No.1004326

近未来文明が残る惑星 第5話

meguro さん

お待たせしました、続きの5話になります。今回は色々と大きな進展があります。出来れば次回も1ヶ月に1度の更新を目標に頑張ります。

感想やアドバイス等ありましたら是非お願いします。

2019-09-12 17:00:34 投稿 / 全3ページ    総閲覧数:404   閲覧ユーザー数:404

この物語はフィクションです。実際の地名人物とは関係ありません。

 

 

 

前回のあらすじ

 

惑星テラフェに不時着した主人公リックは、現地調査を行う為この土地の権力者である北条氏政と謁見をしたが…

 

 

 

瑠璃「あっおかえりなさい!どうだった?」

 

村に戻ると畑仕事を手伝っていた瑠璃がリックに近寄り、出迎えてくれた。

 

リック「ただいま。うーん…なんと言えばいいかな…?俺が遠くから来たことは分かってくれたみたいだけど、惑星調査についてはどうなんだろう。」

 

心配そうな顔で謁見の事を思い出すリック。 

 

鷹羽「それについてはまた後日、氏政様と謁見する機会があるだろう。」

リック「えっまた謁見するんですか!?」

鷹羽「当たり前だ。ここ小田原にも得体の知れない物体がいくつかあるんだ。その正体が明らかになることを氏政様は望んでおられるし、俺達も気になる。お前になら分かるかもしれないだろう?」

リック「得体の知れない物?なんですかそれ?っていうかなんで勝手に分かるって決めつけてるんですか!?」

 

鷹羽のマイペースさと初めて聞いた話に驚くリックと、いつの間にか家に戻って手招きしている瑠璃がいた。

 

瑠璃「あのー!そこで話すのもなんですから、うちに上がってお茶飲んでいってください」

鷹羽「ああ、すまない。頂こう」

リック「この人マイペース過ぎるでしょ、まあいいけどさ…」

 

                

                     ――――

 

 

少し薄暗く程よくひんやりとした瑠璃の家では、緑茶を入れた急須を小さく割られた氷が入っている湯呑に注がれていた。

カランカランと初夏には心地がいい涼し気な音が鳴る。

 

鷹羽「氷が入った冷たい茶とはまた、珍しいな」

 

瑠璃「はい、友達のカムイって子が氷をつ―――!?」

 

瑠璃がカムイについて話そうとした瞬間にリックに口元を手で押さえられてしまう。

 

リック「カムイの事はあまり人に言わない方がいい!」

瑠璃「な、なんで?」

リック「だって、氷を作り出したり自然をちょっと操ったり…普通じゃないだろ!?」

瑠璃「…確かに…でも普通にいい子だよ?」

リック「それでもカムイの為に今は黙っておいた方がいい!」

 

リックの言う通り、カムイの事を考え村以外の人にはカムイの事を内緒にしておこうと心の中で約束した2人だった。

 

鷹羽「どうした?」

瑠璃「ええと…村の奥の裏山ではまだ雪が残ってて、氷も時々採れるんですよー」

鷹羽「…そうか、初夏とはいえ時々寒い日も近頃あったからな。」

リック「それで、さっきの話なんですけれど、得体の知れない物ってなんですか?何故、俺になら分かると思ったんです?」

 

瑠璃と鷹羽が顔を見合わせる。瑠璃が少し戸惑った様な顔にリックから見えた。

 

 

瑠璃「それは…実は、私が初めてりくを見つけた所が村の近い浜辺なの…少し、りくを見つけた日の事を話してもいいかな?その方がきっと鷹羽様も説明しやすいと思うの。」

リック「そういえば、まだ聞いてなかったな、その話。聞かせてくれないか?」

 

 

瑠璃「…あの日、村の人の声で朝起きて外に出てみたの。そうしたら浜辺がある方向の空に真っ黒な雲の様な煙の様な物が上がってて、私は急いで浜辺に行ったら嗅いだことない変な匂いが海からしていたの。辺りを見回したら、りくが浜辺に打ち上げられていた。私は見た事ない髪の色で見た事ない服を着ていたから、凄く混乱して怖くなって他の人の助けを呼びに行ったの。その時に偶々近くにいた人達の一人が鷹羽様で、りくを家に運ぶのを手伝って貰って…」

 

 

 

 

鷹羽「お前を運んで瑠璃の家に着いたのはいいが、見慣れない奇妙な服を着ていて脱がし方が分からなかったから、持っていた小刀で服を切って瑠璃の兄が着ていた服を借りて着替えさせたんだ。」

 

リック「ちょっと待って下さい!瑠璃が言う俺を着つけたときの事は分かりました、俺自身も浜辺になんとか流れ着いた事も覚えてる。でも、鷹羽様の服を切ったって…いくら俺が住んでいたコロニーでは普段着でも色々と高性能で、例え海水でびしょ濡れでも1時間経てば自然に乾くようになってる優れものなんですよ!!」

 

鷹羽「そういわれても、その服の事は分からないし、怒られても困る。」

 

鷹羽の冷静な言い返しに瑠璃もうんうんと頷く。そしてリック自身もカーッと怒鳴ってしまったことを少し反省した。

 

鷹羽「それで、その日は瑠璃達にりくを預け俺は氏政様に報告しに城に行った。翌日、町の人から騒ぎを聞き、お前が倒れていた浜辺の近くに行くと見た事ない丸く大きな物が浜辺に打ち上がっていた。それの周りは黒くなっていて異臭もする、まるで焼き焦げたような感じだった。一緒に居た町人が『小田原の町の外れにある大きな鉄の塊に形や継ぎ接ぎが似ている』と呟いたのを聞いた。…そしてその事を氏康様に報告し、もしかしたら長年そこにあった例の物体の正体が分かるかもしれないと考え、お前が回復するのを待っていたんだ。」

 

瑠璃「りくはその3日後に目を覚ましたんだよ。ずっと黙っててごめんね」

リック「…いや、謝る必要はないよ。話してくれてありがとう。恐らく…鷹羽様が言った丸くて大きな物体は俺が乗っていた脱出避難船です。それが無いと帰れないし、この惑星から出ることも出来ない。とても大切な物なんです…。」

 

リックは2人から聞いた事を真摯に受け止め、静かに説明する。

 

 

 

 

鷹羽「ではあの丸い物体の正体は…お前が…乗っていた物なのか?」

リック「はい。あっそうだ。瑠璃、前にカムイと出会って畑荒らしを探してるときあっただろ?あの時俺もその脱出避難船がどうなったか気になってたんだ。」

瑠璃「リックは最初着ていた不思議な服はお城の人に預けちゃった。そのだっしゅつひな…?って言うのは鷹羽様が知ってるはずだよ」

鷹羽「奇妙な服も俺の知り合いが管理している。明日そこに案内しよう。」

 

そして鷹羽は瑠璃の家を後にし、城下町へと戻った。

 

リック「そうだ、少し遅くなったけど城下町でお土産買ったんだ。」

瑠璃「本当?見せて!」

 

リックは瑠璃に桃色と鶯色の花の形をした髪飾りを渡す。

瑠璃「わあ…可愛い。これ私にくれるの?」

リック「瑠璃に似合うと思ってさ、買ってみたんだけどどうかな?」

瑠璃「私の為に…?嬉しい!ありがとう!お兄ちゃんも昔、時々だけどお土産買ってきてくれたなぁ」

リック「そういえば、お前一人暮らしなのか?兄がいるみたいな事言ってたけど」

瑠璃「うん、兄がいたの。でも5年前の嵐の夜に突然家を飛び出してから、戻って来なくなっちゃった…村のみんなはもう死んだとか、神隠しにあったとか言うけど、私はまだ信じられなくて…今はお兄ちゃんと同じ年の風助さんが兄代わりになってくれてるのかな…」

リック「…そうだったのか…そんな辛い思いしていたのに気が付かなくてごめん。」

瑠璃「ううん、いいの!さてこの話はおしまい!お土産大切にするね!」

 

俯いた顔で過去話していた顔はやめて、にこりと微笑む瑠璃。

瑠璃はリックから貰った髪飾りを嬉しそうに自分の髪に付けて、無邪気に喜ぶのだった。

 

リック「それと、おーいもう入ってきてもいいぞー?」

 

リックが呼びかける先には、家の前で半分顔を覗かせるカムイの姿があった。

 

カムイ「…もうお侍さん居ない…?」

リック「鷹羽様なら帰ったぞ」

カムイ「そっか。ボクあの人ちょっと怖くて、隠れちゃった」

瑠璃「見て見て!りくが買ってきてくれたの!」

リック「カムイにもお土産あるぞ。ほら。」

 

カムイが受け取ったのは青い鼻緒が付いた下駄だった。

 

リック「これは流石に自分の金じゃ買えなかったから、鷹羽様に少し借金して買ったんだ。お前この村来たときは裸足だったし、村でおさがりで貰った草鞋もボロボロだっただろ?」

カムイ「ありがとう…凄く嬉しい…!ボクも今度お返しするね!」

 

カムイは嬉しそうに下駄をぎゅっと抱いて喜ぶ。

 

 

              

 

                     ――――

 

 

 

ー翌日ー

 

リックは村の入口に着くと約束通り鷹羽が待っていた。

 

リック「鷹羽様おはようございます!」

鷹羽「ああ、おはよう。では案内しよう。」

リック「はい、宜しくお願いします!」

今日はリックがこの惑星にやってきた時に乗っていた、脱出避難船を保管しているという場所に案内してくれるという。

 

 

2人は賑やかな城下町を抜けてしばらく歩いていた。

 

リック「随分歩きましたね…そろそろ着きそうですか?」

鷹羽「まだまだ掛かる。」

リック「うう…結構町から遠いんだな…」

 

そんな他愛もない会話をしながら野道を歩いていくと、草原が広がる丘に辿り着いた。

心地のよい風が吹き、様々な草花が揺られていた。

 

リック「わぁっ凄い!色んな花や草が咲いていて綺麗な場所ですね!」

鷹羽「…そうか?普通の草原だぞ?こういう場所はいくらでもある」

リック「そうなんですか!自分が生まれ育った場所にはこの様な自然豊かな場所は無かったので、凄く珍しく見えるんです。」

 

リックが生まれ育った宇宙コロニーのほとんとが、近未来都市の様な人工物で作られた建物や風景ばかりだった。かと言って自然が全く無かったわけではない。農作物や家畜専用に作られた農業コロニー、かつての地球に存在していたハワイなどのリゾート地を完全再現した観光用コロニーなど娯楽もそれなりにあった。

 

 

しかし地球は既に滅んでしまった為、全て偽物の風景や自然だった。

だから今、こうして紛れもない本物の自然を体感出来ている事に気づいたリックは、しみじみと感動しながら、様々な事に興味津々だった。

 

リック「あっ鳥!鳥ですよ!鳥にも色んな種類があるんですね」

鷹羽「あれは…ムクドリだな。そんなに珍しいか?」

リック「はい、見ていて面白いです!」

 

そう鷹羽が問いかけると無邪気に笑うリックだった。そうしているうちに色々な物に目移りしながら歩いていると、丘の上に目的の一軒の古民家があった。

 

 

 

 

リック「え?ここにあるんですか?普通の民家みたいですけど?」

鷹羽「お前の探しているものはこの家の地下洞窟にある。」

先に鷹羽が行き民家の扉に声を掛ける。

鷹羽「失礼する。例の件の異国の者を連れてきたぞ。」

 

すると扉の奥からゴトゴトと物音がし始める。 そして勢いよく扉が開くとそこにいたのは、ボサボサ髪をした赤毛の人物が立っていた。

 

???「ごめーん。忘れてた!家汚いけど入ってー!」

リック「…男の人…?」

???「酷ーい!短髪の髪型だからって勘違いしないでよねー。ちゃんと女ですぅ!」

鷹羽「里巳(さとみ)、酒臭いぞ。また昨夜も遅くまで飲んでたのか?」

里巳「ああ、ごめんね。二日酔いまだ治ってないの。さあさあ、入って入って」

 

里巳の家に入ると辺り一面様々な道具や部品や酒瓶が転がっていた。

 

里巳「さて、君が噂の異国人くんでしょ?巷で有名だから知ってるよー」

リック「えっ自分、有名人なんですか!?」

里巳「あったりまえでしょ!遠くの国から来た人なんてそうそう居ないもん」

リック「…遠く…といえばそうなんですけど…」

 

様々な事情があり俯いてしまうリックであった。

 

里巳「鷹羽さんも喉が渇いたでしょ?勝手に台所から急須とか探して飲んでいいから!」

鷹羽「分かった、是非そうしよう。」

リック「この二人、知り合いなのかな…?」

里巳「鷹羽さんとは旧知の仲でね、あんまり外に出たがらない僕の為に城からの連絡や、僕の作った発明品を城に届けてくれたり、連絡役をしてくれてるんだ。」

 

里巳に鷹羽との話を聞いているうちに地下に繋がる梯子に案内される。

 

里巳「この梯子の下に君の探している不思議な物があるよ。」

 

梯子の下は真っ暗で何も見えない、どこか不気味な雰囲気を感じる。

リックは意を決して慎重に梯子を下りた。後から里巳が来てロウソクに火をつけるとそれは目の前にあった。

 

丸く鉄の様な金属で出来た謎の巨大な物体、それは紛れもなく―――

リック「お、俺があの時乗っていた船だ…!間違いない、これです!」

里巳「そっか…じゃあ本当に君はこの日の本の人じゃないんだね。」

 

脱出避難船は全体的に黒く焼け焦げていた、恐らく大気圏突入の時の影響だろう。

焼き焦げた所に金属の様な鋭いもので削ったのか、薄い傷が付いていた。

 

里巳「ああそれは、この物体…だっしゅつ?って言ってたっけ?それがどんな素材で出来てるのか調べたかったんだけど、刀や斧で叩き切っても全然削れないし破片も落ちないし、どうなってんの?」

リック「…これの素材は我々の国(時代)でしか作れない特別な金属で作られ加工してるんです。でも、無事に帰れたらきっとその金属の製造方法や色々な交流とか出来ると思います!」

里巳「え?この状態で帰れるの…?。」

 

里巳がやや驚いた顔でこれとこれかな?という手探りな仕草で脱出避難船に付いている手動レバーとスイッチを同時に操作すると、プシューと空気が抜ける音を響かせながら出入り口のドアが開く。

中には人ひとり入れる空間で、様々な機械装置が椅子を囲むように配置されており、コックピットの様だった。しかし…

 

リック「これは所々黒く焼き焦げた跡?それに…機械装置の一部が破損している…」

 

リックが試しに船に乗り込み、船の機動スイッチを押しても反応しない、装置が動かないなど完全に壊れていた。

 

リック「……どうしよう…これじゃ帰れない…」

里巳「僕が騒ぎを聞いて珍しく家から出てあの浜辺に行った時から、既にこんな感じだったよ…」

リック「…帰れない…なんで…こうなったんだ…」

 

以前から何となく自分で察していた。あの時、脱出避難船に乗ってしまった時点で取返しもつかない事態になってしまった事。この船はあくまで緊急脱出という目的の装置の為、再び空を飛び宇宙に行く機能は付いていない。それに幸運なのか不運なのか海に着水した衝撃で機体に大きなダメージを追ってしまい、完全に壊れてしまっているのではないかと、リックは自分自身でなんとなく考えていた。だが、自分の生まれ育った場所にはもう帰れない、一生この未知の惑星で生きていくしかない現実を受け入れることが出来ず、ずっとこの事を考えない様に現実逃避していたのだった。

 

 

里巳「…ごめん…お茶か何か持ってくるね…」

 

里巳はこの悲痛な沈黙に耐えられず、逃げる様に梯子を上ってしまった。

 

 

 

―――じゃあ自分はあの時どうしたら良かったのか、海に着水せずに陸地で無理矢理着陸すれば、衝撃で船ごと粉々になり大爆発する。だから海での着水は間違いではなかった…ではその前の脱出避難船に乗り込まず、襲撃された宇宙船で一人で生き残り、助けが来るのを長い間待つしかなかったのか…それ以上に一番最初、宇宙船を襲撃された時に仲間と共に死んでいれば良かったのか…様々な事を考えながらリックは船を見つめる。

 

もう故郷に帰れない…特に仲良がいいわけではなかった家族や対して信頼している友人もいなかった。しかし離れてようやく分かった事があった。自分が見慣れている風景や音、人物など自分にとって当たり前だった日常が唯一の居場所であり、安心感だった。走馬燈の様に色々考えるが不思議と涙は出なかった、しかし耐えられない現実に脳が混乱しているのか激しい頭痛と目眩に襲われる。

 

リック「…俺は…何の為にこの惑星に来たんだ…?なんで…誰に言われて…来たんだっけ…?俺って誰だっけ…」

次第に過呼吸になりそして膝から崩れ落ちる様に倒れ込んでしまう。

 

 

リック(…なんで未知の惑星探索に来たのに、地球にかつてあった島国の文明があるんだ…?)

 

そしてリックはショックで気絶した。

 

 

 

                                

 

                              次回に続く

 

 


 
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