漫画的男子しばたの生涯一読者
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漫画的男子しばたの生涯一読者

■変革期来たる 〜雑誌

女性向け漫画雑誌に地殻変動の兆し!?

前回に引き続き、2002年3月も漫画雑誌に大きな動きがあった。とくに目立ったのが女性向け漫画雑誌である。講談社から大型新雑誌「Vanilla」が創刊されたと思ったら、小学館が「プチフラワー」「別冊少女コミック」を一挙にリニューアル。女性向け漫画雑誌はどちらかといえば厚めの持ち運びに向かない重量級雑誌が多いこともあって、多数の雑誌を併読している読者はさほど多くないが、雑誌自体は男性向け青年誌とさほど変わらない数が発行されている。それだけに限られたパイの奪い合いはシビアで生き残りを賭けた競争は厳しいものとなりつつある。ここで紹介する雑誌のほかにも、最近ではA5極厚サイズでH要素をふんだんに取り入れた雑誌も増えてきており混沌とした状況になってきている。今後の業界全体の動向を占ううえで、重要な時期が来ているといえるかもしれない。

「Vanilla」4月号 【新創刊】 講談社

Vanilla
「Vanilla」4月号
講談社

対象読者は20代女性といったところだろうか。表紙には「オンナの勝負コミック」と「ガールズコミック」というアオリ文句が共にあるので大人向けなのか少女向けなのか迷うところではあるけれども、読んでみた感じではターゲット層は「YOUNG YOU」(集英社)あたりに近いかなと感じた。B5平とじサイズでページ数も500超とかなりのボリューム感。個人的にはちょっと厚すぎて女性用のバッグとかには入らないんでは……というのが気になるところだが……。

執筆陣は以下に示すとおりだが、吉田まゆみ、中村真理子、小栗左多里、志村志保子、やまじえびねら、集英社・小学館系の作家が目立つ。実績ある人が多いので内容はかなり安定感があり、まずは気合い十分の船出となった。良くも悪くも個性の強い作家が多いのでヘタをすると雑誌としてのまとまりを欠いてしまうかもしれないが、女性向け漫画では比較的弱めだった講談社の意欲を伺わせるだけのものはある。第1号にはイメージキャラクター、ヴァニラちゃん&キューちゃんのマグネットセットもおまけとして付属している。厳しい時期の創刊となったが、面白い顔ぶれは揃えていると思うので今後の展開にも注目していきたい。なお発売日は毎月19日である。

Vanilla創刊号執筆陣
中村真理子、やまじえびね、ばばかよ、環ちひろ、桐島いつみ、秋本尚美、広田奈都美、加藤千恵+野口ともこ、吉田まゆみ、山本ルンルン、河田えりこ、小阪かおる、志村志保子、漫画:浪川基予子+作:児玉恭二、浜口乃理子、小栗左多里、きはらようすけ

「プチフラワー」5月号 【リニューアル】 小学館
「別冊少女コミック」4月号 【リニューアル】 小学館

プチフラワー別冊少女コミック
「プチフラワー」5月号
小学館
「別冊少女コミック」4月号
小学館

小学館の実績ある2誌が同時にリニューアル。これまで隔月発行だった「プチフラワー」は「フラワーズ」と誌名変更され月刊誌に、「別冊少女コミック」も「Betsucomi」へと移行する。この2誌のリニューアルはセットで行われる形となっていて、「Betsucomi」が少女向けのラブストーリー色をより強め、いくつかの連載は「フラワーズ」へと移籍することになる。「プチフラワー」の既存連載はほぼそのまま継続し、ここに「別冊少女コミック」から吉野朔実、渡辺多恵子、新井理恵、吉田秋生、田村由美らが加わる形となった。現在の時流に即して既存雑誌をシャッフル、年齢層による切り分けをより厳密にし活性化を図ったわけだが、この試みが吉と出るか凶と出るか。こちらも要注目だ。

「コミックゼロサム」5月号 【新創刊】 一賽舎

コミックゼロサム
「コミックゼロサム」5月号
一賽舎

この雑誌も読者層的には女性向けといえそう。前回紹介した「コミックブレイド」(マッグガーデン)に続き、エニックススピンアウト組の新雑誌が創刊された。峰倉かずや「最遊記RELOAD」を目玉に、若年層の女子をターゲットにしていると思われる誌面を作っている。男子向きな作品は少なめで、その点では「コミックブレイド」よりもコンセプトはハッキリしているといえるかもしれない。

コミックゼロサム5月号執筆陣
高河ゆん、沢田翔、上田信舟、美川べるの、峰倉かずや、佐伯弥四郎、水谷悠珠、遠藤海成、清野桂也、鈴木次郎、雁えりか、夜麻みゆき、堤沙子、橘あゆん

少女に続いて美少女も

また、最近では少女漫画雑誌だけでなく美少女漫画雑誌、つまりH漫画雑誌も動きが激しい。今年に入ってから創廃刊した雑誌はそれぞれ10冊近い。3月にも平和出版のコンビニ売り系H漫画雑誌「マンガBOOP」、大都社からコスプレH専門誌「コミック七服神」が創刊されたほか、「コミック絶空」(笠倉出版)、「Comic Site」(東京三世社)が休刊。4月も「COMIC大我」(桜桃書房)、「A-GEKI」(晋遊舎)が休刊、「カラフルBee」(ビブロス)が「カラフルコミックPUREGIRL」へのリニューアルが決まっている。

COMIC大我
「COMIC大我」
桜桃書房

H漫画雑誌も雑誌が乱立状態にあったが、出版不況もありいよいよサバイバル状態に突入といった様相を呈している。一時期ブームになったB5平とじ雑誌は勝ち組と負け組がよりハッキリしてきた感じがする。価格が高めであるだけに、強力なウリがない雑誌はいずれも苦戦している印象だ。それに変わって最近躍進が目立つのが、A5中とじの小型サイズ雑誌である。松文館の「姫盗人」を皮切りにここ数ヶ月で10誌近くが次々と市場参入した。この流れが定着するかどうかは分からないが、今までになく雑誌ごとのコストパフォーマンスが厳しく問われる時代になってきていることは間違いなさそうだ。

そのほかリニューアル物件

「ガンダムエース」No.004 【発売日変更】 角川書店

ガンダムエース
「ガンダムエース」No.004
角川書店

昨年6月にガンダム専門漫画誌として創刊された「ガンダムエース」が、これまでの季刊から隔月刊へとぺースアップ。ガンダムブームは衰えるどころか、さらに加速している。雑誌の目玉は創刊時と変わらず大ボリュームの安彦良和「起動戦士ガンダム THE ORIGIN」。これまで毎号100ページ超が掲載されていたが、隔月発行になってもこのぺースが維持されるかどうかも気になるところだ。

「増刊ヤングジャンプ 漫革」5/1 Vol.26 【リニューアル】 集英社

増刊ヤングジャンプ 漫革
「増刊ヤングジャンプ 漫革」5/1 Vol.26
集英社

これまで「別冊ヤングジャンプ」との2本立てだった「週刊ヤングジャンプ」の増刊枠が、この号から「漫革」に一本化。「漫革」自体はB5中とじのままだが、ボリュームは若干アップ。リニューアル号では先日本誌のほうで初連載「キャラメラ」を終了させた武富智が読切「bazaar」を描いていたのが個人的には注目ポイント。 

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