「ばーちゃん！おにぎり作って！おにぎり！」
月見の着物を引っ張る、元気な声の主は緋桜陽乃。五代目と緋桜観緒の長女である。
両親のどちらにも似ず明朗快活で、日没まで遊んでは傷と友達を増やしてくるような娘だ。
今までの月見食堂…過去の店の者には見なかったタイプである。

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だが同時に、母親が帰ってこない寂しさを紛らわせているようにも見える。
月乃は母親に認めてもらいたい一心だが、陽乃は単に母親に傍らに居て欲しいのだろう。
例え子育てを押し付け、自身は放蕩の旅に出るような薄情者だとしてもだ。