよなら……愛していたよ、華琳―――――」

 

「かずと!? いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

華琳の悲しい叫びに包まれながら、俺の意識は闇の中へと沈んでいった。

 

 

 

 

「………また、なのか」

 

 

3度目となる世界で目を覚ました俺は特に驚く事もなく、あっさりとこの現実を受け入れた。

 

そして必死に考えた。

 

俺が何もしなければ世界はおそらく俺の知っている歴史どおりに進み、華琳の夢は潰えてしまう。

 

しかし俺が華琳のために尽力すれば、最後の最後で彼女の願いを踏みにじってしまう。

 

覇王としての華琳の夢と女の子としての華琳の願い。

 

そのどちらもが俺の愛した華琳の姿であり、どちらかを切り捨てる事など出来はしない。

 

 

「華琳さま! こやつは……」

 

「……どうやら違うようね。連中はもっと年かさの、中年男だと聞いたわ」

 

「どうしましょう。連中の一味の可能性もありますし、引っ立てましょうか?」

 

 

それならば一体どうすればいいのか………そして、俺は一つの結論にたどり着いた。

 

 

「………貴女が曹 孟徳殿か」

 

「あら、私を知っているのかしら?」

 

俺は無表情の仮面をかぶり、愛しい彼女に告げる。

 

 

「知っているとも。後に魏の国を起こし、大陸にその名を轟かせる乱世の奸雄よ」

 

「っ!!!」

 

途端に華琳の雰囲気が変わるが、俺は構うことなく言葉を続ける。

 

 

「私の名は北郷 一刀。天の意思によってこの地に遣わされし者なり」

 

 

本来なら華琳によって背負う羽目になる『天の御遣い』の名、今度は自らの意思で背負う。

 

そして『北郷 一刀』としてではなく『天の御遣い』として覇王曹操の夢を成就させる。

 

その一点"だけ"に徹していれば………最後の最後で君を悲しませる事もないだろうから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんな一見馬鹿げてるとしか思えない考えは意外にも功を奏した。

 

2度の繰り返しを経てさらに濃さを増した経験と知識を惜しげもなく使い、

内政面だけでなく兵器開発や戦術など軍事面についても全力で支援。

 

これによって魏の勢力は瞬く間に拡大し、2度目よりもさらに早い段階で大陸の統一を成しえようとしていた。

 

そして肝心の華琳だが、

彼女とはあくまで『魏の王』と『天の御遣い』という間柄で協力関係を結んでいるだけ。

 

そのため俺達の間には恋仲の男女が持つ親しさはおろか、友人としての気安ささえも存在していない。

 

この状態なら、きっと最後の瞬間に彼女を悲しませるもないだろう。

 

俺は自分の気持ちを必死に押し殺し、ただひたすら『天の御遣い』として振る舞い続けた。

 

だが、物語は思わぬところで終焉を迎えることとなる。

 

 

「北郷、覚悟ッ!!!」

 

 

それは偶然街で一人になった時に起こった出来事だった。

 

見知らぬ男が突然路地から飛び出してきたかと思えば、隠し持っていた短刀を抜いて俺に肉薄。

 

全く想定していなかった事態に俺は頭が真っ白になってしまい、

気づいた時には胸に強烈な痛みと熱さを感じながら地べたに這い蹲っていた。

 

男は駆けつけた兵士達によってすぐさま取り押さえられたようだが、その後どうなったのかは知らない。

 

何故なら俺は二度とその場から動く事が出来なかったのだから。

 

 

 

衝撃的な結末を迎え、そして4度目となる世界で目覚めた北郷 一刀。

 

しかしこの時の彼は、3度目の世界で自分が『死んだ』という事実を前にして心神喪失状態にあった。

 

「おう兄ちゃん。珍しいモン持ってるじゃねぇか」

 

「………………」

 

「……おい、聞いてんのかテメェ! 何とか言いやがれ!」

「………………」

 

「この野郎、下手に出てりゃ付け上がりやがって……」

 

「………………」

 

「このガキが! ぶっ殺されてぇのか!!」

 

やがて自分達の声に何の反応もしない一刀に苛立ち、三人組のリーダー格が発した『殺す』という言葉。

 

この言葉が一刀の中にあるナニカに触れた。

 

 

「……・ぁ、ああ………・あぁぁ」

 

「あん? なに言ってやがるんだ、このガ…」

 

「うわああああああああああああ!!!!!!」

 

 

怒りとも恐れと取れる叫び声をあげながら突然目の前の3人に襲いかかる一刀。

 

3度の乱世を生き抜いた彼は既に現代知識を持っているだけの一般人ではなく、

一介の兵士では相手にならぬほどの武を身につけていた。

 

そしてこの武は知識や記憶と同様、繰り返しによって失われる事は無い。

 

勿論技だけでなく、鍛えぬいた身体の方もそのまま引き継がれていた。

 

 

「ぐがっ?!」

 

「あ、アニキ…げぶっ?!」

 

「ヒッ! た、助け…・ガッ?!」

 

 

瞬く間に3人を殴り殺し、一刀はその両手を真っ赤な血で染めた。

 

しかし我を忘れて暴走している彼はこれだけでは止まらない。

 

 

「ふむ、どうやら私が手を下すまでもな…「ああああああああああああっ!!!」…っ?!」

 

 

本来己を助けてくれるはずの趙雲にまで襲いかかる一刀。

 

そのままなし崩しに殺し合いへと発展した2人の戦いだが、長くは続かなかった。

 

 

「星ちゃん!」

 

「…っ!」

 

 

趙雲の後を追ってこの場にやって来た程昱の声に反応した一刀が一瞬だけ動きを止め、

 

 

「はあああああああっ!!!」

 

 

その隙を逃す事無く、趙雲が一刀の心臓に槍を突きたてたからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

?「北郷 一刀の部分改変を要求………管理者の承認をもって部分改変を実行………完了。

  全く、観測者っていうのも楽じゃないわねぇ。

  本当は私もこんな事はしたくないんだけど………ゴメンなさいね、ご主人様」

 

 

 

 

5度目の世界、俺は妙にスッキリした気分で目を覚ました。

 

 

「………2回も死んだんだよな、俺」

 

 

3度目の世界では見知らぬ誰かに殺され、

4度目の世界ではそれが切っ掛けで暴走した揚句に趙雲さんと殺り合って殺された。

 

そんな2度に渡る死の記憶があるにもかかわらず、不思議なくらい落ち着いている。

 

 

「おう兄ちゃん。珍しいモン持ってるじゃねぇ…へぶっ?!」

 

「あ、アニ…あべしっ!?」

 

「て、テメェ!舐めた真似しや…ぐわッ!?」

 

「………ん?」

 

 

自分の身に起きた異変について考えていると、

いつの間にかやって来ていた三人組が地べたに這いつくばっていた。

 

いや、拳に感触があるから俺が殴り倒したのか?

 

全然気付かなかった

 

 

「いやはや、私の出番はありませんでしたな」

 

 

そうこうしている間に趙雲さん登場。

 

彼女を見て一瞬不快感と罪悪感が同時に湧いたが、すぐに消え失せる。

 

それから遅れてやって来た風と稟を交えて軽く雑談し、その後はいつもと同じくお別れとなった。

 

 

「華琳さま! こやつらは……」

 

 

趙雲さん達と入れ違いになる形でやって来た華琳達。

 

とりあえず余計な疑いを掛けられる前にこの3人組との一件を話し、早々に引き渡してしまう。

 

そして3人組を捕まえてくれた礼がしたいという華琳の申し出を丁重にお断りし、

大事な旅の途中だからという理由をつけてこの場をあとにした。

 

そう、俺は今回、華琳達に同行するつもりはない。

 

華琳達と一緒に行きたいのは山々だが、

それ以上にこの不可解な現象が何なのかを調べなければならない。

 

そのためには華琳達と常に行動を共にしているだけではダメだと判断したからだ。

 

 

「………にしても、なぁ」

 

 

華琳達の事をこうもあっさり割り切れるなんて。

 

一体俺の身に何が起こったんだ?

 

 

 

 

幾度となく乱世を繰り返し、その回数も気付けば30回を超えていた。

 

途中何度も挫けそうになったが、その都度必死に耐えて乗り越えた。

 

その結果が今の俺である。

 

100年を遥かに超える歳月を掛けて様々な経験を積み、己の持つ技術と知識に磨きをかけた。

 

特に武勇では大陸最強の呂布を相手に一騎打ちで勝ち切れるまでになり……というか、

ぶっちゃけ某無双ゲーム状態にまでなってしまった。

 

これは繰り返しの過程で凪に師事し、氣の扱い方を覚えた事が大きく影響しているだろう。

 

もっとも呂布が相手だとこの状態ですら負ける可能性があるため、

彼女がいかにとんでもない存在なのかが窺い知れるというものだ。

 

それからこの不可解な繰り返しについても解った事がある。

 

この繰り返し…以降ループ現象で統一させてもらうが、

この現象が発生するタイミングは全部で3パターン存在している。

 

 

① 華琳が大陸の王になる事が確定したその日の夜

 

② 華琳が大陸の王になれない事が確定したその日の夜

 

③ 情勢に関わらず、俺が何らかの理由で死亡あるいはそれと同義の状態になった瞬間

 

 

①と②で矛盾があるような気がするかもしれないけど、

この3つのいずれかに当てはまると最初のあの瞬間に戻されてしまう。

 

それと当たり前の事だが、ループした世界は必ずしも同じ流れになるとは限らない。

 

俺の行動如何によって大陸の情勢が大きく変化してしまうからだ。

 

と、ループに関して解ったのは残念ながらこのくらいである。

 

かなり時間を掛けて色々試してきたけど、そもそも雲を掴むようなはなしだから仕方ない。

 

 

「お嬢ちゃん。一人でこんな所をうろついてたら危ないぜぇ~?」

 

 

っとと、いつまでも考えてる場合じゃなかった。

 

いつものようにあの3人組の相手をしないと……お嬢ちゃん?

 

おいおい、何処からどう見たら俺がお嬢ちゃんに見える……って、あれ? いない? 何処行った?

 

 

「あ、いた………え?」

 

 

聞こえてきた声を頼りに辺りの様子を窺うと、すぐに例の3人組を発見。

 

何故か俺の居る場所から少し離れた所におり、しかもどうやら俺には気づいていないようだ。

 

だけどこの際それはどうでもいい。

 

問題なのはその3人組がたった今絡んでいる人物だった。

 

 

「……風?」

 

 

小柄な身体にゆったりした着物を纏い、頭の上に独創的な人形を乗っけている少女。

 

それは紛れもなく風本人だった。

 

 

「一体どうして風がこんな……って、言ってる場合じゃない!」

 

 

下賤な笑みを浮かべながら風ににじり寄っていく3人組。

 

後ずさりながらも気丈な態度を保っている風だが、その身体が微かに震えている。

 

俺は頭の中にあった疑問を全て捨て、風を救うべく走りだした。

 

 

 

 

あとがき

 

 

どうも、お久しぶりのささっとです。

 

突然ではありますが、今回より過去に投稿した全ての話を公開停止とし、

改訂版として再度一から投稿させていただきます。

 

理由は完全に私の個人的都合です。

 

このような勝手を何の知らせもなく決行してしまい読者の皆様には大変申し訳なく思っておりますが、

何卒ご了承のほど宜しくお願いいたします。

 

ちなみに番外編は公開のままですが、機を見て書き直すかも知れません。

 

 

 

プロローグは改訂前の1、2話をまとめた感じの内容。

 

作者的にはかなりスッキリしたのではないかと思っております。

 

次回で改訂前から端折った部分をある程度補完するつもりですのでご安心? を。

 

 

改訂前との違いを挙げますと、

 

 

・ループ条件、およびループ現象発生時において一刀が次周へ引き継げる事柄の変化。

 

・2周目以降のループ世界は必ずしも1周目と同じ流れを辿る訳ではなく、

 その時々における一刀の行動如何によって大きく変化する。

 

・一刀は妖術を使えず、代わりに氣を使用することが出来る。

 

 

と、大きく分けてこの3つでしょうか。

 

十分チートな内容ですが、改訂前と比べるとかなりマシになっているかと。

 

 

それでは次回もよろしくお願いいたします。

 

 

 

 


 
このエントリーをはてなブックマークに追加
 
 
171
61

コメントの閲覧と書き込みにはログインが必要です。

この作品について報告する

追加するフォルダを選択